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自分でバトルストーリーを書いてみようVol.25

1 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/04/22(日) 22:46:50 ID:JIO9LDHa
銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。 
長い戦いの歴史を持つこの星であったが、その戦乱も終わり、
平和な時代が訪れた。しかし、その星に住む人と、巨大なメカ生体ゾイドの
おりなすドラマはまだまだ続く。

平和な時代を記した物語。過去の戦争の時代を記した物語。そして未来の物語。
そこには数々のバトルストーリーが確かに存在した。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。

過去に埋没した物語達や、ルールは>>2-7辺りに記される。

2 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/04/22(日) 22:48:45 ID:???
・題材について
 ゾイドに関係する物語なら、アニメや漫画、バトスト等何を題材にしても良いです。
 時間軸及び世界情勢に制約は有りません。自由で柔軟な発想の作品をお待ちしています。
 過剰な性的表現・暴力表現を主体とした作品の投稿は御遠慮下さい。

・次スレの用意
1.長文を書き込むスレッドの性格上、1000レス消化するより先に、
  スレッドの容量が512KBに達して書き込み不可能となります。
  そのため容量が【450〜470Kb】位に達したのを確認したら、
  まずは運営スレまで御連絡下さい。書き込みを希望する方を確認します。

"自分でバトルストーリーを書いてみよう"運営スレその2(現行)
http://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1161403612/

2.一週間書き込みが確認できない、又はスレッドが書き込み不可能になった場合、
  次のスレを用意して下さい。又、その時には以下を実行して下さい。

  a.旧スレにて新スレへの誘導を行なって下さい。(URL記入必須!)
  b.運営スレにて新スレを用意したことを告知して下さい。
  c.下記スレにて倉庫格納依頼を行なって下さい。
★ 倉庫格納 ★   (現行)
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku/1047244816/l50

・定期ageについて
 投稿作品が人の目に触れ易くするため、新規スレッドが立ち上がってから一ヶ月ごとのageを推奨します。
 投稿作品がある場合は投稿時にageて下さい。ない場合は「定期age」を書き込んだ上でageて下さい。

3 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/04/22(日) 22:49:50 ID:???
・書式
 一行の文字数は最高四十字前後に納めて下さい。

・書き込み量の制限と再開
 スレッド一本の書き込み量は一人につき最大100kb前後です(四百字詰め原稿用紙約128枚分)。
 100kb前後に達し、更に書き込みを希望される方は、スレッドが最終書き込み日時から
 三日間放置された時、運営スレッドでその旨を御報告下さい。
 この時、トリップを使用した三人の同意のレスがあれば書き込みを再開できます。(※)
 又、三人に満たなくとも三日間経過した場合は黙認と看做し、書き込みを再開できます。
 再開時の最大書き込み量は25KBです。
 反対のレスがあった場合は理由を確認し、協議して下さい。異議申し立ても可能です。

※ 騙り対策のため、作品投稿経験のある方は定期的なチェックをよろしくお願いします。 

・作品の完結とまとめ
 投稿作品はスレッド一本での完結を推奨します。
 続き物はなるべく区切りの良いところで終わらせて下さい。
 複数のスレッドに跨がって書き込む人は「まとめサイト」の自作を推奨します。

・その他、禁止事項
 誤字など修正のみの書き込みは原則禁止です。但し張り順ミスの説明のみ例外とします。

投稿された物語の感想等は運営スレにてお待ちしております。
スレのルール等もこのスレで随時検討中ですので、よろしければお立ち寄りください。

4 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/04/22(日) 22:50:35 ID:???
Q&Aです。作品投稿の際に御役立てください。

Q.自作品の容量はどう調べればいいの?
A.全角一文字につき2バイト、改行一回につき1バイト消費します。
  一行を四十字とすると、最大81バイト消費します。
  そのため自作品の行数×81で概算は導き出せます。

Q.一回の書き込みは何バイトできるの?
A.2KB、2048バイトです。
  又、最大32行書き込むことができます。

Q.書き込み時に容量が水増しされてるみたいだけど…?
A.レス番号・名前・書き込み日時・ID・メール欄、書き込まれた文章の各行頭に追加された
  空白部分などによって容量が水増しされているようです。
  当スレではこの数値は無視し、書き込まれる方の自己申告を尊重するものとします。

Q.トリップはどうやってつけるの?
A.名前の後に#(半角で)、任意の文字列でトリップができます。
  1#マイバト擦れ123abc
  …とすると、#以降がトリップ表記に変化します。尚、名前は省略可能です。

5 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/04/22(日) 22:51:45 ID:???
Vol.24(前スレ)  ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1167350951/
Vol.23       ttp://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1151260535/
Vol.22       ttp://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1133444671/
Vol.21       ttp://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1124705407/
Vol.20       ttp://hobby8.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1116769985/
Vol.19       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1106959409/
Vol.18       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1104481409/
Vol.17       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1101864643/
Vol.16       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1099232806/
Vol.15       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1097215306/
Vol.14       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1094509409/
Vol.13       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1092163301/
Vol.12       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1089854742/
Vol.11       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1086517669/
Vol.10       ttp://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1082898104/
Vol.9       ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1079611268/
Vol.8       ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1074016593/
Vol.7       ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1067667185/
Vol.5(実質6)  ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1063986867/
Vol.5       ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1059948751/
Vol.4       ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1054241657/
Vol.3       ttp://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1008860930/
Vol.2       ttp://salad.2ch.net/zoid/kako/998/998659963.html
Vol.1       ttp://salad.2ch.net/zoid/kako/976/976898587.html

6 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/04/22(日) 22:52:31 ID:???
・お役立ちリンク
2ちゃんねる 初心者が安心して質問できるスレッドガイダンス
(初心者の質問板 http://etc3.2ch.net/qa/ 派生サイト)
ttp://ansitu.xrea.jp/guidance/

スレッドの各種設定について。
ttp://ansitu.xrea.jp/guidance/?cmd=read&page=FAQ1#content_1_10
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ttp://ansitu.xrea.jp/guidance/?pastlog

書き込み規制を喰らった時のための書き込み代行スレッドについて。
ttp://info.2ch.net/wiki/pukiwiki.php?%B5%AC%C0%A9%C3%E6%A4%C7%A4%E2%BD%F1%A4%B1%A4%EB%C8%C4#Writing_is_requested

・過去ログ・まとめサイト
過去ログ及び各作者氏によるまとめサイトです。既に落ちてしまったスレの代わり等にどうぞ。

名無し獣弐氏の過去ログ保管場所(現在更新停止中)
ttp://sak2-1.tok2.com/home/undecidedness/storage/story.html
にくちゃんねるスレッドタイトル検索
ttp://makimo.to/cgi-bin/search/search.cgi?q=%8E%A9%95%AA%82%C5%83o%83g%83%8B%83X%83g%81%5B%83%8A%81%5B&G=%8E%EF%96%A1&sf=2&H=ikenai&andor=and
2ch DAT落ちスレ ミラー変換機 ver.4
ttp://www.geocities.jp/mirrorhenkan/

◆.X9.4WzziA氏
ttp://masouryu.hp.infoseek.co.jp/index.html
鉄獣28号氏
ttp://www1.bbiq.jp/tetukemono/
三虎氏
ttp://www.geocities.jp/torataiger/

7 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/23(月) 07:19:12 ID:???
弾け飛ぶ装甲。真紅を黒に落とした様なヘルアーマーの追撃。
相手が本気でじゃれ付いて来ているだけなのが非常に痛い。
飛びそうになる意識を何とか保ちながら俺は珍客の相手を余儀なくされている。
相手は…バイオゾイド。
しかも…事も有ろうか相棒のデーターベース内で最も危険度の高い合成種。
ようするにキメラって言う分別不明の正体不明と言う奴だったという事だ。
当然のように時間を少し巻き戻してみよう…お約束だが勘弁して欲しい。
これでは誰が聞いたって見たってその場の状況を切り取っただけでしかないから…。

ー 二日前 ー

「ロウフェンさん良かったですね。知った方に出会えて。」
「しかしな…まさか無能少将と討伐軍主力の確か…ルージ君か。
真逆あの時会った気弱そうな少年が大した成長をしたようで。」
ミロード村から約300kmほどの海の上。
二年ほどの周期でこの大陸を回るこの巨大ウルトラザウルス。停止位置は…
丁度村と外海を阻む海峡の岩山の裏と言う事でこの巨体でも見る事はできない。
しかし今回は飛行が可能なゾイドが居たからなのだろう。
彼方から直接この甲板に現れたというくだりだ。

「残念な話だ…貴重な物が手に入る機会だったもので楽しみにしていたのですが。
しかし空にはまだ複数のソラシティが有るなんて途方もない話ですね。」
村を事実上治めているラージ・ファミロンは直接惨状を見て述べる。
「まあしょうがないかな。複数有ったソラシティ同士も結構仲が悪かったみたいだし…
酷い所は軍備増強のために地上の各部族にバイオゾイドを配って争わせたって話。
そんなものもあるぐらいですからねぇ。」
ちょっとシープと雰囲気の似た服装の眼鏡の男が残念そうに甲板を眺めている。
胸元には拳銃を一挺隠している所を見るに天空人なのだろう…。
「久しぶりだねぇロウフェン君。君の武勇伝は聞いているよ〜。
あ?そうそう僕はロンだ。名前を知らなきゃ会話が成立しなさそうだからね。」
「どうもご親切に…ところで?ロン?何で無能少将とルージ少年が並んでいるんだ?」
「ああ…彼方の元少将の土産話を聞いていた時にこれが来たからね〜。」

8 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/23(月) 08:05:22 ID:???
その話の種となって居る元無能少将と元討伐軍の英雄は…
カリンと何やら話し込んでいる。
内容はどうでもいい。とりあえずやっとの事で立ち直りを実感できる状況は、
とても嬉しくある。一ヶ月半洋上で孤立した経験で精神的にも太くなったのだろう。
俺はロンから頂いたミロードライムを齧り付きながらロンの話を聞いている。
「君のコマンドウルフ…コアが特別みたいだね。
ディガルドの兵士から聞いた話だけどエヴォルトをしたって話じゃないか。」
「そう。あの時は驚いたよ…そんな話は聞いた事も無かったしな。
野良の癖に一緒に旅を始めてからは妙に人懐っこいから妙な奴だとは思ったけど。」
ロンと俺は相棒を見る…その視線に気付いたのか?
相棒の方は恥ずかしいじゃね〜かコンチクショ〜!と言っているかのように、
ひょいとそっぽを向いたのには流石の俺も笑うしかなかった。
その直後に一発コクピット周辺に閉まっておいたスナイパーライフルで足元を撃たれたが。

「随分と…利口じゃないか。所で…エヴォルトを起こした回数は何回だい?」
「一回。俺と会う前にしていたとしても二回だろう。
件のムラサメライガーも二回成長したらしいからな…成長と言っていいかは知らんけど。」
「ならきっと一回だね。今のゾイドは人と共にある存在だ。
ルージ君のムラサメライガーは彼の成長にあわせてエヴォルトをした。
そして…今はミロード村のジェネレーターと融合している。」
突然凄い状況に突入していることに気づいた俺は素っ頓狂な声を上げ、
周囲の目を一気に集めてしまったが気にしないで話を進める。
別のソラシティの住人からの情報収集なんて滅多にできないことなのだから…。

収穫はシープが別途に集めていた無事な高級食器等セットと交換で…
柑橘類の樹木二本と野菜の種。
がらくたやゾイドの残骸から好きな物を持っていって貰い、それと交換で…
俺達全員が乗り熟せたシーパンツァー一機。
復興後のミロード村周辺で発見されて随分と経つが誰も乗れなかった代物だったらしい。
このシーパンツァーは正に海を拠点とする俺達には必要不可欠なゾイドだったのだ。
これで海藻にありつける!壊血病とのお隣さん生活とはおさらばだ!食卓も輝く!

9 :あぼーん:あぼーん
あぼーん

10 :神の怨霊 1 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/23(月) 23:09:40 ID:???
かつて大きな戦争があった。大陸一帯の支配を目指すディガルド武国と、それに抗う
反ディガルド討伐軍によって行われたその戦争は“自由の丘”と呼ばれる地において
行われた戦いにより、唯一絶対神を名乗ったディガルド武国の支配者“ジーン”の
戦死により、討伐軍の勝利に終わった。そして人々は自由の丘に慰霊碑を建てた。
この戦争によって命を落とした全ての人々の霊を慰める為に・・・

「ここに帰って来るのも久し振りですね〜。」
「ミスリル知ってるの〜?」
何でも屋“ドールチーム”の責任者である人の心を持つ機械“SBHI−04 ミスリル”
の操る特機型ギルドラゴン“大龍神”は、ドールチーム構成員であるドールの体を持つ
幽霊少女“ティア=ロレンス”の操るLBアイアンコングMK−U“ゴーストン”を背に
乗せ、その大陸の浜辺に降り立った。世界の彼方此方を大龍神と共に飛び回ってきた
ミスリルではあるが、実はディガルド武国と討伐軍の戦争の行われた大陸が故郷である。
俗に“神々の怒り”と呼ばれる大災害によって記憶を失った彼女がこの大陸で目を
覚ました時、そこではディガルドと討伐軍による戦争が行われていた。ミスリルが
目を覚ますまで神像に身をやつして地元民に崇められていた大龍神と共に旅立つが、
彼女の様な規格外の存在を世間が見逃すはずが無い。討伐軍・ディガルド・ソラの三勢力
から目を付けられ、攻撃を受けたり壮絶な引き抜き合戦が行われたり、もう無茶苦茶。
そうこうしている間に、ミスリルは自分と同じ様に規格外の存在として人々から畏怖
されていた者達と出会うなど様々な体験をしながら新たな記憶を学習していき、討伐軍と
ディガルドの戦争が終結して数日後、新天地を求めて外大陸に旅立つ事になる。

11 :神の怨霊 2 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/23(月) 23:10:24 ID:???
それから100年近い時が流れて現在に至るのであるが、ロボット故に歳を取らぬ彼女は
大龍神共々に100年前と全く違わぬ美しさを維持していた。まあそんな事はどうでも
良いとして、何故ミスリルが久し振りにこの大陸に帰って来たのかと言うと、良く彼女に
仕事の依頼を持って来る謎の覆面怪人“覆面X”の紹介でディガルド戦争の際に大きな
働きをした事で現在もこの大陸における最大勢力となっている“キダ藩”が現在何か
大きな問題が起こっているらしく、その問題の解決を依頼して来たのである。その大きな
問題と言うのが彼女には分からなかったが、とりあえずキダ藩に行けば分かる事である。
それ故にミスリルは大龍神を飛ばし、キダ藩へ向かった。

大陸外に飛び出し、世界を広く見て行って初めて分かった事だが、この大陸は田舎だった。
それはミスリルが外大陸に旅立った100年近い時が経過した現在でも変わらない。
未だにただ木を組んだり土を固めたりして作った簡素な家が並んでいるし、人々の服装も
民族衣装的な物が多い。この様子ではどうやらゾイド=発掘する物と言うこの大陸特有の
認識も変化していなさそうである。
「相変わらず田舎・・・けど・・・平和で活気に満ち溢れてますね。」
上空から街並みを見下ろす程度の事しかしていなかったが、そこは平和だった。そして
人々の表情も明るい。ディガルドに支配された街や村の多かった昔とは大違いな程
街は活気に溢れていた。さらに下を見ると未だに飛行ゾイドが珍しいのか、大龍神を
見上げながら追い駆ける子供達の姿が見られた。100年前はゴツイ顔をしたディガルド
軍人や討伐軍人がゾイドに乗って追い駆けてくる事が多かったのだが、この変化も
この大陸がどれだけ平和になったのかを示しているのであろう。しかし、では何故これ
だけ平和でありながらキダ藩が抱える問題とは何なのだろうか・・・
「いずれにせよ・・・現場に向かえば分かる事ですか・・・。」
ミスリルは大龍神のスピードを上げた。目指すは覆面Xから指定されたキダ藩の城である。

12 :神の怨霊 3 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/23(月) 23:11:42 ID:???
「ここがキダ藩ですか・・・。この大陸では首都的な位置にありますけど・・・それでも何処か
時代かかってますね〜。ま、文化の違いと言う奴なのでしょうけど・・・。」
「まるでTVの時代劇に出て来そうな街なのよ〜。」
キダ藩の上空までやって来た大龍神から街並みを見下ろしたミスリルとティアはそれぞれ
そのような感想を残した。現在この大陸では多数の小国の繋がりからなる連合国家となり、
政治も各小国や街の代表者が集まっての合議制が行われている。その中でも最大勢力で
あるキダ藩が連合国家の中で首都的な位置におり、議会でも議長の立場を執っている
のだが、外大陸での生活が長く、多数の高度文明圏を見て回った為にすっかり目が肥えて
しまったミスリルにとってはどうも発展途上国から脱せ無いイメージが強く残っていた。
「それはともかく・・・何処に下りたら良いかな〜。ここじゃ飛行場も無いし・・・。」
「ミスリルあれ何?」
「え?」
着陸出来そうな場所を探して大龍神はキダ藩上空を旋廻していたのだが、そんな時に
ティアのゴーストンがある方向を指差した。その先にはキダ藩の中心に位置する王城の
城門のすぐ近くにあった広場で一体のランスタッグがこちらに光の点滅による合図を
送りつつ、槍に付けた旗を振っていた。
「あ! こっちに来なさいって事ですか!」
とりあえず着陸場所を把握したミスリルは大龍神の高度をゆっくりと下げて行った。

「いやいや良く来てくれた! 良く来てくれたよミスリル君!」
ランスタッグの誘導によって、街から駆けつけてきた野次馬に見守られつつ広場に着陸
した大龍神を最初に出迎えたのは今回の仕事の仲介役をやっている覆面Xであった。
「覆面Xさん・・・で、今回の仕事は一体どんな内容なんですか?」
「その事なのだがな、まあとにかく詳しい話は城の中でな。」
「分かりました。でもその前に・・・。」
ミスリルは、大龍神を興味深く観察していたキダ藩の兵隊や野次馬の一般市民に対し
こう言い放った。
「私の大龍神に変な真似したら多分この辺り一面まるごと吹き飛びますからその辺気を
付けて下さいね。」
「あ・・・はい・・・。」

13 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/24(火) 05:04:24 ID:???
何よりも…やっと手に入ったカリンが乗ることができるゾイドである事。
これが非常に大きく戦闘等で生身を晒す危険が少なくなった事は安全性の向上。
それとかなりの長距離からの砲撃支援までも可能である。
まあ…性格上自衛以外の目的では絶対に発砲しなさそうな性格だが、
たまにゾイドに乗ると性格が変わる人も居るのでまだ確定ではない。

「なあ?ここのソラシティは落ちちまったって聞いたが本当なのか?」
「ああ本当だよ。まあジーンの手綱を絞めていると思い込んでいた思い上がりの代償さ。
結局この大陸はジーンの一人舞台だったんだしね。
居なくなったら居なくなったで今また焦臭い部族が出てきているのも事実。
ジーンの巨大な陰に隠れていた悪事が今頃になって明るみに出て西へ東へ大騒ぎさ。」
「それはご愁傷様。でも何でこっちにまで出張ってきたんだ?
待ってればこっちから出向いたのに…って事で本題といかないか?ロン?」
「そうだね。あんまり勿体ぶって折角の戦力を逃しちゃガラガに半殺しにされるよ。」
そう言うことで…俺とロンはウルトラの内部。
俺の自室と決めつけた場所まで行くことにした。

「正体不明のバイオゾイド。それはご愁傷様で。」
「さっきも言わなかったかい?まあ別に構わないけど…そうなんだ。
僕のパンブリアンならともかくコア二つを装備して破格のパワーを持つデッドリーコング。
それでも押さえつける事ができなかった。バイオティラノ以来の超大型さ。」
嫌な予感はすぐに当たった。しかも賞金総額金貨一億枚クラスの大当たりだ。
「で?其奴をどうしたいんだ?殺っちまうなら別に頭数はそれ程必要ないだろ。」
「そう。可能なら捕獲してゾイド乗りを見つけたい。そうすれば少しは大人しくなるから。
倒すだけなら簡単かもしれないよ?でもそれじゃあ僕達は何時までもリーオに、
メタルZiに縋る生活を余儀なくされる。でももうここでは種切れだ。
次が無い以上何とかしてそれに頼らない解決法を実践する必要があるのさ。」
「解った。でもじゃあ何で武装がリーオの塊の俺の相棒が必要になるんだ?
支離滅裂になっているぜ?」
「”鼻”さ。君の相棒の鼻は背中のものを足して通常のコマンドウルフの6倍以上。
ディガルドの技術士官が調べていたらしいから間違いないさ。」

14 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/24(火) 06:31:55 ID:???
ー 一日前 ー

