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第七回三国志バトルロワイヤル 3

1 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 14:53:52
━━━━━説明━━━━━
こちらは三国志世界でバトルロワイアルが開催されたら?というテーマで、
sage進行で進められている、全員参加型リレー小説スレッドです。

参加する三国志武将がお互いに殺しあっていき、生存者一名となったときにゲーム終了となります。
前スレ
http://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1154174449/

   感想&質問など、何かあったら雑談スレへ ↓
三国志バトルロワイアル観戦雑談スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/29695/1154600612/

説明は>>2-10のどこかにあります。
たぶん>>2 「アイテムの説明」「首輪の説明」「フィールドの説明」
たぶん>>3 「お願い」


2 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 14:56:23
━━━━━アイテムの説明━━━━━

※参加者は、【フィールド略地図】【全参加者名簿】【鉛筆】【水とパン2日分】【懐中電灯】
 【腕時計】を基本アイテムとして支給されています。
  基本アイテムのレス末表示は特に必要ありません。
※参加者は不確定要素として、通常は単に【アイテム】と呼ばれる武器アイテムを、
  各自1つづつ支給されています。支給された武器アイテムの制限はありません。
※参加者は、スタート時には普段着以外の、全ての装備を没収されています。

━━━━━【首輪】の説明━━━━━

※参加者は全員、耐ショック・完全防水の、銀色の【首輪】を付けられています。
※【首輪】には主催者用の、生存判定用高性能心電図・位置確認用発信機・爆殺用高性能爆薬が、
   標準装備されています。
※【首輪】は、不正に外ずそうとしたり、禁止エリアに侵入すると爆発し、参加者を死に導きます。
   最後の死亡者放送から100レス超過以内に死亡者が無い場合、全員の首輪が爆発します。
 
 (以上の首輪に関しての情報は、参加者にも公開されています。)

━━━━━フィールドの説明━━━━━

※ フィールドは、下記地図を縦30キロ・横20キロ程度の範囲とする、後漢〜晋の支配地域を領域
   としたミニミニ中国大陸です。
    参考資料 → http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/3952/tizu.html
※ フィールド内の禁止エリアは、およそ300レス毎に1州づつ追加されていきます。
※ フィールド内に参加者以外の人間や、アイテム以外の強力な武器装備は存在しません。
※ 参加者には、『死亡者放送』『禁止エリア放送』のみ公開されます。

3 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 14:57:42
━━━━━お願い━━━━━

※ 一旦【死亡確認】表示のなされた死者の復活は認めません。
※ 参加者の死亡があればレス末に、必ず【死亡確認】の表示を行ってください。
※ 又、武器等の所持アイテム、編成変更の表示も、レス末に下記フォーマット、
   もしくはリストの形式に従って行ってください。
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    @武将名[健康状態に被害があったときにはその状態]【アイテム】
    ※(状況変更)
   
   例:  @司馬懿[左腕怪我・腹痛]【戟、弁当箱、女物の服】
        ※ 女物の服着用中
       ≪好敵手/2名≫
        張飛【M16サブマシンガン】&馬超【鉄槍】
        ※ 長安に向かいます
  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※ 新規参加武将は100人に到達後、次の死亡者リスト表示まで登場した者までとします。
※ 複数にわたる話(名前欄に「○/○」記載)は、3時間以内に最後まで連続で書き込んでください。
※ 本スレは800レスまたは480KB になると書き込みを中止して引っ越します。

        ※ 最低限のマナーは守るようお願いします。※

   ★出されたご飯は残さず食べる。
     (新しいお話を書く方は前からのお話を読んで無理のない設定にして下さい)
   ★転んでも泣かない。
     (お気に入りのキャラが思わぬ展開になっても気持を切替えて次に進みましょう)
   ★おいらのギャグには大爆笑する。
     (いろんなネタが出てきても、なるべくおおらかな気持で見てあげましょう)


4 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 15:01:28
━━━━━前スレまでの参加者情報━━━━━

※前回放送以降の変更点が含まれています。
(現在最後の放送は4日目朝です。)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

▼生存者リスト パーティーの部(参加者非公開)▼

<<親子の面影+α/3名>>
蔡文姫【塩胡椒入り麻袋×5】
劉封【ボウガン・矢×20、塩胡椒入り麻袋×5】
ホウ統【ワイヤーギミック搭載手袋、塩胡椒入り麻袋×5】

<<不品行と品行方正/2名>>
郭嘉[左脇腹負傷、失血、発熱]【閃光弾×1】
陳羣【なし】

<<荀イク孟徳捜索隊/2名>>
袁紹【妖刀村正】
曹彰【双剣の片方(やや刃こぼれ)ごむ風船】

<<めるへんトリオ featuring 既視感を追う旅/6名>>
陸遜【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×3)、探知機】
姜維[重傷]【なし】
司馬懿【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)、香水、陳宮の鞄、阿会喃の鞄】
凌統【銃剣、犬の母子】
馬謖[気絶、軽症]【魔法のステッキミョルニル(ひび入り)】
関興【ラッキーストライク(煙草)、ジッポライター、ブーメラン、サーマルゴーグル】

5 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 15:02:52
<<馬家の従兄弟/2名>>
馬超【高威力手榴弾×7個、MP5、ダガー、ジャベリン】
馬岱[香水アレルギー]【シャムシール、投げナイフ×20】

<<ふたりの詩人とひとりのアモーと弓腰姫/4名>>
曹操[治りかけの打撲]【チロルチョコ(残り70個)】
陸機【液体ムヒ】
呂蒙[鼻を負傷]【捻りはちまき】
孫尚香【シャンプー(残り26回分)】

<<フライングディスクシステム搭載/2名>>
曹植【PSP、テルミン】
張遼【歯翼月牙刀】

<<カミキリムシとオナモミ/2名>>
呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル】
諸葛瑾【なし】

<<呉にある2人/2名>>
甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣、コルト・ガバメント、点穴針、諸葛亮の衣装】
孫権[右目負傷・失明]【防弾チョッキ、日本刀、偽造トカレフ、空き箱】

<<皇帝とナース+子供と外交才能零/4名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品 吹毛剣】
魯粛【圧切長谷部】
曹幹【光学迷彩スーツ(故障中)】

6 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 15:04:51
▼生存者リスト ピンユニットの部(参加者非公開)▼

@黄忠【サバイバルナイフ、グロック17、鎖鎌】
@夏侯惇【金属バット】
@許チョ【大斧】
@高順【狼牙棒】
@祝融[毒]【なし】
@諸葛亮【諸葛亮伝】
@曹熊[錯乱]【ベレッタM92F】
@劉備【李典棍、塩胡椒入り麻袋×5】
@于禁[左耳破損、右手小指喪失、全身軽傷、洗脳]【山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3、ガン鬼の銃(陰陽弾×24)】
@荀ケ[洗脳されている?、額に切り傷]【ガリルAR(ワイヤーカッターと栓抜きつきのアサルトライフル)、刺身包丁】
@魏延【ハルバード(少々溶解)】
@潘璋【備前長船】
@張コウ[顔面負傷、全身軽傷]【斬鉄剣(腰伸び)、デリンジャー、首輪解体新書?、DEATH NOTE】
@関羽[全身打撲(治癒中)]【方天画戟、猛毒付き諸葛弩(残り矢20本)・手榴弾×3】
@張飛【鉈、桃三個】


パーティの部11組32名、ピンユニットの部15名 計47名 生存確認

参考:生存者位置マップ(議論3スレ>>406氏提供)
ttp://3594br7th.web.fc2.com/mapl_060926.jpg

7 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 15:06:16
▼死亡者放送(参加者公開)▼

≪あ行≫8名 (+2)
☆阿会喃 王平 袁煕 閻行 袁尚 ☆袁術 袁譚 王累
≪か行≫20名 (+2)
☆夏侯楙 賈ク 夏侯淵 華雄 虞翻 郭 楽進 郭図 夏侯威 夏侯和 夏侯恵
夏侯覇 韓玄 韓遂 顔良 許攸 刑道栄 侯選 ☆孔融 胡車児  
≪さ行≫18名 (+1)
司馬孚 朱桓 周瑜 周泰 朱然 朱霊 淳于瓊 荀攸 徐晃 徐庶 辛評 成宜 曹洪
曹仁 ☆曹丕 沮授 孫堅 孫策  
≪た行≫16名 (+3)
☆張燕 張角 張虎 陳到 張横 張繍 張任 貂蝉 陳宮 程銀 ☆禰衡 程普 典韋 田疇
董卓 ☆董超&董衡
≪は行≫4名 (+2)
☆裴元紹 馬玩 ☆馬忠 文醜
≪ま行≫3名
満寵、孟獲、孟達
≪や行≫2名
楊秋、楊阜
≪ら行≫7名 (+1)
李堪 李儒 劉璋 劉ェ ☆廖化 梁興 呂範


計78名 死亡確認


■既出登場武将数:125名 残り47名

8 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 15:10:12
−−−−−−−−−−−−−テンプレここまで−−−−−−−−−−−−−

※前述ですが、参加者には☆付き死亡者の情報はまだ入っていません。


【それでは投稿どうぞ!】

9 :追憶のカノン 1/5:2006/10/08(日) 18:20:31
この世界以外にも別の世界があって、そこでもこのようなゲームが行われているのだろうか。
そうならば私は願おう。何処かの『参加者』よ、負けるな、と。
こんな理不尽な世界に従うな。戦い、抗い、そしていつか世界に対して勝利してくれ。
決して我々の様な不幸な結末を受容するな、と―――。


「……あー?」
木陰で一時の休息を取っていた魏延は、寝ぼけた声と共に目を覚ました。
ほんの少し休むだけのつもりだったのに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
戦闘が続き、思った以上に疲労が溜まっているのか。

―――決して我々の様な不幸な結末を

良く分からないが、どことなく不吉な言葉が脳裏に纏わりつく。
おかしな夢を見ていた気がする。馬鹿らしい、と頭を振り、木に手をついて立ち上がる。
……一瞬のめまい。
閃光のように脳裏に映像が走り抜ける。

 崩れゆく世界。遠雷が響く。星も月も無い黒の空。

……何だこれ?
魏延はもう一度ぶんぶんと頭を振った。まったくもって馬鹿らしい。

10 :追憶のカノン 2/5:2006/10/08(日) 18:25:01
赤く染まりはじめた夕暮れの空、不意に影が差した。
鳥か。魏延はひとり頷くと、手ごろな大きさの石を拾い上げた。
狙い澄まして投げたそれは目にも留まらぬ速さで空を駆け、見事に鳥に命中する。
悲しげな鳴き声を上げて墜落する鳥。ばたばたと地面をのたうつのを拾い上げ首を捻る。
今日の夕食、確保。

この鳥、空を旋回していたな……
見上げると、頭上には果たして予想通りのものがあった。
ハルバードを置き、太い幹に手を掛ける。
木登りなんぞどれだけぶりかな、と思いながらも、軽やかに大木をよじ登った。
さっきまで魏延が眠っていた場所のちょうど真上に、ころころとした卵が入った巣。
……真上かよ。さっきの鳥、フンとか落としてないだろうな?
顔をしかめてわしゃわしゃと自分の髪に触れる。どうやら無事のようだ。
その結果に満足して魏延は巣に手を伸ばした。巣ごと卵を取る。
そして割らないように気をつけながら、慎重に木を降りた。
よし。明日の朝食も、確保。

11 :追憶のカノン 3/5:2006/10/08(日) 18:30:34
日が完全に沈んでしまってからでは炎は目立ちすぎる。
鳥を焼くためにすぐに火をおこした。
一兵卒からの叩き上げである魏延にとっては、そう苦になる作業でもない。
塩でもあればいいんだがな、と思いながら焼き鳥の製作を開始する。
夕暮れの空と同じ色の火がぱちぱちと弾ける音を立てた。

こつん。

小さいが、確実に火が立てたのではない音。
ハルバードを引っ掴み、辺りを窺う。
こつ。こつん。
気配は無い。しかし音は確実に聞こえる。
魏延の鋭い目が周囲をぐるりと睨み、やがて一箇所で停止した。
こつ、こつ……ぴきっ。
巣に入れたまま脇に放置していた卵にひびが入っている。
まじまじとそれを見つめる魏延。広がるひび。
ぱきょん。
殻が割れ、その破片を頭に載せたヒナが顔を覗かせた。
どうしていいか分からなくなってハルバードを握ったまま停止した魏延を、ヒナのつぶらな瞳が見つめる。
ぴー!
小さいが、確かに生命の勢いに溢れた鳴き声。
残りの殻を振り落とし、よちよちと頼りなく魏延の足元に歩み寄る。
「う、うわ」
刷り込み。生まれたての鳥類や哺乳類の赤ん坊が、初めて見たものを親と思い込む現象。
まさしく、それが起こった瞬間であった。
ぴよ。ぴよ、ぴー!
気付けば他の卵にもひびが入っている。
顔を引きつらせる魏延にお構いなく卵は孵り、完全に日が沈む頃にはヒナまみれになって途方に暮れる魏延の姿がそこにあった。

12 :追憶のカノン 4/5:2006/10/08(日) 18:34:33
あぐらを組んで焼き鳥を頬張りながら、魏延はなんとも居心地の悪い気分になっていた。
その魏延の頭の上に鳥のヒナが2羽。膝の上に3羽。腕に乗っかっている1羽がずり落ちそうになったので、
つまんで膝に置いてやる。計6羽。
「おい、お前ら。今俺が食ってんのはお前らの親だぞ? 親の仇だぞ? いいのか?」
意味がないと分かっていながらも、1人ごちる魏延。
もちろんヒナたちはぴよぴよと楽しそうに鳴いたり跳ねたりしているだけだ。
ふぅ、と溜息をつく。
こんなやかましいのを連れて歩くのは危険すぎる。しかし置いていくと獣か何かにすぐに食われてしまうだろうな……
ついさっきまで自分が卵を朝食にするつもりだったのは棚に上げ、そんな事を考える。
ちょっとだけ、ちょっとだけなら連れて歩いても……そうだ、非常食だ。
そう、こいつらは非常食だから持って行くしかないだろう。あぁ。
もちろん腹が減ったら食う。情け容赦なく食うぞ!

ヒナを連れ歩くために必死で自分への言い訳を考えるあたり、かなりヒナたちにほだされてしまっている魏延だった。


13 :追憶のカノン 5/5:2006/10/08(日) 18:35:26
@魏延【ハルバード(少々溶解)、鳥のヒナ6匹】
※楊州北部より南下中。
※冒頭の4行は第一回のバトロワ優勝者である魏延の最期の思考です
※ヒナたちに癒されて若干戦闘意欲低下中

      ピョ
  ピョ
      , - 、, - 、
   , - 、i'・e・ ヽ,,・ァ, - 、
  4 ・   ゝ - 、i'e・ ヽ、・ァ
  ゝ   i e・  ヽ、 ,,.-''´|
 |`"''-,,_i   ,,.-''´    |
 |    "'''i"    ,,.-'"
 `"''-,,_.  |  ,,.-''"
     "'''--'''"

14 :無名武将@お腹せっぷく:2006/10/08(日) 20:23:01
転載

http://saleshop.web.fc2.com/
激安問屋市場が移転セール

15 :1/2:2006/10/09(月) 10:31:41
荊州から豫州までさしたる戦闘もなく辿り着いた夏侯惇。

「ここから豫州か…」

眼の奥がチリチリとする。いつもそうだ。大戦の前にはよく左眼の奥が痛んだものだった。

(孟徳も…劉備たちも生きているのか?)

一瞬別のことを考えかけたが、次の瞬間そんな思いは消し飛んだ。
このゲームが始まった直後、襲いかかってきた男――高順がすぐそこにいた。

(まずい…!見つかったか!?)

心臓の鼓動が早まる。あの時はともかく、今では銃器もあるやもしれず、さらにまだ自分の勘が戻っている保証はない。
この状況では戦闘はしたくない。幸いそこには雑木林があり、そこに身を伏せた。
どうやら何か考えているようだ。ぶつぶつ喋りながら、歩いている。
と、伏せている夏侯惇と歩みを止めた高順の目が合った。

沈黙と静寂がその場を支配する。自分の鼓動音だけがやけに大きく聞こえる――。

…………。

夕陽が地平線上で残照を残すように、ゆっくりと時間が過ぎる。

…………………………。

――いっそこちらから仕掛けようか。
そんな思いも去来したが、できれば確率の悪い博奕はしたくない。夏侯惇の理性が、ついには勝った。
どうやら高順とは偶然目が合っただけらしい。黄昏のなかの僅かな闇の中に姿が消えるまで、高順を見守り続けた。
なんとかやり過ごしたが、まだ目の奥の痛みは消えない。


16 :2/2:2006/10/09(月) 10:32:33
できるだけ目立たないように、道を急いだ。
しばらく進むと、『穎川郡』という看板が確認できた。
ここに来て、目の奥がさらに痛むようになった。大気の緊張が目を通して伝わる。
近くに殺気を感じる。
後ろを振り向く。
日が沈みかけていて見えづらかったが、その巨大な影で思い当たるのは一人しか居なかった。

「――虎痴。」

「できれば、将軍が気づかないうちに楽にしてやりたかったが、そうもいかねえようだ…」

その殺気、存在感からして戦闘は避けられなさそうだ。

「…虎痴、一つだけ聞きたい。貴様はなぜ俺に刃を向ける」

許チョに限って、この戦場の狂気に呑まれることは無いと言っていいだろう。
そしておそらく、俺は既に此奴の戦う理由を知っている。
それなのに、なんだってこんな分かり切ったことを聞くのだろう?

「……曹操さまを守るためだぁ。だから、おらは…曹操さまとおら以外を全て殺す!!」

ああ。分かってたぜ。どうやら俺とお前はどちらかが死ぬまで戦うしかないみたいだ。

「俺も孟徳に会うまで、死ぬ訳にはいかん!!行くぞ!!!」

僅かに残っていた夕陽が沈もうとしていた。

夏侯惇【金属バット】VS 許チョ【大斧】
戦闘開始!現在地、穎川郡。

@高順【狼牙棒】荊州方面へ向かった模様。


17 :命の瞬く声 1/7:2006/10/10(火) 03:19:36
「……なぁ関興、こいつ本当に気絶してるんだと思うか?」
「いや、単に惰眠をむさぼってるんじゃないでしょうかね」
ミョルニルで姜維を賦活した後、血を吐いて気絶した馬謖は……丸くなって眠りながらくふくふと笑っていた。
「はははかかったなきょーい……そこは毒沼だー……」
そして見ている夢の内容が大変分かりやすい。
起こす? 起こします? と顔を見合わせた凌統と関興が動く前に、壁にもたれてぼーっとしていた姜維が億劫そうにやってくる。
そしてどことなく不機嫌な顔で馬謖の背中を思いっきり蹴飛ばした。
「痛っ! ……あ、夢か、残念」
「何が残念なんですか馬鹿謖どの、毒沼に沈めて差し上げましょうか?」
馬謖のお陰で死の淵から舞い戻れた割に扱いが酷い。
ふん、と鼻を鳴らして元の位置に戻った姜維の背を見ながら凌統が呟いた。
「……さすがに今のは酷くないか? 姜維殿って案外性格悪いのかな」
「や、あいつ寝起きはいつもあんなんだから。ちゃんと目が覚めたらわたわたしながら謝ってくると思う」
「へー……」
わたわた……。想像しかけたが、吹きそうだったので止めた。

そんな馬鹿らしく平和なやりとりを横目に、司馬懿は事ある度に増える鞄のひとつを弄っていた。
中からは基本支給物の他に、黒い表紙の書。……阿会喃の鞄である。
なんだか不気味な雰囲気の書は破棄してしまおうかと思っていたのだが、太史慈から但し書きの内容を聞いて思いとどまった。


18 :命の瞬く声 2/7:2006/10/10(火) 03:23:25
異国の言葉で書かれた但し書きの内容。
それはもう1冊同じものが存在すること、誰かの名前を書くとその人間を殺さねばならないという衝動に囚われること、
片方に名前を記すともう片方の書も連動すること―――等々。
それらの特性を知り、「これはいつか必要な時が来るのでは」と危険を承知で持つ事にした。
ページを繰ると確かに4人の名前が浮かび上がっている。これの所為で危うく阿会喃に殺されそうになったのだろう。
荀イク、荀攸、司馬懿、陳羣。
一体どんな理由でこの4人が選ばれたのか? とりあえず皆曹魏の文人であることは分かるが……。
苦々しく紙の束を見つめていた司馬懿だったが、浮かんだ名前の位置を見てある事に気付く。

 ……ひょっとすると、これは名前だけが書かれた訳ではないのでは?

おそらくもう一方の持ち主が書いたものが浮き出てきたのだろうが、変に中途半端な場所だ。
よもや、長い文章の一部として名前が書かれている……?
目を眇めて、凝らして、書を傾けて……その推測が正しかったという証拠に辿り着く。うっすらとではあるが、
名前の前後で文を構成していた文字も浮かび上がっていた。しかしその字は非常に薄く、その全容を窺い知る事はできない。
何とか解読を試みるが、すぐに断念する。

19 :命の瞬く声 3/7:2006/10/10(火) 03:25:24
「おい、関興」
「……はい? なんですかこれ」
何となく一番目の良さそうな関興を手招きして、書を押し付ける。
「この字の周りにうっすく書いてある文章を解読しろ」
「え、えー!? 無理ですよこんな薄いの!」
「頑張れ」
「ちょ、頑張れって、んな無茶な……!」

数分後。
「……っだー!! やってられっかあああ!」
関興の悲鳴と共に黒い書面が宙を舞った。
「あ、関興殿がキレた」
「だらしないな、これだから『脳味噌まで筋肉、略して脳筋』は」
「そ、そんな事言うなら自分でやれ司馬懿殿ー!」
司馬懿に掴みかかろうとする関興の首根っこを掴んで引き剥がしながら凌統が聞く。
「それでだ、何か読めたのか?」
「あー、あんまり。でもここ、この最後のページの。何か良く分からない単語見っけました」
なになに、と司馬懿が覗き込み、音読する。……ち、ろる、ちょこ……?
性質上名前以外はあまり伝えようとしないらしいこの書だが、この単語に限っては書いた者が必死だったのか、
最初のページの長い文章よりは明確に読み取ることが出来た

20 :命の瞬く声 4/7:2006/10/10(火) 03:27:14
「陸遜! 『ちろるちょこ』とは何だ!?」
かすかに浮かんだ文字は、黒い書の片割れに張コウが書いたとあるものの名前。しかし司馬懿にとっては未知の言葉だ。
だがようやく何かの手掛かりらしきものを掴んだと確信した司馬懿は、凄まじい剣幕で陸遜に問いただした。
「何ですか、出し抜けに……僕は知りません。
 姜維さんと凌統さんにも聞いてみたらどうですか、彼らも知らなければ、おそらく他の誰も存じないかと」
「な、なんだとー!」
後ろでなにやらごそごそしていた馬謖が異議あり!と声を張り上げるが、陸遜が無造作に投げた木製ブーメランを額に食らって沈黙した。
「私も知りません。凌統殿は?」
「俺も知らんけど」
「むう、誰も知らぬか」
若干不服そうに司馬懿が溜息をついた。
「……で、何故急にその『ちろるちょこ』なるものが出てきたんですか?」
「うむ。それはな―――」
怪訝そうな陸遜に、司馬懿は先程の書物について詳しく語った。
「つまり、もう1冊のこれを持っている人が記したってことですね。
 最初の所有者なら、阿会喃さんと同様の状態になっていた可能性が考えられるので、その後で手にした人かもしれません」
陸遜は額に軽く指を沿えて考える。同意を示して司馬懿が頷く。
「だとするなら、中身は落ち着いて見ているでしょうから、この書の危険性には気付いている可能性もありますね。
 他にも紙なら参加者名簿の裏とかあるのに、敢えてここに書いた、ということは」
「もう1冊を持っている奴に、伝えたかった事だから……か?」
凌統と姜維が顔を見合わせる。推測に過ぎないが、可能性のひとつではあり得る。

21 :命の瞬く声 5/7:2006/10/10(火) 03:28:58
司馬懿は考える。
そこまでして伝えたかったこと、とは一体何なのか。もう一冊の書の持ち主は、この書を誰が持っているかはおそらく知らないだろう。
大体、その持ち主が書の効能を正確に知らない可能性だって十分有る。
「誰でもいいからとにかく知って欲しい」という事なのか?

だとすれば―――その意味は。
第1。とても重要なことであるという事。
第2。他者の協力を必要とする物事に関わっている事。
第3。もう一冊の書の持ち主が現在窮地に在る事。
このうちの幾つが正しい予測なのか判り得ないのは勿論、下手したら全部見当外れな気さえするが、
今は手元にある材料で徐々に切り崩して行くしかない。

他の者の意見も聞いてみようかと顔を上げると、陸遜と姜維、そして凌統は既にそれぞれ頭の中で検討しているようだった。
山頂布陣と脳筋の関興はそもそも聞くだけ無駄だ。
そこまで考えて何かひっかかり、もう一度周りを見回す。
馬謖が居ない。
「……おい、アホはどこ行った?」
「え? ……あぁ、なんだか外をうろうろしてますね……」
陸遜が近くに置いてあった探知機を引っ張り覗き込む。
アホという単語で話が通じてしまった馬謖は洞窟から半径数十メートル程度を行ったり来たりしているようだった。

22 :命の瞬く声 6/7:2006/10/10(火) 03:30:05
「……まぁ放っておこう。馬鹿は天才の行動を理解できんが、天才も馬鹿の行動は理解できん」
どうでも良さそうに視線を黒の書に戻した司馬懿の耳に、小さな声が届いた。

『仲達』

その声に再び顔を上げるが、誰も名を呼んだ様子はない。そしてそれっきり声は聞こえない。
気のせいか、と考え事を続けようとするが、奇妙に胸を締め付けられるような感覚を覚えて集中できなくなる。
……胸騒ぎ。
そういった迷信めいたものを余り信じる気はなかったのだが、何故か誰かに呼ばれ続けているような気がしてならない。
探知機を見る限り、この洞窟付近にはちょこまか動き回っている馬謖以外に人間は居ない。
しかし、無性に気になるのだ。
ただ確かめてくるだけなら大した手間でもあるまい。軽く全員に断りを入れると、司馬懿は洞窟を出た。

案の定、冷えた空気を抱えた大地には誰ひとり見当たらなかったが、気配だけはそこに在り続けている。
声はすれど姿は見えず、という奴か? いや、もう声さえ聞こえぬのだから適切ではないな……
そんなことを考えながら司馬懿がふと天を仰ぐ。
黒い絹を敷き詰め砂金を散りばめたような夜空、一際燦然と輝く煌びやかな星が目に留まった。
真後ろまで回ると言われるその首を微かに傾げる。
はて、こんなところに今までこのような大きな星があっただろうか。これほど見事な星が突如現れたのも不可思議だ。
しかし、余りに堂々たるその巨星を見上げるうち、何故か奇妙な物悲しさに包まれた。

23 :命の瞬く声 7/7:2006/10/10(火) 03:31:41
 何故だろう、可笑しな言い回しになるが、私はあの星を「知っている」。
 そして今、限りなく厭な予感しかしない―――

不意に沸き起こった切なさを振り払うが如くに星から目を背け、司馬懿は皆の待つ洞窟に帰った。
そこには今までと変わりなく緩やかに談笑する友が―――この場限りの友でしかないことは解っているが、
それでもこの場でこそ貴重な友がいて。
だが、それを見れば見る程に、今は悲しみばかりが募るのだ。

彼が抱えた苦しみの正体を、今は未だ誰も知らない。


<<めるへんトリオ featuring 既視感を追う旅/6名>>
陸遜【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×3)】 姜維[重症(なんとか短時間立って歩ける程度)]【なし】
司馬懿【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)、香水、DEATH NOTE、陳宮の鞄、阿会喃の鞄】
凌統【銃剣、犬の母子】 馬謖 [軽症(時々めまい・貧血状態に)]【魔法のステッキミョルニル(ひび入り)、探知機】
関興【ラッキーストライク(煙草)、ジッポライター、ブーメラン、サーマルゴーグル】

※漢中より少し南の洞窟に滞在中。
※探知機で近づく人間を察知可能。馬謖が直接認識した相手は以後も場所の特定が可能。
※現在洞窟の周りに馬謖がノリノリで大量の罠を仕掛け中。

24 :1/3:2006/10/10(火) 16:58:35
「ふんおーーーーーーっ!」

許チョの巨大な体が大地を蹴る。その姿はさながら小さな彗星。凄まじい衝撃で、流石の夏侯惇も押しつぶされたかに見えた――。しかし、夏侯惇はまだ生きていた。

「さすが将軍だぁ。これはかわせるかぁ!?フンフンフンフンフン!」

その巨体からは信じられないスピードで攻撃が繰り出される。全力を尽くし全ての攻撃を捌ききったように見えた夏侯惇だったが……。

(なんて力と速度だ…!得物で無くともこの強さとは!おまけに、受け流したはずなのに手に痺れがきている!)

今更ながら、何故この許チョが典韋の後を任せられたか理解した。無類の忠誠心と、純粋にして最高の膂力。これこそが許チョを許チョたらしめていたのだ。……だがな。

「許チョ!!孟徳を守りたいならば、まず俺の屍を超えてゆけ!!」

ああ、おかしな話だ。目的も、守るべきものも同じなのに、歩む道が違うだけで殺し合わねばならないとは。それが乱世の習いかもしれんが、気づいていても闘いを止められぬ俺も、お前も大馬鹿よ。

「行くぞ!受けられるか!?」

夏侯惇が渾身の一撃を放つ。受けるでも引くでもなく同等の力をぶつけて相殺する許チョ。

「驚いた、あれも効かんとはな…」

痺れで段々と手の感覚が無くなっていくのが分かる。このまま打ち合い続けたらバットが持てなくなり、負けるだろう。
死は覚悟するところだが、まだ死ねないのだ。

「一つ…大博打を打ってみるか」

左手に添えた右手を、バットの根元に移した。そして自分の間合いから離れた。

「なぁんだぁ?そんな構えじゃ、おらの攻撃は避けられねぇぞぉ」

「いいんだ…。これ以上逃げる気はない。来い!許チョ!!」

25 :2/3:2006/10/10(火) 17:00:19
「ふんおーーーーーーっ!」

いつも通りに大地を蹴り、いつも通り敵を叩き潰す。それがおらの戦い方。――でも、今度の敵は楽じゃねぇ。
相手はあの夏侯惇将軍。手応えのあった一撃にも平然としてた。…楽しめそうだぁ。

「さすが将軍だぁ。これはかわせるかぁ!?フンフンフンフンフン!」

力と速さの限りを尽くし、大斧を繰り出すも全て正確に受けきられる。
すごい、すごいだ。曹操さまがお認めになるのもわかる気がするだ。でも、こんな強くて危険なやつは、曹操さまにとっても危ねぇだ。
なら、おらがここで仕留める!

「許チョ!!孟徳を守りたいならば、まず俺の屍を超えてゆけ!!」

言われなくても、そうするだ…。新たに許チョに闘志が漲る。

「行くぞ!受けられるか!?」

恐ろしく速く、強い一撃。でも、力なら誰にも負けねぇ!2つの力がぶつかり、弾けた。まだやれる。
おらは負けねぇ。例え将軍のが強くても、曹操さまを守る意志がある限り、おらは負けねぇ!

……ん?
将軍が構えを変えた。でもあれなら、おらの一撃で破れそうだ。他に魂胆はあるんか?

「なぁんだぁ?そんな構えじゃ、おらの攻撃は避けられねぇぞぉ」

もしなにかあったとしても、おらの力で叩き潰す!

「いいんだ…。これ以上逃げる気はない。来い!許チョ!!」

将軍、これが最後だ!