「居ないね。」
「そだね。」
「そうだな。」
「逃げられたのかな?」
「足並みの揃わないゾイドで無理に動いたのが迂闊だったか…。」
そう言うことで謎のバイオゾイド捕獲部隊の出動は見事に空振りに終わった。
隣に居る迂闊元少将の迂闊発言で締めくくられた今日の行軍。
その構成は…
前衛にバイオヴォルケーノと追跡と痕跡調査を勤める俺の相棒。
中央にパンブリアン…じゃなくてバンブリアンとデカルトドラゴン。
後衛には前後への格闘が行いやすいデッドリーコング。
それと慣らし運転中のカリンが乗るシーパンツァー。
どう見ても珍道中を余儀なくされるステキな構成だ。
一応足取りは歩き回った範囲で調べられており…結構な範囲を彷徨いている事が解る。
しかし、この足跡の大きさが非常に不味い相手の予想図を構築する。
最低でもエレファンダークラスの機動性を常に維持し、
その巨大な足と脚力で悪路をものともしない強靭な移動力を持っている。
その大きさは最低でも巨大化処置を受ける前のバイオティラノ2機分。
それだけで充分危険な存在だ。
それはそうと…昨日何故ロンはバンブリアンをパンブリアンと呼んだのか?
その理由はその姿にあった。
大きくカラフルな玉を転がしている。見ていると何か可愛い…。
「こいつで彼と遊べれば意思の疎通の初期段階はいけるかな?と思ってね。」
そのロンの言葉に俺達は唖然とし、
カリンだけは妙に感心していたのが印象的だった…。
信じるものは…救われるのだろうか?妙な疑問が俺の頭の中でぐるぐる回るのみだ。

そして…今日を迎える。
幾つかのレッゲル溜まりで浸み出たそれを美味そうに舐めている巨大な影。
遂に俺達中傷”仲良くなり隊”は森の奥にお友達の姿を捉えることに成功したのだった。

15 :神の怨霊 4 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/25(水) 23:16:04 ID:???
この一言で彼等は一斉に退いた。顔は笑顔であったが、雰囲気は逆であり、冗談を言って
いるように思えなかった。ミスリルの笑顔の影に隠れた非情さを垣間見たのである。
「そう・・・分かれば良いのです。」
それを確認したミスリルはティアを連れ、覆面Xの後に付いて城の中へ入って行った。

「にっしても遅いですね〜。実はそんな大した問題じゃなかったり?」
「うんうん。」
城内の客室に案内された二人だったが、それっきり仕事の件の話もされないまま待たされ
続け、ついには夜になってしまった。そして蝋燭の明かりに照らされた客室の中で
城の者から出された宮廷料理を召し上がっていた。
「宮廷料理の割には動物の丸焼きとか結構簡素なのはどういう事でしょう・・・。」
「でもでも、こんなに待たせるなんてここの人達酷いのよ。」
「まあそう言わないで、食事を楽しみましょう。でも・・・案外罠だったりして・・・。」
「え・・・。」
ミスリルの言葉に反応して不安な顔で硬直したティアを見て、ミスリルは笑みを浮かべた。
「だって今までもあったじゃありませんか。真っ当に仕事の依頼をする振りをして、実は
私達を陥れる為の罠だったって言うパターンが・・・。実際キダ藩の人達には私を殺す理由が
あるわけですよ。100年前に色々ありましたからね。で、このテーブルにならんでる
料理にも毒が仕込まれてるかもしれませんね〜。」
「え・・・そんな・・・沢山食べちゃったのよ・・・。」
ティアは真っ青になり、今にも泣きそうな顔だった。が、直後ミスリルはテーブルが
壊れない程度に叩きながら笑った。
「冗談! 冗談ですよ! だって良く考えてみても下さいよ! 覆面Xさんが紹介した
お仕事ですよ! あの人は確かに得体の知れない所がありますけど・・・信用出来る人です。
それにもし仮に毒が仕込まれていた所で・・・私はロボットで、ティアちゃんはドールを
体として使ってる幽霊。効くわけ無いじゃないですか!」
「も〜ミスリルったら冗談きついのよ〜!」

16 :神の怨霊 5 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/25(水) 23:17:04 ID:???
ミスリルの説得力のあったジョークにティアが頬を膨らませていた時だった。閉じられて
いた戸が開き、立派な服に身を包み、腰には煌びやかな刀を差した、見るからに位の
高い役職に付いているのが分かる中年の髭男が現れた。
「機械でありながら飯を食うとは変わった奴だな君は・・・。」
「あら・・・。」
客室に入り、戸を閉じた中年男は二人の前に立った。
「私は今回の依頼に関する説明をする事になるキダ藩家臣の“ガン=ジュツ”と申します。」
「それはどうも・・・私はドールチーム責任者のSBHI−04 ミスリルです。
で、こっちが私の連れのティア=ロレンスちゃん。」
「はじめましてなのよ。」
双方自己紹介を済ませた後、ガン=ジュツはミスリルとティアの向かい側に座り込んだ。
「で・・・やっと教えてくれるのですね? 今回の依頼と言うのを・・・。」
ガン=ジュツがあんまりにも険しい顔をしている為か、ミスリルも知らず知らずに
真面目な顔になっていた。
「我々とて不本意なのだがな・・・お主の様な者に頼らねばならないと言うのが・・・。」
「だから何がですか? それだけ大変な依頼と言う事ですか?」
「ま・・・まあそうだ・・・。君にとっては違うのかもしれないが・・・。」
依頼主であるとは言え、ガン=ジュツの表情からは不満がにじみ出ていた。
「だが、君も君だ。私は当時のディガルド戦争の事を直接的に知らない世代ではあるが・・・
君はその実力を評価され、討伐軍に何度も誘われながらもそれを一蹴したそうじゃないか。
であるにも関わらず今回の依頼は引き受けてくれた。まずその理由を聞かせて欲しい。」
「まあ100年前と今とでは状況が違うと言う事です。今はこうして何でも屋をやってる
わけですから、きちんとビジネスとして成立していれば受けますけど、当時はまだそう
いう事はやってませんでした。それに・・・単純に興味が無かったと言うのもあります。
まあそれなりの報酬が頂ければ多分受けていたと思いますけど・・・その辺突っ込まれると
かなり苦しそうな顔してましたね〜討伐軍。」
「そ・・・そうか・・・。では話を元に戻そう。(多分法外な報酬を要求したんだろうな・・・?)」
ガン=ジュツは軽く咳き込んだ後、気を取り直してミスリルの目を見つめた。

17 :神の怨霊 6 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/25(水) 23:18:11 ID:???
「実は・・・この大陸に正体不明の怪物が現れたのだ・・・。それを退治して欲しい。」
「へ? いたって単純な仕事ですね。」
かなりシンプルな内容に二人は拍子抜けてしまうが、ガン=ジュツはやや戸惑った様子だ。
「だがそれが単純に行かないから君達の力を必要としたんだ。そもそもその怪物は・・・。」
と、その時だった。突然戸が開き、一人の老人を連れた十代前半の若い兵士が入って来た。
「何だ!? カルフ=ラーカ! こんな時に何用だ!?」
「ガン=ジュツ様! 無礼を承知で言わせて頂きます! 彼女等への仕事の依頼の件・・・
無かった事に頂とう御座います!」
「何!?」
ガン=ジュツに“カルフ=ラーカ”と呼ばれた表裏の無い正義感の強く真っ直ぐな目を
した若い兵士はそう言ってガン=ジュツに対しお辞儀をすると、彼が連れて来た100歳
以上は軽く行っていると思われる程にまで禿げ上がった老人が前に出た。
「ガン=ジュツ様・・・貴方様はご存知でありますか? あの者が100年前・・・討伐軍に
何をしたか・・・。」
「ご老人は確かカルフの曾祖父のラルフ爺さんですね? 確か貴方は当時のディガルド
戦争にも参戦した事があったとか・・・。私は当時まだ生まれてませんから、一体何が
あったのですか?」
ラルフと呼ばれた老人に対しガン=ジュツはやや困った面持ちであったが、それ以上に
困った顔をしていたのはラルフの方だった。
「嘆かわしいですじゃ・・・。あの壮絶な戦争を知る世代がドンドン減っていく・・・。無論
あ奴が討伐軍にした事もな・・・。」
「だから彼女が何をしたんですか? 討伐軍が何度も参戦を願い出てもその都度一蹴した
と言う位しか私は知らないのですが・・・。」
「ん〜・・・何か良く分からない事態に・・・。」
ミスリルは他人事のように事の次第を見守っていたが、直後ラルフに怒鳴り付けられた。
「張本人のお前が他人事の様に語ってどうするんじゃ! お主は忘れてしまったであろう
がワシは忘れぬぞ! 100年前にお前が討伐軍に行った悪行を・・・。」
「悪行?」
「ミスリル何か悪い事でもしたの?」
ティアも少し不安そうにミスリルの手を少し引っ張った。それにはミスリルも困る。

18 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/29(日) 02:22:23 ID:???
因みに…ボールの力は偉大だった。
奴はボールを見ると一目散にこっちに突撃してきて…
俺達を容赦無く吹き飛ばしてしまったのだ。
そしてやっとの事で時間が追い付くわけだ…って効果がありすぎだって!!!

並べられた的が一気に弾かれるように俺達は成す術もなく宙を舞う。
空中からぼ〜っと眺めたその姿は、
哺乳類の尻尾が魚っぽいと言う感じが丁度いいだろう。
遠くに逝く意識を引き戻したのは相棒がまた脳内の引き出しから引っ張ってきた詳細。
「ばいお・・・・・・び〜ば〜ぁ・・・ぎがんてぃあ・・・?」
バイオビーバーギガンティア…全長34,5m、全高19,8m。
推定体重400t。最大巡航速度150m/h最大戦速270m/h…
えっと…何と申し上げたら良いか解らんが凄いスペックだ!
その上水中水上で行動でき木を伐り出す能力も持っている。
従来機との大きさ当機比5倍の行動能力は据え置きとまあよくやるものだと感心する。

だが、バイオゾイドが恐竜型でないという新たな遭遇に当然驚きを隠せない者も出る。
「前は暗くてよくわからなかった!でもこれはでかすぎだろうよ!」
当然の感想を叫ぶガラガ。デッドリーコングは飛ばされた際に木々を掴む事で、
かなりの飛距離を減らしたらしくもう着地しており必死にビーバーを宥めている。
「いやあ…ジーンもこんなゾイドを開発していたとは考えにくいな。
きっと掘り出し物か別のソラシティ辺りが様子見に誰かに渡したって所かな?」
吹き飛ばされながらそれでもあくまで冷静に調べているロン。
「これで…無人というのか!?これではブレーキに壊れた暴走ゾイドだ!」
迂闊元少将も戦列に加わり宥めているのだが相手が悪い。
「カリン!?カリンはどこだっ!?おいっロウフェン!目を覚ませ!」
「あれ?ここは…?」
「…ああああああああああああああああああああ!?背中にシーパンツァー!!!」
最後のは俺だ。どうやらあのビーバー君は丸い物が好みらしい。
シープの声で意識が完全に覚醒した途端にその状況を目の当たりしては焦る!
焦って相棒共々ジタバタしてみるが…当然空中では無駄な事である。

19 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/29(日) 02:24:07 ID:???
弾け飛んだ右肩の装甲の接続部からは紫電が走り、
相棒のコンディションはあっと言う間に最悪の状態にまで落ちている。
何とか着地を試みるが結果がどうなるかは果てしなく悪い方へ傾いている。
「んなろおおおお!着地するぞこのやろおおおおおお!」
木々を盛大に薙ぎ倒しながら相棒は何とかダメージを最低限に押さえて着地する。
だがそれでも足首やらから小規模の爆発が起こり火花が辺りを彩る。
「くそ…このままじゃ引火しちまうぞ…ってあああああああああああああああああ!?」
俺の記憶はとりあえずここで途切れた。

ー 半日後 ー

俺は相棒共々、カリンのシーパンツァーと共にビーバーの上の人となって居た。
このビーバーはこっちの状況を見た途端猛烈なスピードで森を15分の1も損失させ、
そんな勢いでこっち駆けてきたらしい。
どうやらロンの言う掴みはまずまずだったようで今ミロード村から15km程の場所にいる。
「コクピットの中は無人だった。やっぱり彼は自力自分で動いていたよ。
プログラミングなんかじゃない野生の本能を持っている。バイオゾイドにしては珍しい物だ。
きっとパイロット無しでの運用を考慮した固体だと思うよ。」
ロンは感心したようにでかビーバーを見上げている。
「すごいですね。野良ゾイドと同じぐらい機敏で軽快に動くバイオゾイドなんて…
俺達が戦っていたディガルドのバイオゾイドはまっすぐで機械的だった。」
わざわざ状況を確認しにルージ君達もきていたらしい。

だが…何故俺は乙女のビンタを喰らっていたのだろう?
意識が戻り頬が無駄に熱いし痛いと思っていたら、その張本人が今度はルージ君に…
それを放っていた。よくもまあビンタを連続して打ち込めるものだと俺は感心する。
「あんたねぇ!ゾイドにも乗れないのにこんなに危ないところに来るんじゃないの!
叔父様がわざわざ村のお見舞いにきてくれたって言うのに何でこんな所にいるのよ!」
丸焼き姫の略筋違いの説教に頭を抱えて逃げるルージ君の姿はちょっと微笑ましい。
きっとその叔父様はムラサメライガーの状況を心配しているのだろう…。

20 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/04/29(日) 02:28:26 ID:???
その叔父様ったら…ルージ君の父親ラージと酒をチビチビやっていた。
完全にお忍びなのであろう。ラ・カンの顔には苦労の跡と言って良い程皺が深く見える。
「よう…頑張ったみたいだな。藩主様。」
こっちに気付いたらしいので膨れた頬を隠さず俺は明かりの中に入る。
「久しぶりだな。しかし無事で何よりだ。お前が居なくなってはだらけてしまいそうでな。」
「酷いことを言わないでくれ、
今度あんたの首取りに入ればどれだけの関係ない人死にが出るか想像もつかん。」
「それもそうだ。笑える話ではないな…でお前は戻る気は無いのか?
せめて私が言えた口ではないが一度ぐらい墓参りはしてもバチは当たらんだろう?」
ラ・カンの言うのはもっともだが俺には俺の事情も在る。
「直ぐは無理だな。あんたも話は聞いたろ?別のソラシティ同士の抗争に巻き込まれた。
奴等は今こそなりを潜めているが何時現れるのか解らん。
こんな俺でも貴重な戦力である以上あの甲板を離れるわけにはいかない。」

あリがたいお誘いだがこっちにも事情がある。
デカルトドラゴンの一個小隊を迎撃できない戦力では先が見えきっている。
夜が明ける兆しを東の空から感じて俺は寝ることにした。
どうせ相棒が動けない以上は俺に出番は無い。
そうである筈だった…と思う。

「ロウフェンさん!起きてください!ビーバーが!ビーバーが!」
突然カリンに揺さぶられ俺は目を覚ます…がもう暗いのは夕方なのであろうか?
いや違う!俺達をすっぽり包む巨大な物に日の光を遮られているだけだった。
ビーバーだ。でかビーバーが俺達を興味の眼差しで見つめている。
最大級の警戒警報が俺の中で響き渡る!
WARNING!WARNING!A Huge BATTLE ZOIDS!
と言う警報が鳴り響く脳内は俺の反応速度を置いてけぼりを喰らわしているので…
指一つ動かせないと言う情けない状況に陥っていた。
それで次の瞬間にはビーバーの巨大な舌に舐められ…見も毛もよだつ気分を味わう。
それだけならまだ良かったのだが…
現実は甘くなく俺は前足で器用に摘まれると背中の穴に放り込まれてしまうのだった…。

21 :神の怨霊 7 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/29(日) 11:32:47 ID:???
「悪行って言われても私には何の事か・・・。と言うかお爺さん昔会いました?」
「うむ・・・まあ分からなくても仕方ない。あれから100年・・・ワシもこの通りの
ジジイじゃ。お主と違ってな・・・。ではお主・・・昔、討伐軍に参加して欲しいと号泣
しながら土下座までした少年がいなかったか?」
「土下座・・・。あああ! 思い出しましたよ!」
ミスリルは何か思い出したようで両手を叩いた。
「貴方あの時の人間を嘗めるなとか人間賛美的なセリフを吐いておきながら、本人は
もろに私の様な機械を嘗め腐ってたウジウジ系の土下座君ですね!」
「う・・・凄く腹の立つ呼ばれ方じゃが・・・その通りじゃ・・・。」
「何それ・・・。」
ミスリルのその呼び方にラルフを含め、その場にいた皆が気まずい顔となった。そして
ガン=ジュツが気まずい顔のままラルフの肩を軽く叩いた。
「で・・・ラルフ爺・・・彼女が昔・・・一体何をしたのですかな?」
「破壊じゃよ・・・。恐るべき力による無差別破壊ですじゃ・・・。討伐軍とディガルド軍の
戦いに突如割って入り、両軍とも見境なしに破壊しまくったんじゃ・・・。忘れもせぬ
全てを破壊し、炎の中に浮かぶあ奴の姿はまさに破壊神としか言い様が無い・・・。」
「それは貴方達が私がせっかく夜のおかずの為に釣ったお魚さんを流れ弾で吹っ飛ばした
からでしょう!?」
「だからじゃ! たった一匹の魚の為に多くの人間やゾイドが殺されたんじゃぞ!
お主は血も涙も無いのか!」
「嫌・・・無いだろ爺さん・・・。奴は機械だぞ・・・。」
「う・・・。」
すっごい真面目な話をしていたのにガン=ジュツの突っ込みに阻まれてしまった。
そして今度はガン=ジュツがミスリルに問う。
「だが・・・ラルフ爺さんの言う事は本当か?」
「ハイ本当です。せっかく私が夜のおかずの為に釣ったお魚さんを討伐軍とディガルドが
広げた戦火のせいで台無しにされて・・・怒って両軍の間に割って入った事がありました。」
「・・・。」
あっさりと肯定するミスリルにガン=ジュツも眉を細めてしまうが・・・
「まぁ・・・その件は所詮100年も昔の話だ。と言う事で本題に戻るぞ。」
「な・・・。」

22 :神の怨霊 8 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/29(日) 11:34:19 ID:???
ミスリルに対し全くお咎め無しで事を進めるガン=ジュツにカルフとラルフは唖然とした。
「何故見過ごすのですじゃ! 奴は大罪人ですぞ! いや、あれだけの力を持ちながら
討伐軍に参加しなかっただけで十分犯罪じゃ!」
「大罪人とは酷いですね。私はお魚さんを台無しにされた報復と、自身の身を守る為に
貴方達の戦いに一度だけ割って入った事があるだけですよ。私だって生き延びたいん
ですよ。貴方が昔所属していた討伐軍だってディガルドの理不尽な支配から逃れる為に
組織されたのでしょう? 私のした事と討伐軍がした事、何か違いがありますか?」
「き・・・機械兵の亜種ごときが偉そうな口を聞くなぁ!」
「ほらそうやって機械を嘗める。別に人間がこの世で一番偉いわけでも無いのに・・・。」
「まぁまぁ二人とも落ち着け落ち着け!」
いまにもラルフが杖を振り回してミスリルに殴りかからんとしていた時、二人の間に
ガン=ジュツが割って入った。
「とにかくだ・・・。彼女が100年前にした事に関しては不問とする。何故なら犯罪を
起こしても15年で時効となるからだ。と言う事で本題に戻るぞ。いいな!」
「ハイ良いですよ。」
「う・・・。」
とりあえずカルフとラルフの二人は一歩引いたが、今度はこっちの話題に切り替えて
ミスリルに対し反論を始めたではないか。
「ガン=ジュツ様! ワシはあの様な者達に頼るのは断固反対ですじゃ! 確かに
あの者達ならばあのバケモノも倒してしまえよう・・・。じゃが、外部の者に頼って
事件を解決した所で・・・キダ藩の名誉に傷が付くだけですぞ! それは実に嘆かわしい事
ですじゃ・・・。100年前の討伐軍は・・・あのルージ=ファミロン様が率いた討伐軍は
あの様な者に頼らずとも己の力だけでディガルドを退治したと言うのに・・・。」
「(私を討伐軍に引き入れる為に土下座までしたボーヤが良く言うよ・・・。)」
何か号泣しながら必死に主張するラルフにミスリルは呆れていた。

23 :神の怨霊 9 ◆h/gi4ACT2A :2007/04/29(日) 11:35:31 ID:???
「しかしラルフ爺さん。100年前と今とでは状況が違う。それに・・・こういうことわざが
ある。“毒を持って毒を制す”と。つまりバケモノにはバケモノをぶつけよ! と言う事だ。」
「(私もバケモノなのね・・・ここの認識じゃ・・・。まぁ無理も無いですけど・・・。)」
「ガン=ジュツ様! それが女々しいと言う事ですじゃ! 誇り高きキダ藩の家臣で
あるならば己の力だけで国を守るべきですじゃ!」
「お言葉ですがご老人。記録によりますと討伐軍もディガルド戦争の最終決戦直前、
ディガルド側に出来た反ジーン派を味方に引き入れて戦力を増強したそうですが・・・。」
「覆面Xさん!」
いつの間にかラルフの背後に、ディガルド戦争に関して記した巻物を持った覆面Xが
立っていた。そしてラルフは彼の方を向き、食って掛かった。
「お・・・お主じゃな! あの者達を紹介したのは! 変な覆面被りおって! お主等の
せいでキダ藩のメンツは丸つぶれじゃ!」
「それは済みません・・・。ですが・・・キダ藩が怪物によって丸ごと食われて無くなって
しまうよりかは良いじゃありませんか。」
「つまりそういう事だ。この件は殿のご了解も得ている。不本意である事は我々も
承知だ。しかし、キダ藩の存亡には代えられぬ。ここは退いては貰えんか?」
ガン=ジュツに言われ、ついにラルフは退く事になるが、それでもミスリルを強く
睨み付け続けていた。
「じゃが・・・ワシは認めんからな・・・お主を・・・。ワシだけじゃない・・・お主を怨んどる奴は
この大陸に沢山おるんじゃ!」
「いや、この大陸だけとかみみっちい事言わずに・・・世界中敵だらけですよ私。」
「う・・・。」
結局ミスリルに切り返されて不本意のままカルフとラルフは部屋から去っていった。