26 :3/3:2006/10/10(火) 17:09:06
「いい覚悟だぁ!ふおおおおお!!」

第一撃に劣らぬ、いや、それよりも勝る力だった。
――しかし、次の瞬間に起こったことを許チョは理解できなかった。右腕の感覚が無い。力が入らず大斧を握れない。
(おらは…いったいどうしちまっただ…?いや、それよりも攻撃を!)
「ぬぅあああアァあぁァあ!」

野獣の断末魔のごとく叫び、夏侯惇へ向き直り、残った左腕で斬り掛かる。

「まだ動くか!だが最後の一撃と見た!」

振り下ろす左の手首ごと金蔵バットではね上げ、大斧は空しく宙を舞った。
それと同時に、許チョが崩れ落ちる。今まで体を支えてきたものが抜け落ちるように。

「…どうして、おらの攻撃が…?」

「お前の斧が、俺の棍に当たると同時に、体ごとお前の右側に回り込んで衝撃を受け流した。
最初の一撃で力と速さを見ていなければ、到底そんなことは不可能だったがな。
あの時構えを変えたのはそのためだ。それでもさっきの一撃は、初撃以上のキレだったから、受け流したと言っても手の痺れは半端じゃなかった」

「…じゃあ、おらは間違ってただか…?」
「いや、俺がお前でもああして攻撃しただろう。
あの構えじゃ左右の攻撃には対応できないから、左右の連携が来たら立場は逆だったろう」
「……ほんの少し、俺に運があっただけだった…」

最後の言葉は、言葉を絞り出すようだった。



27 :4/4:2006/10/10(火) 17:11:01

「…将軍」

「何だ、虎痴」

「…その斧でおらを殺してくんろ…」

夏侯惇は無言で大斧を拾いにいった。ものいわぬ背中は何かに耐えているようだった。

「虎痴……何か遺す言葉はあるか…?」

分かっていた。出会った時からどちらかが道を降りなければならない事など。
だから俺は冷静に振る舞わなければならない。虎痴の最期を誇り高きものにするためには。動揺してはならない。

「………曹操さまをおねがいしますだ」

「承知。さらばだ、虎痴!」

ドシュッ!

………………なぜだ

「どうして俺がこいつを殺さねばならん!!??」

闇の中に、星が一つ流れていった。

【許チョ 死亡確認】

@夏侯惇【金属バット、大斧】
※すいません。四部作でした。

28 :1/7:2006/10/11(水) 01:15:55
錦馬超とはよく言ったものだと思う。
その見事な武勇や鮮やかな馬術はもちろん、
西涼という土地柄が為し得たのだろう彫りの深い顔立ち、
馬家の跡取りとして育った故に身に付いている所作の美しさ。
それらの美徳はごく自然に、馬超の一部だった。
錦が、それを成す糸の輝きも、綾の妙も、織られた柄の見事さも
その全ての美しさを自然にはらんでいるように。

幼い頃からこの美しい従兄弟は馬岱の誇りだった。
そしてただ一人の主君であった。
誰に打ち明けたこともなかったが、蜀に下った後もずっと。
馬超が星になってからも、ずっと。

共に歩く従兄弟の美貌は全く変わらない。
馬岱が憧れ、尊敬し、忠誠を誓った錦馬超そのままである。
だが、何かが足りない。
例えば、その瞳に宿っていた苛烈な炎が。
例えば、側に控えるだけで肌に感じた風格が。
錦を織りなす綺羅糸が、どこか欠けている感じがした。

「……岱?」
気がつけば、その横顔を凝視していたようだ。
馬岱は慌てて視線を逸らし、その不自然さに気づいてまた視線を戻した。
やはり、変わらない。
こちらを見るときの首の傾げかたも。色素の薄い瞳の色も。
そう、馬超の“器”は何も変わっていない。

29 :2/7:2006/10/11(水) 01:16:47
「……どうした?」
「あ、いや……アニキ、疲れてない?」
取り繕うような馬岱の問いかけに、馬超はゆるゆると首を横に振った。
だがその返答とは裏腹に馬超は静かに歩みを止めた。
ぼんやりと立ち尽くす馬超を、馬岱もただ見ているしかできなかった。

洛陽を出た時、馬超がこの殺戮ゲームに乗ったように見えたのは気のせいだったのだろうか?
今の馬超からは、覇気が全く感じられない。
時折馬岱にだけ見せる穏やかな表情だけが全てである。
殺戮を望む者たちから、この無気力な従兄弟を守らなければ。
今の馬岱はむしろ、そんな使命感に駆られていた。

馬超はゆっくりと腰を下ろしザックに手を入れた。
やはり疲れてきたのかもしれない。
水が飲みたいのかもしれない。道中採った果物もあったはずだ。
馬岱も追従するように腰を落ち着けて、ザックを漁り食べ物を探す。
馬超はザックから取り出した物体をふ、と背後に投げた。

「なッ……!」
突然の馬超の行動に、高順は驚愕する暇も与えられなかった。
とっさに目を庇い、地に伏せ転がるのが精一杯だった。
訳が分からないまま、第二撃が高順を襲う。
熱かった。


30 :3/7:2006/10/11(水) 01:17:36
「ア、アニキ!」
馬超の行動に驚いたのは馬岱も一緒である。
ここまで襲ってくる爆風に僅かに眉根を寄せながら、
馬超はもう一つ手榴弾を放った。
全く躊躇いのないその動作は、鳥に餌を放るような仕草だった。
誰かいる。影が動いた。人がいるのだ。馬超は人を殺そうとしている!
止めなければ。
殺さなければ殺される。そんな世界律など忘れて、馬岱はただ止めなければ、と思う。
だが馬岱の手は馬超に届かない。
ふわ、と躍り出た馬超の背中が、何故かとても脆いものに見えた。
かつては何よりも頼もしいと思っていた従兄弟の背中が。

とうの昔に克服したはずの感情が高順を支配していた。

恐怖。

高順が殺戮の予感に酔っていたことは事実である。
あの二人。どちらがより強い武人だろうか。二人がかりでこられた場合どうか。
馬超と馬岱を値踏みしながら、戦いの前の高揚感を噛み殺していた。
だが馬超のあまりに自然な動作。
ザックに手を入れたのも、食べ物でも取り出すようにしか見えなかった。

高揚感であれ嫌悪感であれ、戦う時―――言ってしまえば、人を殺す時―――人の精神とは揺らぐものだ。
気配を気取られぬよう、普通はそれを押し殺す。

31 :4/7:2006/10/11(水) 01:18:42
だが馬超からは押し殺した殺意さえ感じられなかった。
歴戦の武人であるが故に、高順はその事実に戸惑う。
例えば呂布。彼が放つ殺気は並の兵卒ならそれだけで怯むほどの威圧感がある。
そして迸る殺意のままに武器を振るう。殺気が肌に届く前に、戟が首に届くのだ。
圧倒的な存在感。凄まじい速さ。それらが呂布の強さの一端を担っていると言えよう。
今の馬超はそれと真逆だった。
威圧感もない。殺意もない。ただ不気味な虚ろだけがある。

全身に火傷を負いながらも、どうにか迎え撃とうとする高順。
滑るように近づき、馬超はMP5の弾をばらまくように連射する。
牽制のためなのか、殺すつもりで撃っているのか、それすらもわからない。
無表情のまま、機関銃の反動に髪を揺らす馬超はまるで壊れた人形のようだ。
脚が熱かった。だが高順は倒れない。
混乱し、恐怖する中でなんという精神力だろう。
武人の誇り、あるいは戦士としての習性が今の高順を支えている。

陥とせぬ陣はない、と讃えられた高順。
陣とは、ただ圧倒的な力で叩き潰せばよいというものではない。
陣を読み、弱みを突き、崩す。
陥陣営と呼ばれる所以は、ただ武力のみにあらず。その眼力にある。

32 :5/7:2006/10/11(水) 01:19:35
しかし。
この男の気が、殺意が、陣が―――読めない。

天下無双と謳われた呂布。最強の武人とはああいう男だと思っていた。
しかし、この男は。
呂布とは対極にありながら、等しく強い。
……だが。“これ”は……“人”なのか?
その感覚が、高順に恐怖を覚えさせる。

人を殺す時にも、虫を潰すほどにも動揺しない。
息をするように、歩くように、人を殺せる。
それが、『最強である』ということなのか……?


馬超は玩具に飽きた子供のようにMP5を放り捨てた。
腰に括りつけていたダガーを抜き、す、と動く。
高順は狼牙棍を強く握りしめる。あまり感覚は無かった。
しかしあれほどの爆撃でも武器を手放さないとは。
自分でも少し呆れた。きっと自分は骨の髄まで戦人なのだろう。
ならば最期まで、そうありたい。
残された全ての力で、武器を振るう。

ふわりと飛び込んできた馬超。わずかに身体を捻り、狼牙棍をかわす。
逆手に持ったダガーで高順の喉笛を抉る。
絶叫は声にならない。


強さとは何なのか?
“これ”が最強の武人の行き着くところなのか?
ならば、今まで自分がしてきた戦いは全て児戯に過ぎないのか?
問いかけの中、高順の意識は沈んだ。

33 :6/7:2006/10/11(水) 01:24:17
男は倒れた。
馬岱は凍り付き、棒立ちになっていた。

……あれは、“何”だ?

馬超の姿をした“何か”は、ダガーの血を振り払い鞘に納めた。
男の持っていた武器とさっき放った自分の銃を拾い上げ、こちらへやってくる。
ひ、と喉に悲鳴が貼り付く。
わずかに後ずさる馬岱。だが背を向けて逃げることは出来なかった。
端正な顔立ちも、薄い色の瞳も、優雅な所作も、全部そのままだったから。
例え返り血に染まっていても。
自分も殺されるのだろうか、と妙に静かな気持ちで馬岱は待っていた。
馬超が来た。
「よかった」
馬超の言葉に、馬岱は顔を上げる。
「よかった。岱が無事で」
馬超は笑っていた。初めて、空虚ではない瞳で。
ああ。
馬岱はその時自らの罪を悟った。

俺の、せいなのか。

馬岱はあの時馬超から逃げた。
乗り気かもしれない。自分を殺すかもしれない、と。
そんなことなど、あるはずはなかったのに。
いや。
アニキにだったら、アニキのためだったら、殺されても、よかったのかもしれないのに―――。

「アニキ……」
涙が止まらなかった。
「岱……。どうして泣くんだ?」
僅かに困惑した様子で馬超は言う。

34 :7/7:2006/10/11(水) 01:26:00
幼い頃よくそうしてやったように、馬超が馬岱の髪を撫でる。
血塗られた手が馬岱を汚す。
懐かしいその仕草と、噎せ返るような血の匂いに馬岱はまた涙する。
「アニキ……。
 帰ろう、西涼へ……。」
振り絞るような声で馬岱は言った。

もう戻れない。
姜維たちのところへも、諸葛亮のところへも。
今はいいかもしれない。しかし、いつまた馬超が『馬岱のために』不意に人を殺すか、わからなかった。
これ以上、『馬岱のために』と馬超が血で汚れていくことが、耐えられなかった。
西涼が禁止エリアであることは、もちろん馬岱は知っている。
馬超は知っているのか、知らないのか、興味がないのかわからない。
ただ、懐かしい故郷の名を聞いて、嬉しそうに目を細めた。
「そうだな……。
 帰ろう、岱」
あの時、自分が見捨てなければ、こうはならなかったのかもしれない。
自分が壊してしまった、綺麗な従兄弟。
「帰ろう、故郷へ……」
二人の、死ぬための旅が始まった。



【高順 死亡確認】

<<馬家の従兄弟/2名>>
馬超【高威力手榴弾×5個、MP5、ダガー、ジャベリン、狼牙棍】馬岱【シャムシール、ロープ、投げナイフ×20】
※禁止エリアである西涼へ。現在地は荊州。
※諸葛亮の捜索と<<めるへんトリオ>>らとの合流は断念しました。
※馬岱のアレルギー症状は落ち着きました。

35 :>>34訂正:2006/10/11(水) 02:07:21
<<馬家の従兄弟/2名>>
馬超【高威力手榴弾×5個、MP5、ダガー、ジャベリン、狼牙棍】馬岱【シャムシール、投げナイフ×20】

※馬岱はロープをもう持っていませんでした。失礼しました。

36 :1/11:2006/10/11(水) 21:12:21
苦しかった。
息が出来ない。
目を開ける。
だれかが。ぼくの。くび。しめて。る。

日が傾いても張飛は帰ってこなかった。
探しに行くという案もあったが、
集合場所を離れてしまっては行き違いになるかもしれない。
禁止エリアが増え移動も盛んな今、単独行動は危険だ。
彼らはその場に留まることを余儀なくされ、今、交代で身体を休めていた。
「しかし劉禅様に見張りを任せて、のうのうと自分が休むわけには…」
「子龍、今はそんなことを気にする時ではないでしょう?
 お前も身体を休めておいたほうがいい。
 それに、私はいつまでも小さな阿斗ではないよ」
そういって劉禅は笑った。つられて趙雲も笑ってしまう。
劉禅はそう言うが、その人懐こい笑みは幼い頃と変わらないように思えた。

その趙雲は剣を抱いたまま木にもたれかかり静かに寝息を立てていた。
少し離れたところで魯粛が丸くなって眠っている。
そして劉禅の手の下で、曹幹がもがいている。

頸動脈を探るようにしながら、劉禅の手が曹幹の柔らかな首を絞めあげる。
武人は結構簡単にやっているように見えたが、意外と難しいものだ。
劉禅は淡々とそんなことを考える。

37 :2/11:2006/10/11(水) 21:13:12
両手で絞めたほうが早く殺せるのだろうか?
劉禅の左手が伸びる。

くるし、い。
どこか楽しげな劉禅の表情が曹幹の瞳に焼き付けられる。
何かを掴もうとするように曹幹の手が揺れる。
その手の先に、煌めく星。

『私は、星になる』
お前を、守る。
『お前は、生きなさい』
いつか、私が、星になっても。
『…生きなさい』
『生きなさい』

空気を求め喘ぐ曹幹の唇が、声無きままに『とうさま』と戦慄いた。
その動きはただもがき、震えているようにしか見えない。
だがそれはそれは確かに言葉であり力であった。
曹幹の無垢な瞳に、輝く空の星が写っている。
両手でさらに強く絞め直そうと、劉禅の手が僅かに弛む。
「あああああああああああ!!」
それは反撃の狼煙であり、生きる意志の表明であった。
凍りついていた声の瞬間的な発露。
曹幹は無我夢中で劉禅の手を跳ね退け死に物狂いで走る。

「どうしました?!」
曹幹の叫びに二人とも目を覚ました。
逃した。あの子供は声を上げた。本当は喋れたのか?話すだろうか、首を絞められたと?
様々な動揺を抑えながら劉禅は言った。
「ああ、どうも怖い夢でも見たようで、急に叫び声をあげて…」

38 :3/11:2006/10/11(水) 21:14:07
話すうちに劉禅は落ち着きを取り戻していた。
そうだ。何を言われようとも所詮子供の戯言、悪夢だと片づけてしまえばいい。
「私、探してきます!」
趙雲が駆けだした。
長坂で自分を救い出したように、またあの厄介な子供を拾って戻ってくるのだろうか?
劉禅は心底、うんざりした。

趙雲が曹幹を見つけたとき、曹幹は文官風の男二人と共にいた。
「その子を離せ!」
趙雲は吹毛剣を抜く。
曹幹の背を撫で宥めていた男はびくりと身を震わせしっかりと曹幹を抱き寄せた。
もう一人の男は特に動揺した様子もなく、さらりと言った。
「怯えてる子供の前で無闇に剣を抜くもんじゃないぜ」
確かに、助けに来た筈の曹幹でさえ怯えて、むしろ文官のほうにしがみついている。
「…失礼した」
趙雲は剣を納め、名乗り、曹幹を返してほしいと伝えた。
「…そんなマニアックなプレイが好きな奴に子供を渡すってのは、ちょっとな…。」
今にもはちきれそうなナース服をちらっと見て、男はげんなりとした表情になった。
最近はこのピチピチ感にすっかり馴染み、
もしかしたらちょっとクセになってるかもしれない自分を自覚して趙雲は少し慌てる。

39 :4/11:2006/10/11(水) 21:15:00
「教育上宜しくないという点ではあなたも似たようなものですよ郭嘉殿。
 立派な方だという評判はあちこちから伺っております、趙雲殿。
 何か深ーい事情がお有りとお察しいたしました」
微妙なフォローを入れてくれた男は陳羣と名乗った。
そして郭嘉と呼ばれた男。
天才軍師として、優秀な文官としてよく名を知られた二人である。
そして趙雲が素晴らしい武将であることもまたよく知られている。
同陣営であっても、顔を合わせ話す機会があまりない者もいる。
よく噂を耳にし、些細な情報でも必死で集めた敵陣営の名将の方が
時に近しくよく知っているような感覚があるから、皮肉なものだ。
「人の性癖についてとやかく言う気はないけど、この子のことは俺らに任せない?」
「いや、決してこの服装は私の趣味では…!」
「ああもう、混ぜっ返さないで下さい郭嘉殿!」
陳羣はしゃがんで曹幹の瞳を見つめて言った。
「曹幹様、私は陳羣と申します。覚えておいででしょうか?
 陛下…曹丕様は、私を『長文』と親しく呼んで下さいました」
曹丕の名を聞いた途端、曹幹の瞳が大きく見開かれ、
大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
陳羣にしがみついて曹幹は泣きじゃくる。

40 :5/11:2006/10/11(水) 21:15:47
あの子が帰る場所はここなのかもしれない。
趙雲は大きな安堵と少しばかりの寂しさを抱きながらその光景を見ていた。
俺はその頃にはとっくにくたばってたから良く知らないけど、と前置いた上で、
郭嘉は曹幹が曹操の末子であること、
幼いうちに父母を亡くしたために長兄である曹丕が曹幹の面倒を見ていたこと、
陳羣は曹丕が親しくしていた四友の一人であり、
曹丕が可愛がっていた曹幹とも若干面識があることを説明してくれた。
「参加者リストがあるだろ?そこに名前が載ってるはずだ」
郭嘉に指摘され、趙雲は初めてリストの存在を思い出した。
確かに『曹幹』と書かれている。他に幹、という名の参加者はいないようだ。
「そうですか、曹操殿の…。
 それならば、私よりも曹操殿の臣下である貴方がたにお任せした方がいいんでしょうね…。」
ほろ苦い寂寥感を含んだ視線で趙雲はもう一度、曹幹を見やる。
陳羣の事を思い出したのか、或いは曹丕の名を知る人間に出会って安心したのか、
曹幹は陳羣の服をしっかりと握りしめている。
そんな曹幹の背を撫で、着物の襟を整えてやろうとして、陳羣はふと気付く。
「これは…賈ク殿の…?」
陳羣の呟きに郭嘉は片眉を吊り上げる。

41 :6/11:2006/10/11(水) 21:16:36
間違いない。陳羣は曹幹が羽織っている着物に見覚えがあった。
賈クが軒下で脱いでいた、姿隠しの衣だ。
郭嘉は唐突に言った。
「あんた、劉禅って奴と一緒にいるのか?」
趙雲は驚いた。自分は同行者について一言も喋っていない。
「もしかしたらあんたが劉禅って奴を殺したのかもしれないけど、
 その割にゃあんた、血で汚れてないからさ。
 あんた、劉禅って奴に担がれてんの?」
「何を馬鹿なことを!これ以上阿斗様…劉禅様を侮辱するならば容赦せん!」
趙雲に本物の殺気が閃いた。凄まじい気圧が渦巻く。
しかし郭嘉は怯まない。
瞳に煌めく知略の鋭さは、研ぎ澄まされた殺意に勝るとも劣らない。
「その名簿を見ながら聞いてくれ。
 俺たちはその中の司馬孚、賈ク、劉禅って人物に出会った」
郭嘉は自分と陳羣のこれまでを趙雲に語った。
司馬孚が体験し、賈クに打ち明け、賈クが陳羣に話した出来事を。
散らされた舞姫の命。司馬孚の決意。その死。
劉禅との出会い。そして賈クの裏切りを。
「そんな話が信じられるか!何を証拠にそんな事を…」
あの劉禅が女性を手に掛けたなど、趙雲には信じられなかった。
「楽の入った小箱」
郭嘉は短く答える。

42 :7/11:2006/10/11(水) 21:17:49
「その貂蝉って女の子の支給品だそうだ。そいつ、持ってない?」
…確かに、持っていたように思う。
だが、殺して奪い取ったとは限るまい。
自分の今着ている服のように、譲られることだって…。
「賈クが司馬孚を殺した。俺たちは逃げ延びた。
 劉禅と賈クの二人が残った。
 最初から司馬孚と俺たちを殺すって事で話がついてたんだろうな。だが」
無意識にリストに目を走らせる趙雲。一応、死者にチェックは入れている。
今挙がった名の中で、劉禅の名前だけに×印が付いていない。
「賈クは死んだ。劉禅は生きている。
 そして劉禅は賈クの支給品を持っている」
曹幹に着せてやるためにザックから光学迷彩スーツを取り出した劉禅。
その時は、やはり優しいお方だと思った。
だが…それは、どこで、どうやって手に入れた?
もしかしたら…。
…もしかしたら…?
郭嘉の淀み無い弁舌は趙雲を揺さぶる。
「そこまで難しく推理しなくても、簡単だろ?
 一個くらいなら、偶然手に入れたってことも有りうるかもしれない。
 けど支給品を複数持ってるってことは」
郭嘉はきっぱりと言い切った。
「殺して奪い取ったってことだよ」

郭嘉の推理には多分に推測が含まれている。

43 :8/11:2006/10/11(水) 21:19:00
だが劉禅が油断ならない人物であるということに変わりはない。
恐らく、『あの』賈クと化かし合いをし、生き延びた男だ。
そして自分たちは、多分その現場に最も近しい場所にいた。
次に遭遇すればきっと殺される。
しかし、今の自分たちにあるのは目くらましの爆弾が一つだけ。
ならば己の最強の武器である、この知略と弁舌を揮うまで。
郭嘉の脳裏にぼんやりとかかっていた霞は、
北を離れるほどに鮮やかに晴れ冴えていく気がする。

「…劉禅様は、人を、殺したのかもしれん。
 だがそれは粗暴な輩に襲われて、止むを得なかったのかも…」
「これ」
趙雲の言葉を遮り、郭嘉はザックから閃光弾を取り出して陳羣を顎で指す。
「こいつの支給品だよ。これも、劉禅は持ってるはずだ。
 ちなみに劉禅自身の支給品は、バナナって果物だってさ」
要するに郭嘉は、自分たちが劉禅に襲いかかるような
血に飢えた人間に見えるか?と問うているのだ。
さらに、他に様々な果物が自生している現状で
バナナを奪うためだけに襲いかかるような愚か者に見えるか?とも。

この二人と劉禅、どちらを信じるか?
ほんの少し前までなら、躊躇い無く劉禅を選んだだろう。
だが趙雲は今、確かに郭嘉の言葉に揺れ動いていた。

44 :9/11:2006/10/11(水) 21:22:41
その揺れは今は気が付かぬほど微かでも、いつか小さなヒビを作り、
もしかしたらそれはやがて――。

「…貴方は、どう思われていますか?」
趙雲は陳羣に水を向けてみる。
陳羣の腕の中では、曹幹が安心してその身体を彼に委ねきっている。
あの無垢なぬくもりが信じるのならば、その意見には耳を傾けてみようと思った。
「…私は、郭嘉殿のような戦略眼は持ち合わせてはいませんが」
郭嘉の“未来を見通す瞳”のような派手さはないが、
陳羣もまた曹操が認めた“真実を見る瞳”を持っていた。
それは、人を見る眼。誠実と不実を見抜く眼だ。
あの小箱の楽に聴き惚れていた安らかさは本物だっただろう。
だがその前後の、慇懃なやりとりの中笑みを形作っていたあの目は――。
「彼は信用ならない人物だと、私は思いました」
「……そうですか……。」
長い長い沈黙の後、趙雲は吐息と共にそう言った。
だがやはり、趙雲には信じられない。

あの小さな阿斗様が。自分をあんなに慕ってくれた阿斗様が。無邪気な阿斗様が……。

「別に信じられないんだったらそれでもいいさ。
 あんたにどうこうしろとは言ってないし」
趙雲の内心の葛藤に答えるように郭嘉は言った。

45 :10/11:2006/10/11(水) 21:23:57
「ただ俺たちは劉禅を信用できないし、
 それにはそれなりの理由や根拠があるって事。
 それだけわかってくれりゃいいよ」
趙雲は辛そうに、そしてゆっくりと、肯いた。

趙雲は二人と出会ったことは劉禅には伏せること、
少し曹幹を休ませたいので、なるべく今出会ったこの辺りには
近づかない、近づかせないようにする事を約束し、剣を曹幹に返して彼らと別れた。

趙雲の足取りは重い。

『私はいつまでも小さな阿斗ではないよ』

頼もしく聞いたその言葉が、今は複雑な色を伴って、響いた。


「曹幹様、お身体が冷えますよ。中にお入り下さい」
民家を見つけた郭嘉たちはひとまずここに落ち着くことにして、
陳羣はあの時賈クに教わった糸を使った仕掛けを家の周りに仕掛けていた。
複雑な思いと共に仕事を終えると、曹幹はじっと空を見上げ立ち尽くしていた。
「あ……星が……。」
曹幹の視線の先には、見事な美しい星があった。
多分、昨日まではなかった星だ。あんな見事な星を見落とす筈はない。
未だ言葉を失っている曹幹は、どこか必死な様子でその星へと手を伸ばす。

もちろん、届くはずもない。



46 :11/11:2006/10/11(水) 21:27:31
そんな曹幹の様子と何故か懐かしさを感じる星の輝きに、陳羣の瞼が熱くなる。
「曹幹様……。今は、どうぞお眠り下さい……。」
震える声を励まして、陳羣は曹幹を促した。
陳羣の手は暖かい。
曹幹はもう一度振り返った。星は、やはり変わらず輝いている。
でも、もう決して届かない。

『遠い輝きよりも、こうして触れあえる距離の方が得難いものなのだよ』

曹幹は知る。

とうさまがおしえてくださったことは、ほんとうだった。



<<皇帝とナースと外交才能零/3名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品】
魯粛【圧切長谷部】
※趙雲は再合流しました。劉禅にやや疑心?
※現在冀州南部。 張飛を待っています。

<<不品行と品行方正と忘れ形見/3名>>
郭嘉[左脇腹負傷、失血、発熱]【閃光弾×1】
陳羣【なし】
曹幹[失語症]【光学迷彩スーツ(故障中)、吹毛剣】
※現在冀州南部、劉禅たちの現在位置より東側の民家。しばし休息。
※賈クに教わった、誰かが近づくと小石が落ちる罠を張ってあります。

47 :12/11 すまん入らんかった:2006/10/11(水) 21:28:46
@張飛【鉈、桃三個】
     VS
<<カミキリムシとオナモミ/2名>>
呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル】
諸葛瑾【なし】
※冀州南部で交戦中。位置は劉禅たちより南。

48 :臥竜の家にて 1/7:2006/10/12(木) 01:40:25
「よぉ、士元!」
「…うわ、ほんとにいやがったよ、こいつ」
劉封・ホウ統・蔡文姫の3人が臥竜岡の諸葛亮の家に着いたのは、4日目の夕暮れであった。

何故孔明が若いのか。何故この家に留まったままだったのか。
聞きたいことは山ほどあったが、出された食事の前に3人は沈黙する。


根菜たっぷりの汁。
竹の子と鶏の煮物。
鳥の臓物と卵を使った炒め物。
そして、白い飯。

「こないだ来た奴もまあ、すごい食いっぷりだったが」
諸葛亮は茶をすすりながら一心不乱に丼を抱える3人を眺める。
「お前らも負けず劣らずだな」
「まあ、ング、ここんところくな、モン…食って、なかったからな。」
飯をかきこみながら、ホウ統が答える。
"こないだ来た奴"も気になったが、今は劉封がすごい勢いで摘んでいる煮物を奪う方が重要だ。
「ああ、風呂も沸いてるから順番に入って来いよ。お前さんがた、えらい素敵な臭いがするぜ」
ニヤニヤと諸葛亮が言うのを聞いて、蔡文姫が真っ赤になる。
男2人よりも胃が細い分、蔡文姫の食事は終っていた。
「こいつらまだ当分食いそうだから、お嬢さん先に行ってこいや」
諸葛亮に促され、蔡文姫は先に風呂場へと向かう。

49 :臥竜の家にて 2/7:2006/10/12(木) 01:41:45
「……」
そして残される男3人。
「……おい」
「あ?」
「覗きたいとか思ってるな、孔明」
「そりゃお前だろ、士元」
(…この2人ってこういう人だったのか…)
劉封は無言で汁を啜った。


蔡文姫が体を擦ると、手ぬぐいは真っ黒になった。
必死に泥や垢をこそげ落す。そういえば3日も風呂に入らず山道を歩き詰めだったのだ。
生前の生活を思うと、信じられないことだった。
体を洗ってから、ゆっくりと湯船に浸かる。
ほう、と息が漏れる。湯の感触が気持ちよくて、口の辺りまで沈んだ。
こうしていると、過酷な遊戯の最中とはとても思えない。
やはり、こういったことが人間には重要なのだなと思う。
暖かい食事、清潔な体。屋根の下での生活。
そんな何でもないことが、得がたい幸せなのだ…。

50 :臥竜の家にて 3/7:2006/10/12(木) 01:42:40
ぱき

「…?」
と、聞きなれぬ音が浴室に響いた。なんだろう。

ぱき…かちん

音の元に気付き、戦慄が走る。
これは…この音は
首輪から、している。
どうして?何が、いったい…。
悲鳴を上げたい気持ちを抑え、おそるおそる首輪に手をあてる。
…首輪が、緩んでいる。首輪と首輪を繋いでいる箇所に、僅かに隙間が出来ていた。
どうして?!一体何が―――
騒ぐ心臓を押え、自分が何をしたか考えを巡らす。
変化が起こる、何か…何が…

……湯?
……………熱?