24 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 18:46:31 ID:???
 畜生。どうしてこんなことになった。
 重力が左向きに働いている。即ち、俺のゾイドは横倒しになっているのだ。
 見回せば、ひび割れてノイズが走るモニターに映る光景は一変していた。先ほどまでは
土色と乳白色だった洞窟の内壁は、今や炎の照り返しに煌く氷壁と化している。鍾乳石の
代わりに氷柱が垂れ下がり、こんな状況でさえなければ美しいとさえ思っただろう。

 息も絶え絶えの無線に友の名を呼ぶ。数度目の呼びかけに、聞きなれた声が答える。
「けっ、借金取りみてえに人の名前を連呼するんじゃねえよ。ちゃんと生きてるぜ」
 憎まれ口を叩く元気が残っているなら命に別状はあるまい。
「しばらく気絶してたらしい。戦況は?」
「味方の先頭集団、つまり俺たちは氷の壁で孤立させられて壊滅状態よ。野郎、悠然と氷
の上に立ってやがるぜ……後続の応援は期待しない方がいいな」
「なに、俺とお前だけで敵の包囲を抜けたこともあったろ。味方になんとかして道を作れ
れば、あるいは形勢逆転も狙えるはずだ」

 自己修復能力がモニターを復調させた。あらためて、状況の悲惨さに閉口する。
 関節からバラバラになったコング、落ちてきた氷柱にコックピットをぶち抜かれて沈黙
するコマンドウルフ、人間ごと氷に閉じ込められたビークル。「氷を使ってアートを作れ」
と悪魔に注文をつけたら、きっとこんな景色が出来上がる。
 まともに立っているゾイドは半数を割り、氷柱の影に隠れて砲撃を続けている。火砲が
効かないのは連中とて解っているんだろうが、恐怖に駆られたとき人間は何かせずにはい
られない生き物だ。結果としてその攻撃が敵の注意をひきつけ、寿命を縮めるものだと解
っていても、その手に銃があれば撃ちたくなる。
 まあ、そこで我慢できるかどうかが熟練兵と素人の差なんだがな――。
 俺達のようになりを潜めて機会を窺う奴は必ずいる。そうした連中を糾合し、素人諸君
を囮に使って不意を衝くしか勝機はない。

「勝機なんぞ最初からないかもしれんがな……」
 不意を衝いて何をするというんだ? 奴のとんでもない能力を無効化して攻撃を当てる
手段も解らないってのに、勝機があるなんて考えは楽観視も度が過ぎる。

25 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 18:50:19 ID:???
 常識で考えれば撤退すべきだ。ここから逃れ、落ち着いて対策を考え、再攻略を試みる。
 しかし今回ばかりは……撤退しても状況が悪化するのは目に見えている。再攻略の準備
が整う頃には、ここら一帯の気温は寒冷地仕様のゾイドでも即死するようなものになって
いるだろう。
「だがどうする。火力を集中しようが、対シールド弾頭だろうが、奴の防御を破ることな
んて出来ないじゃねえか」

 誰に言ったわけでもなかったが、返事があった。
「エネルギーの放出と吸収は、同時にはできないのではないでしょうか?」
 この声。キャンプでのシート貼りの時に会った女の子か。
「よう、生きてたかお嬢ちゃん。先頭に居合わせたのは災難だったな――そんで、放出と
吸収が同時に出来ないってのは何のことだい?」
「ええと、放出というのはつまりあの騎士からの攻撃です。剣以外の武装、荷電粒子砲や
ミサイル、レーザーなどはどうしてもエネルギーを持ちますから、自分の攻撃まで無力化
してしまわないように、攻撃の瞬間だけ力場のようなものを解除しているのでは?」
「なるほど……」
 ありそうな話だ。この子は歳のわりによく頭が回る。
「だが、奴が攻撃と防御を同時にこなせるとしたら?」
「お手上げですね」
 絶句するほかないシンプルな答えだ。

「……俺は気に入ったぜ。そいつを元に作戦を考えようか」
 どうしてコイツはそう、命がけの決断を昼飯の場所みたいな口調で決めるかね。
「あ! 昨日はどうもお世話になりまし――」
「いいのいいの、俺らはなーんもしてねえから。オイみんな聞いてたか? 俺たちは今か
ら、あのいかつい騎士の寒い一人舞台をやめさせに行くぜ!」
 なんと、配布された共通回線から無数の雄叫びが聞こえてくるではないか。
「俺のホーンはまだ動くぜ。反荷電粒子シールドがあるからな、囮ぐらいやってやる」
「俺のバイパーも動けるぞ! 逃げ足には自信があんだ、蛇のダンスで挑発してやるぜ」
「僕のグランチャーも行けます! 地下の戦いなら……!」

26 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 18:53:13 ID:???
 思いのほか生存者は多かった。手柄を狙う歴戦の勇士たちは、簡単には死なないのだ。
「よし……囮役をやってくれる奴は適当に挑発、然るのち逃げ回れ! その間に他の奴が
攻撃して注意を引き付けろ! 隙が見え次第、奴に手痛い一発をくれてやるぞ」
 二度目の雄叫びはより勇壮に唱和、機能停止していると見えた多くのゾイドが一斉に動
き出す。
「ああ、グランチャーの奴はちょっと待て。お前は壁を掘って味方に連絡だ」
「了解!」
 さて、敵さんはどう出る?
 どう出たにせよ、隙を見せようものなら俺のゴジュラスと相棒のゴルドスが首を戴く。
こんな陰気なところを、墓穴にしてたまるかよ――。

 “能力”は、その持ち主の意思や願望を何らかの形で反映すると言われている。
 赤子の段階で覚醒する者も、成長してから抱いた想念が自らの力と奇妙に符合すること
を不思議に思うのだと言う。研究の結果では、思念は時間軸に縛られないため自らの過去
における能力の発露に干渉することが可能である――とする仮説が有力だ。

 そうした話を聞くたびに少女は不思議がったものだ。自分の能力は、およそ望んだこと
など無いようなものなのに、と。
 とかく、彼女の能力は『自分と同化した機体にかかる慣性を無くす』力だった。
「役に立つの? こんな敵を相手にして、私の能力なんかが……」
 もともと、ゾイドと融合した時点で対G限界は機体の構造上の限界まで引き上げられる。
それ以上の機動が出来たところで、他の能力者たちに見劣りする地味な能力であることは
否めない。
 彼女の機体、ライジャーのすぐ横でエレファンダーが爆ぜた。一方の敵機はというと、
未だ損傷を負っていない。こちらの動きに気付いたのか、可能な限り攻撃時の隙を消すよ
うな立ち回りをしつつ、確実に一機ずつ仕留める作戦に出ている。
 やはり、強い――! 剣の力にばかり目が行きがちだが、真に恐るべきはそれを柔軟に
運用する騎士に他ならない。己の力でできることを見極めた者は、格上の相手や圧倒的多
数の敵にも抗し得るのである。

27 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 18:55:53 ID:???
 ロックオンを警告する表示が空のコックピットを赤く照らす。
「駄目だよ……やっぱり私じゃ、こんな奴に勝つなんて」
 急激に身体を捻り、直角に近い軌道で右へ飛ぶ。髪一筋の差で左側を光の矢が飛び過ぎ、
その余波で装甲表面が泡立つのが感じられた。
 警告はまだ消えない。敵の肩部アーマーが展開し、ミサイルを放ってこようとしていた。
再び急角度の跳躍で回避しようと飛ぶが、知らず知らずの内に壁際まで追い詰められてい
たことに気付かず、したたか半身を氷壁に打ちつける。
 噴射炎の輝きが広がり、弾頭が飛び来る。少女は閉じることも出来ない目を逸らした。

「…………?」
 人間のそれより格段に広い視界の右端には、自分に命中することなく爆散したミサイル
が。中央には、肩口に刺さった巨大な銀の槍に苦悶する竜の姿があった。
「どうだッ! 俺のゴジュラスは槍投げの名手でもあるんだぜ――見てろ!」
 突き刺さった槍はもともとミサイルである。したがって、目標に突き刺さったのち遅動
式の信管が作動、爆発に至る。
 竜の左腕が肩から吹き飛び、怒りの咆哮が上がった。
「リアクティブアーマーが逆に被害を大きくしたな。ざまあみやがれ」
 呆気に取られる少女の傍らに一機のゴルドスが着ける。
「諦めるぐらいなら、それまでの自分じゃ出来なかった何かをしてみるモンだ嬢ちゃん!
自分を諦めていいのは、本当に出来ることが何もなくなったときだけだぜ!」
「カッコつけやがって、とどめはお前のランスでやれ! 次のタイミングを逃すなよ!」

 マグネッサーホバーにより、彼らの機体は思いのほか軽快な動きを見せていた。巨体の
ゴルドスが横滑りしながらリニアキャノンを連射し、敵の注意を引き付ける。
「おらおら、撃って来い三流芸人! 特大のツッコミくれてやるからよぉ!」
 眼前で墜落する弾丸を踏み潰し、騎士セルゲイの機体は四足竜へ向かって疾駆した。
「なに、格闘戦で殺りにくるつもりか! ますます面白くねえぜ、お前」
 後ろに滑りつつ更に連射。しかしそれは不可視の壁に阻まれ、勢い減ずる助けとならず。
 行き着く先には氷壁――ここは巨大な袋小路だ。逃げ場は無い。
「どうしよう。あの人、死んじゃう」

28 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 18:58:23 ID:???
 少女は無意識の内に機体を走らせるが、追いついたとて何が出来るのであろう。単に、
各個撃破の対象が一体増えるだけである。どうすれば……。
『自分を諦めていいのは、本当に出来ることが何もなくなったときだけ――』

 諦めてはならない! まだ自分は全て出し切ってなどいない。己を知る者こそが最後の
勝利者となるのであれば、己に何が出来るかを考え抜くまでだ。
「私の能力に何か使い道は!? 慣性の打ち消し……反作用の中和…………そうか!」
 少女は遂に偶然の神に与えられた力の本質を理解した。地を駆けていたライジャーが浮
き上がり、空を翔けて敵の背後に迫る。
「ライジャーが飛んだ!?」
「何だ、あの能力は?」

 セルゲイは剣を新たな敵に向け、凍てる圧縮空気の波動を放った。防御を崩さずに撃て
る飛び道具だったが、横手から飛んできた氷塊に遮られて冷気が霧散する。
 地上に降り立ったライジャーの周囲には、氷塊やゾイドの破片が円を描くように浮遊し
ていた。
「驚いた――念動力か、こりゃあ?」
「違う、彼女の周囲に重力偏差が起きてる。これは……重力子の疎密を変動させる能力か」
 重力を遮断、あるいはベクトルを変えることによって自機や周囲の物体を動かす。持ち
主さえ気付かなかった力だが、素粒子に干渉する能力は非常に強力なものだ。

 ゴルドスに向き直ろうとしたセルゲイは、眼前に氷の山が出来ていることに気付く。ど
うやら新手の能力は厄介なものらしい。ならば――
「……貴様らに、騎士としての敬意を表そう」
 これまで口を開かなかった敵手の声は予想に反せず、重々しく厳かだった。
「我は身の守りを解く。全ての力を攻めることに振り向ける。己の限界まで力を引き出せ。
長短問わず、戦いの中で培ってきた経験の全てを活かせ。さもなくば――」
 白刃の切っ先に光が見える。だが……“黒い光”など存在してよいものだろうか?
「さもなくば、我が敵手たる資格はない。行くぞ、絶対零度<アブソリュート・ゼロ>!」
 その瞬間――。

29 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 19:02:32 ID:???
 黒き光の中、全ての原子がスピンを止めた。全き静寂。一切の“動”を拒む静謐。
 そして、位置を完全に確定された量子は理論上、無限にまで高いポテンシャル・エネル
ギーを確率として持つ。絶対零度を生み出すとは即ち、宇宙の創造と同義なのだ!

 音もなく揺らぐ真空の小波が収斂し、やがて黒い光は転じて目も眩む白光の巨塊と化す。
セルゲイを除き、その光を正視し得た者は全員即死した。生身の人間は影のみを残して消
滅し、光の直撃を受けたゾイドも溶解するか、異常な熱量に爆発するかの二択を迫られた。
「は……っ、はあっ、くそ! 何だあの攻撃は?」
「穴ぐらに身をかわせたから良かったものの、さっきまでそこらを覆ってた氷が殆ど水蒸
気になっちまったな。湿気が多いのは嫌いだぜ――日焼けはもっと嫌いだ」
「お二人、大丈夫ですか!? ほかに生存者は……」
 通信機から弱々しい声が名乗りを上げてくる。だが、その声も先ほどと比べてなんと少
ないことか。あの光を浴びた味方は全員死んだと見て間違いない。レーダーの反応がそれ
を裏付けている。

 唐突に警報が鳴った。飛び上がる男はモニターに、敵襲とは異なる危機を見て取る。
「放射能汚染? ……さっきの攻撃か!」
「ゾイドは一応対放射線能力がありますが、歩兵や車両の方たちには危険です。彼らは物
陰から出ちゃ駄目ですね。さっきの攻撃は熱量からして、破壊力の大部分がガンマ線かと
思われますが……コヒーレント化もせず放射するだけであんな威力を出すなんて。ゾイド
の装甲は、銀河宇宙線に耐えられる船舶より上なのに」
「最近の日焼けサロンは、客を消し炭にしちまう上に汚染までしてくれるのか。サービス
精神旺盛なこって何よりだねぇ」
 このひとの軽口に際限というものはないんだろうか。緊張感の無さを危ぶむと共に、不
思議と安心を覚える少女であった。

「とにかく、もう一回アレをやらせたらおしまいだ。何とかして、光を遮る手段を……」
「いやいや待てよ。さっきの攻撃でそこら中の岩が溶けてやがる。もう一発ぶっ放したら
あの野郎も一緒に生き埋めだぜ。二度目はないと見るね」
「また、『二度目があったらお手上げ』――ってか?」
 男二人と少女、極限状態での談笑。

30 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 19:06:00 ID:???
「まあ、別の攻撃はいろいろ仕掛けてくるだろうからな。こういう作戦でどうだ」
 歴戦の兵が練る策とは。

「……まず最初に、嬢ちゃんがその辺のゾイドの残骸をぶっ飛ばして囮にする」
 ステップワン。少女のイメージするままに横向きの引力が発生し、パイロットと共に息
絶えたシャドーフォックスが敵に向かって飛んでいく。
「どう迎撃するかを見て敵の手の内を探るんだ。連続して、いろんな方向からだぞ」
 砲弾に使う機体と沈黙せる乗り手に無言の謝罪を述べながら、少女は次々と攻撃を仕掛
ける。第一波は見えない射線に貫かれて蒸発し、後方の壁面が煮え滾る溶岩に変わった。

「ガンマ線を集束、レーザーにして撃ってきているようです。確かにさっきの攻撃はもう
できないみたい――」
 と、今度は後方から飛ばした残骸の一群が上下左右より突き出す氷の槍に貫かれて止ま
る。水分の多い土壌とはいえ、あれほど正確に水分子の挙動を操るとは!
「おい、危ねえ!」
 少女のライジャーと数機のゾイドは横に飛んで回避できたが、反応が遅れた十数機が透
き通る魔槍に貫かれて絶命した。死角の敵にまで攻撃をかけてくるというのか。
「ステップツーだ! 行けッ!」
 敵の手がある程度割れたところで、高速機が散開、接近を試みる。しかし決死の突撃を
無慈悲になぎ払う白熱の光条。残忍に噛み砕く氷のあぎと。
 一体残らず非力な者たちは消滅したと見えた。だが。
「上手くやったな、お嬢ちゃん!」
 彼らは一人とて欠けてはいなかった。少女の全霊をこめた重力偏差がガンマ線を跳ね返
し、氷柱が形成されるそばから吹き飛ばしたのだ。
 そして、セルゲイの背後に現れるゴジュラスとゴルドス。前後挟撃、必殺の体勢!
「ステップスリーだッ!」
「見縊るな!」
 今や切っ先に黒き太陽を掲げた杖にも見える白刃・シェヴォルを高く上げる。再び閃光
の塊と化した小宇宙から双方に放たれる、見えざる死の光。
 少女は己の力が及ぶ領域の中で光を回折させんと念じた。

31 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 19:10:24 ID:???
 隙あらば敵機そのものを壁や天井に叩きつけてやろうと考えていたのだが、余力がない。

 能力者は確かに無限の平行宇宙からエネルギーを得られるが、単位時間当たりに行使で
きるエネルギーまで無限というわけには行かない。己の限界近い力を引き出し続ければ、
無秩序なエネルギーの波濤を望みの形として顕現させるフィルターの役割を果たす能力者
の脳にかかる負荷は過大なものとなるのだ。

 光の放出。それの歪曲。彼女とセルゲイの、これは精神力を競う一騎打ちだった。
「ううっ、くうぅ……っ」
 鋼の精神を持つセルゲイが徐々に押し始め、押し返す力の弱まったガンマ線があらぬ方
向へ飛散し岩壁を溶かす。

 彼女に守られている者たちは必死の攻撃をかけたが、凄まじいエネルギーの衝突に阻ま
れて砲弾もビームも霧消してしまう。万事休すときか。
 しかし、その男は未だ諦めを知らず。
「嬢ちゃん、俺たち二人の方の守りを取っ払え!」
「できま……せん、そんなことは」
「大丈夫だ、信じろ!」
 彼女とて限界だった。その声に込められた自信に賭け、敵を境界線として半分の重力を
正常に戻す。二人の男は恐るべき熱量の光線をまともに浴び――

「……ねえように対策はしてあんだよ! 特注品ぶち込め!」
 白い光が巨大な氷塊に遮られた。氷など一瞬で蒸発させてしまう熱であったが、彼らに
はその一瞬さえあればこと足りる。初速秒当たり8km、今こそ必殺の一撃。
「ヤブ医者参上! この注射は致命的に痛いから無料でくれてやる!」
 ゴルドスの背負った砲身から放たれた白銀の槍。ゾイマグナイト性の穂先はガンマ線を
ものともせず真っ直ぐ飛び、振り返りかけた巨竜のわき腹を貫いてコアを砕く。

32 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/05/01(火) 19:14:50 ID:???
 弾頭の爆発と共にコアが臨界し、反応兵器に匹敵する爆発を生じた。少女は最後の力を
振り絞って爆心地に重力子を集め、ブラックホール級の重力を持って火球の膨張を阻止し
た挙句、愛機との融合も解け気絶した状態でコックピットに弾き戻されたのである。

「……答せよ、応答せよ。障壁の破壊を確認、援軍を……」
「馬鹿が。手柄は全部もらっちまったぜ」
 遅きに失する味方からの通信を聞きながら、一割に満たぬ生存者達は己の幸運を祝った。
味方を連れてきた少年兵のグランチャーが、惨憺たる光景を目にして恥じ入ったのか慌て
て地中に潜ってしまう。

 とどめを持っていった男が思うに、いたいけな少女が頑張っているのを見た“マエストロ”
ルガールが地獄から手を貸してくれたに違いない。
「ロ○コンだからな……ご利益あったねえ」

           <続く>

33 : ◆.X9.4WzziA :2007/05/02(水) 15:01:11 ID:???
定期ageです。

34 :神の怨霊 10 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/02(水) 21:53:51 ID:???
翌日、かすかに差し込む朝日を浴びながら大龍神はゴーストンを背に乗せ、広大な大地を
飛んでいた。
「にしても・・・バケモノってどんなんでしょう?」
ガン=ジュツが言うには、ある日突然正体不明の怪物が現れ、彼方此方の村や街を壊して
回っていると言う。キダ藩やその近辺の街などは今の所無事なのだが、いつ怪物が襲って
くるとも限らない。故に周辺の国と協力して怪物討伐隊を組織し、何度も攻撃しているの
だが、全く歯が立たないとの事である。そこで困っていた時に、その噂を聞き付けた
覆面Xがミスリルを紹介したと・・・そういう事だそうな。
「毒を持って毒を制す・・・か・・・。さ〜て鬼が出るか蛇が出るか・・・どんなバケモノが
現れるんでしょうね〜っと・・・。ってあれ? ティアちゃんさっきからずっと黙ってるけど
どうしたの?」
さりげなく朝からずっと緊張しっぱなしだったティアに疑問を感じたミスリルは
そう問うが、ティアはやはり緊張したままだった。
「何か・・・嫌な予感がするのよ・・・。こういう感じの相手は今までにもあったからかなり
慣れてるはずなのに・・・何か嫌な・・・嫌な予感がするのよ・・・。」
「嫌な予感・・・ですか?」
ティアの言葉を気がかりにしながらも、ミスリルは大龍神を飛ばし、ガン=ジュツから
指定されたポイントへ向かった。そこで各国から派遣された怪物討伐隊が陣を張っている
との事なのだが・・・
「え!?」
地平線の彼方にどす黒い煙が高々と上がっているのが見えた。ミスリルの目から見た距離
と煙の規模から行ってかなり大きな物が燃えていると言う事になる。
「あれってまさか・・・。」
嫌な予感がしたミスリルは大龍神のスピードを上げた。この大陸において人々の知り得る
飛行ゾイドであるレインボージャークを遥かに凌ぐ速度を持つ大龍神は瞬く間に煙が
上がっている場所まで到着するのであるが、そこでミスリルが見た者は激しく燃え上がる
かつては基地であったと思われる木を組み、土を盛って作られた建築物と、かなりの数の
ゾイドの残骸だった。そして周囲の土地さえ焼け焦げ、大規模な戦闘があった事は想像に
難くなかった。