51 :臥竜の家にて 4/7:2006/10/12(木) 01:44:08
「…で、この部分が読めないんだよ」
「あ〜…この字形、どっかで見たことある」
「本当か?」
「読めんが」
「なんだよ」
食事の後、諸葛亮とホウ統は、今日までの出来事を話しあい、解読不明な書物に向き合っていた。
劉封は、その輪に混ざれるはずもなく、ただ満腹の腹を抱えて床に転がっていた。
いいのかな…こんなんで。
そうは思いつつも、張り詰め続けた日々を思うと、この心地よい誘惑からは逃れられそうもない。
「…お先に失礼しました」
そこへ蔡文姫が戻ってきた。
「おう、さっぱりしたかい?」
「はい、ありがとうございました」
蔡文姫が諸葛亮に向けて微笑む。その、どこか陰のある笑顔にホウ統が眉をひそめた。
「どうかしたのかい?」
「…驚かないで、下さいね」
そういって、静かに自分の首輪を指差す。
「…これは…」
「湯船に浸かったら、こうなりました」
首輪はあと少しで外れそうなほど、継ぎ目が緩んでいた。
「もしかして、このまま外せるんじゃ…?!」
「で、それを試して文姫さんの首がふっ飛んだら?」
興奮した劉封をホウ統が諌める。
「構いませんわ。…成功すれば、皆様が助かるんですから」
「馬鹿言うんじゃない」
「うん、失敗したら死ぬってなこと、試すもんじゃない」
諸葛亮がホウ統に続く。

52 :臥竜の家にて 5/7:2006/10/12(木) 01:46:50
「多分…他にも何かいるんだろうなあ。」
蔡文姫の首をしげしげと眺めて諸葛亮が言う。
「なんか、首輪の継ぎ目に小さい穴が見える。ここになんか入れるんじゃないか?」
確かに首輪と首輪の間を繋ぐ留め金に、小さな穴が開いていた。
「鍵か?」
「そんなもんじゃないか。でなきゃ…油とか」
「湯では、何も起こらなかったんですよね?」
「はい…水ではないと、思います」
うーん、と考えこむ一行。
「…ダメだ、手がかりが少なすぎる」
一番初めに音を上げたのは、諸葛亮だった。
「大体何か試すにも分が悪すぎる。失敗したら爆発、だろ?お嬢さんもそうだが、試す方も命がけじゃ割にあわん」
降参、というように肩をすくめる。
「お前、相変わらずだなあ…もうちょっとなんとか考えてみろよ」
「無理なもんは無理だろ。情報が足りなさ過ぎる」
「じゃあ、その情報を探せばいいんですよね?!」
劉封が瞳を輝かせる。
「…そんな情報が、あるんでしょうか…」
「あるとすれば誰かの支給品かな。書物とか」
先ほどまで囲んでいた諸葛亮伝を摘んで、ホウ統が言った。

53 :臥竜の家にて 6/7:2006/10/12(木) 01:49:00
諸葛亮伝の中には読めない物が混じっている。
異国の言葉で書かれた諸葛亮伝だと思っていたが、もしかしたら全く違うことが書かれているのかもしれない。
そうでなくても、もしかしたら首輪に関する書物を支給された人間がいるかもしれない。
「まあ、持ってる奴が死んでる可能性もあるが」
諸葛亮の言葉に一同は沈黙する。しばらく、重苦しい空気が流れた。
「…首輪が外れりゃ、そりゃいいだろうが」
沈黙を破ったのは、ホウ統。
「やはりまずは劉備殿と合流して、今後を考えた方が良いと思う。
首輪に気をとられて、他が疎かになるんじゃ本末転倒だ」
「そう…ですね」
「劉備に合流すりゃ、なんとかなるのか?」
胡散臭げに諸葛亮が尋ねる。
「かもしれない、と思わせる人なんだよ」
「ふうん…」
諸葛亮はどうにも腑に落ちない、という様子だった。
「…義父上をそんな風に言う孔明殿って、新鮮ですね」
「そうか?」
「ええ。僕が知る孔明殿は、義父上に心酔されてましたから」
「…心酔…ねえ…」
ますます胡散臭そうな顔をする。
「まあ、会ってみりゃいいんじゃないか。劉備殿が、お前がまた心を動かされる人物なのかどうか」
「…う〜ん…そうだなあ…」
ホウ統までがそう言う人物。…確かに、会ってみたいかもしれない。

54 :臥竜の家にて 7/7:2006/10/12(木) 01:51:37
「…ところで、この首輪…元のように留めるのは、問題ないのでしょうか」
「え」
確かに首輪は緩んでいて、今にも外れそうだ。
何かにひっかけてしてしまって、無理矢理外すようなことになってしまったら…。
とはいえ、自然とそうなった物を元に戻すというのも…どうなんだろう。
「…一応そのままにしておこう。危険だし」
「そ、そうですね」
緊張した面持ちで蔡文姫が答えた。
「劉封殿、私達も首輪が湯船には浸からないように注意しよう」
「あ、はい」
ふと、そこでホウ統はおかしなことに気付いた。
「…孔明、お前は今まで風呂に入っても何も起きなかったのか?」
「あー、俺、ぬるい湯が好きだから」
「…………」

<<親子の面影+水鏡門下生/4名>>
蔡文姫[首輪が緩んでます]【塩胡椒入り麻袋×5 無花果×6】
劉封【ボウガン・矢×20、塩胡椒入り麻袋×5】
ホウ統【ワイヤーギミック搭載手袋、塩胡椒入り麻袋×5】
諸葛亮【諸葛亮伝(色んな諸葛亮が満載。諸葛亮と直接関係ない事柄については書かれていない)】

※現在臥竜岡。夜が明けたら劉備を探すために移動を始めます。益州へ。


55 :1/7:2006/10/12(木) 19:17:35
静かに星を見ているその文官の憂い顔を、孫権はぼんやりと見ていた。
「見事な星空ですよ、孫権殿」
その男に招かれるままに、孫権は並んで立ち、窓から空を見上げる。
甘寧が連れてきたこの男は荀イク、字を文若と名乗った。
その名は孫権も知っている。曹操が「わが子房」とまで言った懐刀。
そして晩年、その曹操と悲しいすれ違いがあったらしいという事も。
長く共にあった者と違えてしまった道。
二人の境遇は少し似ていた。

どうも自分の死後何かあったらしい孫権はあまり呉将と会いたがっていない。
しかし孫権を一人にしておくのは心配だった。
城の周囲を見回っていた時に偶然出会った荀イクは、
やはり魏の人間でありながら魏の人間と会いづらいという点で
孫権の気持ちを判ってくれるかもしれないという期待があった。
別に戦力にはなってくれなくてもいい。
孫権様の敵は俺がぶっ潰す。
柔和な笑みのこの男が、少しでも孫権様の沈んだ心を慰めてくれれば。
そんな思いから、甘寧は荀イクに孫権様と一緒にいてくれ、と頼んだ。

その甘寧は北に人が集まっているようだと荀イクから聞き、喜び勇んで出かけていった。
今は荀イクと皖城で二人、こうして星を眺めている。

56 :2/7:2006/10/12(木) 19:19:42
「確かに…見事な星空だ」
特にあの一際大きく、優しい輝きの星。
それが特別、孫権の目を惹く。
「どうでしょう?星見酒でも、一つ」
「酒か…」
卓の上にはこの城に豊富に備えられていた食料がある。
自分はあまり酒癖が良くないらしいということは知っていたが、
肴があり、美しい星空があり、やるせない思いがある。
孫権に、荀イクのその魅惑的な誘いを断ることがどうして出来ただろう?

酒の力が背を押すままに、
孫権は血を吐くような思いで晩年の自分の行いを懺悔していた。
そう、それは懺悔だった。
星空を背景に静かに微笑む荀イクには神々しさすら感じられる。
その淡い微笑の前にひれ伏すように、孫権は罪を吐き出し続けた。
「…死した者の魂が星になる、という伝承をご存知ですか?」
泣き濡れた孫権の告白が一段落したところで、荀イクは口を開いた。
「私は、それは真実だと思っています」
す、と天を指す荀イク。
孫権はまるで操られているかのようにそれを目で追う。
「聞こえませんか?」
満天の星空。まるで、吸い込まれてしまいそうな。
「星となった魂たちの、呪詛が」
「あ……」
無数の星々が輝く空。美しく見えたそれは今は歪んで―――。

57 :3/7:2006/10/12(木) 19:21:20
「あああああっ……!」
孫権は恐怖し、震え上がった。
あの星は自分が死に追いやった臣下たちか?
あれは死を賜った子か?それともかつて寵愛した妃か?
あの星は父か、兄か、母か、忠臣たちか、散っていった兵たちか?
ひしめき合う星は全て死者の顔だった。
恨めしげなそれらは憎しみでその身をぎらぎら光らせながら、
口々に孫権に恨み辛みを訴える。

 何故ですか、殿!何故判って下さらぬ―――
 私に何の罪があったのですか―――
 どうしてです、どうすればお怒りを鎮めて下さる―――
 何故こんなことになってしまったのか―――
 信じていたのに―――。

「ゆる、して……許してくれ!すまぬ……!!」
ガタガタ震えながら床に額を擦り付け、孫権は許しを乞うた。
星を、死者の怨念を見るのが恐ろしくて孫権は必死に目を瞑り下を向く。
だが瞼の裏に焼き付いた渦巻く呪詛の光は決して消えない。
「許しません」
涼やかなその声が孫権を断罪した。
孫権はびくりと大きく身を震わせる。
「許される筈がありません。
 それは、判っているのでしょう?」
涙があふれた。
判っている。許される筈がない。
甘寧だって知らないだけだ。許してくれた訳ではない―――。

58 :4/7:2006/10/12(木) 19:22:41
「ど、う、すれ、ば……」
自分の罪が許されることはない。ならばどうすればいい?
孫権はいつの間にかその姿の見えぬ声に
―――孫権が目を閉じているだけなのだが―――教えと、救いを乞うていた。
絶望と酩酊に眩む頭の中、荀イクの声だけがはっきりと響く。
いや、すでに孫権はそれを荀イクの声だとは認識していなかった。
「死になさい」
その言葉は姿の見えぬ神、王表の声として、孫権にとって絶対の真理となる。
「死んでおしまいなさい」
「こ、わ、い……」
掠れたその声は人としての本能であった。
「怖い……、死ぬのが、怖い……!」
「では、彼らに裁かれることを選びますか?」
穏やかな声は、孫権にもう一つの選択肢を提示した。
「少しずつ、少しずつ、貴方は傷つけられるでしょう。
 死んだ方がましだと思うほどに痛めつけられて、
 滲み出る赤い血と共に生命力をゆっくりと失いながら、
 それでも一息には殺されない。
 よく、一つ大きな傷があれば小さな傷の痛みは感じないというでしょう?
 もちろんそんな逃げは許されませんよ。
 貴方が育んだ不幸の数、そう、あの星の数だけ貴方は傷を負い、
 全身を痛みにひきつらせ気が狂いそうになりながら
 削がれるようにじわじわと―――」
「止めてくれ!!」

59 :5/7:2006/10/12(木) 19:25:10
星が。無数の星が孫権に牙を剥いていた。
止めて、止めてくれ、すまない、頼む、どうか―――。
「死は、怖くありません」
慈愛に満ちた神の声に、孫権の震えはぴたりと止まった。
「死は恐ろしくはありません。
 生き続けることに比べれば、死はどれほど幸いか。
 痛くもありませんよ。一瞬で終わる―――」
確かにそうだ。
永劫に続く贖罪に比べれば、死は何と幸いであることか。
「首に触れてごらんなさい」
孫権は言われるままに首に手を伸ばす。
何か冷たいものが指先に触れた。
「その首輪を引けばよいだけのことです。
 一瞬で、貴方は解放される」
そうか、これは首輪だった。
これがあれば、首を吊る苦しさも切り捨てられる痛みも無しに死ねるのだ。

孫権は神の慈悲に深く感謝する。
そして首輪を掴んで引いた。



荀イクは微笑みながら吹き飛んだ孫権の首を見下ろしていた。
逆賊の首だ。滅茶苦茶に切り刻んでやろうかと思ったが
荀イクの子供染みた加虐心は、禰衡を肉塊にしたことで幾らか満たされていた。
孫権は酒に酔い、罪の意識から自殺。
甘寧に再会したらそう説明する。
止められず申し訳なかったと、済まなそうに。
孫権の右手は柘榴のように弾けている。これが自殺の証拠になる。
何一つ、嘘はついていない。そう、嘘は。

60 :6/7:2006/10/12(木) 19:27:51
今孫権を殺したり見捨てたりして甘寧に恨まれては厄介だ。
彼は大いに乗り気でゲームを面白くしてくれそうな駒だったし、
自分もまだ死ぬわけにはいかない。
孫権の死は、避けようのない不幸な事故だった。そうである必要がある。

『あんた、頭いいのか?
 頭いいなら、隆中の臥竜岡で諸葛亮って変人が野良仕事してるから、
 ついでがあれば行ってみてやってくんねぇ?
 変な本を解読したいんだってよ』
甘寧の話を反芻しながら、荀イクは孫権の所持品を漁る。
次は荊州へ行ってみようか。
防弾チョッキを服の下に着込み、日本刀はひとまず大きな袋に納め
トカレフの具合を確かめ懐に隠し持つように仕舞い込む。
そして何かの箱。荀イクは何気なく蓋を開ける。


その箱は、空っぽだった。


荀イクの瞳が揺れ、潤み、涙の滴が頬を伝う。
荀イクはその空箱を床に叩きつけ粉々に壊そうとした。
だが、出来なかった。
叩き割る代わりに、荀イクはその箱をそっと抱きしめる。
無二の宝のように大切に、優しく。

 …そう…そう、さま……。

誰にも聞こえない、唇だけでの微かな呟き。
荀イクは空っぽの箱に縋るようにしながら、ただ静かに啜り泣いた。

61 :7/7:2006/10/12(木) 19:28:47

【孫権 死亡確認】

※<<呉にある二人>>解散。甘寧はピンユニット化。

@荀イク[洗脳されている?、額に切り傷]【ガリルAR(ワイヤーカッターと栓抜きつきのアサルトライフル)、刺身包丁、防弾チョッキ、日本刀、偽造トカレフ、空き箱】
※現在地は皖城。荊州の臥竜岡へ。

@甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣、コルト・ガバメント、点穴針、諸葛亮の衣装】
※現在地は皖城より北。さらに北へ向かっています。

62 :Reminder Of The Past 1/6:2006/10/15(日) 17:39:55
泣いたら駄目だと自分に言い聞かすのだが、苦しそうな姿を見ていると自然に涙が浮かぶ。
元々感受性の強い方ではあったが、その実どこか達観して冷め切った己が存在した。
長かった人生で泣くことなどほとんどなかった。ましてや人のためにだなんて!

手を握ると、弱々しい力で握り替えしてくる。
額に浮かぶ汗の粒が彼の衰弱を物語っているかのようで、
もともと頑強とは言い難い小柄な身体はすっかり痩せ細ってしまっている。

陸機は両手で顔を覆った。
黙っているとネガティヴな思考に支配されそうで、
他のことを考えようと努力するのだがなかなかままならない。
「大丈夫ですよ、すぐ治るから。今、尚香殿が薬草を探しに行ってますから。
 だから、もうすぐですよ」
自分に言い聞かせるように、幾度もそう呟いた。

63 :Reminder Of The Past 2/6:2006/10/15(日) 17:40:38
風土病の類だと呂蒙は言った。
「でも、なぜ曹操殿だけ」
「彼は中原の人間だ。
 俺たち三人は南の出身で、こちらの風土に慣れているから平気だが、
 他の地域の者は、この湿潤な気候に慣れずに水で体調を悪くする者が多いんだ。
 ほら、お前は産まれて無かったかも知れんが、聞いたことぐらいはあるだろう。
 赤壁で曹軍を苦しめた風土病の話を」
高熱を発している彼のために、
孫尚香は高熱に効く薬草を採ってくると出かけて行った。
残ったふたりは交替で冷水を汲んでくる。
布巾で額を拭う。そうする度に、先程まではうっすらと瞳を開けて問いかけに答えていたものの、
今は昏睡状態に陥っていた。

64 :Reminder Of The Past 3/6:2006/10/15(日) 17:41:18
意識の無い曹操の横に、陸機は放心して座り込む。
怖い。心底怖かった。彼が亡くなったらどうしよう。
自分が死ぬ時でさえ人事のように醒めていた己とも思えぬ初めての感情に、
陸機の感情は千々に乱れていた。
「お前が狼狽えてどうするんだ。しっかりしろ」
そんな陸機に歯がゆさを覚えるらしく、呂蒙は苛立たしげに吐き捨てる。
「だって阿蒙さん! 仕方ないじゃないですか!」
「だからってお前が焦ってどうすんだ?」
「冷たいですよ、冷たい、阿蒙さんは冷たい!」
「甘えんじゃねえ!」(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・

陸機は目を見開いて呂蒙を見やった。
頬はじんじんと痛んでいるが、心はもっと痛かった。
きしきしと、何かがきしんでいるかのようで、壊れてしまいそうだ。
「お前が冷静にならないでどうするんだ。ガキじゃないなら落ち着け」
荒げた息を押さえつけるようにした呂蒙の言葉に、陸機は思わず涙を零す。
「す、すみません、俺、確かに慌てて、どうしたらいいかわからなくて、でも」

でも。
でも、怖いんです。


65 :Reminder Of The Past 4/6:2006/10/15(日) 17:43:00
わけのわからぬ世界に未練などひとつも無いと思っていた。
誰かに見つかって無惨に殺されるもよし、
行き倒れて土に還るもよし、
どうせ一度処刑された命なのだから、どうにでもなれと初めてから投げていた。
しかし、信頼出来る仲間に巡り会え、
敬愛の余り批判すら加えたことのある人に出会え、
ましてや父子のように接して貰い、別の感情が芽生えたとしか考えられないのだ。

死にたくない。
いや、死なせたくない。
初めて覚える生への執着に、陸機は戸惑い、憂えていた。


「泣くな」
「は、はい。俺、なきばせん」
「鼻水をぬぐえ、みっともない。いいか、よく聞けよ。
 この人がそう簡単に死ぬわけないだろうが。
 俺含めて殺そうと狙っていた奴が五万といたにも関わらず、
 のうのうと生き延び続けた乱世の奸雄だぞ?」
そうだ。彼は決して弱くはない。
彼ほど悪運の強い人間もいないと、文献を漁っては、呆れ混じりに感嘆したのは自分ではないか。
「そうれすね」
「目の回りもぐちゃぐちゃだぞ……まったく、お前って奴は」

66 :Reminder Of The Past 5/6:2006/10/15(日) 17:44:01
出来の悪い弟にでも向けるような優しい瞳でそう言った呂蒙だったが、
次の瞬間まるで別人のように表情を変えた。
静かにしろと片手で合図すると、目を細めて木々の向こうを凝視する。
「誰かいる」
「尚香さんじゃないんれすか?」
「違う。男だ。……いや、男でもないかもしれん。
 ……耳だ。頭に、猫の耳がついている」


向こうは未だこちらには気付いていない。
しかし、何かを求めてうろうろしていることは間違いない。

『萌えキャラは殺し尽くしてやる……』

風に乗って、彼が呟いているらしき言葉が聞こえてくる。
その不気味極まりない声を聞く度に陸機は身体を震わせた。
「逃げるぞ」
「で、でも! 曹操殿は!」
「しっ! 大声出すな。俺が背負う。この紐で身体を固定してくれ」
ここに置いていけとうわごとのように言う曹操を黙らせ、
陸機は泣きながら彼を呂蒙の背に乗せて、捻りはちまきでくくりつけた。

67 :Reminder Of The Past 6/6:2006/10/15(日) 17:45:11
「尚香殿がまだ」
「彼女は馬鹿じゃない。おまけにお前よりよっぽど強い。
 だから、大丈夫だ」
ちろるちょこきなこ味をひとつその場に置く。その横に棒で字を書いた。

 桂陽デ待ツ 猫耳 キヲツケロ

 三人は猫耳の影から遠ざかるように駆けだした。
 
 
 
<< ふたりの詩人とひとりのアモー/3名>>
曹操[高熱、意識混濁、呂蒙に背負われ中]【チロルチョコ(残り83個)】陸機【液体ムヒ】
呂蒙[曹操背負い中]【捻りはちまき】

@孫尚香【シャンプー】 ※薬草探し中
@潘璋【備前長船】 ※萌えキャラ探し中


※現在全員廬陵郡にいます。
※呂蒙、曹操、陸機は桂陽に逃げようとしています。
※潘璋は萌えキャラに出会い次第殺すつもりです。


68 :虚像の都 1/6:2006/10/16(月) 01:07:32
銅雀台から降りた于禁は奇跡と出会った。
いや、奇跡なんかじゃない。
あのスカした面に銃弾を叩き込むのは俺に与えられた当然の権利だ。
…なぁ、曹丕!!


「見て!ほら、銅雀台が見えてきたよ!」
水害の爪痕が生々しく残る街並みに顔を曇らせていた曹植だったが、
美しくも堂々たる銅雀台の姿を見て満面の笑みを浮かべた。
何があろうと揺るがず、曹植を待っていてくれた約束の地。
躍る心のままに曹植は駆け出す。
「子建様!!」
張遼の叫び。それに重なり響く銃声。

「あ…れ……?」
曹植は不思議そうに呟く。
こんなに一生懸命走っているのに、銅雀台はちっとも近づいてこない。
こんなに心が弾むのに、胸が痛くて仕方がなかった。
耳の奥でざあざあ音がする。また雨が降ってきたのだろうか?
何だか息が苦しい。咳込むと、ごぼ、と、やっぱり水みたいな音がした。

突き抜けた憎悪は悦楽に似ているのか?
于禁は幸福の絶頂にいた。
ありったけの弾を叩き込む。嬉しすぎて涙が出た。
曹丕を。曹丕をぶっ壊した!
俺だ。この俺が曹丕を殺ってやった!!
曹丕を殺したんだ!!!
幸せは眩しすぎて、于禁は泣きながら目を細める。

69 :虚像の都 2/6:2006/10/16(月) 01:08:48
腹や胸に風穴を空けた曹丕がゆっくりと崩れ落ちる。
脳天を突き抜ける快楽。性交で得られるそれなど比べものにならない。
この世で一番気持ちがいいのは人殺しだ。
于禁は身を震わせながらげらげら笑う。
いつの間にか弾が切れていた銃を放り捨て于禁は走る。

「子建様!!」
無邪気に一人駆けだしてしまった曹植。張遼の叫びは間に合わない。
降り注ぐ銃弾の雨。張遼はとっさに地に伏せる。
銅雀台を目指し駆ける曹植は鉛弾に縫い止められ静止する。
その様は翅を針で止められた蝶の標本を思わせる。
まずその膝が折れ、上体がぱたりと倒れる。
あまりにも体重を感じさせないその倒れ方。
「貴様!!」
跳ね起きた張遼。その手には歯翼月牙刀。駆ける。

曹丕の死体がぐんぐん迫ってくる。
いや、まだ息があるのか?身体は時折大きく痙攣し、
ヒュー、ヒュー、と耳障りな呼吸音がする。
しかしそれは于禁を更なる幸福へと導く音色だった。
また曹丕を殺せる!
山刀を振りかぶった于禁の高笑いがうねりを増す。

「貴様!!」
張遼は怒りのままに歯翼月牙刀を薙いだ。
狂気にどっぷりと浸っていた于禁は、
それでも武人の本能がなせる技か、反射的にそれをかわす。

70 :虚像の都 3/6:2006/10/16(月) 01:09:51
ごく浅い斬撃は刃の軌道に従うように于禁の鮮血を靡かせる。
この時、二人は初めて互いが誰であるかを認識した。
「于禁殿!何故!」
圧倒的な怒りに僅かに混じる戸惑い。対する于禁は至極上機嫌だ。
「あぁ、張遼!聞いてくれ、俺は曹丕を殺した!俺が殺してやったんだ!」
于禁は山刀を振り回しながら笑顔だった。
「でもな、また殺せるんだ。曹丕をいっぱい殺すんだよ。あはあははあはあ!!」
山刀を滅茶苦茶に振り回しながら張遼の脇をすり抜け曹植のもとへ―――
彼には、曹丕に見えているのだろう―――走る。
「何を…止せっ!!」
于禁は笑いながら曹植めがけ山刀を振りかぶる。全く無防備な背中だった。
張遼の歯翼月牙刀が真っ直ぐにそれを刺し貫く。
于禁が振り返った。
「張遼…。何故だ?」
ごふ、と血を吐きながら、ぱくぱくと口を動かす。
心底不思議そうに、于禁は問いかけた。
「おまえも、俺と、同じ……。」
于禁の最期の言葉は、そこで途切れた。


「子建様、どうか、お気を確かに…!」
曹植はもう助からない。
張遼にはそれが解ってしまった。
だが曹植本人はどこか夢を見ているような様子で
それが幸いでもあり、哀れでもあった。

71 :虚像の都 4/6:2006/10/16(月) 01:11:23
張遼は曹植を抱いて銅雀台に上った。
曹植の最期の望み、輝く都を見渡すために。
だが張遼は絶句する。
「…ちょ…りょ…」
曹植の瞳からはすでに光が失われつつあった。
「くら、くて…よく、見えない…」
譫言のように曹植は言う。
「…どう?ぼくら、の…輝く、都は…。」

水に蹂躙され、見渡す限り無惨に荒れた大地。
「…豊かな緑が広がり…」
美しい庭園はずたずたに引き裂かれ。
「…庭には、花々が溢れ…」
血の匂いに怯え、動物たちの影も見えない。
「…池の魚が跳ねる音、鳥の鳴く声が、聞こえまする…。」

張遼の偽りの言葉が、曹植の瞼の裏に輝く都を造り上げた。
誰もが笑っていた。全てが美しかった。彼の愛した楽園だった。
曹植は本当に嬉しそうに笑って、あの日心の底から願った一節を詠った。

 千秋長えに…斯くの若く、ならん…。


張遼がもう一つ、曹植についた嘘。
銅雀台に静かに横たわっていた…曹丕の亡骸。
銃弾で抉られた無惨な傷跡と穏やかな表情は不釣り合いだったが、
その二面性が彼の人らしいような気もした。
その隣に、まだ温かい曹植の亡骸をそっと横たえる。
意図的にそうしたつもりはなかったが、
まるで二人が微笑みあっているように見えた。

72 :虚像の都 5/6:2006/10/16(月) 01:12:23
荒れた地に墓を築くよりも、
あの日のままに残った銅雀台で二人を眠らせてやりたい。
墓標の代わりに、曹植が夢中になったPSPとテルミンを置く。
こんなことならば、思う存分テルミンを弾かせて差し上げればよかった。
今更のように、涙が溢れた。

『張遼 何故だ?』
于禁の言葉が、張遼の中で渦巻いている。
『おまえも 俺と 同じ』
お前も、俺と同じ…何だと言いたかったのだろう?
俺と同じ魏将なのに。
俺と同じ五大将なのに。
于禁は何と言おうとしていたのか。張遼はこう思った。

おまえも 俺と同じ穴の狢なのに。

あの時。于禁の凶弾が曹植を襲った時。
張遼は冷静にもう間に合わない、と思った。そして伏せた。
曹植を守ろうと思っていた。自分のその誓いは真実だったのだろうか?
本気で守ろうと思っていたなら、無駄かもしれぬと解っていても
身を挺して主を庇うものではないだろうか?
例え自分が死んだとしてもだ。

自分は幾度も主を変えてきた。
その都度、自分なりに忠節を尽くしてきたつもりだ。
だがそれは建前で、
結局は生き延びて戦いの場を与えてくれる所へと流れていただけなのか?
張遼は、自分で自分が解らなかった。

73 :虚像の都 6/6:2006/10/16(月) 01:13:37
関羽。そして夏侯惇。
頑ななまでに忠節を貫いた彼らは、今この世界でどうしているのだろう。
彼らは彼らのままなのか。それとも狂ってしまっているのか。

不意に、李典の蔑むような目を思い出す。
もしかすると、彼は自分のこんな性根を見抜いていたのだろうか。
彼はもし自分と会ったらどうするのだろう。
無視するか。あの軽蔑しきった視線を寄越すのか。
それとも殺すのか?
昔は苦手でむしろ避けていた彼に、今は不思議と会ってみたいと思う。

テルミンに手を伸ばす。
周瑜が素晴らしい楽を奏でてみせたからくりだったが、
張遼が手を伸ばしてもただ雑音を発するだけだった。
于禁と曹植の血で汚れた手。
結局自分は人殺ししか出来ないのだな、と思った。


【于禁 曹植 死亡確認】

@張遼【歯翼月牙刀、山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3】
※<<フライングディスクシステム搭載>>解散。ピンユニット化。
※現在地は銅雀台。李典、関羽、夏侯惇を探します。
※ガン鬼の銃(弾切れ)、PSP、テルミンは放置。

74 :誓 1/7:2006/10/17(火) 23:58:01
張飛は焦っていた。
呂布の得物は関羽の青龍偃月刀。対して張飛はただの鉈だ。
武器の質もリーチも違いすぎる。懐まで飛び込まねば勝ち目はない。
もちろんそれを許してくれる呂布ではない。
青龍偃月刀を振るう軌跡は重量感のある軽やかさだ。
ビョオ、と風を切り翻る銀の刃と朱塗りの柄は
赤く輝く闘気のように呂布を縁取り、張飛に付け入る隙を与えない。
張飛はギリ、と奥歯を噛む。
自分にももっとましな武器があれば。いつもの蛇矛さえあれば。
長く戦いを共にした相棒さえあれば、こんな糞野郎すぐにぶっ飛ばしてやるのに。
「どうした、猪。命乞いをしたくなったか?」
「ふざけんじゃねえ!!」
足を払う横薙ぎを僅かに下がってかわし怒鳴る。
蛇矛があれば、とは思う。
だが押されている現状を蛇矛がないせいだとは言わない。
それが男のプライドというものだ。
次いで交差するような連撃。もう二歩、三歩と下がり張飛は追いつめられる。
この斬撃をまともに受けたなら、こんな貧相な鉈など真っ二つになるだろう。
だから張飛はかわし続けるしかない。
呂布が疲れや隙を見せるその瞬間を待つしかない。

75 :誓 2/7:2006/10/18(水) 00:00:07
だが口元に余裕の笑みすら浮かべているこの化け物に
疲れ果てる瞬間などあるのだろうか?
隙のない布陣のように閃く赤い闘気に、綻びなど見つかるのだろうか?