35 :神の怨霊 11 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/02(水) 21:56:00 ID:???
「ちょっと! 大丈夫ですか!?」
ミスリルは大急ぎで大龍神を地上に降ろし、こんな事もあろうかと大龍神に装備して
あった消火剤をばら撒いて火を消しつつ生存者を探した。
「誰か生存者はいませんか〜?」
「いたら返事するのよ〜。」
「お〜い・・・ここだー。」
すると、まだ辛うじて火の手の回っていなかった所に生存者が沢山残っていた。
そちらはそちらで既に何とか健在だった者が救助活動をしていた様子であるし、怪我人も
自力で治療などは出来ていた様である。
「私達はキダ藩の要請で来た者ですが、一体どうしたんですか?」
「ああ・・・連絡は受けていたが・・・あんたらがそうか。見ての通り・・・派手にやられたよ。
奴は恐ろしい怪物だ。あんな奴今まで見た事が無い。だが、それ以上に奴はどこか得体の
知れない所がある・・・。」
とりあえず基地跡に生き残っていた兵士の中で一番階級が高いと思われる男が
ミスリルとティアの応対を行っていたが、その男は後にいた他の兵士を指差した。
「うわぁぁぁぁ! 来る・・・来る・・・俺を地獄に連れて行くなぁぁ!」
「助けてくれ! 助けてくれ! 怨霊に呪われるぅぅ!」
「こ・・・これは・・・。」
と、この様に数多くの兵士がまるで何か恐ろしい物を見て狂ってしまったかのように
呻き声を上げていた。
「私は後方で指揮を取っていたから直接奴と戦ってはいないが、奴と直接戦った奴は
みんなああなってしまった。まったく奴は恐ろしい奴だ。ただ強いだけの奴じゃない。
まるでこの世の物じゃないような・・・そんな気がするんだ・・・。」
その男も冷静に説明はしていたが、その手は小刻みに震えていた。やはり余程恐ろしい
物を見てしまったに違いない。そして、ふとティアがミスリルの手を引っ張った。

36 :神の怨霊 12 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/02(水) 21:56:57 ID:???
「ミスリル・・・私・・・これと同じ症状の人達を見た事があるのよ。」
「うん・・・。」
ミスリルは軽く頷いた後、大龍神の通信機を使ってキダ藩に討伐部隊の救援を要請した。
「とりあえず・・・救援の要請はしました。で、所でその恐ろしい奴ってのは何処に
行ったんですか?」
「お前まさか奴と戦うつもりなのか!? 無茶だ! 確かにお前の乗ってるゾイドは
大型でかなり強そうだと見受けられるが・・・奴はバケモノだぞ! たった2機で敵うはず
が無い!」
「それは多分大丈夫ですよ。私達も貴方達の言う所の・・・バケモノですから。」
「え・・・。」
男は唖然とするが、ミスリルとティアはそれぞれのゾイドに乗り、男の言った方向へ
飛んで行った。

男の指定した方角へ大龍神を飛ばすミスリルだが、自身もティアと同じ様に緊張していた。
「あの人達にあれだけのトラウマを残すなんて・・・これはもしかして・・・。」
「うん・・・。」
強力な敵との戦いを前にする時はミスリルがコンピューターに組み込まれたプログラム
とは異なる、己の経験の中で培った危機察知能力が反応する物であるが、今回のそれは
ただ強いだけの相手とは異質な物を感じ取っていた。しかもミスリルは以前にもこれに
似た異質な雰囲気を感じた事があった。
「ミスリル・・・あれなのよ・・・。」
大龍神の首まで身を乗り出したゴーストンがゆっくりと正面を指差した時、正面に
一体の巨大なゾイドが歩いているのが見えた。そしてミスリルの危機察知能力の感じた
異質な何かもそのゾイドから発せられている様だった。

37 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/04(金) 18:51:52 ID:???
で…このビーバー君のコクピットの中というわけだが。
何とも操縦し甲斐のあるコントロールスティックの数にちょっと焦る。
各々右側の内蔵装備と左側の内蔵装備を別々に使用する物らしい。
やはり機体内部からこのビーバーを見る限りこの種はカスタムタイプである事は確実。
コアこそ正真正銘のビーバー型の物だが見た目自体は装甲でそう言う風に見せて在る物。
フレーム部を確認する限りビーバーの見た目に誂えた恐竜型バイオゾイドのそれだ。
どうりでキメラなんて言葉が出てきた訳だ。…と成れば!
徐ろに弄ってみたくなるのが心情。俺は折角だから赤い右側のレバーを引いた。

「おお〜顔が増えたぞ!なら戻すか。見た目が危険すぎる。」
慌ててレバーを戻し右肩口から登場した顔を元にしまう。
しかし時既に遅く野次馬根性でビーバーを見に来た人々は蜘蛛の子を散らすように逃げる。
「こら〜!変な装置を動かすな〜!この乙女の敵!」
丸焼き姫ことレ・ミィから大音量で非難の声が上がるが…何で俺が乙女の敵なのか?
その理由がよく解らない。
そもそも姉二人と妹と弟で育った俺には理解不能の境地である事だけは確かだ。
お手伝いさんも全員女性で父親は早くから居ない黒二点の生活はどうやら世間では異端。
この後乙女のビンタと共に初めて知った事実である。ハーレム生活という奴だったらしい…。
本来は男にとってウハウハなのだと言う。

「全くあの丸焼き姫は…。それにしてもこいつは…甘えん坊だ。」
コクピットから降りた後もジャイアントビーバー君は何故か俺と相棒にべったりである。
「これはもう君たちに引き取ってもらうしかないかな〜。ほかの人でも乗れるけど、
ロウフェン君とカリンさんにくびったけだからねぇ〜。」
ロンよ…頼むから好かれる方の身にもなってくれ!完全に厄介払いだろ!これ!
確かに今相棒は動けそうにも無い。確かにカリン一人では水中戦も無理だろう…。
だからと言ってこいつを連れ歩くのは至難の技だ。
何よりも一番こう言った機体を動かせるであろう英雄ルージ君は…
ムラサメライガー以外に乗ることができず以前村ではその事をバカにされていたと言う話。
何もかもが逆風で俺達一行に襲いかかっている状況である。

38 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/04(金) 19:01:41 ID:???
夜…俺は相棒の寝る姿を確認した後でギスギスする体を動かして移動する。
ミロード村周辺は既に家々の明かりも消え暗くなっているが俺には関係ない。
相棒曰く鼻であるレーダーも有るし夜目も利く。何より俺は狼!夜行性だ。
「よう!ビー介。何でこんな所に居る?お前アルナ塞のジェネレーターを守ってたろ?」
「兄貴!聞いてくださいよ!昨日のぶちかましごめんです!とにかく…
変な奴等が来てみんな仲間が捕まったっス!当然おいらも捕まったっス!
でも余り数が多くなかったから逃げてきたっス!」
「随分やるようになったじゃねぇ〜か!それでこそ俺の舎弟だ。
でもそいつ等はまだしめてないんだろ?それならそろそろここに来るじゃね〜か!」
「ですから!兄貴!兄貴の中の人貸して欲しいっス!」
「そう言うことか…ちゃんと後で返せよ!」
ロウフェンの夢の中の話である。

早朝に目が覚めた俺は昨夜の妙な夢が気になったのでのそのそとベッドから這い出し…
遠く離れた場所からビーバー君にこう言ってみた。
「ようビー介!おはようさん!」
数秒経った後に…ビーバー君は猛烈な勢いでこっちに走ってきているではないか!
カクテルパーティー効果ここにあり!昨日のはどうやら俺の妄想ではなかったらしい…
数秒後ビー介に頬ずりをされて3m程吹き飛ばされてしまった俺は、
朝っぱらから騒々しいと言うことでレ・ミィストラングルなる必殺技を喰らいベッドに沈んだ。
キダ藩の王族は手が早いというがきっと彼女は歴代でも五指に入る程の英傑だろうと思う。
そんな事をぼ〜っと考えていたら…止めが来たらしく意識が飛ぶ。

意識が戻った俺はビー介のコクピットに居た。
ビー介は結構な速度で森を這っておりレーダーには…
人間を示す光点とゾイドを示す光点が複数表示されている。
どうやら昨夜の話通り俺はビー介の拉致された仲間を助ける為の作戦行動を強いられている。
大きさからいって相棒と同じぐらいのサイズ。それで此奴を捕まえることができた。
そう言う関係からゾイド乗りは手練。ゾイドもそれなりの装備で固められていることだろう…
目の前に現れる装備の使い方を必死に覚える…ディガルド語は少々読みづらい。

39 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/04(金) 19:14:53 ID:???
本来は空の物であろうが自国語が在るのが偉いみたいな感じで困ったものだ。
そう言うわけで機能の理解に時間が掛かる一方どんどん相対距離が縮まっていく。
「こいつは困ったねぇ…今回の主軸はそのビー介君なのにもうすぐ戦闘だね。」
この男は…飄々と絶望的なことを言ってのける。
ロンの愚痴を無視して必死にマニュアルを目を皿にして読むのだが…
装備の名前が固有名詞でしか記されていないのでどうにも出たとこ勝負である。
だ・れ・だ?こんなどうしようも無いマニュアルを作った士官は!
恨み言をぶつぶつ言いながらでも何とか解決の糸口が無いか探す。

今回の布陣は前衛が俺の乗るビー介。後衛がロンのバンブリアンの二機。
残りはミロード村で待機組と丸焼き姫御一行はウルトラザウルスの調査。
調査に携わる際にはギンちゃんこと元ディガルド将校のソウタが居る。
ギルドラゴンの件を考えればもしかしたら自由に動かせるかもしれないからという話。
そうでなくとも行き先の設定ができればそれでも問題無い。ちょっぴり期待してしまう。
そんな事よりも…この固有名詞の森をどうにかして欲しいと本気で思う…。
そろそろタイムアップ。もうすぐ俺はビー介で奇襲を敢行しなければならない。

「タイムアップ…結局と言うか解るか!コンチクショウ!」
勝鬨を上げて奇襲ではなく強襲を仕掛ける俺とビー介。
それでもさすがは巨大バイオゾイド。並み居るコマンドウルフをストライク。
どっか〜んと言う擬音が似合うほど襲撃位置の敵を弾き飛ばす。
当然だが俺は基本的に戦闘では無慈悲を基本スタンスとするので人など知った事ではない。
避けれなければ死ねだ。大体作戦行動を執っている時点で敵なので気にするものか。
だが少々ヤバゲな匂いがプンプンする。ビー介をまがりなりに捕獲できた集団。
きっと裏がある。致命的なレベルの何かが。
それでも今は強襲した手前相手を踏みにじるのみ。ここで手を抜けばビー介の二の舞だ。
だが強烈な危機感を覚え三、四回サイドステップ行うと…ビー介の居た場所に赤い影。
その姿を見た俺は驚愕する。
「なんてこった…俺の相棒と同じタイプがいやがったのか!!!」
背にブーメランと銛を装備したコマンドウルフ。その爪や牙武器の輝きはリーオだ。


40 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/05(土) 08:02:44 ID:???
更に強烈な気配を覚えてそこから逃げると…元居た場所には網の雨。
撃ったのは血のように赤いセイバータイガー。
「くそ!こいつ等赤熊山賊団じゃないか!」
「んん〜その声は?貴様いつぞやの猟犬!ならここであったが100年目!
てめえ等!たたんじまいな!何時かの借りを返してやれっ!」
「「「「「「「「「「「「「お〜っ!!!」」」」」」」」」」」」」
多勢に無勢だ。こいつ等どこで爪や牙等武備をリーオで固めているゾイド達。
拾い物にしては豪勢を通り越して異次元の領域を感じる程統一感が無い。
ハウンドソルジャーやヘビーライモス等のレア者まで居る始末だ。

「ロン?聞こえるか?」
「聞こえているよ。突然通信なんてどういう事だい?」
「プラン変更だ。俺達を陽動に使ってこいつ等のアジトに案内してもらおう。
後は…解るよな?」
「了解。そう言うことなら任せてよ。元々山賊もやっていたんだしね。
ガラガも付けて一緒に行くさ!」
「頼んだぜ!」
俺は伝説の勇者さまでも死にたがりの凶戦士でも無い。命あってのものだねな傭兵だ。
ならばやることは一つ。

「へっへ〜ん!お〜にさ〜んこちらっ!爪なる方へ!」
「ああああああああああああああああああ!!!あっさり逃げやがった!追え!追え!
必負の勇を捉えるのだあああああああああああああ!」
掛かった!全速力でロンの居る場所からビー介を離れさせる。
内部で俺は言葉が通じるようなのでビー介にある提案を出す。
「いいか?ビー介?良く聞けよ。一度森の中に逃げ込む。
そうしたら俺を肩の顔の中に匿ってくれ!そうしてもう一度捕まってくれればいい…。
その後俺をそっと出してくれ。
そうすればあいつ等を連れてこれる。そうしたら今度こそ奇襲を掛けて内側から潰す!」
その言葉が終わると数秒直進した後ビー介は森に飛び込む。
そして手筈通り肩の顔の口に俺を咥えると…また無軌道に走り出す。
少し適当走った後に大木にぶつかりビー介はぶっ倒れた。気絶までするとは芸が細かい。

41 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/05(土) 10:35:04 ID:???
「あいつはどこ行った?そうそう隠れるところなんて…って!
川があるぞ…奴目逃げたな。まあコマンドウルフに乗ってなきゃ何もできない。
今の内にこいつを運ぶぞ。折角の目玉商品を取り戻せたから文句なしだ!
どこの馬の骨か知らんがリーオで固めた武器を持つゾイドにそうそう手は出せん。
とりあえず手に入れた力は確り使わせてもらうそれだけだって!」
なるほど…あいつ等のゾイドは全部俺が切り刻んで戦闘に耐えない状態にしてやった。
その代わりに誰かが依頼と一緒にあの豪勢なゾイドを手付金代わりに渡したって訳だ。
しかし俺が隠れていることは気付いていないんだろう。ベラベラ内情を晒している。
俺の性格から考えれば川に飛び込んで逃げたの方がしっくりくるってもんだ!
ここまで思って少々自己嫌悪に陥るがそれも生きているって証だ。
そう言う風に前向きに考える事で悲しみに耐える事にする…
さあ俺を運びやがれ!お前等のアジトに。そこで一網打尽にしてやるぜ。

「とまあ…そう言う訳さ。ガラガ?頼めるかい?」
「あったり前だろ!赤熊の野郎共はディガルド討伐前から金だけで動いてた奴等だ。
儲けのみで動いて俺の村の山の木を半分捕ったりもした金の亡者を放っておけるか!
しかもリーオ付きたあ我慢なんねえ!」
えらい話である。山の半分を禿げさせたのだからきっと大雨が降ったときには地滑り確定。
ロンは秘かに考えて渋い顔をする。
「ロン?どうした?渋い顔してよ?」
「いや…その山がちょっと可愛そうに思えてね。」

約三時間も移動して付いた先には激しい水の音。
結構な規模を持つ滝だろう…しかしあの場所から三時間圏内にこんな場所が有るとは、
人類未踏の地は結構有るが…ロマンも糞も無い賊の住み家というのが悲しい事この上ない。
賊でも嘗て世話になった荒法師の所は随分と良い所だったから余計にがっかりだ。
まあそんなところも今日明日で綺麗すっきりとしてロマン溢れる秘境に戻るって寸法だ。
しかし…現実は余りよろしくない方向へころがっていっている様である。
「アルナ塞まで戻るぞ。あそこで受け渡しだ。」
アルナ塞…一体どこだ?そこ?非常に困った事になりつつあるらしい…
大丈夫なのか?俺は?

42 :神の怨霊 13 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/05(土) 21:47:34 ID:???
「あれが・・・あの人達の基地を破壊し・・・そしてキダ藩の依頼にあった怪物ですね?
ようし・・・やってやりますよ!」
大龍神は高度を下げ、そのゾイドへ向かって突っ込んだ。
「そこのゾイド! ちょ〜っと間って下さい・・・ってうわぁ!!」
大龍神が依頼にあったバケモノと思われるゾイドを追い越し、正面に立ち塞がる形で着地
した直後、ミスリルは思わず叫んでしまった。何故ならばそのゾイドは実にグロテスクな
物だったのだから・・・。
「こっこっこっここれはぁぁぁ!?」
「怖いのよ〜。」
そのバケモノ、外見的にはバイオティラノをベースにしている様子であるが、全身を覆う
装甲表面は有機的で、むしろグロテスクささえ感じさせる程であり、さらにザラツキが
目立つ物だった。その上彼方此方にバイオヴォルケーノが持っていたクリスタルパインが
不規則に生え、まさにバケモノとしか言い様の無い気色の悪さを誇っていた。
「ちょ・・・ちょっと怖そうな外見してたって無駄ですよ! 退治させて頂きます!」
ミスリルは大龍神からゴーストンを下ろした後にレバーを正面に大きく傾け、大龍神は
バケモノ目掛けて体当たりを仕掛けた。サイズはバイオティラノがベースになっていると
思われるバケモノの方が、特機型ギルタイプの大龍神より一回りも二回りも巨大であるが
パワーなら負けない自信がミスリルにはあった。が・・・なんとそのバケモノは大龍神の
ぶちかましを正面から受け止めたではないか。
「うそ!? 大龍神よりパワーあるの!?」
『大・・・龍・・・神・・・だと・・・?』
「え!?」
バケモノから発せられた謎の声にミスリルは一瞬硬直した。まるでこの世の物とは思えぬ
地獄の底から響いてくる様な低い声。このバケモノを操る主の物である様だが、直後
そのバケモノが丁度プロレスのフロントスープレックスに似た体勢で大龍神を後方に
投げ飛ばしてしまった。即行で体勢を立て直し、綺麗に着地する大龍神だが、その
バケモノは静かに敵意を剥き出しにしつつ、大龍神を睨み付けていた。

43 :神の怨霊 14 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/05(土) 21:48:28 ID:???
『貴様ごときが神の名を名乗るなど片腹痛い・・・。我こそが・・・この我こそが唯一にして
絶対の神である。いかなる世界においても我の他に神は存在してはならぬのだ!』
「またそのパターンですか? ・・・と一言で片付けられはしない様子ですね・・・。」
神を名乗る相手ならミスリルとて今までも沢山相手をして来たが、その中には大きく
分けて二つの種類があった。一つはハッタリだけで神を名乗る者。そしてもう一つは
本当に神と思われても可笑しくない程の力を持った物である。特に後者に関して
ミスリルは以前ナノマシンをさらに小型高性能化させた“ピコマシン”の集合体で、
ミスリルを遥かに超えた万能性を持った、まさに低文明圏の者が見れば間違いなく神と
しか思えない様な相手と戦った事があった。そして、今ミスリルと相対している
唯一にして絶対の神を名乗るバケモノも、恐らくはハッタリではなく後者に入る方で
ある事をミスリルは予感していた。先程見せた実力もさる事ながら、そう思わせる
気配や雰囲気がバケモノからは漂っていたのである。
「だからと言って退く私ではありませんよ!」
再び神を名乗るバケモノに突撃した大龍神は右翼を大きく広げ、横一文字で斬り付けた。
数多くの強敵を斬り裂いて来た“ドラゴンウィングカッター”である。バケモノの装甲は
バイオティラノのダークネスヘルアーマーを強化した物の様であったが、大龍神のそれ
には意味を成さず、横向きに容易く斬り裂かれてしまう。が・・・
「え!?」
確かに断面が綺麗な程あっさりと斬れた。しかしおかしい。装甲はともかく、中身の
フレームを斬った手ごたえが全く感じられなかったのである。
『フッフフ・・・神を斬る事など出来るはずがあるまい。』
「ってああ!」
なんと言う事か、目の前のバケモノの装甲の中身は何も無い。空洞だったのである。
いかにバイオゾイドと言えど装甲の内側、本体と言えるフレームは通常のゾイドと
そう変わらない。だが、目の前のバケモノはそのフレームが無い。装甲だけだったのだ。
であるにも関わらずゾイドとしての形を取っているのか理解が出来なかった。
「あわわわわ・・・オラは見てはいけねぇ物を見ちまったぜよ・・・。」
衝撃の余りミスリルは口調まで変化してしまい、大龍神も慌て退いていた。

44 :神の怨霊 15 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/05(土) 21:49:51 ID:???
「ミスリル・・・あれ・・・生きている者じゃないのよ・・・。あれは私と同じ・・・。」
「ティアちゃん?」
恐る恐る大龍神に近寄ったゴーストンの中でティアは震えていた。前述の通りティアは
ドールを体として使っているが、元は既に一度死んで霊だけになった存在だ。
それと同じと言うのであるならば・・・
「でも違うのよ・・・。あれは・・・恨み・・・怨み・・・妬み・・・悪意で一杯なのよ・・・。」
「って言う事は・・・まさか怨霊!?」
ミスリルはバケモノを見つめながら青ざめた。かつてティアもミスリルと行動を共に
する以前、他の不成仏霊を取り込んだ幽霊ゾイド“Zゴースト”としてゾイド乗り達を
キャーキャー言わせた事があるが、それはあくまで生前ゾイド乗りに憧れながらも
病死してしまった少女だったティアの願いによって誕生した物である。しかし、目の前に
いるバケモノ。いわば“バイオゴースト”とも言うべきそれはZゴーストと似て非なる物。
幾多の怨霊の集合体による悪意の塊。だからこそ容赦無く全てを破壊する事が出来る。
『怨霊だと? 我は神だ。唯一絶対の神なのだぞ。確かに我も100年前は一人の
人間であった。その時も唯一絶対の神となり、世界を支配する野望に燃えていたが
人間は無力成り。それ故に志半ばにして死んでしまったが、我は死して真の神へと
転生したのだ。』
「神じゃなくバケモノの間違いじゃありません?」
ミスリルの突っ込みに顔色一つ変えず、バイオゴーストの先程斬り裂かれた部分が
元通りにくっ付き、合わせ目も消えていた。
「しっかし・・・怨霊が本体の中身がらんどうなゾイドなんて・・・そんなゾイド版悪○将○
みたいな相手をどうやって倒せば良いんでしょう? 流石にZゴーストみたいに満足する
まで戦ってあげる作戦が通用するはずもありませんし・・・。」
ミスリルは苦笑いしていたが、一つ疑問に思った事があったので訪ねてみる事にした。

45 :神の怨霊 16 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/08(火) 21:13:28 ID:???
「済みません神様。訪ねたい事があります。」
『何だ? 苦しゅうない。冥土の土産に聞いてやろう。』
「じゃあ神様の目的は一体何なのでしょう?」
『お前は馬鹿か? 我は唯一にして絶対の神であるぞ。だからこそこの世を新しく
作り変えるのだ。今ある世界を一度焼き尽くして無にし、我の望む神の世界を作るのだ。
それをして人々は永遠普遍の平穏を手にする事が出来るのだよ。』
「ハイそうですか。それは素晴らしいお考えですね。ですが・・・私は貴方を退治する為に
雇われた傭兵なんですよ! と言う事で! 超斬鋼光輪ドラゴンスマッシャァァ!」
大龍神の両翼に輝く円形ノコギリから高エネルギーの塊が発射された。
「怨霊なら光には弱いはずですよね! 多分・・・。」
確かにドラゴンスマッシャーの一撃はバイオゴーストの身体を容易く斬り裂いた。
だが、外殻を覆う装甲は斬る事は出来てもその内側にあるがらんどうの部分。すなわち
本体である霊の部分にはダメージを与える事は出来なかった。
『無駄だ。神の力は滅びの龍の力さえ超越しているのだ。』
「滅びの龍ですか・・・懐かしいですね。そんな事言われるの100年振りですよ。」
ミスリルは顔では笑っていたが心中は穏やかでは無かった。正直言って滅茶苦茶怯えてる。
が、目の前のバイオゴーストがミスリルと大龍神を見逃すはずが無い。自らを唯一絶対の
神と称するバイオゴーストにとって、大龍神と言う神の名を冠しているだけで十分排除の
対象となり得るのである。
『貴様に神の裁きを与えてやる。さあ行け! 我が下僕達よ!』
バイオゴーストの全身から数十にも及ぶエネルギーの塊の様な物が大龍神目掛けて発射
された。それに似た物をミスリルは見た事がある。100年前、ディガルド戦争終結と
共にバイオゾイドの呪縛から解放された人間の魂。しかし、その時見た魂が淡く輝いて
いたのに対し、目の前のそれはどす黒く、まるで全ての光を否定するかのようだった。
これはただの魂ではない。バイオゴーストの核となる神に従いし怨霊なのである。
「うわぁ! 気持ち悪い!」

46 :神の怨霊 17 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/08(火) 21:15:01 ID:???
忽ちの内に怨霊は大龍神の全身に纏わり付き、動きを封じてしまった。ドラゴンクローや
ドラゴンウィングカッターで斬り裂こうにも相手は霊なので物理的な攻撃は通用しない。
そのくせ相手はこちらに触れ放題なのだから理不尽この上無い。しかし、科学的にどう
だとか、物理的にどうだとかの理論が通用するような相手では無いのである。
「キャァァ! 気持ち悪い気持ち悪い!」
怨霊達に纏わり付かれる感触は気持ち悪い事この上ない。ミスリル共々にもがく大龍神
だが、こちらからの攻撃はすり抜けてしまう為に振り払う事も出来ない。そうこうして
いる間に今度はバイオゴーストが大龍神に組み付いていた。
『貴様の魂も我が神の下僕の中に加えてやろう・・・フフフフフ・・・。』
バイオゴーストが左腕で大龍神の首元を掴んで大きく持ち上げた時、右腕がモーフィング
変形を起こし巨大な槍に姿を変えた。直後に大龍神の腹部を一突きにする。明らかに
ゾイドコアをピンポイントで破壊する攻撃。が、槍は通らなかった。
『くっ・・・どんな物質で出来ているかは分からぬが・・・何と言う頑丈さだ。』
バイオゴーストの本体は怨霊であろうとも外殻を覆う装甲、そして大龍神を突こうとした
槍は幸いにも物理的な実体があり、それ故に大龍神の全身を覆うTMO鋼で防御する事
が出来た。そしてバイオゴーストは大龍神を放り投げるが、今度は大きく口を開いていた。
『まあよい・・・。ならば代わりに受けてみるが良い・・・この神の雷を・・・。』
“神の雷”バイオティラノが装備しているバイオ粒子砲の通称である。外大陸に亡命した
ディガルド技術者によって作られたバイオティラノと相対した事もあるミスリルにとって
知らないワケでは無かったが、バイオゴーストのそれは全くの別物であった。前述の通り
バイオゴーストの中身はがらんどうであり、何処にもそのエネルギーを発生させる装置の
類は見られない。ましてや粒子砲と言うより、怨霊の塊をぶつける禍々しい物だった。
「キャァ! 何か怖い!」

47 :神の怨霊 18 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/08(火) 21:19:24 ID:???
ミスリルはとっさに大龍神のドラゴニックプラズマ砲を発射した。発射速度に関しては
こちらの方が速い様で、高プラズマエネルギーの塊は未だチャージ中であったバイオ
ゴーストを飲み込むが、バイオゴーストは平然としていた。いかに装甲を消す事が出来
ようとも本体の怨霊を消す事は出来ない。そして怨霊が力を持ち続ける限り装甲も
無限に再生するのだ。その様にミスリルは恐怖した・・・
「あわわわわ・・・。」
『さあ・・・この一撃で貴様も我が一員へ新生するのだ・・・。ってうぉっ!』
その時だった。突然バイオゴーストが仰け反った。
「そんな事はさせないのよ!」
ティアのゴーストンの拳がバイオゴーストの後頭部に叩き付けられていた。しかし、
大龍神の攻撃にも平然としていた彼が何故ゴーストンの攻撃で仰け反ったのだろうか。
『何故だ!? 何故神である我がこの程度の攻撃で・・・まさか!?』
「私もおじちゃんと同じ霊だから触れる事だって出来るのよ!」
ゴーストンの拳の単純な威力ではバイオゴーストの装甲にはダメージを与えられなかった。
しかし、パイロットであるティアの霊力の作用により、本体である怨霊にはダメージを
与える事が出来た。だが倒すには至らない。忽ちゴーストンは怨霊達に捕まってしまった。
『だが・・・高々亡霊ごときが神を倒せるはずが無かろう。』
「キャァァァァ!! ミスリル!!」
「ティアちゃん!?」
同じ霊であるが故にティアがバイオゴーストに触れる事が出来ると言う事はその逆も然り。
ティアの本体たる霊は怨霊と対消滅されてしまい、ゴーストンもただの抜け殻と化した。
「う・・・そ・・・で・・・しょ・・・?」
最初はティアが本当に成仏する気になるまで面倒を見るつもりだったし、いつかは
永遠の別れの日が来る事も分かっていた。しかし、彼女は何時しかミスリルにとって
掛け替えの無い仲間となっていた。それ故に許せなかった・・・バイオゴーストの所業を。
「きぃさまぁぁぁぁぁ!!」
ミスリルの両眼は赤く輝き、怒りの余り口調も変化していた。普段優しさと言う名の
理性によって抑えられている彼女本来の残虐性が怒りによって全開となるという俗に
“ジェノサイダーモード”と呼ばれる状態の彼女は如何なる大量破壊大量殺人も辞さない。

48 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/10(木) 05:53:36 ID:???
上手いこと相手のとりあえずの本拠地に潜入成功とあいなる訳だが。
商品のビー介の周辺で囁く山賊の会話でとりあえずの情報を手に入れる。
もうガラクタだと思ったが…”万能聴診器”成る物を持っていて良かったと思う。

アルナ塞…
この大陸の南側、ミロード村やらが含まれるこの地の水源の一つ。
アルナ川(一般には正確な地名無し)の水源でから流れる汚水を処理する場所である。
川が定期的な大水で道が変わり…
ここの塞に有る超大型ジェネレーターを通らない事を避ける為バイオビーバーを配備。
しかし時間が経つ毎に空からも忘れられ、ビーバー君達だけが今も仕事をしていた…
と言う事らしい。既に要塞としての機能は部屋に電気程度しか無いらしく、
山賊共の侵入をたやすく許し今の状況となったと言うセキュリティのセの字も無い場所。
ズーリやディグに在った物と同様の大陸最大のジェネレーターの一つだそうだ。
因みにこれが破損しようものなら…ミロード村どころの話ではなく、
ここから南側の汚染は手の付けられない状況になるらしい…。
随分と暴れにくい場所に隠れたものである。

「もしもし?そこに誰か居ますね?今開けます。」
「ココニハダレモイナイアルヨ。ワタシユウレイネ。キニシナイデヨロシ。」
「またまたご冗談を…直ぐ開けますね。」
駄目だ!?装甲の外に居る誰かは状況が全く解っていない!?
俺の心臓は早鐘を打つがごとく鳴り脈拍が異常に上昇していることが解る。
動悸…息切れ…眩暈…ではないが気分はそんな物。
蒼白になった俺の顔が明かりに当たると…そこには眼鏡が在った。
「どうも。お久しぶりです。ロウフェンさん?お〜い?あなたはここにいますか〜?」

静止した時間が少々流れる…
目前に在る眼鏡は少し距離が離れていき、ようやく目鼻顔立ちが確認できるようになると、
ようやく知った顔がそこに現れた。
「忘れましたか?博識の美少女フリ・テンですよ?」
「…解るか。後一歩も無く仮契約できそうな距離で人の顔を確認できるかってんだ。」

49 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/10(木) 07:30:23 ID:???
「「「「「「我ら天下無敵の〜無敵団!β!」」」」」」
久しぶりの定例会議?の会場は…アルナ塞の厨房。
どうやら無敵団の面々もここに突然現れ勢力を拡大している赤熊山賊団。
これの所持するゾイドをせしめると言う計画の元潜入および入団したらしい。
まあ商業もろくにできなければ炊事など以ての外だろう…。
思うに確実な需要を利用した基本的且つ巧妙な作戦だと言える。

「…でロウフェン。そっちはそう言う行動方針な訳か。
ならこっちの計画も前倒しできそうだ。ふっふっふっふ…。」
妙に嬉しそうなア・カン達を後目に俺はラ・ムゥの作ってくれた賄いを食う。
「どうですか?」
「美味いよラ・ムゥ。やっぱり男児三日も在れば刮目しちゃうぞって感じだ。」
「相変わらず一口ねぇ〜やっぱり男はこうでなくちゃ!」
ゴトシの悩殺ポーズに一瞬喉を詰まらせるが勢いで飲み込む。
折角誉めてくれた後に吐き出すと流石に悪い気がする。それがゴトシだろうと誰だろうと。
突然サイコに後ろから脇を擽られようともだ!と言うか何故この仕打ち?
「流石はサイコ流二人目の達人だ!良く鍛えられている。」
もう嫌…最近は弄られっぱなしな気がする。クールでステキな俺は何処?
とにかく狼煙を上げれそうな場所を探さないとならない。

…と言う事で今俺は発煙筒を持ってジェネレーターを上っている最中だ。
夜間に乗じて何処からか仕入れたらしいサーチライトの光を避けて行動中だ。
展開が妙に速くて俺の体は大丈夫なのかと気になるが今回はしょうがない。
サーチライトも含めて。どうも運勢は暗剣殺辺りなのだろう。
今が最低ならこれからは…上り調子!ならば俺の独壇場な筈だ!
「こちらフリ・テンです。もうすぐ内部への入り口がある筈なので気を付けてください。」
「こちらロウフェン。了解した。何ならリアルファイトで蹴散らしてもいいぜ。」
「じゃあお願いします。」
「え?」
「頑張ってくださいねロウフェンさん。」
やっちまった様だ…どうやら俺は入り口の中に居る誰かを殴り倒す事になってしまった。
口は…やっぱり災いの元だ!無敵団と係わるとろくな目に遇わないな…。

50 :神の怨霊 19 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/11(金) 22:11:48 ID:???
怒り狂ったミスリルが今にも大龍神共々にバイオゴーストへ飛びかかろうとした時だった。
「おっとそこまでだミスリル君! 一時撤退するぞ!」
「!?」
突然ミスリルの背の上に一機のジェノブレイカーが現れた。それを操るのは何と
覆面Xであった。
「離せ! 離せ! ティアちゃんの仇を討つんだぁ!」
「いかん。怒りで我を失っている。とにかく一時撤退だ。」
覆面Xのジェノブレイカーは大龍神の背を抱きしめ、直後にフッとその場から消え去った。
『消えた!? 一体何が起こった・・・?』
目の前の不可解な現象にバイオゴーストも一瞬驚きを隠せない様子であったが、
同時に笑みも浮かべていた。
『だがまあ良い・・・これで私を邪魔する者はいなくなった・・・。』

ミスリルが気付いた時、キダ藩にいた。覆面Xが何をしたのかは分からない。だが、
一瞬でキダ藩まで瞬間移動していた事は確かだった。ワープの類なら大龍神も可能である。
しかし、それも一度空間を切り開いてワープ用の亜空間や超空間に突入し、そこを通る
と言う手順を踏まなければならない。だが覆面Xのそれは前述の手順を踏まずに一瞬で
キダ藩に到着すると言う物だった。全く彼は謎の多い男である。
「それでおめおめ逃げ帰ったと言うのか?」
報告して早々、依頼主であるガン=ジュツに大目玉食らわされるのは仕方の無い事だった。
如何に相手が怨霊であろうとも逃げ帰ったと言う事実は事実なのだから・・・。
「だからワシの言った通りこの様な者達に頼るべきでは無いのですじゃ。キダ藩の問題は
同じキダ藩の中で解決するべきなのですじゃ!」
挙句の果てには何かいつの間にかラルフ爺さんが城内に現れてそう言う始末。
とりあえずミスリルを強制的に帰還させた張本人である事もあって、覆面Xが責任を
取ってくれていた様子であるが、ミスリルの精神的なショックも大きい物だった。
別に負けた事や敵前逃亡はどうでも良い。ただティアがバイオゴーストを構成する
怨霊によって消されてしまった事。そして主を失ったドールの体とゴーストンは
あの場に残された。それがミスリルにとって気がかりだった。

51 :神の怨霊 20 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/11(金) 22:13:46 ID:???
「大体幾ら相手がバケモノだからと言って怨霊は無いだろう? 怨霊は?」
「お言葉ですがガン=ジュツ殿。100年前のディガルド戦争でバイオゾイドを操縦する
機械兵はエネルギーに人間の魂を使っていたと言う記録が残っています。既にそういう
存在が明確に確認されていると言う事ならば怨霊の類もあり得ないはずはありません。」
「うるさいうるさい! もう一度だけチャンスをやる・・・次はしくじるで無いぞ!
奴を野放しにしていれば、それだけこの大陸に生きる民が死ぬ事になるのだから・・・。」
ガン=ジュツは覆面Xとミスリルにそう良い捨てると自室に帰って言った。厳しい言い方
であるが、彼とてキダ藩の民を守る為に必死なのだ。

「は〜・・・。」
とりあえずミスリルと覆面Xは城下町に出てブラブラしていた。こうしている内にも
バイオゴーストは神の名の下にした破壊を続けているのだろうが、闇雲に攻撃した所で
倒せる相手でもない。そうして失意のまま入った店が“ソラ寿司”と言う寿司屋だった。
100年前のディガルド戦争の際、地上に落ちたソラシティーの生き残りが始めた
寿司屋で、店内には辛うじて残ったソラの技術を応用したベルトコンベアーによる、
いわゆる回転寿司店となっていた。
「とりあえずあのバケモノ・・・バイオゴーストの正体。即ち神を名乗っていた男の
怨霊の正体が分かった。これを見て欲しい。」
ティアを失った悲しみか、はたまたワサビが効いたのか、目に涙を浮かべ、落ち込んだ
表情でタコを口に運ぶにミスリルに対し覆面Xは一冊の本のあるページを見せると、
そこには立派な軍服に身を包んだ中年の男の肖像画が描かれていた。
「神と名乗っていた男と言う事で過去の記録を調べて見付けたのがこの男だ。コイツは
かのディガルド戦争でディガルド武国のトップに君臨していたジーンと言う男だ。」
「はい・・・私も知ってます。その人の影武者をやっていた人と戦った事もありますから。」
「記録によるとジーンは己を神と称して大陸支配を目指すも、惜しくも討伐軍によって
敗北し、乗っていたバイオティラノ共々に死亡したと言う事になっているが・・・
自らを神と称し、他の存在を許さないと言う強烈なエゴが他の怨霊をも取り込んで
あの様な姿になってしまったのだろうな・・・。」

52 :神の怨霊 21 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/11(金) 22:15:08 ID:???
「しかし何故あれから100年も経った今更その様な事をするのでしょう? 死んで
直ぐにそうなっても良いはずなのに・・・。」
「うむ、そこが問題なのだ。その辺も調べなければならない。」
と、様々な謎を残しつつ、二人が再び寿司を口に運んでいた時だった。
「あー! あんたミスリルじゃない!」
「え?」
突然ミスリルは何者かに声を掛けられふり向いた時、そこには未だこの大陸では珍しい
手持ちカメラを携えた一人の少女の姿があった。彼女はこの世の規格外を求め、
ミスリルをして“地上最強のジャーナリスト“と言わしめている若きジャーナリスト、
“ハーリッヒ=スーミャ”(15)であった。
「ハーリッヒさん・・・。」
「な〜に〜こんな落ち込んだ顔して! あんたらしくないよ!」
ハーリッヒはなおも落ち込んでいるミスリルの背中を数回叩いた。ミスリルとは対照的に
彼女は妙にテンションが高かった。
「ハーリッヒさんお元気そうですね。」
「うん! だって良い収穫があったもの! ああそうそう! ほら、あんたにお土産!」
そう言ってハーリッヒは一つのお守りを取り出し、ミスリルの首に掛けた。
「何かさー、ここからかなり離れた山奥に悪霊退治を生業としてる一族の村があって、
そこで買った悪霊避けの効果があるらしいお守りなのよねーこれ!」
「え!?」
ミスリルの目の色が変わった。
「ハーリッヒさん! その事について教えて!?」
「良いけど・・・どうしたの!?」
「何か良く分からんが・・・勝利の鍵を見付ける事が出来そうだな。とりあえず私は
今回の件の原因の方を調べておくから、ミスリル君はそっちを頑張りたまえ。」

53 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/12(土) 03:49:18 ID:???
もうこうなれば自棄だ。またしても奇襲しようとしているのに強襲に。
複数見張りが居ない事を祈って俺は入り口の上の縁を掴むと…
半回転ひねりでドロップキックを中に向かって放つ。

結果は…その場には誰も居なくて、奥に人影らしき物が一つ。
それは立ち上がるとパチパチと拍手しながらこっちに向かってくる。
驚異的な速度で…その上!上半身が微動だにしない!
手練だ!それも絶望する程の力を持つ存在。
俺は苦し紛れに足を伸ばしてその走る影を引っ掻けようと足掻く。
「あ〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
高速で走り寄る人影は上手いこと俺の足に引っ掛かり…
そのままジェネレーターから飛び出してしまっていた。俺を道連れに!
「うそおおおおおおおおおおおおおん!!!」
虚しい叫び声。俺は何時もの如く用意周到に装備しているワイヤークローを飛ばし、
何とかさっきの入り口に突き刺せたのでそのまま張り付こうとするが…
「み〜〜〜〜〜す〜〜〜て〜〜〜ちゃ〜〜〜い〜〜〜〜や〜〜〜〜〜〜〜。」
俺の足に何とかしがみ着いている誰かと一緒に壁にダイブする羽目になった。

「はぁ…はぁ…はぁ…たっ助かった…。」
「本当によかったよかった。」
「誰のせいだああああああああああああっ!!!」
「ご免なさい!ご免なさい!ご免なさい!うえ〜ん…やっぱり用心棒なんて無理だよぉ!」
泣かれてしまった!?本当に泣きたいのはこっちだ!見ず知らずの用心棒と床の染。
そんな目に遭いそうだったのだから。

よくそのおっちょこちょいのその顔を見て俺は頭を抱える。間違いない!こいつは…
俺専用疫病神のアレフだ。俺の知る限りこいつは俺より優れた猟犬だった。
生身の格闘戦ははっきりいって俺が勝てない所かバイオラプターが一撃で気絶する強さ。
だがいつもこれだ。気が弱い上に執拗に俺を面倒に巻き込む。
風の噂によると…間違って味方の筈のバイオゾイド一個連隊を全滅させたらしい。
人間災害レベルの危険人物でありその上何故か俺を不幸のズン底に追い込む達人である。
そう言えばこいつのウルファンダーが居たからプランを変更したんだった。俺も迂闊だ。

54 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/12(土) 07:53:50 ID:???
「で…これは何?」
「象縛りという奴だ。」
「何で?」
「付いてこられると面倒だから。」
「泣くよ?」
「泣け。好きなだけ。そのかわり…こうだ!」
「むぐっ!ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ〜…。」
猿ぐつわをきめて俺はその場を足早に去る。あいつには付き合っていられない。

”トラ・トラ・チラ・ワレキシュウニシッパイセリ”
ようやくジェネレーターの頂上へ到着した俺は狼煙をはたいている。
そうすると…遠くから同じく狼煙の煙がちょこちょこ切れた物が…
”ネコ・ネコ・ネコ・ジョウキョウヲホウコクセヨ”ロンからメッセージが返ってきた。
端から見ると…遥か遠くでお互いに煙をはたく馬鹿の図である。
”パンダ・パンダ・パンダ・ムテキダントソウグウ・ニゲルヤツハムテキダンナリ”
”クマ・クマ・クマ・ッリョウカイセリ・コレヨリコウゲキヲカイシスル”
数分程で陽動の攻撃が始まる。俺は急いでジェネレーターを降りることにした。

「なあロン?今のは何だ?」
「ああ…これはアニマル式煙文って言う古い通信方法さ。」
「”エンブン”ねえ…。」
「そう。ガラガこれからこっちは攻撃をしかけるよ。」
「よっしゃ!すり抜ける相手以外ぶっ飛ばせ!だな。」

無敵団の方はもう逃走を開始したらしい…。
コマンドウルフやらハウンドソルジャー、ヘビーライモスにカノンフォート。
最後に…ウルファンダー!?アレフの機体を動かせるメンバーが居たのだろうか?
「ロウフェン!喜べ!通算9人目のメンバーだ!」
俺はその目を疑った…まるで夢でも見ているようだった。
ついさっき縛った筈のアレフが行程にして5km以上も離れたその場所にいるのだ。
「ああ…滝を下ったんだよ♪滝壷近くの枝で縄を引っ掻けて切ったんだ。」
何を楽しそうに喋っているのか…それでも俺の運はとりあえずまだ上向きの様だ。

55 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/12(土) 09:25:01 ID:???
「なあ…ア・カン?ちょっと聞きたい。」
「何だロウフェン?」
「警戒はしないのか?そいつに?」
「ああ!こいつ?いやあ何か同じ匂いがするんだよ!お前等と!」
同じ匂い…つまり…ガラガとルージ君と俺も同じ存在って事か。別な意味でがっかりだ。
何の匂いが一緒なのか知らないが嫌な符号が一致していそうで困る。

急ぎビー介のもとに走る俺だったのだが当然騒ぎが起こった以上山賊は総出の状態。
よりによってボスの赤熊と鉢合わせになってしまう。
「てめえ!いつの間に紛れ込んでいやがったんだ!」
そう言うが速いか手に持つ斧を振り下ろしている。危ない奴だ。
俺も無言で腰のベルトから縞模様で短めの棒を引き抜く。持ち手は利き手でない左手。
「そんな棒で何ができるってんだぁ!」
奴の獲物は両手が必要な大斧。こっちは利き手が開いている状態。
これがどういう意味が解っているなら奴は攻撃してこない筈だ。
だが…奴は俺の利き手を知らないしそこまで判断できる程思慮深くないらしい…。
少し落ち着けば解るものもこれだけ手が早ければ落ち着いていても無駄だ!