日が沈み、空に星が瞬く頃になっても二人の戦いは続いていた。
刃が打ち合う音は無い。ただ轟、轟、と青龍偃月刀の唸りが響く。
じゃり、じゃり、と応えて響く張飛が地を蹴り間合いを読む音。
苦しい呼気。呑み込む唾。汗が滴る。微かな目眩。
「…つまらんな」
肩で息をし始めた張飛の様子に、呂布の余裕の笑みは失望に変わる。
「…ん、だとォ?!」
ぜぇ、はぁと苦しい呼吸の中張飛は声を荒らげる。
「そろそろ終わりにするぞ」
…ふざけやがって!
呂布の言い種に張飛の血が沸騰する。
初撃はやはり大きな横薙ぎ。避ける。
返す払い。避ける…いや、踏み込む!
殺す。絶対に殺してやる!雲長兄の敵だ!!
踏み込み、さらに踏み出そうとする張飛。
振り抜いた刃を何と片手で引き戻して突く呂布。
刃に刻まれた青龍の意匠が星を映して煌めいた。
靡く赤い刀穂は龍が操る炎のようだ。
襲いかかる龍を斜め前に踏み出しかわす。もう後退はあり得ない。
ただ進むのみ。呂布の首を狙うのみ。

76 :誓 3/7:2006/10/18(水) 00:01:36
予想外の拳!
身を僅か屈める張飛。あと半歩。だが遅い。いや、呂布が速すぎた。
唸った拳はそのまま朱の柄を掴み朱の柄はそのまま風車。
旋回は瞬間。石突きでの強烈な突きが張飛の腹を抉った。
「…ぐ…ごはッ……!!」
腑臓が揺さぶられる耐えがたい痛み。
胃液をぶちまけながら張飛は倒れる。


「…畜生…」
地に伏せた張飛が泣いている。
痛みからではない。負けた悔しさもあるかもしれない。
手を動かすだけでも腹がひきつれるように痛い。
その無骨な指の先にあるのは…桃。
張飛の懐から飛び出してしまった桃は宙を舞い、ぐしゃりと潰れていた。
「…畜生ぉおおおオぉ!!!」
腹の痛みも忘れ張飛は慟哭した。宵の空気がびりびりと震える。
張飛は悲しみのままに泣きじゃくる。
芳香も、触れた産毛の柔らかな感触もそのままだった。

しかし無惨に潰れてしまった桃は、もう元には戻らない。

「…そんなに桃が惜しいのか。食い意地の張った奴だ」
呂布は張飛がどんな思いでその桃を持っていたかを知らない。
だから張飛の行動が不可解だったし呆れもした。
取り落とした武器よりも食い物に手を伸ばしたのだから。
怒りで、張飛の目は眩んだ。

77 :誓 4/7:2006/10/18(水) 00:02:36
「てめぇにはわかんねェよ!!」
受けた傷からは考えられないような素早さで
張飛は掴んだ石を呂布めがけて投げた。
僅かに目を見開いてそれをかわす呂布。
張飛はなおも泣きながら叫んだ。

「あぁ、てめぇにはわからねぇだろうよ!!
 人を裏切ったり裏切られたりばッかりで、
 一人ぼっちのてめぇにはよォ…!!!」

泣きじゃくる張飛を呂布は黙って見ていた。
星明かりも届かない。その表情は、誰にも解らない。

「…よく考えれば、貴様一人で俺を楽しませるなど最初から無理な相談だったな」
張飛は涙とうめき声でそれに抗議した。脂汗が滲み、腹がずきずきと痛む。
「まず貴様の兄弟たちと合流することだな。
 貴様等は三人揃わなければ、戦いらしい戦いも出来まい」
何か言い返したかった。
しかしさっきの戦いと号泣で体力を使い果たしてしまった。
…三人揃わなければ?
いけしゃあしゃあと何を言ってやがる。
雲長兄を殺してその青龍偃月刀を奪いやがったくせに…
「少なくとも今はまだ、奴らには会っていないし殺していない。
 他の誰かに殺されていないかどうかまでは責任を持てんがな」
青龍偃月刀に注がれていた張飛の視線を感じて、呂布はそう言った。

78 :誓 5/7:2006/10/18(水) 00:04:11
「おい驢馬。戦いに向いている場所はどこだ」
振り返ると諸葛瑾が頭を押さえて呻いていた。
さっき張飛が投げ呂布が避けた石がクリーンヒットしていたらしい。
「…どうも大陸の端から禁止エリアが増えていくようなので
 確実に待ち合わせたいのなら、荊州のどこかがよろしいかと…」
頭をさすりよろよろと立ち上がりながら諸葛瑾が答える。
頭に受けた衝撃のせいか、まだ少しぼんやりしているらしい。
呂布は頷いた。
「貴様等兄弟に俺と戦う勇気があるなら荊州に来い。
 また雑魚どもを狩りながら俺もいずれ向かう…
 それと貴様はもう少しまともな得物を持つことだな。
 この俺と殺り合うつもりなら」
唇を歪めるように笑った呂布は、持ち手を張飛に向けてドラグノフを突き出す。
「恵んでやろうか?」
張飛は睨みでそれを突き返した。施しなど受けるつもりはない。
「その意気だけは認めてやろう」
ドラグノフを引っ込めて、呂布の笑いは少し愉快そうなものになる。
「ならば獲物を見つけ武器を奪うことだな。
 せいぜい兄弟たちの無事でも祈りながら」
呂布は諸葛瑾を肩に担ぎ張飛に背を向けた。
その背が宵闇に消えていく。
今の張飛には、それを黙って見送ることしか出来なかった。


79 :誓 6/7:2006/10/18(水) 00:15:08
「…驢馬」
歩きながら、呂布はぽつりと言った。
「俺は、いつかお前も裏切るかもしれん」

自分はいつも、一番いいと思ったことをやってきた。
自分は頭が悪いから、どうしてだかは解らない。
だがそれはいつも必ず誰かを、何かを傷つけた。そのたびに何かを失った。
沢山の、失ってもいいものと失いたくはなかったものを。

「構いませぬよ」
諸葛瑾があまりにもあっさりと答えたので、呂布は思わず彼を見上げた。
優しい光の星を見ている驢馬が見える。
ひょろひょろで一捻りで殺せそうなのに、とても大きく見えた。
「私はこのとおり、どうにも運が悪いようでしてね。
 自分だけではなく周囲の人間も巻き込んでしまうようで、
 弟には随分嫌がられたものです」
たんこぶの出来た頭をさすりながら諸葛瑾は言う。
弟の面倒臭そうな顔を思い出して、少し笑う。
「だから…、私の不運が呂布殿の足枷になるのなら、私を斬っても構わない。
 それは私の望みでもある。
 ですから、もし呂布殿がいつか私を斬っても、それは裏切りではありませぬよ」

おかしな話だ。
あれほど死にたくないと思っていたのに、
今はこの男のためなら死んでも惜しくないとさえ思える。
空を見上げて泣いていた、この子供のように純粋な男のためならば。

80 :誓 7/7:2006/10/18(水) 00:16:45
しかし今沸き上がってきているこの気持ちも、
そんな風に考えている自分も、嫌いではなかった。
小さな弟たちを連れ、暴徒の海から逃れるように彷徨った日々を思い出す。
自分の命と引き替えてでも母を、弟妹を守らなければ。
今のこの思いは、若かりし日のそんな誓いに似ていた。
…その気合いの入れすぎが裏目に出るのだと、亮にはよく言われたけれど。

「私は思うのです」

裏切ってもいい。
誰を裏切ってもいい。私のことだって裏切っても構わない。
ただ。

「呂布殿は、ただご自分を裏切らなければ、それで良いのだと」



@張飛[腹部強打、激しい疲労]【鉈】
※現在冀州南部。疲労と激痛でしばらく身動きがとれません。

<<カミキリムシとオナモミ/2名>>
呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル】
諸葛瑾[頭にたんこぶ]【なし】
※現在冀州南部。ひとまず休むところを探します。進路を変え南下予定。

81 :疑うとか信じるとか 1/4:2006/10/18(水) 05:19:51
戻ってきた趙雲が曹幹を連れていないことに、劉禅は表立って感情を見せなかった。
趙雲のほうも特に嘘をつくことなく、郭嘉らと会い、曹幹が曹操の末子であることを知り、彼らに託した事情を報告した。
もちろん、その時交わされた会話の一部始終を伝えるような真似はしなかったが。

「なるほど、そのお二方なら信用できますな。しかしそれなら、いっそのこと仲間になっていただけたらよかったのに」
「はぁ。確かにそうですが、何分私はただの武人ですし、交渉ごとは魯粛殿のようにはいきませんでした」

魯粛の実績はこの際無視して話を受け流しながら、趙雲は劉禅のほうに見る。
劉禅は会話には参加せず、空に瞬く星を眺めていた。
が、趙雲の視線に気付いたのか、すぐにこちらに向き直った。
少し寂しそうな表情で。

「それに、あちらがこちらを信用できないと思ったのかもしれませんよ?」
「ん? というと?」

一瞬、何事も無く続く会話に違和感を覚え、趙雲は固まった。
だが二人はそれに気付きもせず言葉を掛け合う。

「いえ。こんな世界ですから、誰かを信じるより誰かに信じられる方がよほど難しいのでは、と思っただけです」
「なるほど一理ありますな。ならばそこは私の分野です。他国との関係など、信頼し信頼されることが要ですから」
「ははは。では交渉ごとになれば魯粛殿にお任せですね」

自分の交渉能力が認められたことに、魯粛はの顔が自然とほころぶ。
つられて一緒になって笑う劉禅に、既に先ほどの翳りはない。
釘付けになっている趙雲を、今度は劉禅がまじまじと覗き込んだ。

「どうしたんですか? あの子がいなくなって寂しいとか? でも子龍が信じて預けた方たちなら大丈夫ですよ」

82 :疑うとか信じるとか 2/4:2006/10/18(水) 05:20:52
まっすぐに見つめられ、趙雲は己の疑心を見透かされるような気恥ずかしさで、慌ててその場を取り繕った。
そう、初めは郭嘉らの名を出すことで、何らかの反応が得られるのではないかと思っていた。
けれど劉禅は無反応に星を眺めるだけだった。
そしてようやく振り向いたと思ったら、それは寂しそうな表情で…。

(そうだ、劉禅様は寂しそうに星を眺めていらしたんだ!!
 劉禅様は郭嘉らに疑われていることを知っている。
 いや少なくとも、郭嘉らが去っていったことで気付いてしまった。
 そして、私の抱いた疑心も感じ取ってしまったのだ)

だから寂しそうなのだと、趙雲は結論付けた。
さらに今の笑顔は、その寂しさを感づかせまいと懸命に明るく振舞っているのだと。
郭嘉の言っていた経緯にしても、それは「強運」の一言で片付けてしまえる。
一瞬でも疑い、その心を傷付けてしまったことに、趙雲は激しく後悔した。

劉禅はまた星をじっと眺めている。
趙雲や、魯粛からも背を向けたその姿からは何を思っているのか窺い知ることはできないが、
もしかしたら泣いているのではないかと、趙雲は気が気でなかった。

「そういえば」
少し上ずった声で劉禅が言った。
「もう随分経つけど、叔父上は大丈夫でしょうか?」

「そ、それもそうですね。ちょっと見てきます」
「何を行っているんです。子龍は今帰ってきたばかりでしょう!」
「え、ええ。しかしそれより前は十分休ませてもらっていましたし…」
「休めるうちに休んでおくべきですよ。それに順番から言えば私か劉禅殿です」
「それに、子龍…」

83 :疑うとか信じるとか 3/4:2006/10/18(水) 05:21:53
劉禅はひと呼吸置く。
自然に、次に発せられる言葉に集中してしまう。

「叔父上のことです。もしどこかで戦ってたり、巻き込まれたりしたとしても、私はそんなには心配しなくてもいいと思うんです。
 それよりもむしろ、叔父上は口下手ですし、詐欺に合っているのではないでしょうか?」

「はあぁ。そういうことなら私が行ったほうがいいですね。
 口だけの相手なら私が叩くことが出来ますし、そうでなくても
 『武』の張飛殿が居られるのなら『策』の私が行ったほうが効果的でしょう」

すかさず魯粛言うものだから、彼の実績とか性格とか色々頭をよぎったが、趙雲には口の挟む暇も無かった。

意気揚々と去っていく魯粛を二人は見送る。
「もう一つくらい武器があればよかったんですけどね」
そう呟く劉禅は、もう星を眺めていなかったし、その表情も何も表してはいなかった。

「劉禅様。その…、謝らせてください」
十分に魯粛が見えなくなってから、趙雲は既に頭を下げて言った。

「子龍は私のことを信じてくれるのですか?」
「もちろんです!!」
「なら、なにも謝することはありません」

劉禅は笑った。
口の端を吊り上げて笑った。
頭をたれる趙雲に、それは見えない。

84 :疑うとか信じるとか 4/4:2006/10/18(水) 05:22:55
「顔を上げてください。私を信じてくれるのなら、それでいいんです。私が礼を述べるくらいです。
 ありがとう。私を信じてくれて。そしてお願いです。
 何があっても、私を信じてください。そして何があっても、私を守ってください。
 私は非力で、きっと子龍にはなにも応えられないだろうけど…」

趙雲は何度も「はい」「必ず」と繰り返す。
趙雲が見た劉禅は笑っていた。
穏やかな、心底安心した笑みという奴だ。

いつしか二人が、少なくとも一方は『硬い信頼の絆で結ばれた』と心から思ったとき、
趙雲を見張りに残し、劉禅は浅い眠りへと移っていった。

劉禅は思う。
張飛や魯粛が戻らないなら、それはそれでいいだろう。
だが趙雲を失うわけにはいかない。
忠義と実直さにおいて、趙雲は比類がない。
己を守る最後の盾として、彼にはいてもらわなければ困るのだ。
そして、この盾は決して揺るがぬものでなければならない。
疑うとか信じるとか、そんなくだらないことで鈍くなっては使えるものも使えない。
例えば再び曹幹に出くわしてしまったとき…。
例えば父に、出会ったときに…。
最優先事項が何なのか、趙雲にはよくわかっていてもらわなければならない。

85 :疑うとか信じるとか:2006/10/18(水) 05:24:07
<<皇帝とナース/2名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品】
※趙雲の疑念は完全に晴れました。
※現在趙雲が見張りをし、劉禅は仮眠中(浅い眠り)

魯粛【圧切長谷部】
※一旦ピンユニット化
※張飛を探します。

86 :訂正:2006/10/18(水) 21:03:51
>>67
チロルチョコの数を訂正します。

× チロルチョコ(残り83個)

◎チロルチョコ(残り65個)

87 :80を訂正:2006/10/19(木) 01:37:01
>>80
<<カミキリムシとオナモミ/2名>>
呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル、日本号】
諸葛瑾[頭にたんこぶ]【なし】
※呂布の所持アイテムから日本号が抜けていました。申し訳ありませんでした。

88 :(・(エ)・) 1/6:2006/10/20(金) 17:49:14
曹熊が鄴城を目前にした時、血がべっとり付いた獲物を、血まみれの誰かが引っ提げて城門を出てきた。
とっさに曹熊は木の影に身を潜め、その人物を見た。
武骨。彼を一単語で表すと、こうなる。
巨漢で、服の上からでも大きく膨れ上がっているかのような筋骨がわかり、角張った威圧的な顔は、並の人には見つめることすらもままならないだろう。
張遼、字を文遠。その人に違いなかった。
張遼が去るまで待ち続け、曹熊は城内に入った。
曹熊が育った地であり、曹熊の第一の居場所だった都市は、廃墟へと化していた。
大雨のせいだろう、所々引ききっていない水が見え、地面はぬかるんでいた。
もう決して戻ることはできないのだと、宣言されているように思えて、曹熊はしばらく立ちすくんだ。
それからしばらく歩いていくと、銅雀台の前に横たわる于禁の死体を発見した。
土手っ腹を刺されていた。
吐き気と目眩に襲われながら、曹熊は血に染まった張遼の武器を思い出していた。
ああ張遼、君もなのか。
秩序を重んじる気骨の人ですらも、この遊戯に沈んでしまうのか。
于禁の死体の先、より銅雀台に近づいた所に、大きな血溜まりがあった。
血溜まりから血の点線が伸びており、銅雀台の階段を上っていった。
血は明らかに致死量を越えていた。
上りたくない。
父の死を知った時以来の、嫌な予感がする。
あの時は予感通り、自殺するはめになった。
上りたくない。でも……
上らなきゃいけない気がする。
曹熊の足は、まるで機械人形のように血痕を追っていった。

89 :(・(エ)・) 2/6:2006/10/20(金) 17:50:40
台上では、二人の兄が隣り合って死んでいた。
曹丕は肩を貫かれ額を抉られ、
曹植は全身穴だらけ。
曹丕の体はひどく冷たかったが、
曹植の体はほんのり暖かかった。
そして二人で微笑み合っていた。
堪えようもない吐き気に、曹熊は死体の側に汚物を散らす。
なぜ笑っている?
このどうしようもない狂った世界で、なぜ兄上達は笑っているのだ?
死を受容して? 死に気付かなくて?
自分は、阿会喃や張虎といた頃は無邪気に笑っていられた。
何も知らなかったから。
何もわかってなかったから。
今の自分は知っているし、わかっている。それに開き直ることは、無理な性分だ。
だから絶対に、死を目の前に微笑むことはできない。

90 :(・(エ)・) 3/6:2006/10/20(金) 17:51:37
二人の傍らに、まるで墓標のように三角の木箱と白い札のようなものが置かれているのに気付く。
木箱の端には金属の棒が突き出ており、また黒と白の短い突起もあった。
棒に手を伸ばすと、空間が揺らめいたかのような不思議な音が鳴り、驚いて手を引っ込める。
な、な、な、なにこれ?
数十秒間様子を見たが、何も起こらない。恐る恐る、再び手を伸ばす。
音が鳴る。鳴り続ける。手を動かす。音階が変わる。
楽器?
楽器ならばと、何か奏でようと試み、ゆらゆらと棒の周囲に手を動かす。
まったく慣れない作業で、最初は赤ん坊のぐずり声のような雑音であったが、続けるうちにかろうじて音楽の形を成していった。
曹熊は下手な歌声を、下手な楽に乗せた。
かつて阿会喃と張虎とともに歌った、わらべ歌。
 あるーひっ
 もりのーなかっ
 くまさーんにっ
 でああったっ
 はなさーくも
そこまで歌った所で、曹熊は唐突にテルミンを投げ出した。
大きさに比べて全然重くない楽器は、簡単に銅雀台の外まで飛んでいき、はるか下まで落ちていった。
誰も復唱してくれない。
誰も斉唱してくれない。
自分だけの下手な独唱に、いったい何の意味があるというのか。
絶望にまみれながら、次に白い札を手に取る。
黒い平面、その横や下に付いている押せる部分、側面には上下左右できる部分や穴などがあった。
それらをいじくり回しているうちに、パシャン、と札の裏の一部が開いた。びっくりして札を取り落としかけてしまう。
数十秒して、開けた場所に何かを入れるらしいことをわかった曹熊は、辺りを見回した。
足下に小さい盤上のものが、何枚も並べられていることに気付く。
盤の中にはさらに円盤が入っており、それぞれ模様が描かれている。
全て回収し、そのうち一つを札に入れた。
が、何も起こらない。開けた部分を閉じても、何も起こらない。
またいじくり回す。
すると突然、黒かった平面が光り輝きだした。

91 :(・(エ)・) 4/6:2006/10/20(金) 17:52:49
動く絵だとか操作方法だとか車だとかマフィアだとか、最初はわけがわからなかったが、やっていくうちに慣れてきた。
ようには、街中でやりたい放題できる遊びらしい。
道行く人を、殴り殺す刺し殺す斬り殺す撃ち殺す焼き殺す轢き殺す殺す殺す殺す殺す殺す。
見ろ! 人がゴミのようだ!
あっはっはっはっはっはっはう…………
再び嘔吐。胃の中のものは先程吐ききっていたので、黄色い胃酸だけが出てくる。
最悪だ。
狂った遊戯の中で、さらに何を好んで狂った遊戯をしなければならないのだ。
目眩が激しい。
どこかで休まなくちゃ……とふらふら歩き出して、曹植の死体を踏み悲鳴を上げる。
もう嫌だ。もうだめだ。
いっそ死のう。殺されるのが嫌なら、自分から死んだ方がいい。あの時のように。
この高い銅雀台だ。飛び降りれば、すぐ死ねる。
曹熊は台の縁までふらついていった。
そしてぼろぼろになった都を見収める。
僕ごときの死に場所には、ちょうどいいじゃないか……
さあ死のう。
空中に片足を進め出す。



コツ……コツ……

92 :(・(エ)・) 5/6:2006/10/20(金) 17:54:27
……足音?
敵だ!
自殺することなど飛ぶように忘れ去り、曹熊は慌ただしく身構えた。
やばい、殺される!
いや、今のPSP拳法を習得している僕に、かなう相手などいるものか!
……PSP拳法って何だ? 僕は何を思っている? ああ、こうしている合間にもどんどん迫ってくる。
ここはとりあえずガン=カタで……でも拳銃一丁じゃ120%の力を出せるかどうか……
ああ、敵が来る!
とりあえず撃て! 撃ってしまえ!
曹熊は階段の前まで駆け寄り、そして上り来る人物を見た。
髭が長く、長すぎて混乱している曹熊にはそれしか認識できなかった。
髭男に銃口を向けて、曹熊は乱射する。
しかし撃つ前から髭男は伏せ、巨大な武器を盾代わりに前へかざしていた。
1、2、3……14、15、16
装填数が0になってからも、曹熊は引き金を引き続けた。髭男が弩らしきものを構えるのを見て、初めて反動と銃声がないのに気付く。
殺す気だ。あいつも僕を殺す気だ。
曹熊は堪らず逃げ出した。
銅雀台の左右には閣道があり、金鳳台か氷井台へと続いている。その閣道向かって走って行った。

93 :(・(エ)・) 6/6:2006/10/20(金) 17:56:17
階上の、脆弱な男の銃弾は、関羽の巨大なる体をかすりもしない。
関羽は諸葛弩を構え、階上の男目掛けて数本放った。
だが男は逃げ出し、矢は当たらない。
しばらく様子を見たが、一向に男は戻ってこない。関羽は立ち上がり、再び階段を上る。
台上では、二人の男が死んでいた。
一人はひどく冷たく、もう一人はほんのり暖かい。
あの脆弱な男が殺したのか、階下で死んでいた于禁が殺したのかどうかはわからないが、二人の死亡時刻はかけ離れているようだ。
よく見てみると、この二人の死体の顔は似ている。目尻や輪郭がそっくりだ。
そして、微笑み合っているように見える。
兄弟なのだろうか? ともすれば、仲の良い兄弟だっただろう……
関羽は二人のために短く黙祷した。
黙祷後、辺りに何もないのを確認すると、関羽は銅雀台を下りていった。

@曹熊[錯乱]【ベレッタM92F(残弾30) PSP】
※どこかへ走り去っていきました。
※プレイしてたのはグランド・セフト・オート

@関羽[全身打撲(治癒中)]【方天画戟、猛毒付き諸葛弩(残り矢17本)・手榴弾×3】
※汝南、新野を回り益州へ。

94 :疑うとか信じるとか(修正版) 1/5:2006/10/24(火) 00:09:20
戻ってきた趙雲が曹幹を連れていないことに、劉禅は表立って感情を見せなかった。

「すいません。随分と足の速い子のようで、もう辺りも暗いので一旦戻ったのですが」
「まぁ、お疲れ様です。それでは曹幹君が無事なのを祈るばかりですね」

一瞬、曹幹の名が出たことに趙雲は固まる。
しかしそれは本当に一瞬で、次に続いた魯粛の言葉で全てが氷解した。

「ああ、先ほどの間に名簿で調べたのですよ。幹という名は他には見当たらなくて。
 しかし、そうであれば彼は曹操の一族の者なのでしょうな」
「え、ええ」

少しどもった声は、曹幹の血筋に対して驚いたように聞こえただろうか。
魯粛の表情からはとくに疑問を持ったようには見受けられない。
会話に参加していない劉禅は、空に瞬く星を眺めているのでその表情はうかがい知ることができない。
が、趙雲の視線に気付いたのか、すぐにこちらに向き直った。
その劉禅からも、戻ってきた趙雲をねぎらう感情以外読み取ることは出来なかった。

「でもよかった。心配していたんですよ。
 私のときは、見つけるまで戻らずに父たちに心配をかけたと聞いていたので…」

まっすぐに見つめられ、趙雲は己の疑心を見透かされるような気恥ずかしさで、慌ててその場を取り繕った。
そう、初めは郭嘉らの名を出すことで、何らかの反応が得られるのではないかと思っていた。
けれど劉禅は無反応に星を眺めるだけだった。
そしてようやく振り向いたと思ったら、まるで何かに気付いたように表情をなくし、次第に翳りを帯びる。
気付かれまいと背を向けたのだろうが、もちろん趙雲も魯粛も、気付かないはずがなかった。

「劉禅殿。どうかなさいましたか?」
「なんでもないんです。大したことではないし。ああけれど、けれど…」

振り返った劉禅は涙こそ流していなかったが、それは今にも泣き出しそうな顔だった。

95 :疑うとか信じるとか(修正版) 2/5:2006/10/24(火) 00:10:45
「子龍。もしかして、まさか…、私に何か隠し事をしていませんか?
 ああだけど、私がお前を責めるのは本当はお門違いなのだとわかっているんです。
 先に隠し事をしたのは私のほうなのですから」

思わぬ劉禅の告白に、趙雲も魯粛も一瞬言葉を失い顔を見合わせる。

「ど、どういうことです?」
「実は君たちと出会う前に、魏の人たちのグループにあったのです。
 よい人たちだと思ったのだけど、誤解を招く別れ方をしてしまいました。
 私はその方たちに疑われているのかもしれない。
 そして子龍。その人たちは決して足の速い武人ではないのです。
 幽州で別れたから、まだこの辺りにいるかもしれない。
 君は彼らに会ったのではないですか?
 そして彼らにあの子を託した。
 だって子龍が守ろうとしたあの子を、簡単に諦めるとは思えないのです」
「それは、つまり…」
「いいのです、魯粛殿。
 子龍。答えてくれなくともよいのです。只聞いてくれれば。
 子龍は彼らに会い、私のことを言って疑われたのではないですか?
 いや少なくとも、私が疑わしいことを聞いて、そしてまさか…」

趙雲は己の立場を呪った。
劉禅が嘘をついているはずが無い。そんなことは彼の態度を見れば明らかだ。
郭嘉の言っていた経緯にしても、それは「強運」の一言で片付けてしまえる。
いっそのこと郭嘉たちとの約束を破ることになっても、全てを打ち明けるべきではないかとすら思った。
だが答えずともよいという劉禅の言葉が、一つの留め金になって趙雲を押し黙らせる。
全てを話すということは、趙雲が僅かながら抱いた疑心を悟られる恐れがある。
それは趙雲自身がどう思われるか以前に、この張り詰めた劉禅を追い詰めることになるのだ。

96 :疑うとか信じるとか(修正版) 3/5:2006/10/24(火) 00:11:36
「あの、差し出がましいことを言うようですが」

緊迫した沈黙の数秒は、魯粛によって破られた。

「どのような事情があったかは存じませんが、その誤解は速いうちに解いておいた方が宜しいでしょう。
 このような世界です。誤解一つで劉禅殿のお命に関わる事態になります」
「それは、もちろんそうだが、私は元来口下手なのです。正しく誤解が解けるかどうか…」
「その事ならご心配なく。
 私はこれでも外交官のはしくれですから、交渉事は、まぁ本職のようなものです」
「しかし…、やはり私は…」
「劉禅殿は此処に残っていて構いません。
 私は多少武も心得ておりますから、趙雲殿も残っていてくださいね」
「ええっ!!」

趙雲の、沈黙の後久しぶりに出した声は無様に裏返って響いた。

「いけません。もう夜もこんなに更けているのに単独行動など!!
 せめて張飛殿の期間を待たれてから…」
「その張飛殿もそろそろ探しに行こうと思っていたのです。
 趙運殿は今帰ってきたばかりですし、劉禅殿に行かせるわけにも行きません」
「なら、まず全員で張飛殿を探して、それから…」
「そのうちに、そのあなたに会ったかも知れない方々がどこかに行ってしまうでしょう。
 大丈夫です。私を信用してください。あなたは劉禅殿を守ることだけ考えて。
 ああ、ただ私の進むべき道をこっそり教えていただければ、私にはそれで十分なのです」

趙雲はこっそりとある方向を呟く。
近づかないと約束した手前、後ろめたさが無いわけではないが、他に道はないように思えた。
さらに言うなら、郭嘉たちの義理を立てることで、もうこの仲間たちに迷惑はかけたくはなかった。
もう魏の文官という人間がかなり少ない為だろうが、彼らの名すら聞かない魯粛に、むしろ感謝したくらいだった。

97 :疑うとか信じるとか(修正版) 4/5:2006/10/24(火) 00:14:07
意気揚々と去っていく魯粛を二人は見送る。
「もう一つくらい武器があればよかったんですけどね」
そう呟く劉禅は、もう泣きそうな顔はしていなかった。
しかし、決して趙雲と目を合わせようとしない。

「私に何か怪しい動きがあったら、すぐに斬り捨てて構いませんよ」

なんでもない風を装った、しかし全然装えていない震えた声が届き、何かの堰が切れた。
趙雲は、自分が泣いていることに気付いた。

「も、申し訳ございません。申し訳ございません。私は、私は…」
趙雲は両手を地に付ける。顔を地に向ける。
魯粛はもう十分に見えなくなっている。
劉禅は笑った。
口の端を吊り上げて笑った。
頭をたれる趙雲に、それは見えない。

「子龍は私のことを信じてくれるのですか?」
「もちろんです!!」
「なら、なにも謝することはありません。
 顔を上げてください。私を信じてくれるのなら、それでいいんです。私が礼を述べるくらいです。
 ありがとう。私を信じてくれて。そしてお願いです。
 何があっても、私を信じてください。そして何があっても、私を守ってください。
 私は非力で、きっと子龍にはなにも応えられないだろうけど…」

趙雲は何度も「はい」「必ず」と繰り返す。
趙雲が見た劉禅は笑っていた。
穏やかな、心底安心した笑みという奴だ。

いつしか二人が、少なくとも一方は『硬い信頼の絆で結ばれた』と心から思ったとき、
趙雲を見張りに残し、劉禅は浅い眠りへと移っていった。

98 :疑うとか信じるとか(修正版) 5/5:2006/10/24(火) 00:18:16
劉禅は思う。
張飛や魯粛が戻らないなら、それはそれでいいだろう。
だが趙雲を失うわけにはいかない。
忠義と実直さにおいて、趙雲は比類がない。
己を守る最後の盾として、彼にはいてもらわなければ困るのだ。
そして、この盾は決して揺るがぬものでなければならない。
疑うとか信じるとか、そんなくだらないことで鈍くなっては使えるものも使えない。
例えば再び曹幹に出くわしてしまったとき…。
例えば父に、出会ったときに…。
最優先事項が何なのか、趙雲にはよくわかっていてもらわなければならない。



<<皇帝とナース/2名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品】
※趙雲の疑念は完全に晴れました。
※現在趙雲が見張りをし、劉禅は仮眠中(浅い眠り)

魯粛【圧切長谷部】
※一旦ピンユニット化
※趙雲が先ほど郭嘉たちにあった場所に行きます。
※同時に張飛も探しています。


前回投下の直後から修正の要望が出ており、私もすぐに修正の意思を見せたにもかかわらず
修正版の投下まで随分日数を経過させてしまい、
書き手及び読み手の皆様に多大な迷惑をかけてしまいました。
本当に申し訳ございません。

99 :▼生存者リスト パーティーの部(参加者非公開)▼ 1/2:2006/10/31(火) 22:48:20
<<親子の面影+水鏡門下生/4名>>
蔡文姫【塩胡椒入り麻袋×5】
劉封【ボウガン・矢×20、塩胡椒入り麻袋×5】
ホウ統【ワイヤーギミック搭載手袋、塩胡椒入り麻袋×5】
諸葛亮【諸葛亮伝(色んな諸葛亮が満載。諸葛亮と直接関係ない事柄については書かれていない)】

<<不品行と品行方正と忘れ形見/3名>>
郭嘉[左脇腹負傷、失血、発熱]【閃光弾×1】
陳羣【なし】
曹幹【光学迷彩スーツ(故障中)、吹毛剣】

<<荀イク孟徳捜索隊/2名>>
袁紹【妖刀村正】
曹彰【双剣の片方(やや刃こぼれ)、ごむ風船】

<<めるへんトリオ featuring 既視感を追う旅/6名>>
陸遜【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×3)、探知機】
姜維[重傷]【なし】
司馬懿【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)、香水、陳宮の鞄、阿会喃の鞄】
凌統【銃剣、犬の母子】
馬謖[軽症]【魔法のステッキミョルニル(ひび入り)】
関興【ラッキーストライク(煙草)、ジッポライター、ブーメラン、サーマルゴーグル】

100 :▼生存者リスト パーティーの部(参加者非公開)▼ 2/2:2006/10/31(火) 22:50:49
<<楊儀くんと子義マンセー/3名>>
太史慈【ジョジョの奇妙な冒険全巻】
李典【SPAS12】
楊儀【MDウォークマン】

<<馬家の従兄弟/2名>>
馬超【高威力手榴弾×5個、MP5、ダガー、ジャベリン】
馬岱【シャムシール、投げナイフ×20】

<<ふたりの詩人とひとりのアモー/3名>>
曹操[高熱、意識混濁、呂蒙に背負われ中]【チロルチョコ(残り65個)】
陸機【液体ムヒ】
呂蒙[曹操背負い中]【捻りはちまき】

<<カミキリムシとオナモミ/2名>>
呂布【関羽の青龍偃月刀、日本号、ドラグノフ・スナイパーライフル】
諸葛瑾[頭にたんこぶ]【なし】

<<皇帝とナース/2名>>
劉禅【バナナ半分、モーニングスター、オルゴール、吹き矢(矢9本)、救急箱、閃光弾×2】
趙雲【ナース服、化粧品】

101 :▼生存者リスト ピンユニットの部(参加者非公開)▼:2006/10/31(火) 22:52:18
@黄忠【サバイバルナイフ、グロック17、鎖鎌】
@夏侯惇【金属バット、大斧】
@祝融[毒]【なし】
@曹熊[錯乱]【ベレッタM92F、PSP】
@劉備【李典棍、塩胡椒入り麻袋×5】
@荀イク[洗脳されている?、額に切り傷]
 【ガリルAR(ワイヤーカッターと栓抜きつきのアサルトライフル)、刺身包丁、防弾チョッキ、日本刀、偽造トカレフ、空き箱】
@魏延【ハルバード(少々溶解)、鳥のヒナ(6羽)】
@潘璋【備前長船】
@張コウ[顔面負傷、全身軽傷]【斬鉄剣(腰伸び)、デリンジャー、首輪解体新書?、DEATH NOTE】
@関羽[全身打撲(治癒中)]【方天画戟、猛毒付き諸葛弩(残り矢17本)・手榴弾×3】
@張飛[腹部強打、激しい疲労]【鉈】
@甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣、コルト・ガバメント、点穴針、諸葛亮の衣装】
@張遼【歯翼月牙刀、山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3】
@孫尚香【シャンプー(残り26回分)】
@魯粛【圧切長谷部】