俺は右袈裟に振り下ろされる赤熊の大斧を棒で叩き逸らすとそのままダッシュ!
まんまと逃げ果せることに成功したのだ。ついでにこの棒は…
キダ藩所領でごく稀に採掘された劣化リーオと呼ばれるシナリオン鉱石を精製した棒。
金属とは思えない迅性を持つリーオの粉末を微量に含んだ鉄鉱石を打ち鍛えた一品。
異常に曲がって角がぶつかり激しく火花を散らす。一時的な目つぶし効果も抜群だ。
「てめえ!そんなレア物まで持っていやがったかぁ!くそっ!」
目利きだけは一級品だった赤熊の悲痛な恨み言を背に受け俺は走る。
更に途中山賊共に出逢うことも有るが赤熊以外はゾイドに乗らなきゃ雑魚。
死なない程度に殴り倒す…気絶させる必要も無い。道が開ければ良いのだ。
長々相手をしていればまた赤熊とやり合う事になる。今度は逃げは通用しない。
「後少し!って足速すぎだろ!赤熊っ!」
「てめえに言えた口かよおるぁっ!脳味噌ぶちまけて死ねよやぁあああ!」
「嫌だ!断る!」
「堅いこと言うな!俺の為に今すぐ死んでくれええええええ!」

56 :神の怨霊 22 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/13(日) 21:58:17 ID:???
翌日、ミスリルはハーリッヒが愛機としているスナイプ装備をカメラに交換したスナイプ
マスター“スクープマスター”を大龍神の背に乗せ、飛び立った。ハーリッヒが見付けた
と言う悪霊退治を生業とする一族の村を訪ねる為だ。相手が怨霊であるならば、その手の
力を持つ者の力を借りるのが一番であるし、そうでなくても何かしらのバイオゴースト
打倒のヒントを掴む事が出来るのかもしれない。ちなみに覆面Xはバイオゴースト発生の
原因を調査する為にミスリルと一時分かれていた。
「へ〜そんな事があったのね? でも怨霊のゾイドなんて見てみたいわ〜。」
「でもその前に・・・貴女が会ったと言う人達のお話を聞かないといけません。これは
ただ単純にキダ藩の依頼による仕事を遂行する為だけではなく、ティアちゃんの仇を
討つ為でもあるのです!」
目的の村のある山は険しく、陸路を伝って行く場合は山岳地の移動が得意なゾイドを
使っても相当に時間の掛かる距離だったのかもしれない。しかし、大龍神は飛行可能で
あるし、現在確認されている飛行ゾイドの中でもトップクラスのスピードを持つ。それ故
に山を一つ二つ越える事等容易い。そしてわずか30分程度であっさり到着した。
「あれあれ! あの村よ!」
その村は中心部に大きな神社が建ち、その周囲に家々や畑が並ぶと言う形をした村であり
ハーリッヒの紹介で神社の神主兼村長をやっている“オン=ミョウ”と言う老人に
コンタクトを取る事が出来た。
「なるほど・・・怨霊の塊によって作られたゾイドか・・・。」
古ぼけてはいるがそれでも風情や神聖さの感じさせる神社の中の一室でミスリルが
オン=ミョウにバイオゴーストの事を説明した。その際ミスリルが両眼から立体映像を
投影したりした為、文明水準の都合でそんな物を知るはずもないオン=ミョウが驚いて
腰を抜かすと言う微笑ましい出来事もあったが、気を取り直して話は進んだ。
「うむ・・・かなり難しい話じゃな・・・。」
「え?」
「確かに我等一族は長年悪霊退治を生業として来た。じゃが、今回の相手は強力過ぎる。
一つ二つ所の騒ぎではない。数千・・・いや下手をすれば数万にも及ぶ悪霊の集合体じゃ。
我等の力を持ってしてもどうにもならんのかもしれん。力に差があり過ぎるのじゃ。」
「・・・。」

57 :神の怨霊 23 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/13(日) 21:58:57 ID:???
ティアと同じだ。確かに彼等の力であるならばバイオゴーストの本体たる怨霊に
打撃を与える事も可能かもしれない。しかし、決定的なダメージを与えられるだけの
打撃力が足りないのだ。それにはミスリルも腕組みして考え込んでしまった。
「早い話が貴方達の様な霊にもダメージを与えられる力と私の大龍神の攻撃力の
両方があれば良いんですけど・・・何とか貴方達の力で大龍神にそういう力を与えられ
ませんかね〜?」
「無理でしょ? だってこういうのって相当修行しなきゃいけなさそうだし。」
ハーリッヒも困った顔でミスリルを見つめていたが、突然オン=ミョウは立ち上がった。
「いや待て! 良い方法があるぞ! 手っ取り早い方法が!」
「え!? どうやるんですか!?」

その頃、バイオゴーストの神の名の下による侵攻と破壊は続いていた。のしのしと
ゆっくり歩を進めていくバイオゴーストに対し、各国軍は攻撃を仕掛けて行くが
大龍神さえ歯が立たなかった相手にどうやって勝ち得ようか。長い平和が続き弱体化した
各国軍にバイオゴーストを倒し得る力は無い。100年前のディガルド戦争の時の様な
ムラサメライガーと言う人々の希望となるゾイドも、人々を纏め上げるカリスマを持った
ルージ=ファミロンの様な天才少年も今はいないのだ。そしてバイオゴーストの通った先
は焦土となり、死した人々の魂はバイオゴーストの尖兵たる怨霊に取り込まれる。
まさに地獄。神の裁きか悪魔の洗礼か、この世の地獄が描き出されていた。
『だが・・・如何に神であるこの我でもたった一人では余りにも時間が掛かりすぎる。
さあ行け・・・我が下僕達よ・・・。共に神の世界を創ろうぞ。』
広大な荒野のど真ん中に立ったバイオゴーストが大きく両腕を左右に広げると、そこから
大量のどす黒い魂、すなわち怨霊が姿を現した。怨霊が何も無い大地に吸い込まれる様に
入っていくと、なんと地が盛り上がり、さながら物語に登場するゾンビの様に多数の
バイオゾイドが姿を現した。
『さあ行け・・・。神を否定し者達を滅し、神の世界を創ろうぞ。』
バイオゴーストの号令により、バイオゾイド・・・否、“バイオゾンビ”達は各地に散った。
この大陸に存在する各国軍はバイオゾンビという新たな脅威に晒される事になるのだ。

58 :神の怨霊 24 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/13(日) 22:00:54 ID:???
「お〜い! ミスリル君! 分かった分かった! 恐らくだが、多分バイオゴースト発生
の原因と思われる物が分かったぞ〜!」
「何じゃあの変な覆面の男は・・・。」
どうやってミスリルの居場所が分かったのか、覆面Xはジェノブレイカーと共に
ミスリルとハーリッヒのいる村まで駆けつけて来ていた。
「と、その前にだ・・・あれは何だね?」
「ああ・・・あれは・・・バイオゴースト打倒の切り札・・・ですね。」
村の広場では村中から集められた術師が大龍神を囲い、なにやら作業をしていた。
ある者はお祓いをし、ある者はなにやら呪文のような者を唱え、またある者は大龍神の
装甲表面に呪詛を書き込んで行き、さらにまたある者は護符を貼り付けていく。それらは
彼等の力を込めた呪詛や護符によって大龍神に悪霊にもダメージを与えうる力を持たせる、
いわば“アンチゴースト処理”とでも言うべき物なのであったが、全身に呪詛が描かれ
たり護符が貼り付けられたりしている大龍神の様相は相当に不気味であった。しかも
どさくさに紛れて覆面Xのジェノブレイカーにまで同じ処理を始める術師まで現れる始末。
「なるほど・・・超科学と呪力の融合と言うわけか・・・。」
「で、覆面Xさん? バイオゴースト発生の原因とは何ですか?」
「ああそうそう。実はディガルド戦争の最終決戦が行われた“自由の丘”と言う地に
その戦争で命を落とした人々の霊を慰める為に慰霊碑が建てられていたのだが・・・
何者かに破壊されている事が分かった。恐らくは単なるイタズラ目的で壊したのだろうが
バイオゴーストが突然現れたのはそこからなのだ。」
「確かにそういうのを壊したら祟りがあるなんて話もあるけど・・・。」
「ちょっと待ちなされ覆面のお主! 自由の丘に建てられた慰霊碑と申したな!?」
突然オン=ミョウが覆面Xの前に立った。
「慰霊碑に付いて何か知っているのですか?」
「うむ。100年前にその慰霊碑を建てたのはワシ等の先人達じゃ。一体誰がやったの
かは知らぬが・・・なんと言う罰当たりな事を・・・。」
慰霊碑が破壊された事が原因になると言われると普通なら馬鹿らしいと思われる
かもしれない。しかし、今はその馬鹿らしい事が現実に起こっているのである。

59 :サクセサー 34.1:2007/05/16(水) 21:20:21 ID:???
前回までのあらすじ:
 ゾイドファイター・アレスは愛機のコマンドウルフ、相棒のユーリと共に中央大陸ゼネ
バス領のとある山中の城をめぐる攻防戦の渦中にいた。彼の目的は篭城中の兄弟子の救出
である。総攻撃の前夜、単身城内への潜入に成功したアレスは、大剣でゾイドど戦う大男
と出会う。その大男こそ。兄弟子のグラハムであった。酒を酌み交わし一時の楽しい夜を
過ごす。そこで語られる事件の本質。戦闘の本当の理由はこの山里に眠る膨大な地下資源
だった。攻撃側の陣中でも時を同じくして語られる真実、篭城側が鉱物資源だと思ってい
るものは、古代文明のゾイドそのものであった!
 そして夜明けと共に攻撃側の総攻撃が始まる。城門を破って城内に突入する攻撃側のゾ
イド部隊、対する篭城側も善戦するが圧倒的な戦力差の前に、遂に全滅する。皇帝からの
停戦命令が到着したのは戦闘が終わった後だった。
 アレスは戦闘中にユーリと合流、どさくさに紛れて場外に脱出、帝都へと向かう。この
内戦が帝国対共和国の戦争へと拡大させないために・・・


60 :サクセサー 34.2:2007/05/16(水) 21:25:05 ID:???
登場人物:

アレス・サージェス:流浪のゾイドファイター。年間最多勝記録保持者で「五百勝」の異
    名を持つ。瑞巌流の達人。愛機はコマンドウルフ。
ユーリ:アレスの相棒?幼少時に狂科学者に偽オーガノイドシステムの実験台にされ、コ
    マンドウルフの生体ユニットにされる。脳をいじられた副作用か、魔術めいた手術の
    影響か、いくつかの異能力を持つ。
グラハム・メッチェ:元ゼネバス帝国軍人。篭城側の実質的指揮官。アレスの師匠の部隊
    にいた事があり、その時期に瑞巌流を勉んでいる。身長210cmの巨漢で、自分の身
    長ほどもあるMetal−Zi製の大刀を振るう。
コルネリアス(小コルネリアス):ゼネバス帝国貴族。戦闘のある山間部も含めたこの地域
    一帯の大領主。高齢の父親が亡くなり家督を襲名したばかりで、まだ若い。欲に目が
    くらんで家老の領地を奪おうとする。
ゼン・サーナ:地方行政のスペシャリストでコルネリアス家の家老をつとめていた。戦闘
    のあった山間部を治めていて、古代遺跡を改修して城にしていた。若い当主と折り合
    いが悪く、奸計にあって殺害される。
商人:攻撃側の軍事物資の采配をしている人物。小コルネリアスの昔からの知り合い。つ
   ねにスーツ&ネクタイ姿。
レイノルズ・ササキ:瑞巌流宗家。元ゼネバス帝国士官。アレスの師匠であり、グラハム
   達の上官であった。今回は元部下のために皇帝に停戦命令まで出させ、勅使に同行し
   てワンカットだけ登場。愛機はブレードライガー改。


61 :サクセサー 35:2007/05/16(水) 21:30:15 ID:???
 戦闘が終了したその日の夕方、
 一面の赤茶けた荒野。見渡す限り草がぽつぽつと生えている程度で、動物の影すら見ら
れない。かつて、この一帯が中央大陸有数の穀倉地帯だったという話を、誰が信じるだろ
う。それもほんの数年前のことである。地球のテラフォーミング技術によって、地下水脈
を地表に持ち上げ、西部森林地帯の肥沃な腐葉土、空中窒素固定菌と西方大陸から輸入し
た燐鉱石によって不毛の荒野が一面の田園地帯になったのがZAC2000年代の終わり
頃。ルイーズ大統領が陣頭指揮に立ったと言われる。だが2111年、ゼネバス帝国とヘ
リック共和国との領土割譲条約の際、ここに国境線を引いたため、以後は緩衝地帯として
全く人の手が加えられなくなり、たった数年であるべき自然の状態に逆戻りしてしまった。
人間の叡智など大いなる自然の前には如何に無力であるかという見本といえる。
 その荒野を、大地を分断するかのように亀裂が走っている。昔の川跡だろう。今ではそ
の名残をわずかに残しているにすぎない。風や直射日光を防げるため、旅人が道として利
用している数少ないルートだ。ただ両幅が狭く、随所で曲がりくねっているため、グスタ
フ級の大型ゾイドではちょっと通りにくい道だが、そこを二機のゾイドが東へと進んでい
た。
 一機は赤い胴体から細長い足がすらりと伸びている。ダチョウのように優雅な足捌きだ。
マーダである。軽量で素早いフットワークを得意とし、時速三百キロメートル以上を叩き
出す。もう一機、そのマーダの後を追うようにしてくるゾイドは、青い機体に胴体両脇に
金色に光る刃を装備したライオン型ゾイド、共和国軍の誇る高速戦闘ゾイド、ブレードラ
イガーである。
 先頭のマーダに乗っているのは、スーツにネクタイ姿という、この場にそぐわない格好
をしている。知っている者がみれば、この男がつい先刻までコルネリアスの本陣にいた男
と同一人物であることが分かる。更に世間に詳しい者からみれば、どんなところでもスー
ツにネクタイという格好をしているのは、地球系のとある会社員だけであることは一目瞭
然だ。

62 :サクセサー 36:2007/05/16(水) 21:35:00 ID:???
 既に夕焼けが西の空を染め始めており、日が暮れるまでに次の町に到着できるかどうか、
ぎりぎりの時間帯であった。日が暮れてからの道は危険が一杯で、まともな人間は夜道を
旅しようとは思わない。自然、二機のゾイドは早足になっていた。
 そんな彼等の前に、一体のゾイドが立ち塞がった。
「おいてめぇら、うちらのシマを黙って通ろうなんて思ってねぇよな!」
 コマンドウルフだ。中央大陸では珍しくもない。背中に五十ミリビーム砲をつけた一般
的な装備で、機体はモスグリーンの迷彩模様と趣味はあまり良くない。絵に描いたような
山賊の風体である。
「通行料を置いていきな」
 これは無茶な話ではない。ゼネバス帝国だけでなくどこの国も財政は厳しい。いちいち
辺境地域にまでカネとニンゲンを割く余裕がない。ましてや国境近くの緩衝地帯に役人が
いるのは好ましくない。かといって放置するわけにもいかないので、分別のある山賊や海
賊は逮捕することなくお目こぼししてやり、その代わりにその地域の治安が乱れることの
ないよう監視する義務を負わせている。「訴えられるほどの無茶をしない限り、政府は黙認
してやる。そのかわり自分のシマはきっちり管理しろ」というわけだ。こういうアウトロー
な連中は通行料を取る代償に、道路の整備や野良ゾイドの駆除など旅人の安全と便宜を
図ってやるわけだ。無論、法外な通行料の請求や暴力行為をすれば軍隊が出動して皆殺し
にされるから、無茶はしない。外見や口調が悪いのは、ま、お約束というものだ。
「あぁすまんな。この道はあまり使ったことがないんで勝手が分からなかったんだ。これ
でいいのか」
 とマーダに乗ったスーツ男は、一般的な通行料の相場分、金貨で支払おうとする。
「てめぇ、俺達をなめてんのか!」「そうそう、この大強盗ボニー&クライド様がこんな
はした金で納得するわけねぇだろうが!」

63 :サクセサー 37:2007/05/16(水) 21:41:14 ID:???
 コマンドウルフに乗った山賊は男女二人組のようだ。スーツ男から見れば、交渉の仕方
がなっちゃいない、とんでもない田舎者に引っかかったと思ったことだろう。
「じゃあ、さっきの倍、支払おうじゃないか」
「なめてんじゃねぇぞコラ!」
「じゃあ、いくらなら納得するのかね?」
「全部だ」
「全部?」
「そうだ、カネも含めて一切合財、全部だ!」
 これはまっとうな山賊の交渉ではない。追い剥ぎだ。通常の旅行ルートになぜこんな
無頼漢が入り込んだのか?
 ようやく異常な雰囲気を察知したブレードライガーのパイロットが
「マスター、ここは私におまかせを!」
 と言うと数歩、前に出てマーダとコマンドウルフの間に割り込んできた。だが既にウル
フは動き出している。
 ウルフはライガーに向かってまっすぐ走ると、直前で両足を折りたたみ、”伏せ”の姿
勢になる。そのまま氷面のように地面をザーッと滑っていき、ライガーの下に潜り込む。
途端、首を伸ばしてライガーの喉下を咥え、ぐいと捻った。予想外の動きに全くついてい
けないライガーはぐるっと半回転し、頭から地面に叩きつけられ、停止する。
 パイロットは気絶、機体もフリーズ状態になってしまっている。この間、一秒弱。Eシ
ールドを展開する暇さえなかった。
「馬鹿な、ブレードライガーだぞ!パイロットも閃光師団(レイフォース)出身だという
のに、なぜコマンドウルフごときにこんな簡単に負ける!」
「本当の閃光師団あがりなら、こんなに弱いわけないだろうが、バーカ」
と山賊に言われて、どうやら思い当たる節があったらしく、ハッとしている。
 ゾイドバトルでは自称「元閃光師団」のライガー乗りなど腐るほどいるのだ。


64 :サクセサー 38:2007/05/16(水) 21:45:53 ID:???
「さて、邪魔者がいなくなったところで商談といこうや。カネなんぞいらん。お前のトラ
ンクに入っている仕事関係の一切合財、貰うぞ。あと、お前の命もな!」
「貴様!盗賊の類じゃないのか」
「ここを通らなきゃ、命まで取る必要はなかったんだがな」
 途端にマーダは背中のロケットブースターに点火すると、最大加速で逃走を図った。機
体が軽いために最高速度に到達するまでの時間が短い。マグネッサーを併用すればなおさ
らだ。こと直線の速さに関してはコマンドウルフよりマーダの方に分がある。あっという
間に視界から消えようとしている。
 普通なら追いつけないよな。だが、こっちは普通じゃないんだなぁ。
「跳べ!」
 その瞬間、コマンドウルフの姿はその場から消え、同時にマーダの頭上に出現する。い
きなり体重以上のものにのしかかられたマーダは、思い切りバランスを崩して地面に激突
し、慣性で五十メートルほど滑って、ようやく止まる。
 ウルフは数秒間、光彩を放っていた。虹のようだがぬらぬらと輝きながらめまぐるしく
色を変えるそれは見るものを不快にさせずにはおれない異様さであったが、しばらくたつ
と何事もなかったかのようにおさまり、後には趣味の悪いコマンドウルフだけが残った。
 『空間跳躍』を使ったのだ。発光現象は「この世でないどこか」の空間を通る時に付着
する残渣らしい。目で確認できる範囲内しか使えないのと、この光のせいで自分も気持ち
悪くなるのが欠点ではあるが。

 賢明な読者ならすでにお分かりであろう。このコマンドウルフに乗った山賊こそ、俺、
アレス・サージェスである。


65 :神の怨霊 25 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/17(木) 22:17:26 ID:???
「とりあえずこれで一つの謎は解けたけど・・・。」
と、その時今度は一人の若い術師が走って来た。
「村長! 悪霊が・・・悪霊の群が村に迫っておりまする!」
「何じゃと!?」
ミスリルは大急ぎで村の周囲を見渡せる高見台まで跳んだ。そこから見えるのは村に
迫りつつあるバイオゾンビの大軍であった。
「何あれ!?」
「あれはバイオゴーストの尖兵の悪霊が地に眠っていたバイオゾイドの死骸に取り付いて
誕生したバイオゾンビだ! 奴はあれを使って大陸中全てを破壊するつもりなのだ!
バイオゴースト程強くは無いとはいえ、現存するこの大陸の戦力では歯が立ちまい。」
何かいつのまにか高見台まで来ていた覆面Xが分かりやすく説明してくれてはいたが
そのバイオゾンビを迎撃しようにも未だ大龍神のアンチゴースト処理は完了していない。
「どうしようどうしよう! まだ大龍神の処理は終わって無いし・・・。」
慌てふためいてその場で地団駄を踏むミスリルだが、覆面Xは彼女の肩を叩いた。
「時間なら私が稼ごう。幸い君の大龍神より私のジェノブレイカーの方が小さい故
作業も手早く終わった様子であるしな。」
「え・・・?」
覆面Xは高見台からジェノブレイカーまで華麗にジャンプし、愛機を起動させた。
「覆面Xさんの・・・戦い・・・一体どんな戦いを?」
ミスリルをして得体の知れない所のある謎の多い男、覆面X。彼が直接戦う姿は
見た事が無かったが、自然と不安は感じなかった。
「ようし! あの覆面男が時間を稼いでいる間に作業を進めるのじゃ!」
「ハイ!」
村の守りを覆面Xに託し、術師達は大龍神のアンチゴースト処理作業に集中した。

66 :神の怨霊 26 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/17(木) 22:19:06 ID:???
得体の知れぬ素性に違わず覆面Xは強かった。高性能な反面乗りこなすだけでも
相当な実力を必要とするジェノブレイカーを手足のように操り、バイオゾンビ達を
容易く葬っていく。幸いバイオゴーストと異なり、バイオゾンビは本体となる怨霊の
霊力の都合なのか、バイオゾイドの残骸を霊がコントロールすると言う形でバイオ
ゴースト程の不死身さは無いらしく、それ相応の戦闘力さえあれば割と普通に倒す事も
可能であった。そして覆面Xのジェノブレイカーに装備されたアンチゴースト処理の
されたエクスブレイカーや爪が次々にバイゾンビを怨霊ごと斬り裂いていく。
「凄いじゃないあの覆面のおじさん! これは撮影し甲斐があるわ!」
挙句の果てにはどさくさに紛れてハーリッヒのスクープマスターが戦況を撮影する始末。
しかし、ミスリルも手をこまねいてただ大龍神のアンチゴースト処理が完了するのを
待ってはいられなかった。流石にバイオゾイビの方も数が多いし、少しでも戦力があった
方が良いに越した事は無い。
「あ〜どうしましょどうしましょ!」
そう言いって地団駄を踏みつつ、ミスリルは高見台の上から両眼破壊光線ミスリルビーム
でジェノブレイカーを援護したりしていたのだが、その時ふとある事を思い出した。
「ああ! そうだ! 私ったらいっけな〜い! こういう状況こそあの子の出番なのに
すっかり忘れてしまっていたじゃありませんか! てへっ!」
ミスリルは軽く自分の頭を小突きながら、服のポケットの中から一つの小さなカプセルを
取り出し、戦闘が行われている地点へ向けて投げ付けた。するとどうだろうか。空中で
開いたカプセルは一体の白銀に輝くデススティンガーへと変化したでは無いか。
「ゲー! いきなり見た事も無いサソリ型ゾイドが出たー!」
村人がお決まり(?)の驚き役を演じつつ、ミスリルはデススティンガーに呼びかけた。
「時間稼ぎお願いね! カプセル機獣! 大蠍神!」
「うわぁ! 一体どうなってるのどうなってるの!?」
常識を超越した規格外が大好きなハーリッヒは思わず凄く嬉しそうな顔でミスリルに
大蠍神と呼ばれたデススティンガーの方にスクープマスターを走らせていた。

67 :神の怨霊 27 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/17(木) 22:21:24 ID:???
「細かい理論とかは割愛させて頂きますが、微小化させたこの子をカプセルに収納して
こうやって大龍神が戦えない時に使う様にしたりしなかったり・・・。」
「なるほど・・・某光の巨人が使っていたカプセル怪○みたいな物か。」
さりげなく覆面Xもそうコメントを入れたりする今日この頃。そして大蠍神はミスリルの
命令の下、バイオゴースト軍団へ向けて駆け出した。

かつて某国が先史文明の遺跡の中からデススティンガーコアと機体設計図を発見した。
その高度文明圏であり既に高度な技術を持っていた彼等がそこからデススティンガーを
再現する事は容易い物だった。が、彼等は知らなかった。普通のデススティンガーならば
オーガノイドシステムを弱めたり、インターフェースを使って精神ストレスを肩代わり
させるなど、パイロットの負担を考慮して作られるが、そのデススティンガーは逆に
オーガノイドシステムの効果が最大限に発揮され、明らかに生身の人間が操縦出来る代物
では無かった。“デススティンガー・ゼノンタイプ”と設計図に書かれていたそれは
最初から生身の人間の操縦など想定してはいなかった。大昔、ネオゼネバス帝国が人員
不足を解消する為に研究していたものの、結局量産には至らなかった人型のインター
フェースシリーズ、通称SBHIシリーズの3号機“ハガネ”の専用機として徹底的な
非人道的(だって人じゃなくてロボットだもん彼女)な改造が施されたデススティンガー。
設計図に描かれていたのはその同型機である。ロボットであるが故に精神ストレスなど
とは無縁だからこそ彼女はそれを問題なく操縦出来たが、某国はその意図を読む事が
出来ず、デススティンガーはいたずらに多くのパイロットを殺し、またあるいは廃人と
変えてしまった。結局制御不可能な欠陥品として扱われ、破棄もやむなしと言う状況に
置かれたデススティンガーを拾い上げたのはSBHIシリーズの4号機にしてハガネの
娘にあたるミスリルであった。そしてミスリルに“大蠍神”と命名され、ドールチームの
一員として働く事になった。流石に戦闘力としてはギルタイプの大龍神に勝るべくもない。

68 :神の怨霊 28 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/17(木) 22:22:45 ID:???
しかし大龍神には無い手先の器用さや無人機としての適正を買われ、普段は微小化された
状態でカプセルに収納されると言う“カプセル機獣”化しているが、大龍神が戦えない
状況や別同部隊が必要な作戦などで駆り出されるなど、そこそこ活躍していた。

大蠍神は強烈なパワーと鋭い鋏や牙、刃でバイオゾンビを斬り裂き、潰し、砕いた。
デススティンガーベースであるが故に大蠍神の陸戦における運動性は大龍神より高い。
相手のバイオゾンビも決して遅くは無いが、八本の足が目覚しく動き回りる大蠍神の
スピードに圧倒されていた。人間達には制御不能の悪魔の兵器として忌み嫌われる彼も
ミスリルにとっては素直で可愛い子だったのである。
「わぁ! 凄い凄い!」
「おーやれやれーもっとやれー!」
ハーリッヒは興奮気味で戦況を撮影し、村人も山奥であるが故に娯楽があまり無いのか
面白がって見物していた。その行動は不謹慎かもしれないが、それだけジェノブレイカー
と大蠍神がバイオゾンビ軍団を圧倒していたと言う事になる。それと忘れてはならないが
ミスリルも村の周囲を見下ろす高見台から両眼破壊光線でバイオゾンビの装甲の無い部分
を正確に狙った援護射撃。だが、ここで後方から新手が現れていた。
『お前達それでも神の仕える戦士なのか? あの程度の相手に手こずるなど・・・。』
新手の正体はバイオトリケラ・・・そのゾンビ版とも言うべきおぞましい物だった。
そしてバイオゴーストのそれとは異なるが、バイオゾンビトリケラにも確固たる自我が
存在している様子であり、その目は正面の村の広場に立っている大龍神へ向けられていた。
『あれは・・・100年前の戦争でディガルドと討伐軍のどちらにも着かず、それによって
戦線を混乱させた小さき滅びの龍・・・。あれがまだ生きていたとは・・・。唯一絶対神様の
命によりあれは必ず破壊せねばならぬ・・・。』
憎悪の炎を燃やすバイオゾンビトリケラは村へ突撃する。しかしそこを大蠍神が阻む。
「大蠍神! 一機たりとも村に入れちゃダメだからね!」
『大・・・蠍・・・神・・・だとぉ・・・? 私は認めぬ! 唯一絶対神様以外にその様な存在は
あってはならぬのだぁ!』

69 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/17(木) 23:51:44 ID:???
俺の後ろをビュンビュン風切り音を鳴らし赤熊の大斧が舞う。
「くそ!当たりゃしねえ!てめえどうしてそんなに避けられるんだ!こら!」
「当たり前田のスーパーハッカー!大体持ち方が決まっている武器なんて…
軌道が限定されるだろうがっ!」
「成る程!そう言うことだったっか…ってしまった!また逃げられた!」
凄く物分かりが良い赤熊がその答えに手をポンと鳴らして関心している間に、
上手いこと距離を取りその上あの獲物が振り回せない細い廊下に逃げ込む。
「へっへ〜これでお前は振り下ろしと振り上げしかできないぜ!」
「あああああああ卑怯だぞ!てめぇえええ〜!」
「好きに言え!また会おう!赤熊山賊団の諸君!ふははははははははっ!」
大勝利だ…逃げ果せるのに。悲しくなんかないやい!クスン…。

格納庫に使っているらしい場所に到達した俺を待っていたのは…
赤熊山賊団のフラッグシップのレッドマンドリルって熊じゃないのかよ!
以前はベアファイターに確り乗っていたのに…。
「てめえの所為だろうがあぁ!」
「だから速いって!」
糞真面目に大上段からの振り下ろしで飛び込んできた赤熊を左に避け蹴りを一発。
「あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
奴は格納庫の床へダイブする軌道を執った。今度こそ少しは時間が稼げるは…ず…
「な〜〜んてな!死に晒せえええええっ!」
「そんなのって有かよおおおおおおおおおっ!!!」
キャットウォークの手すりを蹴って三角飛びをかまし俺の目の前に戻ってくる!?
「ええい!鬱陶しいんだよ!」
俺は諦めてシナリオンの棒を持ち出すと思い切り赤熊の顔面に叩きつける。
「覚えてろよおおおおお!必ず腸を引っ張り出して喰ってやる!」
…ええと?普通なら致命傷の筈だが?
たん瘤一つを額に生やして床に落下していく赤熊。
やっぱりこの塞はおかしい。何か怪しい力でも働いているのだろうか?
アレは普通なら即死ものの一撃だったのに…。
計り知れない恐怖を覚えて俺は一心不乱にビー介の元に走り出した。
「もうやだ…俺帰る……。」

70 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/17(木) 23:55:14 ID:???
走っている最中にカリカリと何かを削る音が聞こえてきたので俺は…
壁を思い切り手に持つ棒で叩いてみた。
案の定悪い予感は現実のものとなり壁が裂け、壁の裂け目からは丸い目。
捕まっていたらしいビー介の仲間。通常サイズのバイオビーバーである。
当然俺と面識は無い為思い切り目の前を爪が通り抜けていた。

「何もかもが逆風だ!俺の運が上向きでも周りの運が急転直下の最悪じゃないか!
全くどうして俺がこんな目ばかりに遭うんだ!?」
泣き言が極自然に口から漏れてきている俺はもう駄目なのかもしれない…
そう言う風に思い始めている。当然悪いことは立て続けに起こるもの。
そのお約束を裏切ること無く突然巨大な拳が俺の目の前を掠め、
派手な音を上げて壁に風穴を開けた。
「ちっ!外したか!もう少しで晩飯ができ上がるところだったのによ!」
「趣味悪いぞ!赤熊!本気で俺を喰う気なのか!?」
「食事が嫌なら…別の意味で喰ってやろうか?」
「全力で断る!このホモ野郎!!!」
「なら死ね!」
「そっちもやだやだ!」
「何方かにしろよ!」
「そんな無限ループ選択肢はお断りだっ!」
既に子供の喧嘩以下になりつつある…
何が悲しくて筋肉達磨と漫才をしなければならないんだ?
今の一撃でバイオビーバーが一斉に逃げ出した為に赤熊は…
レッドマンドリル共々バイオビーバーの群に足蹴にされている。今がチャンスだ!
俺は息も絶え絶え方々な呈で状況でその場を逃げ出すのであった…。

「おい…あいつ遅くないか?」
ガラガの疑問は当然である。本来時刻的にはもう片が付いていておかしくない。
「きっと彼の事だ…相当厄介目にあっているんだろうね。」
「赤熊は体力馬鹿だからな。俺が言うのも許されるぐらい…ってやばいぞ!おい!」
「そうだね。急ごうっ!」
雑魚を蹴散らしたガラガとロンは急ぎ塞へ移動を開始した。

71 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/17(木) 23:59:57 ID:???
「くそっ振りきれない!って言うかゾイドの足に人間さま足が敵うかつ〜の!
おおっと!?落とし穴ああああああああああっ!?」
レッドマンドリルの猛攻から必死に逃げる俺だったが…
目の前にできてしまったレッドマンドリルの拳型の穴に落下してしまう。
「今度こそ止めといくか?それとも…やらないか?」
どん詰まりか!?まさか赤熊が衆道を嗜んでいるとは思いもしなかった事だ。
何方にしろ…人生が終わると言う事には間違いない!
こうなれば自棄でこう叫んでみた。
「カムヒアアアアアアアアアアア!ビー介えええええ!」
「馬鹿か?そんな風に助けを呼んでも現実は甘くぼぉあああ!?」
…来た。流石はカクテルパーティー効果だ。
人間限定の効果じゃないの?と言う突っ込みは無用だ。まだ確り解っていないから。

キングサイズのバイオビーバーであるビー介の体当たりを喰らい…
レッドマンドリルは十数m程滑って外壁へ激突する。
今が我が時と急ぎビー介のコクピットに滑り込むとさっさと外に逃げ出す。
しかし相変わらず回復が早い赤熊とレッドマンドリルは後を追ってくる。
「くおおおおらあああ!待ちやがれええ!」
「嫌だ!待たない!」
「つれないことを言うなよ!ブラザー!」
「何時俺とお前はそんな関係になったんだよっ!」
「さっき。」
今度は俺がコクピットの中でこけた。次いってみよう!

「くそっ!こいつは何だ!?」
「どうやら…もう一つこの事件に噛んでいた奴のお出ましみたいだね。」
デッドリーコングとバンブリアンは青い装甲の大きなバイオゾイドに道を阻まれている。
所々金に輝く刺や角が闇に映え…そのシルエットが浮かび上がると、
ロンとガラガは口を揃えて驚く。
「「バイオライガー!?」」
「何と…初見でこいつの名前を見破るとは…貴様等できるでござるな!」
妙な喋り方だが独特の語尾からかなりの手練であろう事が伺える。

72 :神の怨霊 29 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/20(日) 21:33:34 ID:???
バイオゾンビトリケラはまるでヒステリーでも起こしたかのように大蠍神へ角で突き
かかるが、なんとか大蠍神は両腕のカッターで弾き反らした。やはり己を唯一絶対神と
名乗るバイオゴーストの配下。例え名前だけでも神と付く存在は許さない様子である。
早くも冷静さを失って激しく角で突きかかり、大蠍神も両腕の鋏やカッターで弾き反らす
事しか出来ない。体格こそミスリルの知り得るバイオトリケラと代わらないが、馬力や
運動性は段違いだ。と、ここで別に誰も頼んでないのに態々覆面Xが解説を始めやがった。
「彼の正体が分かったぞ! 記録によるとディガルド軍でジーンの腹心として活躍した
ゲオルグと言う鬼軍人がいたのだが、そいつが正体に違いない!」
「別にそんな事言われても勝つヒントにもならないでしょ?」
ミスリルは少し呆れていたが、大蠍神はバイオゾンビトリケラの懐に掴み掛かり、動きを
止めた後、至近距離から尾に搭載された荷電粒子砲をぶっ放した。
『うお!』
いくらビームが効かないと言われるバイオ装甲に身を包んでいると言えど、それはあくま
でも平均レベルのビームの話である。流石に大蠍神の荷電粒子砲の前には意味を成さず
エネルギーの着弾面が抉れるように消滅し、殆どバイオゾンビトリケラの体で残っていた
のは身体を支える4本の足だけだった。さらに大蠍神は荷電粒子砲を発射し続けたまま
尾を動かして周囲の他のバイオゾンビもまとめて消して行った。
「やったぁ! 凄いサソリだ!」
村人もまるで自分の事のように大喜びしていたが、そうは問屋は卸さなかった。アンチ
ゴースト処理の行われていない大蠍神の力ではバイオゾンビの体は破壊出来ても本体たる
怨霊を倒す事は出来なかった。そして多数の怨霊はバイオゾンビトリケラに集合し、
その霊力によってバイオゾンビトリケラをさらに巨大に恐ろしい怪物へ変えていた。
「うわぁ! そんなずるいですよぉ!」
『唯一絶対神の忠実な下僕たる我らを倒す事など不可能なのだ。』
思わず大蠍神も退いていたが、その時高見台にいたミスリルに朗報が飛び込んで来た。
「作業終了しました! 何時でも行けます!」
「え!? 本当!? 分かりました! 行きます!」

73 :神の怨霊 30 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/20(日) 21:35:51 ID:???
ミスリルは高見台から一気に大龍神へ跳んだ。全身に悪霊退散の護符が貼られ、そして
呪詛が描かれていると言う何も知らない人間からすれば正気を疑いかねない姿の大龍神が
起動し、すぐさまバイオトリケラゾンビへ向かって駆け出した。
「さーてこの護符や呪詛が何処まで奴に通用するのでしょうか・・・。」
バイオゴーストに圧倒された記憶が少々トラウマになっていた彼女の心に不安が無いわけ
でも無かったが、結果は意外な物だった。まず軽くジャブ的な攻撃として考えて放った
前脚蹴りがバイオゾンビトリケラの頭から尾まで全てを潰していたのである。
「え?」
余りにも圧倒的過ぎてミスリルも呆れていたが、それだけではない。大龍神の全身の
護符や呪詛の力なのか、バイオゾンビトリケラに憑依していた多数の怨霊が忽ちの内に
浄化されて行ったではないか。
『何だこれは・・・敗れたのに憎しみの心が沸いてこない・・・むしろ清々しい気持ちだ・・・。』
「これは・・・。」
かつてどす黒い怨霊だったそれは綺麗な光を放つ魂へ姿を変え、天へ昇っていった。
「わぁ! 凄い! 何か良くわからないけど凄いよミスリル!」
ハーリッヒは興奮気味で天に昇る魂をカメラに収めつつスクープマスターを大龍神へ
走らせていたが、やはりミスリルはしばし呆然としていた。
「これは・・・やっぱり悪霊退散の護符とか呪詛の力・・・で良いんでしょうかね・・・?」
やはりこの世には科学では解明できない物は沢山ある。過去にもそういう例は沢山
見てきたミスリルであるが、今回の事で改めてそれを思い知った。とにかくこの護符と
呪詛によってインスタントアンチゴーストゾイドとして仕上がった大龍神ならば
バイオゴーストとも互角に戦えるであろう。
「それじゃ奴にリベンジ行ってみましょうか! ティアちゃんの仇討ちも兼ねて・・・。」
と意気込みつつも少し震えてるミスリルと大龍神であったが、そこで大切な事に気付く。
「そう言えば・・・あいつ何処にいるんでしょ・・・。」
「ああそれだがな・・・。やつは“ミロード”と言う村に向かっているらしいのだ。」
覆面Xの返答にミスリルとハーリッヒは少し呆れた。