パーティの部9組27名、ピンユニットの部15名 計42名 生存確認

102 :▼死亡者放送(参加者公開)▼:2006/10/31(火) 22:54:37
≪あ行≫9名(+2)
☆阿会喃 ☆于禁 王平 袁煕 閻行 袁尚 袁術 袁譚 王累
≪か行≫22名(+4)
☆夏侯楙 賈ク 夏侯淵 華雄 郭 楽進 郭図 夏侯威 夏侯和 夏侯恵
夏侯覇 韓玄 韓遂 顔良 ☆許チョ 許攸 虞翻 刑道栄 ☆高順 侯選 ☆孔融 胡車児  
≪さ行≫20名(+3)
司馬孚 朱桓 周瑜 周泰 朱然 朱霊 淳于瓊 荀攸 徐晃 徐庶 辛評 成宜 曹洪
曹仁 ☆曹植 ☆曹丕 沮授 孫堅 ☆孫権 孫策  
≪た行≫16名(+3)
☆張燕 張角 張虎 陳到 張横 張繍 張任 貂蝉 陳宮 程銀 ☆禰衡 程普 典韋 田疇
董卓 ☆董超&董衡
≪は行≫4名 (+2)
☆裴元紹 馬玩 ☆馬忠 文醜
≪ま行≫3名
満寵、孟獲、孟達
≪や行≫2名
楊秋、楊阜
≪ら行≫7名(+1)
李堪 李儒 劉璋 劉ェ ☆廖化 梁興 呂範


計83名 死亡確認


■既出登場武将数:125名 残り42名

103 :▼禁止エリア放送(参加者公開)▼:2006/10/31(火) 22:56:17
かすかにちりちりという音を立てた後、何処からともなく献帝の部下と思しき声が聞こえてきた。

順に前回放送以降の死亡者を伝え、最後に付け加えるように、
「なお、新たに禁止エリアを追加します。
 次の禁止エリアは并州・揚州です。逃げ遅れ等ないように注意してください。
 連絡は以上です。」
それだけを伝えて、放送は途切れた。

真夜中の事だった。


※100レス後(>>203)より、并州・揚州が禁止エリアになります。

104 :Ark 1/9:2006/10/31(火) 23:57:03
静かな森。緑の葉を透かして、朝の光が零れる。
聞こえるのは時折流れていく軽やかな鳥の声、そして3人分の足音。

「なぁなぁ、なんか変なのが洞窟の方に行ってる」
くいくい、と袖を引っ張られ、凌統は振り返った。
森の中を東に向かって進むは3人。凌統と馬謖、そして陸遜である。
「あれ、本当ですね。せっかくだから殺しておきます?」
「……結構物騒な性格してたんですね陸遜殿」
馬謖の指差す探知機には、なるほど4つの光点が浮かんでいた。
自分達より少し南を、西に向かって動いているらしい。このまま進めば姜維たちのいる洞窟の近くに出るだろう。
「ん? これ、何で点滅してるんだ?」
「うん、だから変なのって言ったんだが……何だろうなコレ?」
4つの光点のうちのひとつがぴこぴこと点滅している。馬謖が探知機の説明書を出してぺらぺらとめくりだした。
「てんめつー、てんめつー、て〜んめ〜つ♪」
「いちいち歌うな」
「えー。……あ、あった。……首輪の故障?」
3人が一斉に該当頁を覗き込む。
「……首輪ってこれか? 故障して大丈夫なのかよ……」
凌統が嫌そうに自分の首輪にそっと触れた。
「故障即爆発と言うわけじゃないでしょう。しかしこの『探知機』……首輪の反応を探知していたんですか」
陸遜が親指の爪を噛みながら考え込む。が、すぐに顔を上げて言った。
「見に行きませんか、どう壊れているのか」
「見に行きませんかって、戦闘になるんじゃないか?」
「そっと観察して危険そうだったら遠くから撃ち殺しましょう。無理そうなら逃げましょう」
「……まぁ、いいけど……」
こっちには実質戦闘員は俺しか居ない気がするんだけど? 4人とも武官だったりしたらどうすんの。
そう考えたが凌統は口に出すのをやめた。そんときゃ脇目も振らずに逃げるだけだ。

105 :Ark 2/9:2006/11/01(水) 00:06:16
そして太陽が大分高くなってきた頃。
「……あー! 丞相ー!!」
草陰からこっそりと件の4人連れを覗き込んだ馬謖が素っ頓狂な声をあげた。
「ばかっ、大声出すなっ」
「―――誰だ!」
鋭い誰何の声と共に矢が飛来し、馬謖のすぐ脇の木に刺さる。
「今のは威嚇だ! 次は当て……。馬謖さん?」
「ひどいご挨拶ですね劉封殿、普通いきなり撃ちますか?」
矢を射掛けた青年にふくれっつらでガンを飛ばす馬謖。珍しく丁寧な言葉遣いとは裏腹な態度である。
そして居心地悪そうに目を逸らす青年。
どうにも緩んだ空気に、凌統は顔を顰めた。
「……お知り合いか、馬謖?」
「あぁ、まぁ、微妙に……劉封殿はどうでもいい!」
キランと目を輝かせ、そのどうでもいい劉封の後方に居る長身の青年に向かって馬謖が突進した。
「……丞相〜! お会いしとうございました〜っ」
「誰だお前」
丞相、こと諸葛亮に一言で斬って捨てられた馬謖がその場にべちゃりと転んだ。

106 :Ark 3/9:2006/11/01(水) 00:11:02
いくらか言葉を交わした後、どうやらお互い敵ではないと判断した2組は情報交換を始めた。
男3人女1人の4人連れの身元、特に臥竜鳳雛のそれに凌統達が驚いたり、
蔡文姫が犬たちに懐かれたり、真似した劉封が仔犬に噛まれたりと和気藹々とした雰囲気である。
しかしそれぞれ油断なく武器を手放さないのはやはり戦場ということだろうか。
「そういえば、お前さんの名は何てんだい?」
「あ、えぇ、僕ですか?」
どうしようか、と一瞬だけ目を泳がせてしまったが、気取られてはいないはずと陸遜は思う。
「僕は陸抗、字は幼節と申します」
ごめん抗、ちょっとだけ名前借りますね、と心の中で息子に呟く。
劉封は確か、かつて自分達が関羽を捕らえた際、援軍を出さなかったと劉備の怒りを買って処刑されていたはずだ。
中心は呂蒙殿だったとは言え、彼に献策している自分も恨みを買っているだろう。関興殿のときの二の舞は御免です。
一瞬ちらっと視線を寄こしたが、聡い凌統は何も言わない。
ありがたいことに、空気を読めない馬謖も諸葛亮に弄り回されてこちらの話は聞いていない。……と言うか。
「あの、そろそろ止めて差し上げたほうが……」
文姫の言うとおり、ニヤニヤと諸葛亮が大量の書物を開いて『泣いて馬謖を斬る』らしきあたりを馬謖に見せ付けている。
馬謖はそろそろ半泣き超えて全泣きだ。羞恥プレイ乙。
ホウ統が面倒くさそうに諸葛亮の頭を小突いて、哀れな馬謖は解放された。

107 :Ark 4/9:2006/11/01(水) 00:16:12
「ところで、貴女の首輪、繋ぎ目が緩んでいるような気がするのですが?」
陸遜は警戒心を起こさせないよう柔らかな笑みを浮かべ、蔡文姫の首輪にそっと触れた。
面如美玉と評されたこの顔の使いどころだ。蔡文姫は少し頬を赤く染めて視線を落とした。
視界の隅で劉封が全身の毛を逆立てて何か言いたげにしているが、とりあえず無視する。
探知機が示している故障した首輪は、位置関係からしてほぼ間違いなく蔡文姫のものだ。
しかしこれは、故障というよりも――この首輪は、外せるのか?
「あぁ、それにしても無粋な首輪ですね。貴女の白い首筋には……もっと繊細な飾りのほうが似合う。
 貴女にはきっと、澄んだ碧の珠が似合うでしょうね」
柔らかな文姫の頬にそっと触れると、あ、とかすかな声が零れた。
視界の隅の劉封は口をぱくぱくさせて震えている。
「こんな場でなければ是非貴女に似合う首飾りを贈りたいのですけれど。本当に残念だ」
「……陸…抗殿、そのへんに」
そろそろ劉封が噴火しそうだと判断した凌統が止めに入ったせいで、
劉封は怒りの行き場を失ってその辺の木をがんがん蹴り始めた。
その背中を臥竜鳳雛が生温かく見守る。
「青春だねぇ」
「ああ、青春さね」


その後、蔡文姫達からは熱い湯で首輪が緩むこと、
凌統達からは諸葛亮を捜している姜維らの居場所、
そして太史慈がどんな文章でも読めるといった情報を提供しあい彼らは別れた。
ふと見ると、馬謖が手の上に小さく折りたたんだ紙切れを乗せてじーっと見つめている。その数、3つ。
「何だ? それ」
「丞相から貰ったんだ。本気で困ったときに順番に開けて読めって」
なるほど壱、弐、参と番号がふってあるようだ。
羞恥プレイ後ずっと諸葛亮と何か話していたから、その時に貰ったのだろう。
「……いま開けたら怒られるだろうな」
馬謖はそれを大切そうに懐に仕舞いこんだ。

108 :Ark 5/9:2006/11/01(水) 00:21:24
ここで場面は昨夜に戻る。

鼻歌を歌いながら洞窟の地面に絵を書いている馬謖を横目に、凌統はあくびをした。
「何書いてるんだ?」
「トカゲのしっぽ」
意味が分からない。暇だ。
探知機が示していた、洞窟の北のほうをうろついていた誰かも東へ動き出してしまい、現在洞窟付近には誰も居ない。
怪我人を抱えている以上安全なのはいいことだが、なんというかこう、こんなにまったりしてていいのかとも思うのだ。
ミョルニルの柄で描いた絵に目を留め、陸遜が馬謖と何事か話し始める。暇だ。
姜維と関興は睡眠中。姜維さんよく寝るな。まぁ怪我人だからか。うなされてるのもそのせいだろう。暇だ。
司馬懿はなにやら香水の匂いを嗅いでうっとりしている。なんか危ない。それはそれとして暇だ。
洞窟の入り口でシロのしっぽが揺れている。その脇で丸くなるチビ。暇だ。
気が付くと馬謖と陸遜の声が聞こえない。なにしてるんだ? ……筆談?
「……よし! 行けますよこれ!!」
急に陸遜が叫び、思わずびくっとする。
そして何を筆談していたのかと彼らの座っているあたりを覗き込む。懐中電灯の明かりが照らし出したのは。
「これは?」
不完全だが、どこかの見取り図のように見える。城? 馬謖が描いていたものはどうやらこれらしい。
とんとん、と陸遜が筆談の跡の一部を示す。
「火、……!」
盗聴されている可能性がある、と前に馬謖が言っていたのを思い出し、慌てて自分の口を塞ぐ。
筆談の跡を凌統が辿るのを見ながら、陸遜が口を開いた。
「とりあえず、偵察が必要です。適任は―――」
「あ、俺行く。俺で十分だろ?」
暇を持て余していた凌統が片手を軽く挙げる。
「そうですね、貴方なら安心して任せられます」
それを見てはいはい!と馬謖が声を張り上げた。
「私も行く! じっとしてるの飽きた」
「……どうしましょう、何か今、急に安心できなくなりました」
「それはどういう意味だ陸遜殿」
馬謖が不満もあらわにむくれるが、陸遜は優雅にスルーする。

109 :Ark 6/9:2006/11/01(水) 00:24:49
「とりあえずその辺の惰眠組を叩き起こし……あっ、凌統が行ってしまうと僕の身が若干危険に」
「え? あぁ、関興か。大丈夫だと思うけどなぁ」
「なら陸遜殿も一緒に行けばいいじゃないか」
馬謖の出した至って簡単な結論に、陸遜と凌統は顔を見合わせた。


叩き起こされたり現実に引き戻されたりして不機嫌な3人こと司馬懿、姜維、関興は、
突然出たパーティ分割の話に難色を示した。
「だいたい偵察とは何だ。何を偵察する気だ?」
「献帝の居る洛陽城です。ちょっと面白い事を考え付いちゃいまして」
笑顔で言う陸遜。しかし質問した司馬懿は不機嫌な表情を崩さない。
「何だそれは。そして何の得がある?」
「何が得かと言われますと、そうですね、皆で生きる道を見つけられるかもしれない、という事かな」
そしてちょっとこれを見てください、と先ほど馬謖が描いていた絵を指差す。
「馬謖さんが何故か知っていた洛陽城の内部です。分からない所もありますが、概ね合っているんじゃないかと」
「……なんで馬謖どのがそんなこと知ってるんですか」
今度の突っ込みは姜維から。もっともと言えばもっとも過ぎる疑問だ。
答え辛そうに視線を泳がせた馬謖に代わって、陸遜が答える。
「馬謖さんの例の夢だと。あれ、姜維さんは聞いてませんでしたっけ?
 馬謖さんがしつこくこの遊戯の開始前らしき洛陽城での夢を見るって話」
「しつこくって、私の意志じゃないんだが……」
不満げに馬謖が呟くが、やはり華麗なスルーを食らう。
「夢? そんなバカなものを信じて洛陽城まで行くと?
 失礼ですが陸遜どの、馬謖どのの馬鹿がうつってませんか」
寝起きでもともと不機嫌な姜維がさらに不機嫌さを増した顔で言うが、
「いや、待て……。おい山頂布陣、貴様建築や設計の心得はあるのか」
「微塵もない。悪いか」
むぅ、と考え込んだ司馬懿に遮られる。

110 :Ark 7/9:2006/11/01(水) 00:29:03
「陸伯言、お前もそれで?」
「えぇ、この間取りは全く理に適ったものだと思います。
 何の知識も……いや、少しくらいかじったところでこんな美しい構造は描けない。
 描けるのなら馬謖さんは設計の匠として名を残せますね」
「あの洛陽城は実際の洛陽城より小さいようだから、元の洛陽城を知っていても意味が無いしな……」
考え込む軍師2人を横目に、関興が馬謖をつついた。
「馬謖殿、この前のあの話ですよね? 聞いた限り、この前は一部屋から出なかったような気がしたんですが?」
「うん、だがあの後、夢の続きが長くなってきてな……
 人がわーわー来て去ってった後、城内を勝手に歩き回ったみたいなんだ。たかが夢のはずなんだけどな……」
本当になんなんだろうな、この夢? と馬謖は首を傾げた。
そして一同が考え込んだり、考えるのに飽きたり、眠りの国に引き戻されかけたりした後。
陸遜が顔をあげてにっこり笑った。
「所詮夢は夢ですし、だからこそ偵察に行ってこようと思うんですよ。
 偵察隊は僕と凌統と、……馬謖さんもやっぱり来ます?」
「行く」
「ちょっと待ってください、なんで面子がもう決まってるんですか!」
自分も行きたい!と全身でアピールする関興の頭に、ぽん、と凌統が手を置く。
「武の心得があるお前が残らないと、居残り組が危険だろ?」
「それはそうですけど」
「俺とお前が武力担当」
自分と関興を交互に指差し凌統が言う。
「そして知力担当」
今度は陸遜と司馬懿を指す。
「そんでお荷物も分担」
最後に指差された諸葛亮の弟子2人は「なにぃ!?」と不満全開に反応した。
「ちょっと待ってください凌統どの、いくら怪我しているといっても馬謖どのと同類扱いは酷くないですか!?」
「それはどういう意味だ姜維!? むしろ私が激しく理不尽なんだが!」
口々に不満を言い立てる2人をサラリと無視し、凌統は関興に語りかけた。
「残していく奴らを守れるのはお前だけなんだ。わかってくれるな? 関興」
「……わかりました……」
「よし」
凌統にわしゃわしゃと頭を撫でられ、うまく丸め込まれた気がする、と関興は小さく呟いた。

111 :Ark 8/9:2006/11/01(水) 00:30:56
「それで、陸伯言。今回は偵察としても、最終的には洛陽城に何を仕掛けるつもりだ?」
と居残り組の知力担当こと司馬懿。よくぞ聞いてくれました、と陸遜は楽しそうな笑みを浮かべる。
「花を一輪」
いつの間に手にしたのか、左手に持った真紅の花飾りを顔の前にかざす。陳宮の遺品。
そして右手には、関興に支給されたジッポライター。

「紅蓮の花を一輪、帝に献じましょう」



112 :Ark 9/9:2006/11/01(水) 00:37:22
※<<めるへんトリオ featuring 既視感を追う旅>>は一時解消されました
※黄忠は東に向かった模様?

<<親子の面影+水鏡門下生/4名>>
蔡文姫[首輪が緩んでます]【塩胡椒入り麻袋×5 無花果×6】
劉封【ボウガン・矢×20、塩胡椒入り麻袋×5】
ホウ統【ワイヤーギミック搭載手袋、塩胡椒入り麻袋×5】
諸葛亮【諸葛亮伝(色んな諸葛亮が満載。諸葛亮と直接関係ない事柄については書かれていない)】

※荊州と益州の境目辺り。第一目標は劉備の捜索ですが、<<めるへんトリオ・改>>の居る洞窟に寄るかもしれません
※どうやら蔡文姫の首輪は緩むと同時に何らかの機能不全を起こしているようです。詳細は不明

<<めるへんトリオ・改/3名>>
司馬懿【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)、香水、DEATH NOTE、陳宮の鞄、阿会喃の鞄】
姜維[重症(なんとか短時間立って歩ける程度)]【なし】
関興【ラッキーストライク(煙草)、ブーメラン、サーマルゴーグル】

※漢中より少し南の洞窟に滞在中
※洞窟の周りには馬謖が仕掛けていった大量の罠があるようです

<<既視感を追う遊撃隊/3名>>
凌統【銃剣、犬の母子】
陸遜【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×3)、ジッポライター】
馬謖 [軽症(時々めまい・貧血状態に)]【魔法のステッキミョルニル(ひび入り)、探知機、諸葛亮の書き付け(未開封美品)×3】

※荊州と益州の境目辺り。隠密行動で洛陽城すれすれまで近づき、観察を試みます
※探知機で近づく人間を察知可能。馬謖が直接認識した相手は以後も場所の特定が可能。
※馬謖の「夢」の真偽は不明。馬謖自身も疑っているようです
※「私が洛陽城に行きたいって言ったのには実は理由があるんだぞ」「一応聞いてやるよ」「洛陽城。らくようじょう。楽幼常……なんか私にとって楽しい場所の予感!」「凌統、馬謖さんここに置いて行っていいですか?」「俺に聞かないで下さい」

113 :仇討ち 1/3:2006/11/01(水) 00:48:35
走る。走る。
息が切れる。足がもつれる。臓腑が喉まで競り上がって来るようだ。
それでも走る。主君の待つ元へ。

北に向かって移動していた甘寧は、放送の後、猛烈な勢いでもと来た道を戻っていた。

嘘だ、嘘だ、嘘だ。
殿が死んだなんて嘘だ。

別れたのはたった数時間前のことだ。
あの城の中に隠れていれば、危険なんて無い。
あの中をわざわざしらみつぶしに探す人間がいるものか!
荀イクだって一緒にいたんだ!
…そうだ、その荀イクが放送で呼ばれなかったのだ。
殿が死ぬはずがない、なにかの間違いだ。
殿は言っていた。俺の武勇伝を楽しみにしていると、待っていると!

空が白み始めた頃、城に辿り着いた。
「…と、の」
立ち止まると膝が笑う。息をすると口の中に血の味が広がった。
「殿、どこですか…殿」
階段を登る。
…血の臭いがする。ちがう、これは自分のものだ。
血の臭いなんてしない、するはずがない、するはずがない!

114 :仇討ち 2/3:2006/11/01(水) 00:49:23
――やがて臭いの元に辿りつく。
ひときわ大きな窓のある部屋。
白み始めた東の空に、うっすらと照らされたその部屋にあったものは、
「…あ」
どこか穏やかな表情の孫権の…「首」と
「あ…あ」
血の海に浮かぶその「体」。
「――ああああ、あ、あ」
甘寧は首を抱いて声にならぬ慟哭をあげた。


朝日が登る。
甘寧は壁にもたれかかり、孫権の首を膝にしばらく放心していたが、
暖かくなっていく光に照らされているうちに、冷静さを取り戻していった。
…俺が馬鹿だからいけなかったんだ。
大事そうに、孫権の首に手をやる。
守ろうと思ったら、傍にいなきゃいけなかったんだ。周泰みたいに。
これは戦じゃないんだ。城にいても安全じゃなかったんだ。
悔やんでも悔やみきれない。
もう涙は流れなかったが、噛み締めた唇からは血が流れた。
「…殿を、埋めないと」
のろのろと立ち上がる。主君を見殺しにしたうえ、このままにしてはおけない。
甘寧は首を仰々しく抱えて卓に置くと、体を抱えあげようと手をやった。
「…?」
孫権の右手は、爆ぜたかのように無くなっていた。
…もしかして、これで首輪を掴んだのか?
「…そこまで弱っておられたんですね」
不安に耐えられずに自殺したんだろうか。孫権の穏やかな表情が悲しい。
ますます自己嫌悪が酷くなる。
なんで気付かなかったんだろう。なんで一人にしてしまったんだろう。
荀イクがいるから大丈夫だなんて、どうして―――
…そうだ、荀イク。

115 :仇討ち 3/3:2006/11/01(水) 00:50:49
荀イクはどうしていた?殿を止められなかったのか?
いや、それより…何故ここに荀イクがいない?
恐ろしくなって出て行ったのか?
それにしてもあまりにも薄情ではないか、殿をこのまま、こんな――
孫権の体を抱えあげた時、甘寧は違和感に気付いた。
出かける前の孫権との会話を思い出す。

『本当に置いていっても大丈夫なんすね?』
『ああ、大丈夫だ。武器もあるし、私は防弾ちょっき、という物も着ている』
『防弾?』
『そうだ。これは銃から身を守れる鎧なのだ』
『へえ、そりゃいいですね』
『ああ、そうだ。だからお前は安心して―』

そう言って、開いた襟元から見せられた頑丈そうな防弾チョッキ。
…ない。
それが、孫権の体に無い。
急速に頭が冷えていく。
孫権が他に持っていた、刀と作り物の銃も探す。
無い。
――無い!!
「…あいつ、だ」
荀イクだ。荀イクが奪ったんだ。
孫権を殺し、武器と防具を奪い去り、意気揚々とこの城を立ち去ったに違いない!!
「畜生…」
荀イクを連れてきたのは自分だ。なんて馬鹿なんだ。
「殺す」
先ほどよりも強く、唇を噛む。
「殺してやる…荀文若!」

116 :仇討ち(すみません入らなかった) 3/3:2006/11/01(水) 00:51:53
@甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣、コルト・ガバメント、点穴針、諸葛亮の衣装】
※孫権を埋葬後、荀イクを探すために移動します。臥竜岡へ。
 荀イクは見つけ次第問答無用で殺します。他の人物に対しての戦闘は必要無い限り行いません。
 が、気が立っているので友好的でもありません。

117 :故郷へ 1/15:2006/11/01(水) 07:21:30
二人の旅は、終わりを向かえようとしていた。
二人は実際には、西涼はおろか涼州にもたどり着けない。涼州に行き着くためには、必ず雍州を通らなければならない。
荊州と雍州との境に踏み出すその瞬間、旅は唐突に終わる。
夜通し歩き続けた馬超と馬岱は、そろそろ陽が昇ろうとする時間に、荊州北西部の魏興郡へ着いていた。
もうすぐだ。
馬岱は今いる岩だらけの荒野の、地平線を見つめながら歩く。
もうすぐ、なんだ…………
雍州と荊州の境は、この殺風景な荒野にある。あと一時間もしないうちに、雍州に入る。
二人には、少なくとも馬岱には疲労もあり、眠気もあった。それでも決して足を休めることなく先へと進む。
死ぬための旅。
非道く暗い旅に、馬岱はほとんど何も言わずに歩いてきた。馬超に話しかけられたら、必要最低限の返事をするだけで、馬超も強いて馬岱と話そうとはしなかった。
「岱、休むか?」
だから、突然そう言われて馬岱は驚いた。
旅の終焉を目前にして、優しく穏やかな、何事もなかったかのような声を出せる馬超に。
「いい加減疲れたし眠いだろう。朝も近い」
「いいよ、俺はまだ大丈夫。速く行こう」
まったくの嘘だ。足は棒のようで、瞼は今にも閉じきってしまいそうだ。それでも、休むなんてことは想像すらしていなかった。
そもそも、今の自分達にとって休むなんてことは無意味すぎる。
アニキは何を考えているのだろうか。
自分達が何をしようとしているのか、わかっているのだろうか。
「そうか、俺は疲れた」
「……アニキ?」
馬超はザックを下ろし、その場に座り込んだ。
後ろで呆気にとられる馬岱をよそに、馬超はザックを探り始める。
まさか、また手榴弾が出てくるのではないのか? …………!!
「アニキ!」
「ん?」
馬超は首を少し傾けながら振り向いた。ザックから引き上げた手にあったのは、手榴弾ではなく拳大の木の実だった。

118 :故郷へ 2/15:2006/11/01(水) 07:22:21
「食おう、岱」
そう言われてしまえば、そうするしかない。
馬岱は馬超に近づいて、隣に座った。
木の実はすぐに皮を剥かれて四等分にされた。かつて男の喉を切り裂いたダガーで。
馬超は実を切ってすぐに口に放り込んだ。馬岱は少し躊躇したが、馬超に倣った。
それから幾つかの果実を食べ、腹を五分ほど満たした。
「朝まで休もう」
きっぱりと言い切られ、馬岱は戸惑う。
「だけど……」
「休んだほうがいい」
馬超の強引ともいえる口調に、馬岱は押し黙るしかなかった。
もう旅が……旅が終わるというときに、なぜ休もうとするのだろう。
それにアニキらしくなく、強引な口ぶりだ。
まさか、俺が死のうとするのを止めるため?
それとも、この旅の意味を気付いていなくて?
どっちも……違う気がする……
アニキは……何を……思って…………眠い……
瞼が重い。体の力が抜けていく。
夕刻から一時も休まずに歩いてきた疲労の蓄積が、座り込んでから徐々に溢れ出てきていたようだった。
馬岱の様子を見ていた馬超が、心配そうな表情で語りかけてきた。
「岱、寝てていいぞ。俺が見張りをしよう」
「けど、アニキも疲れて……」
「疲れてない、とは言えんがまだ大丈夫だ。岱は俺と会う前の分も溜まっているんだろう」
言われてみれば、確かにそうかもしれない。董卓との戦い。何者かの、凄まじくも一瞬のことだった襲撃。陳宮の死。
それらによる肉体的、精神的な疲労が、今になって出ているのかもしれない。
でも……だけど……俺は眠れない。
アニキが……アニキがいつ……俺のために……眠っている間は……アニキを止めることはできない……
それに……
なんだろう……この予感は……とても……不吉な…………眠い…………

119 :故郷へ 3/15:2006/11/01(水) 07:23:21
夜目の利く黄忠の目には、遠くに、百歩歩いても足りない遠くに、座り込む二人の姿が見えていた。
馬超と馬岱、ということが黄忠にはわかった。
その体躯、服、持っている物も、黄忠にはわかる。
遠くの標的に矢を当てるには、優れた弓矢と、弓の技術、そして遠きを近きのように見れる視力を持たなければならない。
百発百中、養由基・李広の再来とも謳われた黄忠にも、その力はあった。
観察するうちに、馬岱の上体が揺れ、前に倒れていく。地面に衝突する前に馬超が受け止め、ゆっくりと地面に寝かせた。
眠ったようだな、と黄忠は判断した。
馬超はしばらくこちらの方向へ背を向けて、座り込み続けた。ザックの中を探ったりもした。
時間が経つうち、馬超は突然立ち上がり、馬岱を慎重に背負い上げる。
重量を減らすためか、持っていた大きな武器をそばの岩の上に置き、先へと進んでいった。
黄忠は距離を保ったまま、馬超を追尾する。


黄忠は馬超の鋭さをよく知っている。
涼州の険しい地で育ったゆえか、元来の気質なのか、おそらく両方なのだろう。
馬超は気配や音、臭い、影、風、またの物体の位置や状態の変化など、“何者かがいる印”にとにかく鋭い。
狙撃するには、近づく必要がある。しかし、拳銃の射程内に入る前に肩につり下げている銃器をこちらに向けてくる可能性は高い。撃ち合いとなれば圧倒的に不利だ。
あえて近づき、敵意のないことを偽り安心させる手もあるが、鷹のように鋭い馬超の目から本心を隠し通し続けれるかは疑問だった。
だが諦められない。あの銃は宮廷で献帝の部下が持っていた、弾丸を怒濤の勢いで連射できる銃によく似ている。おそらく、すべての支給品の中でも上位の部類だろう。
ゲームはまだ続く。あれを手にすれば、この先はるかに有利だ。
手にしなければ、不利だ。
ゲームに身を委ねた黄忠にとって、それは深刻な問題だった。

120 :故郷へ 4/15:2006/11/01(水) 07:24:32
黄忠は馬超が岩に置いていった武器を眺めた。
狼牙棍。鎧が発展した未来において重宝された武器ということを、黄忠は知らない。
これもまた、鎖鎌のように使えるものかもしれない。
興味本意で未知の形の武器を岩から持ち上げた。
すると、それまで棘のついた金属部に隠れていた物が岩から滑り落ち、空中で止まった。
……小刀?
持ち手に環状の空洞が空いた形の小刀が、上下に二十本ほど連なっていた。二十本の小刀の上には、黒い球体。下部には輪の付いた蓋のようなものが見える。
球体の輪と、小刀の空洞すべてを、一本の植物の蔓が通り、両端は結ばれている。
そして黒い球体は、別の蔓によって狼牙棍先端の棘に縛り付けられている。
考える間もなく、小刀の重みに耐えかねて球体の蓋が開いた。
黄忠の全身を阿寒が巡った。


後方から爆発音が聞こえた。
馬超が振り返れば、遠くに赤い光が見え、すぐに消えて暗闇となった。
馬超は慎重に、寝ている従弟をその場に下ろした。
そして幼い頃いつもそうしてやったように、彼の黒髪を優しく撫でた。
不要であろうジャベリンは地面に転がしておき、手榴弾の入ったザックを左肩にかける
それからMP5を両手に持ち上げ、静かに、それでも迅速に、光のあった方向へ進んでいった。

121 :故郷へ 5/15:2006/11/01(水) 07:25:42
涼州の雪原を、四つの騎馬が駆けていく。
先頭の一人は、他の三人とはだいぶ差を付けている。馬は疾風のように駆けているのに、馬上の少年は涼やかな顔だった。
少年は一度後ろを振り返り、三つの騎馬が遠くに見えるのを確認すると、手綱を緩めて速度を段々と落としていった。
馬が止まるころに、ようやく三つの騎馬が少年に追いついた。三人とも、先を駆けていた少年より幼い少年だった。
「休、鉄、遅いぞ」
「アニキが速すぎるんだ」
休と呼ばれた、“アニキ”より幼い少年が吠え立てる。
「ずるいぞ! 一人だけいい馬乗って!」
「この馬、お前が乗ったときはどうだったかな」
「う……」
言葉に詰まる休を、休より幼い鉄と呼ばれた少年が慰める。
「しょうがないよ。昔からアニキは凄かったじゃないか。それに休兄だって、並の騎兵よりかはうまく駆れるんだから」
「そういう問題じゃねえっ」
アニキは二人を見ながら微笑むと、一番幼い少年に声をかけた。
「岱、お前は上達したじゃないか。休達と併走できるなんて」
岱と呼ばれた少年は、褒められるのが恥ずかしいのか、頬を赤くさせた。
「そ、そんな……従兄上が教えてくれたおかげです」
「教えをよく呑み込むのも才能さ」
アニキは親愛の印に、岱の頭に手を伸ばし、その髪をゆっくりと撫でた。岱は頬のみか、顔一面を赤くさせていく。その様子を見て、またアニキが微笑む。
「あーっ、岱だけずるい!」
「アニキ、僕の髪も撫でてよ!」
「…………」


髪を撫でられる感触に、馬岱はほとんど微睡みながら薄く目を開けた。
ぼやけた視界に、見慣れた後ろ姿が見えてくる。
アニキ、武器を持ってどこに行くんだろう。
狩りに行くんなら、俺も連れてってほしい。戦に行くなら、俺も戦列に加えてほしい。
けど、どっちも違う気がする……
なんだろう、この予感は。行ってしまったら、いけない気がする。もう手の届かない場所に行ってしまう気がする。
止めなくてはいけない気がする……でももう……あんなに遠い……

122 :故郷へ 6/15:2006/11/01(水) 07:26:42
両腕両足は大丈夫、というにはずいぶん痛かったが、とりあえず動かせるようだ。
四肢を使って、痛みを耐えながら黄忠は起きあがった。
自分の体を見下ろす。
服が焼けこげ、穴が空いていたりやぶれていたり、大きな破片が突き刺さっているのが見える。皮膚は焼けたり血が流れていたりで、赤く、また黒かった。
体中が痛く、感覚を失って痛みすらない場所もある。焼けた箇所が、空気にしみてズキズキする。
しかし、生きている。
生きているのだ。
馬超は尾行者は死んだか、相当の怪我を負ってると思いこんでいるだろう。あれほどの威力の武器なのだから、まともに受ければ死んでいるのが普通だ。
黄忠は阿寒と武人の勘に従って、狼牙棍を投げた。
ただでさえ重いものであろうに、短刀が二十も付いているのだから、常人では持ち続けることも難しい。馬超もそのことは計算してたに違いない。
それでも黄忠は投げた。
それから全力で逃げ出した。
全盛期の体なら、もうちょっと投げれただろうし、もうちょっと逃げれただろうに……なんでワシだけ老人のままなんじゃ……
痛みを耐えながら、黄忠は前方を見る。
馬超が、近づいてきていた。
しつこいのう。
黄忠は右手に拳銃グロック17を握りしめ、立ち上がった。
両足の痛みがいっそう大きくなるが、その痛みに耐えさえすれば、普通には動けそうだ。
走って逃げるか? 馬超はおそらく、追ってはこない。自分と従弟の防衛が目的なら、深追いはしない。
だが、武器はどうなる?
武器は手に入らない。あの強力な武器は。この非道い体が治るにはしばらくかかる。手負いの体だというのに、拳銃だけで生き残るのは厳しい。
それに、馬超の手の内にもう一つ強力な武器があるのもわかった。それも、欲しい。
形成はますます不利になった。だからこそ、逃げるわけにはいかない。
幸いこの荒野には隠れることができ、盾にもできる岩が多くある。
馬超とて、この暗闇の中で動き続けるこちらの位置をぴたりと当てることはできないはずだ。
あの爆発物に気を付けながら、慎重に接近していけば、あるいは……
黄忠は痛みを抑えて歩き出した。

123 :故郷へ 7/15:2006/11/01(水) 07:27:47
爆発した場所へ近づくごとに、血と硝煙の臭いが漂ってくる。
ただし肉の焦げた臭いはしない。爆発を受けた相手は、すでに遠くに離れている。
逃げたのか?
辺りを見渡す。ほとんど暗闇で何も見えない。見えないが、何かが蠢く気配があるように感じられた。
馬超は元来た道を少し戻り、振り返ると、岩陰に身を伏せた。
岩陰から少しだけ顔を除かして、前方を見渡す。
右斜めが気になった。
その方角へ、耳を集中させる。
かすかに吹く風の音。
風に吹かれて、砂が地肌を滑る音。
滑る音が止み、砂の上から重みがかかる音。
肉の焦げた臭い。
馬超は手榴弾を大きく投げつけた。
黒い球体が暗闇に消えると同時に、馬超は岩陰から少し出てMP5を連射した。
ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ


黒い球体が、あの爆弾だと気付いたときには、馬超の銃が轟音を鳴らせていた。幾多の弾丸がそばを通り抜け、黄忠は急いで岩陰に飛んだ。
このままじっとして爆発に巻き込まれたら死ぬ。しかし爆発を避けるために岩陰から飛び出したら、ばらまかれる弾丸に少なからず当たってしまうだろう。
ならばもう、選択は一つしかない。
馬超の豪腕によって投げられた黒球は、弧を描きつつも恐ろしい速度で黄忠に迫ってくる。
グロック17。黄忠はこれを手に入れた時、誰も寄りつかない漢中最北部で、一人射撃練習を行ったのだった。
百発百中ではないにしろ、相当上達したはずだ。飛ぶ鳥だって落とせた。だから、撃てる。
そう黄忠は信じつつ、前方上空に銃口を向けて撃った。
光が空を覆い尽くした。

124 :故郷へ 8/15:2006/11/01(水) 07:28:24
冷たく体を打つ夜風に、馬岱の意識は覚醒した。
急いで起きあがり、周囲を見渡す。
「アニキ?」
どこを向いても暗闇があるばかりで、返事はない。
「アニキ、寝ているの?」
立ち上がり、周囲を歩き回る。馬超の姿は見当たらなかった。そればかりか、馬超の荷物までもが見当たらない。
手榴弾の入った荷物。
あるのは無造作に置かれたジャベリンと、投げナイフが抜き取られた馬岱の荷物だけだった。
まさか―――
時計も見れば、時刻は馬岱が寝始めた時間からそう経ってはいなかった。
アニキが強引に俺を休ませようとしたのは、すでに迫ってきていた敵を倒すため?
そのことを、俺に心配させないため?
―――俺を守るため?
ジャベリンを背負いシャムシールを握って、馬岱は走り出した
「アニキぃ!」
どこにいるかなんて、当然わからない。それでも走った。
馬超はこのままでは、また自分のために人を殺してしまう。
だけど、自分の力じゃ馬超を止めることはできない。
だから武器を持った。
アニキが俺のために手を汚すくらいなら、その前に俺が―――
馬岱の思考は、数時間前に聞いたばかりの連続音に遮られた。

125 :故郷へ 9/15:2006/11/01(水) 07:29:24
赤い光が空に満ち、馬超は目が眩んで引き金から指を離した。
敵がいるはずの位置を見てみれば、その姿が赤く映し出されていた。
岩の後ろ、岩から太い首と銃持つ両手を覗かしている老人。同じ五虎大将の黄忠だった。
知った所で、馬超は驚きもしなかったが。
機関銃を黄忠に向け、引き金を引こうとした。
「アニキぃ!」
忘れもしないその声に呼びかけられて、馬超は即座に横を向いた。
遠くの、光がかすかに差している場所に、従弟の姿があった。
「戻れ!」
光が消え、馬岱の姿も消える。
撃ち遅れた―――急いで馬超は岩陰に戻ろうとしたが、渇いた銃声が暗闇に響き、右腿に衝撃と熱を受けた。
よろめきながら、岩陰に伏せる。


目がくらんだせいで、正確な狙いをつけられなかった。
胴体を狙ったつもりだったが、ちゃんと当たっただろうか? 馬超の姿はもう岩陰に隠れて見えない。
その代わりか、はっきりとさらけ出されている無防備な姿があった。
姿は黄忠の方に近づいてきていた。


岱、岱はどこだ?
腿が痛く、大きな異物感がするが、今は気にしている場合ではない。
馬岱も賢い。下手に出るような真似はしないだろう。そう思いたい。
だけど、俺に向かってきている気配が、ない……?
本当に戻ってくれていればいいが、俺の言うことを正直に聞くほど馬岱は素直じゃない。どこだ……?
とりあえず、黄忠をさっさと済ましてしまおう。それが一番いいはずだ。
音を聞く。臭いを嗅ぐ。気配を感じ取る。
黄忠の気配は、馬超から弧を描くように移動していた。
手榴弾を一つ取り出し、ピンを外す。
黄忠のいるであろう場所に向けて、投げようとして―――黄忠の気配のそばから、慌ただしい足音が聞こえてきた。
「―――!!」
手榴弾は別の彼方へと飛んでいき、大きな爆発を起こした。

126 :故郷へ 10/15:2006/11/01(水) 07:29:59
馬超の機関銃が向いていた先、そこに敵はいるはずだ。
馬岱は推測し、急いで進んでいった。
俺が、俺が殺さなきゃ、アニキが殺してしまう。アニキはもう、もうこれ以上殺しちゃったらダメなんだ。
シャムシールをしっかり握りしめ、暗闇を闇雲に進む。
「そんなに急いでどこに行くつもりで?」
急に、前から老人の声が聞こえた。どことなく、聞き覚えのある声だった。
「貴様が―――」
馬岱の声は、途中から爆発音に遮られた。光が馬岱の元にも届き、馬岱と、馬岱に声をかけた人物が照らし出される。
馬岱は目を見開いた。
数歩先に老人が立っていた。
「黄忠殿……」
「お久しぶりですのう」
右手に鎌を持っているが、奇妙にも鎌からは鎖が伸び、途中で左手に持たれている。
左手は小刻みに動いて、左手からの先の鎖は宙を回って円盤のように見えた。鎖の先端には、分銅らしきものが付いているようだ。
辺りが暗闇に戻った瞬間、黄忠の左手から鎖が放たれた。
それがあまりにも速く、馬岱はまったく反応できなかった。結果、シャムシールがあっという間に巻き取られてしまう。
急いでジャベリンを抜く。だが構える間もなく、大きな皺だらけの手の平がぬっと伸びてきて、馬岱の首を掴み引き寄せた。
左手で馬岱を引き寄せた黄忠は、右手を銃に持ち替えていた。それを、馬岱のこめかみに突きつける。
「黄忠殿……なんで……」
「ゲームに乗ることにした。それだけじゃよ」
寒気がするほどの冷徹な声だった。
黄忠は馬岱のジャベリンを捨てさせると、馬超がいるであろう暗闇の先に向かって叫んだ。
「銃をその場に置け! それとも、大事な従弟ごとワシを撃つつもりかね!?」
自分には暗闇にしか見えないのだが、どうやら黄忠には馬超の姿が見えているようだ。機関銃をこちらに向けている馬超が。
少しして、金属が地に叩きつけられる音が聞こえてきた。
「持ってる武器すべて捨てろ。そしてこっちに来るんじゃ。ゆっくり、いや、速くは来れんか」
重い沈黙がしばらく訪れる。
その間、馬岱は一心に願っていた。
アニキ、俺のことなんかいいから、ここに来ないで……

127 :故郷へ 11/15:2006/11/01(水) 07:30:34
淡い願いは、徐々に近づく、地に何かが引きずられる音に破られる。
「アニキ……!」
馬岱の眼前に、右足を引きずりながら歩く馬超の姿が見えてきた。
撃たれてしまったようだ。血が右足から流れ落ち、辿ってきた地面に色をつけていた。
それがあまりにも悲痛で、馬岱は自分を呪った。
俺のせいだ。
俺のせいで、アニキは傷付けられたんだ。
「止まれ」
言われた通り、馬超は止まった。
「ワシの目的は、あなたが持っていた武器だ。大人しくしてくれれば、ワシは武器を回収して離れるさ」
馬超はしばらく、黄忠を見ていた。嘘はついてないか、気が変わらないか、それらのことを見定めているように。
「岱には手を出さない、と約束してくれ」
「約束しよう。馬岱殿は後から解放する。あなたは馬岱殿が戻るまで動かないでいてくだされ」
黄忠は馬岱を連れて、移動する。馬超の周りを迂回し、馬超の血痕を辿り始めた。
途中で振り返る。
暗闇に消え入りそうな先に、馬超が立っている。
じっと、馬岱を見つめて立っている。
ふと、馬岱はこめかみの硬い感触が消えていることに気が付いた。
代わりにそれは、馬超へと向けられていた。
皺のついた指が、引き金を引いた。

128 :故郷へ 12/15:2006/11/01(水) 07:31:44
馬超は黄忠に言われた通り、全く動かなかった。
黄忠は約束を守る男だということは、よく知っている。ゲームに乗っても、狂気に染まったわけではないだろう。自分が動かないかぎり、馬岱は無事だ。
だから。
銃を向けられても、馬超は動こうとしなかった。
ただじっと、馬岱を見つめていた。
だから。
銃声が鳴ったのに、自分が生きているとわかった時。
銃声から少し遅れて馬岱が倒れた時、いったい何が起こったのか、馬超は即座に理解できなかった。
時が遅くなったかのように、ひどくゆっくりと前に崩れていく様子を、ただ眺めていた。
「た……い…………?」
馬岱は倒れる途中で、何かを伝えたそうにこちらを見て、そして倒れた。


馬超は危険すぎる。
その手練れや能力もそうだが、もっと恐ろしいのは、平然と、涼しい顔で人を殺せるということだ。
人を殺すことを、なんとも思っていない―――殺意だとか、躊躇だとか、快楽だとか、そんなものは微塵も存在しない。
殺すべくして殺すだけ。あるいは、殺す意味すら考えてはいないのかもしれない。
今のうちに排除しなければいけない。じゃなければ、必ず厄介な存在になる。
銃を向け、その額に狙いを付ける。
予想通り、馬超は動こうともしない。
あんたの志は、誰かを守るために命を尽くすというのは、心から賞賛しよう。ワシには、それができなかった。
約束は守る。さよらなじゃ、馬超―――
引き金を引こうとする。
突如、視界に入り込んでくる影。
馬岱が腕を伸ばしながら、黄忠の右腕に飛びついてきていた。
両手が黄忠の右腕を掴み、抱え込むように引き寄せる。
不意なことに大きく腕が動き、銃口は馬岱の方へと向く。
引き金が引かれる。
馬岱の胸に赤い穴が空いた。

129 :故郷へ 13/15:2006/11/01(水) 07:32:31
俺が死ねば、アニキは『岱を守る』ということから解放される。
『岱を守る』ために、人を殺す必要はなくなる。
無意識に、そう思っていたのかもしれない。
じゃなければ黄忠の腕を、大きく引き寄せて自分に向けさせることなんてしなかっただろう。
“アニキに当てさせないため”には、そこまで動かす必要は明らかになかったのだ。
アニキは……?
馬岱は倒れながら、必死に前方を見た。
馬超と目線が合う。
一緒に帰ろうだなんて、俺が愚かだった……
俺が一人で死ねばよかったんだ……そうすればもう、アニキは自由だから……
ありがとう……ごめん……


黄忠は驚きはしたが、すぐに行動を再開をしようとした。馬超を撃つということを。
だが、馬岱の両手は撃たれてなお黄忠の右腕を固く掴んでおり、左腕を使ってようやく解くことができた。
馬岱が崩れていくのを視界に認識しながら、銃口を馬超に向け直す。
人体が地面に倒れる音を聞くとほぼ同時に、馬超に向けて第二撃を放った。
その時に、すでに馬超は動いていた。
撃たれる直前にしゃがんでかわし、落ちていた槍を拾うのを黄忠は見た。
黄忠はろくに標準を定めずに三発目を撃ち出した。
焦っていた。
なんだ、この巨大なる負の何かは。
濃く強く、全身にまとわりつく気配のようなもの。
押し潰されてしまいそうで、毛が立ち肌が張り詰める。
先程まで戦っていた時は、不気味なくらい殺気も何もなかったのに―――
弾丸は馬超の脇腹を、削って通り抜けた。それでも馬超はひるまず、槍を肩に担ぎ上げた。
黄忠が急いで隠れようと思った時には、馬超は一歩踏み出しながら立ち上がり、同時に豪腕をうならせ槍を投擲していた。
―――ああ。
槍が、風を切りながら黄忠に迫っていた。避けるには、もう遅かった。
―――もうこれで、誰も殺さなくてすむのか。
胸を風が吹き抜けていくような感覚を最後に、黄忠は事切れた。

130 :故郷へ 14/15:2006/11/01(水) 07:54:45
銃弾は心臓近くに撃ち込まれていた。
大して大きくない穴から、大量の血液が湧き出てくる。目は馬超の顔を見てはいるが、焦点が合っていない。腕も足も、まったく動こうとしない。
もう死ぬ。
すぐにわかったことだった。
馬超は馬岱の体の下に腕を通し、頭と上体を抱え込んだ。
「こうちゅ……ど……は……?」
かすれた声が、かすかに開けた馬岱の口から聞こえてくる。
殺した、と答えそうになって、喉に留める。
「去った。弾切れになったのかもしれん」
黄忠は馬超達のすぐそばで、胸に槍を生やして横たわっているが、馬岱は知らないようだ。銃声も、朦朧とする意識の中ではよくわからなかったのだろう。
「……よかった……」
馬岱は目を閉じて、顔を安らげると、そのままの表情で言った。
「も……れで…れの…めにひと……ろさないで……」
馬岱の声は、かすれてとても聞き取りにくかったし、聞き取れない部分をあった。馬超はそれでも、馬岱が何を言っているのかわかっていた。
「……んおれ……き……れ……」
「岱」
馬岱を呼びかける馬超の声は、どことなく、脆い響きを持っていた。
「すまなかった」
「え………?」
驚いてかすかに表情を広げる馬岱に、馬超は同じ言葉を続けた
「すまなかった」
「あや……なんて……きらしく……よ……」
「俺は、岱を苦しませていた」
「あにきは…るくな………なにもわ………い……れ…みが…て……」
「すまなかった。本当に」
馬岱の閉じた目から、静かに涙が溢れ出ていく。それらは頬を流れ落ち、馬超の手のひらに溶け込んでいく。
「あり………あに………れ……………た……に……から……」
「岱」
馬超がもう一度呼びかける。呼びかけることしかできなかった。
「…いてるのあ………………」

131 :故郷へ 15/15:2006/11/01(水) 07:55:59
それから徐々に、馬超の腕の中から温もりが消えさっていく。
完全に消えてなくなったときに、馬超は立ち上がった。


岱はいなくなった。
岱を守るために、一緒に西涼へ帰る必要もなくなった。
もう“これ”は、岱ではないのだから。
だけど
人殺しを繰り返す気ももうない。
岱が見たら、悲しむだろうから。
岱を二度と、悲しませてはいけないから。
「岱、続けよう……俺達の旅を……」
馬超はすべての武器を地面に捨て、冷たくなったそれを背負い上げた。
背負ってから、よろめき倒れかける。脇腹と腿の傷。そして血が流れすぎていた。
「もうすぐ先だ。俺達の故郷は……」
ゆっくりと、前へ歩き始める。
途中で何度も倒れかける。何度も支える手が重さに負けてしまいそうになる。
そのたびに馬超は歩みを止めて、すぐに足を踏み出す。進むほどに、何度も足を止める。足を止めるだけ、また足を進める。
また一度、馬超が止まる。
いつの間にか、東の空が明るくなっていた。
「覚えてるか? 休と鉄と、俺と岱とで馬を駆り競った日々のことを……
もう一度、あの日々に戻ろう……あの平和な日々に……」
そして進み始める。
血の道筋を、跡に残していきながら。




【黄忠 馬岱 馬超 死亡確認】

※高威力手榴弾×2、MP5、ダガー、ジャベリン、シャムシール、サバイバルナイフ、グロック17、鎖鎌は魏興に放置。
※投げナイフ×20、狼牙棍は壊れました。

132 :出会いの数だけ繋がる物語 1/5:2006/11/02(木) 16:29:27
出合ったとき、兄の部下であったその男は狂っていた。

「『桂陽デ待ツ 猫耳 キヲツケロ』……?」
突然高熱を出して寝込んだ曹操のために薬草を摘んできた孫尚香を待っていたのは、
仲間たちではなく地に刻まれた謎の書き付け、そしてちろるちょこ1個であった。ちなみにきなこ味。
「猫耳……。って、猫の耳よねぇ、やっぱり」
凶暴な山猫でもいるのかしら。でもそのくらい、呂蒙にどうにかできない訳が無い。
病を得ている曹操を動かしてまで、移動する訳も無い。
よっぽど大きな群れだったのかしら? でも猫って確かあんまり群れないし。
そもそも耳だけに注意を促している意味がわからない。
「まぁいいわ、桂陽へ向かえばいいんでしょ」
ひとり呟くと、ちろるちょこを拾い上げ地面の文字をかき消した。
その瞬間。尚香の武人としての感覚が、何者かの存在を彼女に告げる。
「誰っ!? 出てきなさい!」
彼女の勝気な性質が、逃走より闘争を選ばせる。
がさがさ、という音と共に木陰から男が姿を現した。
いや、それは男と呼べるのだろうか――
「……潘璋? その姿……」
獣のような目。膚を覆う柔らかそうな毛。おかしな形に変形した口。
そして何よりも目に付く、
「猫耳……?」
キヲツケロ。仲間の警告が脳裏を横切る。でも、あれは潘璋じゃないの。
「潘璋。私よ。孫尚香よ!」
「……」
潘璋の面影を持つソレは答えない。
「姫……戦姫…萌え、……殺ス!!」
主君の妹に飛び掛るソレ。もはやそれは潘璋でなく、気の狂った一匹の獣。

133 :出会いの数だけ繋がる物語 2/5:2006/11/02(木) 16:37:07
とっさに飛び退り距離を置こうとするが、
「く、来るな、やめなさい!」
歴戦の猛将と、武芸を嗜むとはいえ戦場に出たことなどない姫君。
どちらに分があるかは一目瞭然であった。
唯一潘璋に勝る敏捷さを武器に立ち回るも、既に人間でなく獣と化し始めている男に組み伏せられるまでさほど時間はかからない。
あぁ、素直に逃げればよかったんだ――いくら悔やんでも後の祭り。
死の覚悟を固めながら、それでも弓腰姫は戦う意思を捨てない。潘璋の武器は左腰。右足はなんとか動く。
全身で圧し掛かる潘璋の涎が彼女の顔に滴り、動かそうとした足が男のそれに押さえつけられる。
――死ぬのなんて怖くないわ、そうね、悔しいのは玄ちゃんに逢えなかったことだけ……
ばりばりと服と皮膚を引き裂く音。胸元から下腹にかけて、尚香の白い裸体が晒される。
そこにくっきりと刻まれた赤い線から、小さな血の珠がころがった。
尚香の顔から血の気が引く。痛みよりも恐怖。戦場で女が慰み者にされるのは世の習い、でも私は玄ちゃんだけのものなんだから!
玄ちゃん以外の男に犯されるなんて絶対嫌、嫌、嫌よ!!
「嫌、いやぁ、離してぇ」
体術も何もない。頭の中がまっしろになって、めちゃくちゃに手足を振り回す。
「誰か、助けてっ、お願い助けて! 誰かあぁぁ!!」
男の舌が尚香の傷を舐め上げ、血をすする。おぞましい感覚に涙が溢れる。どこからか甘ったるい声が聞こえた気がした。
かぱっと潘璋が口を開ける。
「あ……」
その瞬間尚香は悟る。犯されるのではない、文字通り『食われる』のだと。
安堵と共に彼女は力を抜き、目を閉じた。それならいい。玄ちゃんへの貞操を守れるのなら諦められる。
細い首筋に、人間のものならざる牙が吸い込まれようとした、まさにその瞬間―――

134 :出会いの数だけ繋がる物語 3/5:2006/11/02(木) 16:38:54
「やっかましい! ぎゃあぎゃあ騒ぐな! ヒナたちが起き出しただろうが!!」
ぶんっと風を切る音がして、圧し掛かっていた男の体温が消えた。
見上げると堂々とした偉丈夫が長い槍のようなものを持ち、仁王立ちしている。
なぜか頭の上で鳥のヒナがぴよぴよと鳴いていた。
「む、まだ居たか……」
後から現れた偉丈夫はそう呟き、頭のヒナをそっと持ち上げて地に横たわった尚香の上にぽんと置いた。
そして潘璋に向き直る。
「なんか分からんが貴様気色悪いわ! なんだその耳! ウザいにもほどがある!」
機嫌の悪さを丸出しに、得物を振りかざし男は潘璋に飛び掛っていく。
男の技量は確かなものだった。風のような速さと重い斬撃を見事に両立させた身のこなし。
兄の下にもこれほどの技量のものはそうそう居なかった。
少し甘寧に似た戦い方、と武の心得を持つ尚香は思う。……潘璋より、明らかに上だ。
斬りあう事数合。不利を察した潘璋が離脱する。
男は深追いせず、ふん、と鼻を鳴らしてそれを見送った。

135 :出会いの数だけ繋がる物語 4/5:2006/11/02(木) 16:44:11
「あの、ありがとう。助かったわ」
「……別に貴様を助けた訳ではない。鳥の安眠のためだ」
ぶっきらぼうに言い、尚香のほうに手を伸ばす。
一拍考えて、その大きな手にちいさなヒナを置いた。
「ねぇ、貴方の名前は?」
「教える義理が無い。とっとと消えろ、女」
言葉は冷たいが、半裸の体に打ちかけられた男の上着は暖かかった。
「ありがと。でも『女』はいただけないわね。私には孫尚香という名前があるのよ」
「……なんと。貴女が孫夫人か」
驚いた口調で、男がまじまじと尚香を見る。
「あら、私を知ってるの? なら玄ちゃんとこの武将さんかしら」
「……魏延、字は文長だ。貴女があのわがまま……いや、じゃじゃ馬……あー、と」
「いいわよ、わがまま娘でもじゃじゃ馬姫でも。本当だもの」
居心地悪そうに魏延が視線をさまよわせ、手のヒナをつついた。
近くの木の裏に鳥の巣が置いてある。その中には魏延の手にあるものと同種のヒナ。
「……飼ってるの?」
「違う! こいつらは非常食だ! 断じて飼ってなぞおらん!」
鼻息荒く言い放つが、鳥の巣を拾い上げる仕草は優しく丁寧だ。
2人並んで木陰に座る。尚香は巣の中からぐったりとした一羽をすくい上げ、手に乗せた。
「この子だけ元気無いのね」
「あぁ。バタイはエサを与えても吐き出してしまってな……」
……バタイ? この子の名前?
名前付けてるのかおい、とツッコミたい衝動をなんとかこらえる。
「すり潰した野草を与えてみたのだが、そいつだけ何も食べてくれんのだ」
尚香が優しく指先で撫でると、バタイと名づけられているらしいそのヒナはぴぃとか細く鳴いた。


136 :出会いの数だけ繋がる物語 5/5:2006/11/02(木) 16:51:17
魏延の膝の上の巣から、いちばん元気な一羽がぱたぱたと這い出ようとする。
「こらバショク、おとなしくしてろ」
ぴーぴーと元気一杯に抗議するそのヒナをつまんで巣に戻す。
「……この子達、みんな名前付いてるの?」
「あぁ? まぁ、なんとなく……この生意気そうなのがヨウギ、こっちのおとなしいのがキョウイ、
 この偉そうなのがコウメイだ」
どこかで聞いたことある名前のような気がした。
「そいつらはそのうち食う予定だからな、殺しに行く奴らの名を付けてみた」
「そ、そうなの……」
コウメイはやっぱり孔明だったか、と尚香は遠い目をした。
魏延と諸葛亮の仲の悪さは自分も知っている。知っているが、その嫌いな相手の名を鳥に付ける思考回路が分からない。
「オウヘイというのも居たのだが、初めてのエサを与える前に死んでしまってな……。
 もちろん、食ったぞ。食ったからな」
尚香とは別方向に遠い目をする魏延。目には若干涙が滲んでいる気がしなくもない。
なんとも言えない空気が流れる。
「え、えぇとね、私、桂陽に行かなきゃならないの。良かったら一緒に来てくれない? 魏延さん」
しばし考えて魏延は答えた。
「……どちみち禁止区域は抜けねばならんからな。まぁよかろう。お供しよう、奥方」


<<どさくさまぎれに姫と騎士/2名>>
魏延【ハルバード(少々溶解)、鳥のヒナ(5羽)】
孫尚香[切り傷]【シャンプー(残り26回分)、薬草、ちろるちょこきなこ味】
※桂陽へ。禁止エリアから出るのが最優先です。
※魏延は馬謖の名をようやく思い出した模様。

@潘璋[右腕に深い傷]【備前長船】
※北へ逃げました。行き先は不明。萌えキャラに出会い次第殺すつもりです。


137 :氷の微笑と復讐姫1/4:2006/11/11(土) 00:43:50
荀イクが臥竜岡に着いた時、そこはもぬけの殻だった。
「部屋の様子から、外へ出てからそこまで時間は経ってはいないようですね。」
少し前まで使われていたと思われる浴室、そして調理場にあった、水の張られた食器。
この二つの事から、諸葛亮と思われる人物が臥竜岡から出て、それほど時間が経っていない事は明白だった。
だが、ここで一つの問題が生じた。
「諸葛亮だけだと思っていましたが…」
水の張られた食器は四人分あった。
「ふむ、これは少々厄介かもしれませんね」
四人以上で徒党を組んでいる。それは高確率でこの殺し合いには乗ってはいないという事である。
「私一人では荷が重いかもしれませんね」
4人の中に武官が混じっている可能性があり、さらにその一団にはあの諸葛孔明が混じっている。ここまで何人もの参加者を殺してきた荀イクといえどこれはさすがに分が悪い。
「誰か、使えそうな駒でもいればいいのですが」
この殺し合いに乗る可能性があり、かつ武勇に優れた者。荀イクは何人かそのような駒を作り上げた。だが参加者に比べて駒は圧倒的に数が少ない。
「できればもう2,3人欲しい所ではありますがね」
そのような事を呟きながら荀イクは臥竜岡を後にした。

138 :氷の微笑と復讐姫2/4:2006/11/11(土) 00:44:27
曹操を探す、諸葛亮を探す、駒を探す、目的も定まらず歩くこと数十分。空も白み始めた頃、荀イクはそれに出会った。
目の前に広がる光景。蛆の沸いた死体と下半身を露出したま動かない死体、そして横たわり、眠っている女性。
(…これは、あの女性がやったのでしょうか)
容姿から察するに南蛮の人間なのだろうか、「ん」と艶のある声を出しながらその女性は、目を覚ました。
「おはようございます」
柔和な笑みを浮かべ、荀イクはその女性、祝融に呼びかけた。
「!!」
その声に祝融は警戒の色を顕にし、首だけを動かし声のした方を見た。
「漢、人…!」
祝融がよろよろと立ち上がる。まだ完全に毒は消えておらず、まだ体をうまく動かせない。
「大丈夫ですか?」
「うる、さい…!漢人、は、殺す…!」
その眼差し、その言葉から、身を焦がす程の憎悪を荀イクは感じとった。
(これはいい駒になるかもしれませんね)
荀イクは心の中で微笑を浮かべた。
「その言動から察するに漢人に並々ならぬ憎悪を抱いているようですね」
そう言いながら荀イクはトカレフの銃口を彼女へと向けた。
「できれば訳だけでも話して頂きたいのですが」
「だれが、漢人なん、かに…!」
敵意を隠さずに祝融が言い放つ。
「察するにそこの死体が関係しているようですが」
「!!」
荀イクが孟獲の死体へと目を向けると、祝融は動揺した。
「(やはり、蛮族は単純ですね)…仇討ち、の類ですか?」
「…だったら、どうした」
銃を向けられているにも関わらず、祝融は気丈に言い放つ。
「そうですね、貴方の協力でもしましょうか」
「は?」
予想外の返事に祝融の思考は一瞬固まった。

139 :氷の微笑と復讐姫3/4:2006/11/11(土) 00:45:10
「見たところ貴方には武器はない。私の持っている武器でよろしければ、一、二個差し上げます。それで貴方の仇を討ちに行けばいい」
「どうして、そんな…」
「真似をするのか…、ですか?」
穏やかな、どこか薄ら寒い笑みを浮かべ、荀イクは続ける。
「私はただ仲間を殺した人間に報復をしようとしている貴方に個人的に協力を申し上げたいだけです。まぁ、そちらにも協力していただきたい事はありますが」
「交換条件、ってことかい?」
祝融のたどたどしかった口調が無くなっていく。段々と正常な体へと戻っていっているようだ。
数分の沈黙。それを破ったのは祝融の方だった。
「…わかった」
「それは何よりです」
浮かべた笑みを崩さぬまま、荀イクは安堵の溜息をついた。
「で、その交換条件っていうのは何なんだい?」
「簡単な事です。もし貴方が曹操と言う人間にあったら殺して欲しいだけです」
「曹操、か。そいつを殺せばいいんだね?」
「ええ、できれば私がこの手で殺して差し上げたいのですが、まぁやむをえません」
先ほどから浮かべている笑顔を変えぬまま喋る荀イクに、祝融の背中を冷たい物が走る。この男には逆らってはいけない。祝融の本能がそう告げた。
「じゃあ、武器をよこしてもらおうか」
「はい、ではこの二つを」
そう言うと荀イクは自分が手に持っていたトカレフ、そしてしまって刺身包丁を祝融へ差し出した。

140 :氷の微笑と復讐姫4/4:2006/11/11(土) 00:46:01
「確かに受け取ったよ」
「では、貴方の仇討ちが成功することを心から祈っていますよ」
結局、終始浮かべた笑みを絶やさずに、荀イクは去っていった。
「そうそう、行くならば益州方面をおすすめします。楊州は禁止エリアになるそうですから。貴方の仇もそちらへ行ったかもしれませんよ?」
「あんたはどうするんだい?」
祝融の問いに荀イクは立ち止まって、少し考える。
「そうですね、揚州よりの地域は厄介な人と出くわしそうですから、このまま北上して司隷にでも向かいましょうか。それではご武運を」
会釈をした後、荀イクは森の奥へと消えていった。
「…得体のしれない奴だねまったく」
一息ついた後、祝融は愛する夫の墓を作った。
「悪いね、あんた。本当なら故郷に埋めてやりたかったけど」
悲しげな顔をして孟獲の墓前に花を添える。
「待ってなあんた、必ず、必ず仇は討ってやるからね」
目に復讐の炎を燃やし、炎の女神はその場を後にした。

@祝融
【偽造トカレフ、刺身包丁】
※現在、荊州南部、荀イクの言葉に従い益州へと向かいます
※漢人の男は全て殺す気のようです。馬謖、曹操優先

@荀イク[洗脳されている?、額に切り傷]【ガリルAR(ワイヤーカッターと栓抜きつきのアサルトライフル)、防弾チョッキ、日本刀、空き箱】
※現在、荊州南部、司隷へ向け北上

141 :残された者たち 1/4:2006/11/11(土) 04:30:35
死んだのだ。
感情の無い男の声と共にその名は紡がれた。
もうたった、二人になってしまった。


洞穴の外は、青白かった。
雨の後の月は驚くほど光り輝いていて、その美しさに思わず天を見上げたほどだった。
于禁が死んだ。
一兵卒から漢の左将軍にまで昇り詰め、やがて惨めな死を賜った男が、また、死んだ。
穴の入り口から聞こえてきたその事実は、張コウを意外に驚嘆させた。
・・・最初から、自分と信ずる主たちの事以外はさほど案じていなかったし、彼については、
雨に狂い、襲われ、そして軍師は腕を盗られまでした。なのに。
意外と、心にきた。
徐晃や、楽進のときに、特に何も感じなかったのは、自分がまだこの世界に
慣れていなかったからなのだと、今悟った。知りたくは無かった。
魏の誉れ高き五将軍は、もはやたった二人だけになってしまったのだ。

142 :残された者たち 2/4:2006/11/11(土) 04:31:09
月明かりは明るかった。
もうすぐ夜明けともなろう時に、森を綺羅と照らしてくれていた。
近頃、生前から然程動くとはいえなかった方寸が、しきりに震わされている。
荀攸の志や、荀ケの不気味さ。于禁の死、など。
自分はこれほどに叙情的な人間だっただろうか。いまいち、己が不透明だ。
だからと言って、ずっとここで佇んでいる訳にもいくまい。
光る月を見ながら、ようやく心を落ち着けた。
許の方を向く。鬱蒼とした木々に阻まれて何も見えなかった。
彼が何処で死んだのかなど分からないが、魂が行くならそこは許だろうと思う。
(良かったな。)
剣を天に翳し、決別に哀悼を呟く。
(良かったなぁ。ようやく死ねたな。あんた。うん。良かった。)
狂うほどには、辛かったのだろう。
その最後がどのようなものかなど知りはしないが、彼が絶望から逃れられた
ことには心から祝福を述べた。ああ、辛かったのだろうと。
ひとしきり祈ったところで、剣を下ろし、腰に帯びた。
散らかる荷物をまとめ、未だ扱いなれぬ小銃を懐に隠す。
闇へ一歩踏み出したところで、近くから地を踏み締める音がした。

143 :残された者たち 3/4:2006/11/11(土) 04:31:45
がさり。
がさり。
大地を踏み締める音が高々と鳴っていたが、今の彼にそれを直す気力は無かった。
それどころか、手に持った山刀で梢をむちゃくちゃに切り倒したいような気分だった。
(殺してしまった。)
殺してしまったのだ。ああ。
(狂っていた。曹植様が殺された。文帝陛下も殺されたのか。ああ狂っていたあの人は。)
でも。
殺してしまったのだ。無防備な背後をついてやつれた躯を地へ。縫い付けた。
不思議そうにこちらを見た、その表情が忘れられない。
時が一刻と経つごとに、後悔が襲ってくる。
自分はまた裏切ったのではないのか。あの人を。
ああでも、あの人は狂っていた。自分も殺されるかもしれなかった。
だけれど。嗚呼あの人は不思議そうにこちらを見たのだ。
何故お前が私を殺すのかと。そう言うかのように!
(つまりは結局私がまた人を信じられなかっただけではないのか。)
では殺さなければ良かったというのか。ならば主の子が肉片にされるのを黙って見ていれば
良かったというのか。そんなことができるか。あああどうすればよかったというのだ!!
叫びだしたかった。時が戻せるのならば戻したかった。たった一日で、いいのだ。
あの時、ギョウに行かなかったならば。もっと違う方向に向かっていたなら・・・・・・。
全ては妄想に過ぎなかった。時が戻らぬことなど、とうに知っている。
(・・・誰かに会いたい。)
李典や、関羽、夏侯惇。・・・いや、もう知っている人ならば誰でも良かった。
誰かに会って、何か言って欲しかった。叱咤でも批判でもいい。むしろそれが欲しい。
手にこびり付いた血糊が拭えない。誰か拭ってくれ。じゃないと泣き叫んでしまいそうだ!
(会いたい・・・誰でもいい。誰か・・・・・・。)


「文遠どのか?」


144 :残された者たち 4/5:2006/11/11(土) 04:33:07
それは生まれたばかりの幼子のような顔をしていた。
今にも喚き出しそうな心を、理性が必死に抑えているような顔だった。
・・・何故声をかけてしまったのだ。
厄介ごとになったら嫌だから無視しようと思ったのに。
「文遠どの。その、何かあったか。」
何も無かったらこんな顔しないだろうに。自分の拙さに涙が出る。
声をかけた途端涙を流して崩れ落ちた張遼を引きずって、張コウは
結局先程まで居た洞穴に舞い戻ってきていた。
なんとまあ、ほんの先程行動するぞと決意を新たにしたばかりだというのに。
まったく、ため息が出た。
「・・・申し訳、ない。」
「あ、いや貴殿についてのため息では無いぞ。うん。」
と言いつつも、いったいこの男をどうするべきか分からず、心は再び嘆息した。
張遼は見るからに憔悴していた。顔に「私は今とても後悔しています」と書いてあるのが
見て取れる程だ。自責の念が鬱々と彼を取り囲んでいて、うんざりした。
「何かあったなら聞くぞ。言いたくないのなら構わんが。」

145 :残された者たち 5/5:2006/11/11(土) 04:34:33
―――とはいえ。
大体何があったのかはなんとなく、分かっていた。
どこか見覚えの有る山刀があった。それだけで、十分だ。
ただあの男の死体を探っただけならば――もしくは他の者から得ただけならば――
これほど憔悴はしないだろうし、それはつまり良く知るものを殺し奪ったか、
もしくはあの男自身を殺し―――嗚呼。
・・・昔から、責任感の強い男だった。情に厚い、男だった。
必要に駆られて、だったのだろう。それでもこの始末だ。
自分だったら、すぐに頭を切り替えて飄々としているだろう。
心の隅でずっと責める者はあろうが、それでも平気で生きようとするに違いなかった。
(好ましくもあるが厄介な男だな。)
「儁乂どの。・・・申し訳ない。先程までは、・・・お会いするまでは、誰かに話して
 叱咤でも批判でもして頂こうと思っていたのだ。・・・でも、いざとなったら怖気づいた。」
「そんなものだ。気にするなよ。」
「もう少し・・・もう少し、だけ、時を頂きたい。必ず、私が何を、・・・したのか話しますから。
 お願いします。その時は、聞いてください。」
「ああ。聞いてやる。」
張遼はもう一度だけ「申し訳ない」と呟いて、倒れた。
眠らずにふら付いてでもいたのだろう。まあ、寝かせておく事にした。
別に急いているわけでもない。心のどこかで、何かが喚いているような気はするが、無視した。
泥のように眠る彼の顔を見て、ああもう二人だけなのだ、と今一度思った。

146 :残された者たち 結果:2006/11/11(土) 04:35:24
<<残された二人/2名>>
@張コウ[顔面負傷、全身軽傷]【斬鉄剣(腰伸び)、デリンジャー、首輪解体新書?、DEATH NOTE】
@張遼[爆睡中]【歯翼月牙刀、山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3】
『現在地 司隷・東の洞穴』
※張遼が起きるまでしばし休憩。
※張遼は李典、関羽、夏侯惇を探しています。
※張コウは何かきっかけがあればマーダー化も?


※DEATH NOTEに参加者の名前を綴った場合、
その人物を殺さなければならないという激しい強迫観念に囚われ、
身体能力は大幅に増加します。
※DEATH NOTEの持ち主でなくなったあとも影響は継続します。
※一度誰かが書いたあとに、他の誰かが拾っても影響はありません。
※ただ新たに名前を書き込むか、もう一つのノートに名前を書き込まれれば、持ち主に同上の影響が出ます。


147 :悩んでも仕方ない 1/4:2006/11/12(日) 04:24:23
さて、日も変わり道中が太陽の光に照らされている頃。
楊儀と不思議な仲間達は念願の呉都までもう少しと言うところで放送を聞いた。
またすぐに踵を返さなくてはならないと知り、若干の落胆を味わったが、逆を言えば禁止エリアによる囲い込みで
魏延に近づける可能性が見出せた(ような気がした)ので、気を取り直し、報告も兼ねて逆行を始めていた。

「……楊儀殿、音楽を聞きながら歩くのはあらゆる意味で危険では御座らぬか」
後ろから李典が声を掛けるが、余り聞こえてないようだ。
最初は黙々と三人揃って歩いていたのだが、そもそもの言いだしっぺの癖に、楊儀は長い道程が飽きて来たらしく、
退屈を紛らわせる道具はないものか、と考えたところ、支給品のMDウォークマンの存在を思い出したのだ。

これまで聴いた曲はどれも彼の心に活力とヒントを与えてくれたものだが、果たして次の曲はどうだろうか。
期待半分、不安半分でイヤホンを耳に差し、再生ボタンを押した。

軽快な音楽と女の歌声が流れてきた。

 もう 伏目がちな昨日なんていらない 今日これから始まる私の伝説
 きっと男が見れば 他愛の無い過ち 繰り返してでも
 自惚れとか強かさも必要 そう 恥じらいなんて時には邪魔なだけ
 清く正しく生きる それだけでは退屈 一歩を大きく

 進もう毎日夢に向かって 漠然とじゃない 意図的に
 泣きたい時には 涙流してストレス溜めない

 ほんの些細な言葉に 傷ついた だけど甘い物食べて幸せよ
 気紛れに付き合うのも大変ね 悪いとは思うけど止められない

 新しい物 大好き 詳しいの 機嫌取るには何よりプレゼント
 男では耐えられない痛みでも 女なら耐えられます 強いから

148 :悩んでも仕方ない 2/4:2006/11/12(日) 04:27:08
「……はああぁぁ……」
どうやら聞き終えたらしい楊儀が、盛大な溜息をついた。何故だか妙に落ち込んでいるように見える。
聞いている最中は拍を取ったり踊ったりしていたのに、どういうことだろうか。
「そうだよなぁ、気持ちの上でこのぐらい強くならなきゃ、本当は駄目なんだよなぁ」
そう言って、その場でうなだれてしまう。
一体何事かと思い、ぶつぶつ言っている楊儀の言葉を拾う太史慈と李典。
「……俺はこんな風に能天気に強くなれねぇ……
 つくづく凄いよな、女って生き物はよ……」
涙ながらに切々と語る楊儀。
どうも何かを勘違いしてそうな気がするが、そこについては突っ込まない。
再び大きな溜息を吐き、遠くを見る目に涙を溜め、ぽつりぽつりと述懐し始めた。
いや、ひとたび言葉が紡がれ出した以降は、むしろまくし立てていると言って良かった。

「なあ、本当は魏延とかマジでどうでもいいんだ、
 いやどうでもいいというか、むしろ絶対会いたくないって言うか……
 魏延だけじゃなくて、索敵即破壊みたいな物騒な奴とかマジ困る。痛いのとか耐えられないから、いやマジで。
 もうどっか遠くへ逃げたい……」

この殺戮遊戯が始まったばかりの頃を楊儀は思い出していた。
あのときは、魏延の形相が記憶に強く貼り付いて、とにかく逃げる事ばかり考えていた。
一度はそれじゃ駄目だと思って仲間探しや自己啓発をしてはみたものの、
やはり人間、恐怖に打ち勝つのはなかなか難しいものだ。

149 :悩んでも仕方ない 3/4:2006/11/12(日) 04:32:11
うずくまって頭を抱えている楊儀の肩に、太史慈の手が置かれた。
「……今、ここから何処かへ逃げたら、その首に付いている奴が吹っ飛ぶぞ」
待て、論点はそこじゃねぇよ! 李典は心の底から突っ込みたい衝動に駆られた。
「そ、そうだな……こいつを、こいつをどうにかしなきゃな……」
自分の首に架せられた白銀の環を握り締めて、楊儀は小刻みに震えだした。
「そうだな、では私のこの『すたんど』で一撃粉砕――」
「だー! それやったら楊儀殿死んじゃう! 死んじゃいますから!」
さすがに心の中で突っ込むに留まらず、李典は太史慈を羽交い絞めにした。
「む、そうか、破壊しようとすると爆発するんだったなこいつは」
……忘れてたのか。うっかり殺されるところだった……。楊儀は別の意味で身体を震わせる。
「しかし、実際そんな物騒なものを首に付けっぱなしというのは、怖いものですな。何らかの手掛かりがあれば良いのですが……」
そこまで言って、ふと楊儀の耳元、そして掌に握られた四角い箱に目が行く。
「そういえば、今まで楊儀殿はそこから聞こえる歌に着想を得て、行動されていたのですよね。
 一応その【音の出る箱】は支給物ですし、もしかしたら、本当に手掛かりになるものが入っているのかも」
李典の言葉に、楊儀と太史慈がぐるっと首だけで振り向いた。
「そ、それだーッ!」
いや、そこで無条件に納得するなよ! 李典は一抹の不安を覚えた。

こうして、イヤホンをひとり1つずつ、一度に2人ずつでMDの中身をあらためることになったのだが、
5曲目を李典と太史慈が聴いている際、少し遠くに人影が見えた。こちらには気付いていないようだ。
大変均整の取れた体格の女性が、物凄い形相で何やらぶつぶつ言いながら早足で去って行くのを見て、楊儀は思った。
「……やっぱ女って凄ぇ……」

150 :悩んでも仕方ない 4/4:2006/11/12(日) 04:33:58
<<楊儀くんと子義マンセー/3名>>
太史慈[スタンド使い]【ジョジョの奇妙な冒険全巻】
李典【SPAS12】
楊儀[ちょっと欝]【MDウォークマン】

※なんとか楊州まで行きましたが、禁止エリアになる為、来た道を引き返し中。現在は荊州南部辺り。
※とりあえず休憩がてら、MDの中身を一通り聞いてみることにしました。
※MDの4曲目は『THE iDOLM@STER』。
※いろいろな意味で楊儀は精神的に不安定なようです。

151 :失ったものは 1/6:2006/11/18(土) 04:12:33
深夜。
無機質な声が闇に響いたとき、曹幹は陳羣の膝からハッと身を起こした。
その声が父――正確には兄の名を呼ぶ。
その間、曹幹はじっと一点を見つめていた。
静かに瞬くあの星を。


「ちびは、寝たのか」
同じく放送で目覚め、うつ伏せになったままリストに印を付けていた郭嘉は
目が冴えてしまったのか、行儀の悪いその格好のまま
うだうだと起きていたようだった。
陳羣が寄越す不味い薬草汁のお陰だろう、身体の調子はもう大分良い。
脇腹は相変わらずしくしくと痛むが、
もともと常にどこか壊れていたようなこの身体だ。どうということはない。
傷か多少痛むほうが、かえって頭が冴えていい。

陳羣は郭嘉の問いかけに静かに頷き返しただけだった。
曹幹が羽織っていた賈クの支給品は、あの時軒下で火花を発していた。
危険かもしれない。曹幹にはこの民家で失敬した服を着せ
光学迷彩スーツと剣はとりあえず陳羣が預かっている。

静かに曹幹の眠りを見守る陳羣。
主君の子息をちび呼ばわりするとは、などと
ぎゃあぎゃあ言い返してくると思っていた郭嘉はやや拍子抜けした。
曹幹を起こさないように静かにしているのかと思ったが
どうもそうではないようだった。

152 :失ったものは 2/6:2006/11/18(土) 04:13:56
「……知っていらしたのでしょうね」
曹丕の名が呼ばれた時、曹幹は何かを確かめるように星を見ていた。
曹幹は、曹丕の死を知っていた。
恐らくは、見届けたのだ。その幼い瞳で。そして声を失った。

『この子は、この幼さで母を失い、今父である儂をも失う……
 丕……。幹を、頼む』
曹操は臨終の際、曹丕にそう言い遺したという。
当の曹幹はまだ幼すぎて父の死を理解できず、
政務の合間を縫って遊んでくれたり、
面白い話を語って聞かせてくれる曹丕を父だと思って育った。
『私は、お前の兄なのだよ』
とうさま、とあどけない声で呼ぶ曹幹に
曹丕はそう言って涙を浮かべたこともあった。

「六年」
ぽつりと陳羣は言った。
「それも、たった六年足らずでした」
曹丕が即位し、儚くなるまで僅か六年。
皇帝としての激務をこなしながらのその六年のうち、
兄が心安らかに過ごせた日々は、
幼い弟が存分に兄に甘えられた日々は果たしてどれほどあっただろう?


正直なところ、郭嘉には皇帝となった曹丕を思い描くことができない。
郭嘉の中では、曹丕は十代の少年のままだ。
まだ幼さの残る体躯には不釣り合いな、冷めた瞳を持った少年だった。

153 :失ったものは 3/6:2006/11/18(土) 04:15:28
郭嘉が曹操に仕える少し前に兄を亡くし、急に長子となったその少年は
兄が死んだ戦に従軍していたのだと人から聞いた。
その瞳は、兄の死を見たのだろうか。
今のこの幼子と同じように。

身内との縁が薄かったこの二人の兄弟は、
幼い頃から幾人に先立たれたのだろう。
いったい幾つの命を見送ったのだろう。


曹幹との出会いが鍵となったのか、陳羣は鮮明に思い出した。
晩年の記憶。老いた自分が、幾つもの命を看取った記憶を。
苦い後悔ばかりだった。
「私は……」
今こうして年若い郭嘉を目の前にしていると、
その苦さはなお苦く、毒のように陳羣を蝕んだ。
「わたしは……文若殿を、裏切った……!」

文官たちの憧れの的であり、
皆がこぞって冠の形や朝服の着こなしを真似たりもした荀令君。
その荀イクと曹操の対立。そして荀イクの死。
清流派の筆頭である荀イクの死は、皆に決断を迫った。
形骸化した漢に殉ずるのか?
魏による纂奪を認めるのか?と。

穎川の名家が二つも曹操に背いたとなれば、
文官たちに走った動揺は決定的な亀裂となってしまう。
それが内乱を呼び、大きな戦となり全てが無に帰すよりは。

154 :失ったものは 4/6:2006/11/18(土) 04:18:20
少しずつ積み上げてきた平和が崩れ、
自分が徐州で味わったような地獄を人々がまた味わうよりは。
漢に殉じた荀イクに対し、陳羣は魏を選んだ。

「でも……それも、詭弁かもしれない……」
自分は、ただ失うことが怖かったのかもしれない。
長く続いている荀家に対し、
陳家は陳羣の祖父から栄え始めた、悪く言えば成り上がりだ。
「家を……、自分を、守るためだったのかも……
 泰が、息子が、可愛かっただけなのかもしれない……!」
眠る曹幹と、息子の陳泰の幼い時の姿がふと重なった。
それを涙で濡らさぬよう、陳羣は顔を手のひらで覆った。

荀イクの息子たちは、才があるにもかかわらず冷遇されていた。
陳羣が制定した九品官人法の下で、だ。
それでも陳羣は黙っていた。
陳羣は荀イクの娘を娶っていたから、身内贔屓と思われるかもしれない。
第一、制定者が中正官に口を出すわけにはいかない。
しかし、心の片隅でこうも思ってはいなかったか。
不遇な荀イクの息子たちを見て、
自分もぼろを出せば泰が苦労をするのだ、
だから黙っていたほうがいい、と―――。

郭嘉を見る。
まだ若い頃ならば。彼が生きていた頃ならば、
自分は声高に叫んでいたのではなかろうか。
こんなことは間違っている、と。

155 :失ったものは 5/6:2006/11/18(土) 04:20:36
誰もがなあなあで済ませてしまっていることでも、
間違っているならば間違っているのだと叫ぶ。
曹操が褒めた美徳を、陳羣は若さと共にいつしか失ってしまっていた。
郭嘉を正すためにと張り切っていた頃は堂々と書いていた上奏文も、
草案も全て破棄し誰にも知られぬようひっそりと書くようになり、
陳羣は高位にあるのに何も仕事をしないと謗られた。
世渡りと愛想笑いばかりが上手くなった父は、
息子の目にどう映っていたのだろう?


「……あんたも親父になったのか。
 文若の娘なら、美人だろ?
 老いらくの恋は激しく、子供は目に入れても痛くない、ってやつ?」
重い沈黙が苦しくて、郭嘉はそんな軽口を叩いた。
からかわれて怒るかと思った陳羣は微かに笑って、
鐘ヨウ殿には負けますよ、とだけ答えた。
郭嘉は鐘ヨウの生き様を最初は面白がって聞いていたが、
全て聞き終わるころにはげんなりした顔で
やっぱあのじーさん化け物だ、と言った。

「……文若殿に、謝らなければ……」
苦しげな陳羣の呟き。
「やめておけ」
自分でも意識せず、何故かそう言っていた。
こめかみに冷たい汗が滲む。
これは、ただの勘かもしれないが。
「……やめておけ」
今度は自分の意志ではっきりと、そう言った。

156 :失ったものは 6/6:2006/11/18(土) 04:21:43
ちなみに。
陳羣の死後、曹叡は陳羣が密かに上奏していた文章を公開した。
人々はその的確さに感嘆し、陳羣に対する評価を改めたという。



<<不品行と品行方正と忘れ形見/3名>>
郭嘉[左脇腹負傷]【閃光弾×1】
陳羣【光学迷彩スーツ(故障中)、吹毛剣】
曹幹[睡眠中、失声症]【なし】
※現在冀州南部の民家。休息中。夜が明けたら陳留へ。
※賈クに教わった、誰かが近づくと小石が落ちる罠が張ってあります。
※陳羣は生前の記憶を全て思い出しました。

@魯粛【圧切長谷部】
※彼らの元へ向かっている?

157 :Baroque 1/10:2006/11/19(日) 02:33:00
緑の匂いを絡ませた風が、さやさやと心地よく吹き抜けていく。
蔡文姫達と別れた凌統、馬謖、陸遜の3人は、木陰で小休止をとっていた。

大きな木にもたれ、銃剣を抱いて凌統は仮眠を取っている。
その傍で鼻歌を歌いながら、馬謖が花を摘んでは編んでいる。意味は多分ないだろう。
暇な陸遜は馬謖の編んだ花をつついてみたりする。
「……楽しいですか、これ」
「それなりに。美しい花輪にするには手先の器用さのみならず色彩感覚や配置の感覚も問われるからな、奥が深いぞ」
物珍しげに覗きこむ陸遜の頭に、可憐な花冠が乗っかった。
「うむ、いい出来だ」
「頭の上に乗っけられたら、僕には見えないんですが」
「根性で見ろ」
「無茶言わないで下さい」
ぴちゅぴちゅと小鳥が歌を奏で、花の合間を蝶がひらひらと舞う。
殺し合いゲームの真っ最中とは思えない平和な光景。
目の前をくるくると踊る蝶に馬謖が手を伸ばし、ぱんっと叩いて捕まえようとする。
ひらっと避ける紋白蝶。もう一度手を伸ばし捕獲を試みる。再び優雅に避ける蝶。
「馬謖さん、そんな捕まえ方じゃ捕らえても潰れちゃいますよ、蝶」
「あ、そうか……。網ないかな、網」
「カバンでも使えばいかがです?」
「良案。よっし」
虫取り網にするため、自分のカバンをひっくり返してばっさばっさと中身をぶちまける。
「……あ、綺麗な石……はともかく、なんでセミの抜け殻とか入ってるんですか」
「え、見つけたから」
夏休みの思い出箱と化しているカバンの中身にあきれ返る陸遜をよそに、
空になったカバンを構えてじりじりと蝶ににじり寄る。

158 :Baroque 2/10:2006/11/19(日) 02:38:25
「ねぇ馬謖さん」
「何だ?」
「楽しいですか? バカのフリ」
構えたカバンを下ろし、きょとんとした顔で馬謖が目を瞬いた。
「……何が?」
「僕は騙されませんよ? あの諸葛亮さんの弟子がただの間抜けのはずがないって、少し考えれば分かるじゃないですか」
口元に手を当てて、馬謖が首を傾げた。ひらひらと白や黄色の蝶が舞う。
「……もしかして私は今、暗にバカだって言われてるんだろうか?」
「いいえ? その逆ですよ」
「むぅ……?」
その場にぺたりと座り込んで、難しい顔で馬謖が唸り始めた。
花を一輪摘んで一枚ずつ花びらをちぎっている。
耳を澄ますと「私はばかー、ばかじゃないー、ばかー、……」と小声で呟いていた。
……もしかして自分の穿ち過ぎで、100%ただのナチュラルバカだったのだろうか?
陸遜は一緒になって花びらをむしりたい衝動にこっそり駆られた。
とりあえず凌統の前にしゃがみこんで、頭の花冠を彼に乗せる。
そして相手が寝ているのを良い事にぶつぶつとぼやき始めた。
「なんで僕こんな所でこんな事してるんでしょう? 馬鹿の相手をすると僕にも馬鹿はうつるでしょうか?
 あぁ、もう遊戯とか何でもいいから帰りたい。何もかもめんどくさい。家でゆっくりお風呂に入って眠りたい……」
絡み酒状態で、つらつらと不満を垂れ流す。
おそらく起きているのだろうが、目を開けたくないらしい凌統の口の端がぴくぴくと引きつっていた。


ばさり、と背後で何かが落ちる音がした。
振り向くとカバンを取り落とし、馬謖が頭を抑えてわなわなと震えている。
「馬謖さん? どうしたんですか?」
「……あ、あ…たま、いた……ぁ」
真っ青な顔で崩れ落ちる馬謖に、陸遜とタヌキ寝入りの凌統が慌てて駆け寄った。

159 :Baroque 3/10:2006/11/19(日) 02:41:06
そのころ、荊州南部。
去り際に祝融が呟いた仇の名に、荀イクは遊戯の開始前に思いを馳せていた。


幾人かに首尾良く暗示を掛け、次の標的を探すために人々が眠る台の合間を歩く。
この部屋には文官や軍師を中心に集められているのだろうか。
張遼や夏侯惇のような、手駒と出来れば心強い武人は見当たらないようだ。
まぁいいでしょう、と荀イクは呟く。たとえ非力な文官でも、良い武具を与えられれば十分に人を殺せます。
視界の隅に見知った顔を見つけ、歩み寄る。最も目を掛けた後進であり、娘婿でもある青年。陳羣だ。
彼ならばきっと分かってくれるでしょう。帝のために、よい働きをしてくれるはず。
揺すったり抓ったりして、半覚醒状態にもっていく。ぼんやりと目を開けた陳羣に向かって語りかけた。
世の秩序。帝への忠義。清流派の誇り。いつしか保身に走るようになった自身に対する嫌悪感。
あらゆる方向から揺さぶりをかけ、陳羣の思考を作り変え始める。

―――と、廊下からぺたぺたと若干間の抜けた足音が聞こえた。
何者かは判らないが、とりあえず陳羣への暗示を一時中断して物陰に隠れる。
扉の開く音。足音。……しばらくして、聞こえなくなる。
その何者かが出て行った様子は無い。
だがしばらく息を潜め、なお何の物音も聞こえず辺りを見渡しても怪しい人影は無いため、
荀イクは問題ないと判断して再び陳羣に語りかける。
いまこの貴重な時間、僅かたりとも無駄にすることは許されません―――

「……貴方は、何をやっているんだ?」

突如聞こえた声に、荀イクは弾かれたように振り返る。真後ろ!
何の気配もなかったはずのそこに、小生意気そうな顔立ちの青年が腰掛けていた。

160 :Baroque 4/10:2006/11/19(日) 02:43:47
「殺すだの誅すだの、随分と物騒だな」
「……どなたですか、貴方」
「自分から名乗るのが筋ではないのか?」
「……帝に御仕えする、荀イクと」
「荊州の馬謖、字は幼常だ。……荀文若は曹操に仕えていたと記憶しているが?」

わざとらしく首を傾げる青年――馬謖に、荀イクはその整った顔を顰める。
曹操様になど仕えた覚えはない。例え彼の幕下に居ても、自分の心は常に帝にのみ仕えていた!

「それが帝のお役に立つための唯一の道でしたから」
「まぁ、仲違いで自殺を命じるような主君に仕えていたなどと認めたくはないだろうな」

思い出したくもない記憶をわざわざ突いてくる馬謖に苛立ちを覚える。

「……私に何か御用でもあるのですか、馬謖殿」
「いいや、特には。だが眠れないから、話し相手をしてもらおうと思って」
「申し訳ありませんが、私には時間がないのです」
「皆に人を殺せと刷り込むための時間がか?」

相手の目的が自分の作業を妨害することと確信し、荀イクはすぐにでも殴り倒したい衝動に駆られる。
しかし相手はどうやら自分よりは腕力がありそうだ。少しぐらい鍛えて置けばよかったと内心舌打ちをする。

「それが天の意思ですから。私は臣として、帝のお望みになられることに微力を添えさせて頂くだけです」
「帝の意思が天の意思だとでも? 失礼ながら荀イク殿、帝とてただのヒトだ」
「それは違います。帝は生まれながらにして帝、すなわち天が定めた代理人」
「話にならないな。ただ帝の子として生まれただけのことがそんなに偉いのか?」
「貴方は何もご存じないのですね。まるで下賤の輩のような言い草、聞くに堪えません」
「帝だというだけで、貴方は思考を放棄して盲目に従うのか?
 殺しあえなどという命令、明らかに常軌を逸しているだろう」

161 :Baroque 5/10:2006/11/19(日) 02:45:04
不毛な会話。あくまで帝をひとりの人間としてしか扱おうとしない馬謖の言葉に、荀イクは絶望する。
なるほどこれでは、漢は駄目になったと帝が嘆かれる訳だ―――

「……なんたる不敬。荊州閥はここまで濁り果てていたのですか」
「ならば清流派は澄み切った毒の流れだな。魚も住めやしない」

下手に口が回るだけに、余計に腹立たしい。
帝、清流、自分の信じるものを立て続けに否定され、荀イクは怒りと使命感に震えた。
このような不敬者は全て消し去らなければ……帝のお望みになる世界のために、間違いなく!

「本当の忠臣とは何だ。正気に戻れ、荀文若。
 主が過ちを犯したとき、体を張ってでも、首を失ってでも止めるのが忠臣のあるべき姿じゃないのか。
 ひたすらに妄信し、崇めたて、甘やかすのは臣じゃない、ただの害悪だ」
「……黙れ黙れッ! 帝のなさる事に間違いなどない!」

衝動的に履物を馬謖に投げつける。
ぽすっ、と軽い音を立てて馬謖の肩に当たり、床に転がった。

「……王佐の才などというからどんな人物かと期待していたら。この程度の人物だったか」

蔑んだ目。向けられた経験の無いものに、荀イクは動揺する。

162 :Baroque 6/10:2006/11/19(日) 02:47:01
「貴方に聞く気があるかどうかは分からないが、今の貴方は明らかにおかしい、荀文若。
 私の聞く貴方はこのような器の小さい人物ではありえない。
 おそらく貴方もまた、何者かによる暗示や操作を受けてしまったのだろうな」

唐突に馬謖が語り始める。

「貴方は有能だ。加えて帝への忠義も篤い。帝からすれば最高の手駒だろう。
 だが考えてみるといい、それは本当に帝か? 帝を傀儡とした誰かではないか?
 またはただ帝に容姿が似ているだけということはないか?」

違う、帝でなければあのような光は、高貴さはありえない!
……だがそう感じる事すら誰かの作為によるものだとしたら?
ぐらり、と頭の芯が揺れる。

「よく考えるんだ、荀文若。貴方は帝のために働きたいのだろう?
 本当に帝かどうかわからないモノに、唯々諾々と従い―――」

がちゃん、と金属音がどこかで響いた。
とっさに馬謖は言葉を途切れさせ、次いで『しまった』という顔になる。
そして同時に荀イク頭の中の霧が晴れわたり―――帝への疑心が打ち消された。

ごく限られた名士にのみ伝わる、巧みな語法と発声を用いて相手の心を誘導する技。
自分の魏将たちへの語りかけもそれだ。
……そして今の、馬謖の言葉も。どこで会得してきたのか分からないが、
そうそう使える者は居ないだろうという油断を突かれた……危なかった、と荀イクは息をつく。
まさかこんな若造に自分が嵌められかけるとは、情けないですよ荀文若!

163 :Baroque 7/10:2006/11/19(日) 02:48:52
「その程度で私の帝への忠誠を断ち切れるなんて、思わないことですね」
「駄目元とはいえ、失敗すると少し悔しいな」
「駄目元ならひとに試さないで下さい。不愉快です」
「そうだな。考え直させようなんて思わないで、初めからおとなしく……腕力に訴えれば良かった」

そう言って馬謖は目の前に拳を掲げて見せた。
ふたりともあまり腕力があるとは思えない……が、それでも馬謖のほうがおそらく、自分よりやや勝っている。
拙い。これだから野蛮人は……!
窮地に陥った荀イクの元に、あぁ天はやはり正しいものに味方するのだ、一筋の、そして眩しい光明が差した。

馬謖の背後の扉が開き、献帝の部下らしき武官達が姿を現す。
暴れる馬謖が取り押さえられ、白い布で口と鼻を塞がれて気を失うまでものの数十秒しかかからなかった。

あぁ、お力添えに感謝いたします、帝―――
涙が出そうな感動に打ち震える。帝は私を見ていてくださった。
その思いに答えるため、まずは先ほど中断した陳長文への語りかけを再開しよう。

腕を掴まれる。帝の部下だ。
なんですか? 我が同志。私も帝の御為に微力を尽くしております―――
何故後ろ手に拘束されるのです? その白い布は、この匂い……まさか。
「やめてください! 私はその人とは違います、私はただ帝の御為だけに―――!」
叫びも空しく視界はぼやけ、意識は白い闇に沈み行く。
あぁ帝、臣は貴方の忠実な僕なのだと、彼らにもちゃんと伝えておいて頂きたいです……

164 :Baroque 8/10:2006/11/19(日) 02:51:53

ふと我に返って荀イクは空を見上げた。
あれ、私はどう歩いてきたのでしたっけ?
過去の記憶に没頭するあまり、周りを見ずに進み続けてしまったようだ。
まずい、ここはどこなのでしょう? まさか禁止区域の傍ではないでしょうね。
思わず青くなる荀イクの耳に、かすかに人の声が届く。
……誰か居るのですか。これで帝の御為に。
ガリルARを持ち直す。さぁ、殺さなければ。

声を辿ったその先には3人の男が居た。どうやら怪我か病気か、調子を崩したひとりを看病しているようだ。
木陰から覗き込む。ひとりはおそらく武官。逞しい体つきだ。
そして文官がひとり。貧弱そうな体躯の青年。
横たわる最後のひとりは……
危うく手の銃を取り落としそうになる。
がくがく震える身体を必死に宥めた。

―――曹操様!!

「……そこに居るのは誰だ! 出て来い!」
こちらに気付いた武官が叫ぶ。
荀イクは木陰から、一歩を踏み出した。



165 :Baroque 9/10:2006/11/19(日) 02:54:23

額に乗った濡れた布の感触に、馬謖は目を覚ます。
「あ、意識戻ったみたいです。……大丈夫ですか?」
「どうしたんだお前、いきなりぶっ倒れて。何事かと思ったぞ」
心配そうに覗き込む仲間たち。
「ん、大丈夫……」
頭の中でぐるぐると情報が回っている。洛陽城、謎の機械、城を歩き回って見た風景、荀イクとの争い―――
それまで曖昧な夢としか認識していなかったそれが、馬謖の中で確かな記憶として置き換わる。
「荀イクが……」
「荀イク? 曹操幕下の荀文若ですか?」
「うん、それ。そいつがめっちゃムカついた」
「……は?」
「荀イクが、殺せ殺せって洗脳しようとしてたから止めたら、クツ投げられた」
いまいち要領を得ない馬謖の言葉に、陸遜と凌統は揃って首を傾げた。


166 :Baroque 10/10:2006/11/19(日) 02:58:05
@荀イク[洗脳されている?、額に切り傷]【ガリルAR(ワイヤーカッターと栓抜きつきのアサルトライフル)、防弾チョッキ、日本刀、空き箱】

<< ふたりの詩人とひとりのアモー/3名>>
曹操[高熱、意識混濁]【チロルチョコ(残り65個)】
陸機【液体ムヒ】   呂蒙【捻りはちまき】

※桂陽で荀イクと<<ふたりの詩人とひとりのアモー>>が遭遇しました
※陳羣への暗示は、邪魔が入ったためおそらく失敗しています


<<既視感を追う遊撃隊/3名>>
凌統【銃剣、犬の母子】
馬謖 [軽症(時々めまい・貧血状態に)]【魔法のステッキミョルニル(ひび入り)、探知機、諸葛亮の書き付け(未開封美品)×3】
陸遜【真紅の花飾り、P90(弾倉残り×3)、ジッポライター】

※荊州北部と益州北部の境目辺り。隠密行動で洛陽城すれすれまで近づき、観察を試みます
※探知機で近づく人間を察知可能。馬謖が直接認識した相手は以後も場所の特定が可能。
※馬謖が唐突に気を失ったのは『眠る人間に話しかける』という図に記憶を刺激されたためと思われます

167 :人間だから 1/5:2006/11/28(火) 13:14:11
何故だろう。
今日の月は何故あんなにぼやけた光を放っているのだろう。
何故自分は今震えているのだろう。
別段寒くはないのに。
「堪えるな」
大きな暖かい手が、励ますように曹彰の肩を二、三度叩いた。
堪える?自分は今、堪えているのか?
「堪えずに、泣けばいい」
そう言われて初めて理解した。自分は今、泣きたいのだ。
今目頭に熱く溜まっているのは涙なのだとようやく分かった。
父を連想させる袁紹の手が彼の肩を力強く叩く度、
不思議な程素直に涙が溢れた。
後継者問題で揉め、拗れ、恨みもした兄弟だったのに、
その死を知った今は悲しみしか沸き上がって来ず
思い出されるのは共に無邪気に遊んだ幼い日々ばかりで、
曹彰は何故かそれを狡いと思った。
その懐かしい光景には気弱げに微笑む曹熊の姿もある。
多分人を、しかも血族を殺したのだろう曹熊。
しかし、そんな光景を目の当たりにしていてもやはり曹彰には信じられない。
曹熊が人を殺すなど。
仮に真実曹熊が手を汚していたとしても、きっと何か事情があったのだろうと思う。

168 :人間だから 2/5:2006/11/28(火) 13:15:04
自分でも分かっている。
自分は馬鹿なんだろう。
そして自分もあまり分かっていなかった事だが、
自分は結構兄弟たちが好きなのだろう。


歯を食いしばり、声を上げず泣く曹彰の髪をぐしゃぐしゃと撫でながら
袁紹もまた頬を涙で濡らしていた。
次々と仲間を、身内を失っていくこの若武者の境遇と自分の境遇をどこか重ねながら、
袁紹はまた彼を実の子のようにも思い始めていた。
子を慈しみ、労り、痛みを思い共に涙する。
身内に対して深い愛情を持って接するこの男は、確かに君主には向くまい。
天を掴むためには、この男はあまりに人間すぎたのだ。
しかしその人間臭さが今の曹彰にとって大きな救いとなっていた。
仲間であろうと血族であろうと、殺さなければ殺されるこの世界。
誰もが人間らしさを忘れてしまったように思えるこの狂った世界で、
迷い、思い悩み、呆れるほど人間らしい袁紹がいる。

169 :人間だから 3/5:2006/11/28(火) 13:15:54
泣いてもいいのだ。
天子になった存在であろうとも、
すれ違ったまま終わった命であっても、
その死が悲しければ泣いていいのだ。
殺伐とした争いの日々も嘘ではないけれど、
幼い頃のあの優しい日々だって嘘ではないのだから。
袁紹といると、それを素直に認め、泣くことが出来た。


『旦那!』
「誰だ!」
村正の鋭い囁きと袁紹の誰何の声が重なった。
動揺していた曹彰は僅かに反応が遅れたが、
木々の陰、闇に紛れて確かに誰かがいる。
「いや、失礼。決して危害を加えるつもりはありません」
その声は柔和だが朗々としており、物腰は柔らかだが堂々とした貫禄があった。
瞳には知性の煌めきがあり、居住まいには武人の風格もある。
一目で只者ではないと分かった。
そしてその腰に下げている刀もかなりの業物のようだ。
村正に緊張が走ったのを袁紹も手のひらに感じる。
しかし不思議と警戒心を抱かせない男だった。
その瞳があまりに優しく、穏やかだからだろうか。

170 :人間だから 4/5:2006/11/28(火) 13:16:56
魯粛と名乗ったその男は人を捜しているのだと言った。
自分たちと似た目的に親近感を覚え、彼らは互いに情報を交換する。
「曹幹だって?」
魯粛らが出会い、探しているという幼子の名を聞いて曹彰は驚く。
曹彰の名を聞いて魯粛も驚いた。
「では、曹操殿のご子息にして、曹幹君のお兄様にあたるわけで?」
「ああ。多分、弟なんだろうな…」
腹違いの兄弟たちの顔と名前を思い出そうとするが、何分数が多すぎる。
嫡子も庶子も養子も親族の子らも一緒に育ったので、
誰がどのような続柄に当たるのかすら正直あやふやだった。
「まあしかし、親族であることには間違いないだろう。
 そういう事情なら、共に捜した方が良くはないか?
 曹幹君を託した者たちが魏の者ならば、その者たちもお前の顔見知りかもしれん」
袁紹の言葉で、とりあえず彼らは行動を共にすることを決めた。
「それでその幹と、幹と一緒にいるはずの奴らはどっちにいるんだ?」
「…あっち?」
「何で疑問形なんだよ!」
途端におどおどし始めた魯粛に曹彰が容赦なく突っ込む。

171 :人間だから 5/5:2006/11/28(火) 13:22:14
揚州を目指していたはずが幽州へたどり着いてしまったという前科を持つ
魯粛の超絶方向感覚が炸裂する。
「あ、いやいや、こっちだって言ってたかな?」
「だから何で疑問形なんだよ!」
周囲をきょろきょろと見回したり地図をくるくる回してみたりしている魯粛を見て
曹彰は駄目だこりゃ、と嘆息する。
「…まあ、とにかく捜すか…
 とりあえずどっちを目指す?」
「…どっちにしよう?」
袁紹は頭を抱えて迷っている。
曹彰は村正とほぼ同じタイミングで、深い溜息をついた。


<<迷走する捜索隊/3名>>
袁紹【妖刀村正】
曹彰【双剣の片方(やや刃こぼれ)、ごむ風船】
魯粛【圧切長谷部】
※曹操、荀イク、曹熊、張飛、<<不品行と品行方正と忘れ形見>>を捜しています。
※また魯粛は<<皇帝とナース>>との再合流も一応目指しています。
※現在地は司隷。本人たちはとりあえず南を目指しているつもり?

172 :木村貴光:2006/12/04(月) 20:06:18
死んでたまるか!!!!!!!僕はしにましぇん!!あなたがいるからです!!

173 :1/8:2006/12/12(火) 05:06:56
張遼の寝顔は苦渋に満ちていて、安らかとは言い難かった。
血に染まり地に伏しているその姿はまるで死体のようだ。
だが張コウはその血が返り血だと知っている。
誰の身体を巡っていた血だったのかも多分、解っている。
血の臭いなど戦場で嗅ぎ慣れていたはずなのに、
今洞穴に満ちているこの臭いはあの男の死の臭いなのだと思うと胸が詰まった。
そして、まだそんな感傷めいたものを持ち合わせていた自分にも多少、驚いた。

張コウはふらふらと張遼が伏している洞穴を出た。
もちろん、張遼を置いていくつもりはない。
話を聞くと約束した。きちんと受け止めてやるつもりだ。
しかしその為にはまず自分で自分を受け止めなければ。
新鮮な空気を胸一杯に吸い込み、そして吐く。
目を閉じて、開く。
空を見上げる。星空が張コウを圧倒した。

「撃ち殺してやってもよかったが、それではつまらんからな」
ガサリと鳴った足音に張コウはびくりと身を震わせた。
「随分と腑抜けた様子だが、それなりには出来そうだな」
それなりだと?
冷たい汗が伝い落ちる。
嫌味か、それは。
思えば今まで様々な人間と出会ったが、どうにか命を繋いできた。
そんな幸運もここまでだろうか。

174 :2/8:2006/12/12(火) 05:10:39
張コウも生涯戦い抜いた武人だ。武芸には自信もある。が、過信はしていない。

男はどこか愉しげな様子だ。この遊戯に乗っているのだろう。
しかし荀イクのような歪んだ愉悦は感じない。
多分、根っから戦いが好きな質なのだ。
男の連れらしい文官はどこか悲しげな様子にも見えたが男を止めはしない。
戦いを回避できないものか?
いや、多分無駄だろう。
この男が戦いを挑んできているのは理屈や利害からではなく感情、もしかしたら本能なのだ。
理屈なら説き伏せられるかもしれない。だが本能ならばどうにもなるまい。

冷静な観察眼が利益ばかりをもたらすとは限らない。
状況を正確に把握できても回避できなければ意味はないのだ。
生前、自分はよくこんな目にあった。
そういう星の下に生まれついたのかもしれない。
そして、その星は一度死んでもなお自分につきまとっているらしい。
苦笑いが浮かぶ。
しかしどうにもならないこの状況が―――どこか、楽しい。
この男と戦ってみたい。そんな気持ちも、確かにあった。

足払い、その後二段突き。
それをかわす張コウにも、それを仕掛けた呂布にも笑みが浮かんでいた。

175 :3/8:2006/12/12(火) 05:12:12
張コウの笑みは瀬戸際の命のやりとりをどこか楽しんで。
呂布の笑みは名槍を取り回す快さから。
狂人のように映るかもしれない、笑いながらの攻防。
張コウは刀を抜き放ちながら呂布の突きを紙一重で避ける。
微妙に歪んだ刀は僅かな軋みと共に鞘を脱ぎ捨てる。
刀身が歪んでいるのだ。斬撃の威力は期待できそうもない。
だが張コウにはある考えがあった。

僅かに足を踏み外した張コウに呂布の日本号が襲いかかる。
張コウの笑みが微かに深まった。
自分と日本号の隙間に滑り込ませるように斬鉄剣を構える。
自ら振るって斬ることはできなくとも敵の斬撃の勢いを利用すれば斬れるのではないか?
あの恐るべき斬れ味で槍は真っ二つになるだろう。
それに怯んだ隙に懐のデリンジャーで止めだ。
逆手で撃ってもこの至近距離なら確実に当たるだろう。
そして斬鉄剣を捨てて両手で狙い、二発三発と撃てばいい。
左手が懐に伸びる。

「ぐぶっ……!」
血反吐を吐きながら宙に舞ったのは……張コウだった。
斬鉄剣は確かに日本号を真っ二つにした。
しかし、呂布は全く怯まなかった。
「……下らん」
その突きは穂先を失ってもなお減速せず、張コウの腹を抉ったのだ。

176 :4/8:2006/12/12(火) 05:13:59
ただの短い木の棒になってしまった日本号が地に転がる。
呂布の拳が張コウの身体を砕く。
張コウはやはり笑っていた。今度は自分の愚かさ故に。

自分も徐庶と同じだ。この刀に振り回されていた。
この刀さえあれば勝てると思っていた。
だがこの男はどうだ。あれほどの名槍が駄目になっても微塵も怯まなかった。
所詮武器は武器、道具に過ぎない。
武とは、武器に宿っているものではない。自分自身にあるものなのに―――。

今までに出会った者、生き別れあるいは死に別れた者たちの面影が次々に浮かんでは消えてゆく。
その一番最後に浮かんできた面影に張コウは詫びる。
受け止めてやれず、すまない、と。
一人にしてしまって、本当にすまない。
そして祈る。
どうか生きてほしい。
そしてどうか苦しまないでほしい、あの人のようには、と―――。


本来は張コウの後ろにある洞窟が目当てだった呂布と諸葛瑾だったが、
さすがに死体に番をさせて洞窟で休む気にはなれない。
黙祷を捧げる諸葛瑾を後目に呂布は張コウの懐を漁る。
斬鉄剣、そして日本号は完全に駄目になってしまっていたが
銃、そして二冊の本は無事だった。
荷物と諸葛瑾を抱えて呂布はその場を離れた。

177 :5/8:2006/12/12(火) 05:15:13
交戦地点から大分離れた森でそれらを降ろす。
この辺りなら誰かが近づいてきても梢が揺れる音や足音ですぐ解る。
遮蔽物も多いから、飛び道具で狙われる危険もないだろう。
「驢馬、これはお前が持て」
飛び道具で思い出したのか、呂布はドラグノフとデリンジャーを諸葛瑾に渡した。
デリンジャーはともかくドラグノフはかなりの重量がある。よろける諸葛瑾。
「鉛玉で遠くから撃ち殺すなどつまらん。
 俺にはこれがあればいい」
「……私は、どちらかというとその本の方が気になるのですが……」
「ああ、そんな物もあったな」
呂布はぱらぱらと一冊の本を眺めると、
そのあまりの難しさに眉をしかめ諸葛瑾に押しつけるように手渡した。
もう一冊の本はほぼ白紙で、手書きで何かが書いてあった。
あの男の抱負か目標だったのだろうか?
諸葛瑾に意見を求めようと思ったが、
さっき手渡した本に食い入るように見入っていたので声をかけるのは止めた。
あんなもののどこがそんなに面白いのか、呂布にはさっぱり解らなかった。

“劉備、関羽、張飛と戦いたい”
あの三人は、不思議だった。
一人一人は雑魚の癖に、三人揃うと奇妙に手強く感じたときがあった。

178 :6/8:2006/12/12(火) 05:17:58
張飛は、一人ぼっちのお前には解らないとあの時言った。
呂布はそれを知りたかった。三人そろったあの兄弟とまた戦いたい。
戦えば、何かが解るような気がしていた。
“貂蝉と、陳宮の敵を討ちたい”
そして、その鍵になっていたかもしれない二人。
しかし二人はもういない。せめてこの手で敵を討ちたかった。
そして。
呂布は、そんな決意を―――書いてしまった。

ザッ、と呂布が立ち上がり、諸葛瑾はそれを見上げる。
「呂布殿?」
呂布は諸葛瑾に一瞥もくれずに遠ざかってゆく。
「呂布殿、いかがなされた?呂布殿!」
諸葛瑾は慌てて本をしまい、必死で長銃を担ぐ。
走り去る呂布。本に夢中になっていた諸葛瑾は呂布の変貌の理由が解らず、戸惑う。
呂布を追う諸葛瑾。だがその差は開くばかりだった。
「呂布殿……っ!」
諸葛瑾の絶叫は、届かない。



背筋を駆け上る寒気に似た何かに不快感を覚え、司馬懿は香水を一吹きした。
ああまた悦ってるな、と関興は思っていた。姜維の叫びを聞くまでは。
「司馬懿殿、いけないっ……!」
死の淵にある者は五感が研ぎ澄まされるという。
姜維は司馬懿を蝕もうとするどす黒い何かにいち早く気づいた。

179 :7/8:2006/12/12(火) 05:21:43
今こそ立ち上がらなければならない時だ。
姜維は全ての力を振り絞って立ち上がった。司馬懿へと手を伸ばす。
でも。
届かない。
「あんた、何やって……!」
関興が振り返ったその瞬間、司馬懿の拳がこめかみから姜維の頭蓋にめり込んでいた。

化け物だ。
姜維は思う。
鮮やかに甦る記憶。化け物だ。化け物に食われて。ああ。

あまりに異様な光景に、関興は凍りつく。
姜維の事切れた瞬間を呆然と見届けた。
速い。
一瞬で踏み込んだ司馬懿の膝が関興の腹に沈み
血染めの指が目を、脳を抉った。

「あがあああああぁ!!!」
死にたくない、そう思ったこともあったのが嘘のようだ。
死にたい。死にたい。死なせて。死なせてくれ!!
一瞬で逝った姜維のほうがまだ幸せだったかもしれない。
気が狂うほどの痛みにのたうち回りながら、
関興は最期の瞬間までただただ死を望み続けた。


悦楽の香りの中司馬懿は歩む。
馬謖が仕掛けたものだろうか。結んだ草が司馬懿の爪先を捕らえた。
意に介さず司馬懿は歩き続ける。引きちぎられた草が宙を舞う。
「……ふ、ははははははは……!」
ひどく愉快だった。もう一吹き、香りを求める。
血の匂いと混ざったそれは、いつにも増して芳しい香りだった。

180 :8/8:2006/12/12(火) 05:24:05

【張コウ 姜維 関興 死亡確認】

※<<残された二人>><<カミキリムシとオナモミ>><<めるへんトリオ・改>>は解散。張遼、呂布、諸葛瑾、司馬懿はピンユニット化。


@張遼[爆睡中]【歯翼月牙刀、山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3】
※司隷東の洞穴で爆睡中。

@呂布[洗脳、身体能力上昇]【関羽の青龍偃月刀、DEATH NOTE】
※DEATH NOTEの影響下にあります。DEATH NOTEには劉備、関羽、張飛の名前が書かれています。
※現在地は司隷南の森を抜けた所。
※DEATH NOTEの効果で上記三人の居場所が漠然と解ります。最も近い者から殺しに行きます。

@諸葛瑾[頭にたんこぶ、移動速度低下]【ドラグノフ・スナイパーライフル、デリンジャー、首輪解体新書?】
※現在地は司隷南の森の中。呂布を追います。
※首輪解体新書?にはまだきちんと目を通していません。
※斬鉄剣、日本号は壊れました。

@司馬懿[洗脳、身体能力上昇]【赤外線ゴーグル、付け髭、RPG-7(あと4発)香水、DEATH NOTE、陳宮の鞄、阿会喃の鞄】
※DEATH NOTEの影響下にあります。が、香水の影響か、記名された三人以外でも無差別に、積極的に殺します。
※現在地は漢中より少し南。手近な獲物を探して移動。
※ラッキーストライク(煙草)、ブーメランは放置しました。サーマルゴーグルは壊れました。

181 :無名武将@お腹せっぷく:2006/12/18(月) 00:28:38
保守するよ!

182 :名無し曰わく。:2006/12/26(火) 22:21:48
保守

183 :無名武将@お腹せっぷく:2007/01/03(水) 22:45:29
新年保守

184 :無名武将@お腹せっぷく:2007/01/08(月) 01:41:33
ほす

185 :魏延と尚香とヒナたちの華麗なるスレ保守 1/2:2007/01/10(水) 03:29:45
「ねぇ、もう桂陽……入ってるわよね?」
「……と、思うがな」
荊州南部に広がる鬱蒼とした森を歩きながら、魏延と孫尚香は幾度目とも付かない溜息をついた。
まっすぐ桂陽方面を目指したはずなのだが、未だに曹操たちと合流できない。
荀イクもこの森に惑わされたあたり、後の世なら磁場が狂っていると表現される場所なのかもしれない。
「少し休まれるか、奥方」
魏延自身は疲れなどまるでないようだが、女性で怪我も負っている尚香はそうもいかない。
ありがたくその言葉に甘える事にした。

手ごろな岩に腰を下ろし、尚香はヒナたちの入った巣を膝の上に置いた。
くったりとした一匹、バタイを手の上に乗せて、ちいさな体をせめて温めようとする。
何とか息はあるようだが、それを失うのもそう遠くはないだろう。
「他の子たちは元気なのにね……」
魏延の頭の上で一際元気にぴよぴよとさえずるバショクを横目に尚香は呟いた。
ちなみにバショクはどうやら高い所が好きらしい。頭頂に布陣しているのかもしれない。
コウメイがぱたぱたと小さな翼を動かして巣から転がり出た。
よちよちと歩いていくのを見守ると、その先にはもふもふした奇妙な塊。
  ,,,,.,.,,,,
 ミ・д・ミ <ほっしゅほっしゅ!
  """"
謎の鳴き声を上げるその緑の毛玉にコウメイが乗っかった。
ふわふわの毛の上で、心持ちふんぞり返りつつご休憩のご様子だ。
「くっ、何の罪もない鳥の子とは分かっているが、コウメイの名を持つだけあってなんとも小憎らしい……」
ぼやく魏延に尚香はこっそり苦笑した。

186 :魏延と尚香とヒナたちの華麗なるスレ保守 2/2:2007/01/10(水) 03:38:45
巣の中に残るのは2匹。くぅくぅと気持ち良さそうにお昼寝中のヨウギと、
「ねぇ、この子ちょっとハゲてない?」
キョウイのふわふわの羽毛が、尻あたりでちょっとハゲている。ストレスかもしれない。
どことなくだるそうだ。だるいというよりかったるい、だろうか。雰囲気が心持ちやさぐれている。
「何か嫌な事でもあったのかしらね」
返答がないので魏延を見ると、彼は一心に菜をすり潰していた。
なんとしてでもバタイに食事を取らせたいらしい。真剣そのものだ。
だがそんな魏延の努力の結晶も、バタイはちらりと横目で見ただけで相手にしようとしなかった。
「なぜ食わんのだ……」
ふと思いつき、尚香は手近な小枝を取った。すり餌をその細い先端に絡ませる。
「ほら、口を開けて……ね?」
雛鳥の小さなくちばしにそれを近づける。柔らかな胸に抱かれ、ヒナは少しだけ口を開けた。
すかさず軽く突っ込んでみる。いったん嘴が閉じ、次に開かれたとき、小枝の先端には何も付いていなかった。
「食べた……?」
とりあえず、吐き出す様子はない。
「食べたぁ……この子食べたわよ、魏延さん!」
「ふんっ、食うなら初めから食えばよいものを!」
吐き捨てるように言い魏延は顔を背けたが、その唇は隠しようもなく笑みを浮かべていた。
心なしか嬉し涙が浮かんでいるようにさえ見える。
素直じゃない人ね、と尚香は再び苦笑した。



<<どさくさまぎれに姫と騎士/2名>>
魏延【ハルバード(少々溶解)、鳥のヒナ(5羽)】
孫尚香[切り傷]【シャンプー(残り26回分)、薬草、ちろるちょこきなこ味】
※現在地不明(荊州南部のどこか)、道に迷っている様子? 禁止エリアからは出ています。
※バタイが持ち直すかどうかは不明。
※ただの保守なので、動いたばかりだから投下しにくいなどの対象には含めないでもらえると幸い。
 1レスに収めるつもりだったのですが……

187 :無名武将@お腹せっぷく:2007/01/20(土) 22:15:26
保守

188 :名無し武将@お腹せっぷく:2007/01/28(日) 12:14:00
保守

189 :劉協さんの優雅なるスレ保守 1/2:2007/02/03(土) 05:15:31
「ふふ、段々と頭数も減ってきているね」
「はい陛下、陛下の御為でございますから、それは当然」
「の割にはペースが遅いようだけどね?」
柔らかな毛皮の椅子に埋もれるようにくつろぎ、献帝は目の前の巨大なスクリーンを眺めた。
傍らには卑屈そうな表情の文官が控えている。
「黄月英を呼んで」
「は、かしこまりました」
程なくして連れて来られる赤毛の醜女。知性で煌めくはずの瞳は曇り、帝の御前だというのに焦点は合わない。
いや、黄月英のみではない。献帝の周囲で働くスタッフたちの大半がそのような目をしている。
見るものが見れば、その目は自分の意思を失っていることの証であると分かるのかもしれない。
それは例えば荀イクの刷り込みを受けた于禁、刀に操られた曹彰、黒の書に取り付かれた者達のような。
「黄月英、参上いたしました」
「ん。茶入れて」
「かしこまりました」
一礼して身を翻す黄月英を見送り、脇に控える文官が首を傾げた。
「雑用でしたら貂蝉などもたくさん用意できますのに。なにもあのような醜女を使われずとも……」
「美女はそろそろ見飽きたんだよ」
けたけたと笑い、黒く甘く小さい菓子をつまむ。チロルチョコとも呼ばれるそれは、献帝の新しい好物だ。
膝の上にのせたふわふわした小さな生物を優雅に撫でる。
ほっしゅほっしゅと奇妙だが愛らしい鳴き声を上げ、それは献帝の手に擦り寄った。
  ,,,,.,.,,,,
 ミ・д・ミ <ほっしゅほっしゅ!
  """"

190 :劉協さんの優雅なるスレ保守 2/2:2007/02/03(土) 05:17:00
「そういえば君、確か馬超の優勝に賭けていなかったかい?」
「へっ? な、なんのことでございましょう?」
「ごまかしても無駄だよ。朕はちゃんと覚えてるんだからね」
優雅な仕草で指を鳴らす。それに応えて現れる、屈強な武官が2人。
「連れて行って」
「かしこまりました」
「なっ!? や、やめろ、離せ……帝、お許しを!」
「駄ぁ目」
くすくす笑いながらひらひらと手を振る帝。
哀れな文官がどこに連れて行かれるのか、何を賭けていたのか、
モニター前で監視を続けるスタッフたちは興味を示さない。
……ただ機械のように、作業を続けるのみだ。


@劉協(非参加者)
@黄月英(非参加者)
@文官、武官2人(非参加者)

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