74 :神の怨霊 31 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/20(日) 21:39:31 ID:???
「へ? 何でそんな村を? 大都市とかならともかく・・・。」
「まあ普通ならそんなチンケな村を襲った所で戦略的な価値は全く無いが、ミロード村
には100年前のディガルド戦争で人々の希望となった“ムラサメライガー”があるのだ。
奴・・・バイオゴーストを構成する怨霊達を束ねているのが本当にジーンの怨霊と言うなら
ムラサメライガーを狙うのは無理も無い事だ。奴にトドメを刺したのはそれだからな。」
ミスリルは外大陸で稼動するムラサメライガーの同型機は吐いて捨てる程見て来たが、
この大陸の人々にとってムラサメライガーは特別な存在である。ディガルド戦争を
終結させるきっかけとなったゾイドであり、同時に討伐軍のシンボルにもなるという
まさに人々の希望であった。戦後はそのムラサメが持っていた死と再生を繰り返すと言う
未知の能力によって一度死滅したミロード村ジェネレーターを蘇らせ、今もミロード村に
大陸中の人々の希望の象徴として祭られている。それ以後ミロード村は観光地として
発展したりしなかったりするのだが、今なおムラサメライガーの収められていると言う
ジェネレーターを一目見ようと訪れる人々は多く、まるで神の様に崇められている。
だからこそ唯一絶対神を自称するバイオゴーストにとって目障りな物なのであろう。
「なるほど・・・やっこさん私の大龍神や大蠍神にも激怒するくらい唯一絶対神に
こだわってるからそういうの見たら真っ先に壊しに行きそうですよね。」
「だがそれだけではない。ムラサメライガーはこの大陸に生きる全ての人々にとっての
希望だ。それが破壊されると言う事は人々から希望を奪うと言う事になる。どんな苦難に
陥ろうとも希望さえあれば人は幾らでもやりなおせる。しかし、その希望が無くなれば
どうなるか…それは君にも分かるはずだ。まあとにかくだ。今から奴が向かっていると
いうミロード村の地図をそちらに転送する。表示通りに進めば直ぐに付くはずだ。」
「分かりました。」
覆面Xのジェノブレイカーから転送されたマップデータが大龍神コクピットディスプレイ
に表示され、それが指す方向に向いた大龍神の背にスクープマスターが乗った。

75 :サクセサー 39:2007/05/22(火) 22:53:20 ID:???
 戦場を離脱した後、俺はまっすぐ帝都に向かうつもりだった。懐にはグラハムから預か
った書類がある、この事件の発端になったと思われる地質調査資料だ。これを帝都にいる
グラハムの知人に渡し、極秘裏に処理して貰うのが、兄弟子の遺言だった。
 だが帝都へ向かってコマンドウルフを走らせながら、俺はユーリから昨晩、本陣のテン
トの中で交わされていた会話のことを聞いたのだ。いつもならコクビットがカラの状態で
動き回るのは叱るべきところではあるが、今回はお手柄だと褒めるしかない。
「ユーリ、行く先の変更だ。東の国境のほうへ向かえ」
 小コルネリウスと会話していた商人が、この機会を利用してさらに儲けようと考えてい
るなら、共和国を利用しようとするはずだった。
 山岳地帯を越えて共和国との国境へ向かうルートは他にもある。実はそちらを使わせな
いよう先行して手を打っておいた。こいつらがこんな遅い時間帯にここに来たということ
は、向こうで打っておいた足止め策が効いたということか。こちらの道に誘きよせたのは、
こちらの道の方が不便で、利用者が少ないためだ。目撃者はいないに越したことはない。
 ちなみにウルフは、いつものメタリックピンクの装甲の上に迷彩模様のシートを貼って
ごまかしている。ビニールシートの裏側にのりが付いていて、貼るだけで塗装しなくても
模様替えのできる便利な品だ。桃色で刀を背負ったコマンドウルフなど、この惑星中探し
たって他にはない。素性がばれて後々までトラブルを引きずるのは御免だ。


76 :サクセサー 40:2007/05/22(火) 23:00:53 ID:???
「ぬうう・・・お、重い・・」
「失礼ね、あたしゃそんなに重くないわよ!」
「いや、そういう意味じゃないと思うぞ」
 ウルフの前肢は、マーダの足を押さえている。正確には、膝を踏んづけている。どんな
にパワーがあろうが動くはずがない。ちなみに、胴体は横を向かせている。このテの民間
機は軍から払い下げられる時にデチューンして出力を落とし、武装も外すのが普通だ。現
に背中には電磁砲の代わりにロケットブースターを積んでいる。とはいえ、どんな隠し武
器を積んでいるか知れたものではないから用心するに越したことはない。
「さあ覚悟を決めてもらおうか」
 時間はあまりない。つい近くで続いていたドンパチを狙ってジャーナリストや各国の諜
報機関、企業の情報収集部員が多数、入り込んでいる。彼らに嗅ぎつけられる前に事を済
ませたかった。
「そうか分かったぞ、貴様らどこのスパイだ!どうやって俺のことを調べたか知らんが、
お前らの思い通りにはさせんぞ!このゾイド人め・・・うわなんだやめ・・・ひぃぃぃ・・・」
「なにか言ったか地球人」
 途中で押さえつけるのをやめて口でマーダの足首を咥え、ぶんぶんと振ってやったのだ。
分かりにくいかもしれないが、この場合のゾイド人というのは地球人がZi由来の人間に
対する蔑称として使われる。戦闘機怪獣と同レベルの生物、と言いたいんだろう。ま、今
どき純粋な『地球人』も数えるほどしかいないんだが。
 振り回すのをやめて再び前肢で踏んづけてやる。無線を通じてケロケロと嘔吐物がコク
ピットを汚す音が聞こえてくる。


77 :サクセサー 41:2007/05/22(火) 23:05:31 ID:???
「さあて、どうしよっか?煮て食うおうか焼いて食おうか。頭からまるかじり、なんてどう?」
「食事の算段は後にしろ。どっちみちこんな奴食ったら、腹壊すぞ」
「ケラケラケラ、そりゃそうだよね」
 冗談でこいつを脅そうとしてるんだと思いたい。シャレになってないぞ。
 マーダのコクピットごとバイトファングで噛み砕くのが一番てっとり早いのだが、それ
では重要書類が破片と一緒になって紛失しかねない。間違いなく、俺の持っているのと同
様の書類を持っているはずだった。状況説明してへリックを動かすためには物的証拠が不
可欠だからだ。コクピットをこじ開けて中の人間を引きずり出し、荷物を没収、男本人は
・・・ま、ユーリに脳の記憶視野の一部をいじって記憶喪失にでもするしかない。面倒だ
がそれが一番確実な方法だ。
 その前に俺は確認しておきたいことがあった。
「ここに来たという事は、情報をヘリック側に売るつもりだな。その情報が引き金になって
大規模な戦争が起きるかもしれん。そんなに戦争が好きか」
「何を言ってる!この情報を一刻も早くヘリック側に伝えて、早急に対策を打たなければ
本当に戦争になってしまうぞ!」

 なんだか話が噛み合わないような気がするんだが、気のせいか?


78 :神の怨霊 32 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/25(金) 00:22:18 ID:???
「ちょっと待って! 私も行く!」
「ハーリッヒさん!? 危ないですよ!」
「危ないのは承知! でも亡霊ゾイドなんて絶対に見逃せない!」
「ハイハイ分かりましたよ・・・。」
仕方なくミスリルはハーリッヒの同行を了承した。どうせ彼女の性格なら例え拒否しても
無理矢理追い駆けていただろうから・・・。
「さて、では私は大陸各国軍と協力し、大陸周辺で暴れている他のバイオゾンビの掃討に
当たろう。どうせ現各国軍の戦力じゃ奴等には歯が立たないだろうからな。」
「んじゃあ大蠍神、貴方もそっちの方をおねがいね。」
そうして大龍神はスクープマスターを背に乗せてミロード村へ飛び立ち、覆面Xのジェノ
ブレイカーと大蠍神も大陸各地のバイオゾンビが暴れている地域へ向かった。
「がんばれよ〜。」
残された村の人々は手を振ってミスリル等を見送った。彼等にとってやれるだけの事は
やった。後はミスリル達の頑張り次第なのである。

「ここは・・・何処なのよ・・・。」
ティアが目を覚ました時、そこは今まで見た事の無い不思議な空間だった。
暗くもあり、明るくもある。足の付く地面もなく、広大な空間の中にティアは浮いていた。
「ここはきっとあの世なのよ・・・。別に可笑しくないのよ。本当なら私も死んですぐに
ここに来なきゃいけなかったんだから・・・。」
「嫌・・・違うな・・・。」
「え?」
するとどうだろうか・・・今までは気付かなかったが、よく見ると周囲に幾千幾万にも
及ぶ数多くの人々に取り囲まれていた。
「な・・・私に何をするのよ・・・。」
「怖がることは無い。我等は君を助けに来たのだよ。」
そう言って群集の中から一人の武士を思わせる人が前に出た。
「ここは生界と霊界の狭間。生界でも霊界でも無い空間。」
「どういう事かワケが分からないのよ。」

79 :神の怨霊 33 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/25(金) 00:23:23 ID:???
10歳にも満た無い若さで死した身である為、精神年齢が10歳以下で止まっている
ティアには武士っぽい人の説明が良く分からなかったが、普通ではない事は理解出来た。
「ならあ・・・あれを見るが良い。」
武士っぽい人がある方向を指差す。すると何も無い空間にスクリーンの様な物が生じ、
生界の様子が映し出されたではないか。
「これは・・・。」
生きる者が住む世界・・・即ち生界は、あの世から蘇った亡者達の手によってさながら地獄の
様であった。何万にも及ぶ強い怨みを持った怨霊達はバイオゴーストとなり、そこから
さらにディガルド戦争で倒され破棄されたバイオゾイドの残骸に憑依してバイオゾンビ
なった。幾千幾万にも及ぶ亡者達は今生きる者達を情け容赦なく蹂躪していく・・・
生きる者達も必死で戦っているがまるで歯が立たない。
「こんな・・・こんなの酷すぎるのよ・・・。でも・・・私じゃ歯が立たないのよ・・・。」
ティアはがっくりと肩を落とした。いくら怒った所で一度バイオゴーストに敗れた彼女に
何が出来ようか・・・が、武士っぽい人が突然彼女の肩をポンと叩いた。
「だからこそ私達がここにいるのだ。」
「え?」
「君は一度死して霊になっているにも関わらず生界に留まり続けている。だからこそ
君は再び生界に戻る事が出来る。そこで私達が君に力を貸そうと言うのだ。」
「でも・・・私の力じゃアレには歯が立たないのよ・・・。」
「だから言っているだろう? 私達が力を貸すと。奴が幾千幾万の怨霊の集合体と言う
ならば、こちらも幾千幾万の魂の集合体で対抗すればよい。現に君は一度、あの者達の
様に幾多の魂達を束ねた事があったと言うではないか。」
「え?」
ティアは一瞬ワケがわからなかったが、すぐにはっと事を理解した。そう、武士っぽい人
を初めとし、ティアを取り囲む数多くの人々もまたティア同様に一度死んで魂だけと
なった人々だった。しかし、バイオゴーストのような怨霊達ではない。切に平和を願い、
力無き人々を護る為に戦った者達の霊・・・言わば善霊とも言える者達だったのである。

80 :神の怨霊 34 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/25(金) 00:25:39 ID:???
「霊界の者が生界に干渉するのはルールに反する事だが、今回は非常事態であるが故に
話は別だ。100年前の戦争で死んだ全ての者の霊達を慰める為に建てられた自由の丘の
慰霊碑が壊され、生界に強い恨みを持つ者達・・・すなわち怨霊が解き放たれてしまった。
だが全ての霊がその様な怨霊では無い。我等の気持ちは一つ。君に協力し、奴と戦おう。」
「我等が犠牲になってせっかく平和にした世界が亡者の手で滅茶苦茶にされるのは
同じ霊として見てられんからな!」
周囲の人々も口々にそう言い、ティアも少しだけ勇気付けられた。
「お・・・おじちゃん達・・・ありがとうなのよ・・・。」
涙を流しながらティアは礼を言い、お辞儀をした。そして幾千幾万の魂達はティアと融合、
巨大な善霊の集合体となったそれは空間の壁を突き破って生界へ突入。バイオゴーストに
敗れ、広大な荒野に放置されたままになっていたゴーストンに憑依し、ゴーストンは
復活した。かつてティアはバイオゴーストと同じ様に幾多の不成仏霊を束ね、“Zゴースト”
と呼ばれていた時期があった。それがミスリルとの出会いによって今の様になっていた
のだが、今日その時、幾多の善霊達の力添えによってZゴーストとしてのティアが
復活した。いや、言わばこれは“超Zゴースト”と言った方が良いのかもしれない。
「よーし! 行くのよ!」
幾多の魂の集合体であるとは言え、ティアの精神が主となっている超Zゴーストは天
高く飛び立った。目標は無論幾多の怨霊を束ねるバイオゴーストである。

81 :神の怨霊 35 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/28(月) 21:41:16 ID:???
バイオゴースト率いるバイオゾンビの大軍はミロード村へ近付きつつあった。
ディガルド戦争で人々の希望となったムラサメライガーの存在するミロード村は
何としても守らねばならない。キダ藩も軍をミロード村に派遣して徹底抗戦の構えを
取っていたが、長い間平和が続き弱体化した現軍ではバイオゾンビ軍団に歯が立たない。
「うわぁ! 奴等撃っても撃っても倒れず近付いて来やがる!」
「ひぃ! こえぇぇ!」
「怯むな! 何としてもこの絶対防衛線は死守するのだ!」
ミロード村から数キロ離れた地点を絶対防衛線とし、ガン=ジュツ自らが指揮を取って
いたが兵の士気は低かった。相手のバイオゴースト&バイオゾンビ軍団が質の面でも
量の面でも圧倒的だったと言うのは言わずともだが、何より現在はディガルド戦争の
時の様な、こういう絶望的な状況にあって人々の支持を集め、束ねられるルージ=
ファミロンの様なカリスマがいなかったと言う所もあるのかもしれない。
「ひぃ! うわぁ! 助けてくれぁ!」
キダ藩側のゾイドはある者はバイオゾンビに組み付かれ、またある者は火炎弾によって
容易く破壊されていく。そして殺された者達の霊はバイオゴーストへと取り込まれるの
である。その恐怖は残された者達にも強く影響を与え、士気はますます下がっていく。
戦線はまさに崩壊寸前だった。
「こ・・・このままでは・・・。」
ガン=ジュツの乗るランスタッグも満身創痍となり、いつやられても不思議では無かった。
後方には未だ人々の避難の完了せず、村民の混乱が続いているミロード村、正面には
辺り一面を埋め尽くすバイオゾンビの大軍と、それにやられた死体と残骸の山が
築き上げられている。もはや地獄・・・この世の地獄である。
「絶対に・・・絶対に死守しろ! せめて・・・せめて村民の避難が完了するまではぁ!」
「ガン=ジュツ様! 敵軍の遥か後方から何者かが高速で接近しています!
こ・・・この速度はレインボージャークさえ上回る程です!」
「何?」
配下である兵士の一人の報告にガン=ジュツはレーダーに目を向けた。そこには確かに
何かが猛烈な速度で接近しているのが確認された。

82 :神の怨霊 36 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/28(月) 21:42:46 ID:???
「これだけのスピードを出せるのは・・・まさか!」
そのまさかである。その正体はバイオゴースト&バイオゾンビ軍団の後方からミロード村
へ向けて飛んで来た大龍神であった。陸路では何日もかかる距離も大龍神の速度を
持ってすればわずか数時間で到達出来るのである。
「でも・・・ハーリッヒさん・・・大丈夫ですか?」
「ふぁ・・・ふぁい・・・しょうぶれふ・・・。」
ミスリルはロボット故に平気だが、明らかに生身の人間ではGで潰れても可笑しくない程
の速度で大龍神は飛んでいた。それ故に背にしがみ付いているスクープマスターに乗って
いたハーリッヒはかなり苦しそうだったが、辛うじて生存していた。流石はミスリルに
“地上最強のジャーナリスト”と言わしめるだけの事はある。
「じゃあそろそろ下ろしますね?」
「う・・・うん・・・。」
大龍神は瞬く間に地を埋め尽くすバイオゾンビ軍団の上空を通り過ぎ、ジャーナリスト
たるハーリッヒが戦況を撮影しやすいように周囲を見渡せる高い山にスクープマスターを
下ろした後、再びバイオゾンビ軍団の方へ向かった。
「わー! 何だお前のゾイドは!? 滅茶苦茶気味が悪いぞ!」
大龍神の全身に貼られた悪霊退散の護符や呪詛が速攻ガン=ジュツに突っ込まれていたが、
彼はすぐさまこう続けた。
「そんな事はもうこの際どうでも良い! とにかく奴等を何とかしてくれ! 特に後方の
ミロード村のジェネレーター内のムラサメライガーを死守する事が出来たら報酬は
三割り増しにしてやるし、今夜だってビフテキたらふく食わしてやるぞ!」
「な・・・なぁんですってぇ!? よっしゃ任して下さい! 汚名返上してみせますよ!」
ミスリルは妙に気合を入れ、大龍神をバイオゾンビ軍団の正面へ向かわせた。
「しかし・・・機械兵の亜種の癖に何と食い意地の張った奴だ・・・。」
呆れるガン=ジュツではあるがミスリルは真剣だ。バイオゾンビ軍団の火炎弾が雨の様に
飛び交う最前線に構わず大龍神を飛ばしていく。だが、それに気付かないバイオゴースト
では無かった。

83 :神の怨霊 37 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/28(月) 21:44:00 ID:???
『あれは・・・あの偽神か・・・。我に敵わぬと知りながらまたも来るとは愚かな奴だ・・・。
まあ良い・・・お前達・・・やってしまえ・・・。』
バイオゾンビが大龍神へ向けて手を振ると同時にバイオゾンビ軍団の火炎弾の照準が
一斉に大龍神へ向けられた。バイオゾンビの火炎弾は従来のバイオゾイドが装備していた
物とは異なり、怨霊の怨念の込められた炎である。これにより物理的なダメージと同時に
相手の精神にも打撃を与えてしまう。しかし・・・
『何?』
大龍神の全身に貼られ、描かれた悪霊退散の護符や呪詛はバイオゾンビの怨霊の炎を
容易く弾き返し、細かい傷さえ付ける事は出来なかった。それにはバイオゾンビ軍団も
一瞬浮き足立つが、今度は大龍神の各部の装甲が開き、内側からミサイルが現れた。
「さぁて! パワーアップした大龍神の強さ見せてあげますよ! ドラゴンミサイル
ディバイダァァ!! ドラゴンレェェザァァシャワァァァ!!」
大龍神の全身からミサイルが、四肢の爪からはレーザーがシャワーの様に発射された。
特にミサイルはそこからさらに多数の小型ミサイルが発射され、一気に戦場中のバイオ
ゾンビ軍団に降り注がれていくではないか。
「うわぁ! 俺達までやっちまうのかぁ!?」
最前線でバイオゾンビと戦っていた者達はたまった物ではない。何しろバイオゾンビと
入り乱れて戦っているのだから、このままじゃ彼等も大龍神の攻撃に巻き込まれ・・・る事は
無かった。何とまあミサイルもレーザーもバイオゾンビだけを正確に狙い撃ち、友軍の
被害は殆どゼロだった。
「地獄の火山島戦役の教訓って奴ですよ! あれでかなり痛い目に遭いましたからね!
乱戦でも使える敵味方識別式超広域破壊兵器の研究をやらないわけが無いでしょう?」
「すげぇ・・・何か良くわかんないけどすげぇ・・・。あいつがもし100年前のディガルド
戦争に本格的に参戦してたら・・・どうなってたんだ・・・。」
「と言うかあのバケモノを痛い目に遭わせる奴がいたのか…。」
日々進歩していくのは人類だけの特権にあらず。ミスリルもちょくちょく己を・・・そして
大龍神をパワーアップさせて来たのである。

84 :神の怨霊 38 ◆h/gi4ACT2A :2007/05/28(月) 21:45:09 ID:???
「ドラゴンミサイルディバイダァァァ!! ドラゴンレェェザァァシャワァァ!!」
ミスリルの叫び声が戦場中に響き渡り、大龍神から放たれるミサイルとレーザーの雨が
あたり一面を埋め尽くすバイオゾンビ軍団を次々に破壊して行き、その様子をハーリッヒ
は興奮しながらカメラに収めていた。
「凄い凄い! やっぱり彼女は凄いわ!」
「でも何でわざわざ武器名を叫ぶんだ?」
態々武器名を叫びながら攻撃するミスリルにガン=ジュツは少し呆れていたが、これは
まあ文化の違いと言う奴である。地域によってはそれが当たり前な場所もあるが、
この大陸ではあまり一般的な事では無いのであろう。
「何故武器の名前を叫んで攻撃するかですって? そりゃぁ叫ばなくても別に出来ます
けど・・・叫んだ方が格好良いじゃありませんか? もっとこー派手にエコー効かせてさ!」
「いや・・・それはどうかと・・・。」
やはりガン=ジュツをはじめ、こちらの大陸の面々に武器名を叫ぶ文化は理解し難い物が
あったが、それでも大龍神のドラゴンミサイルディバイダーとドラゴンレーザーシャワー
は友軍を巻き添えにせずにバイオゾンビだけを正確に狙い撃ち、破壊して行った。
それだけではない。悪霊退散の護符や呪詛の効果がそれら武装にも影響され、バイオ
ゾンビの本体たる怨霊さえ浄化させて行った。
「ドラゴンミサイルディバイダァァ!! ドラゴンレェェザァァシャワァァ!!」
「って言うかお前のゾイド・・・どんだけ武器弾薬内蔵してんだよ・・・殆ど底無しじゃん。」
元々から単機で大規模勢力と戦う事を前提とした一対多用兵器として作られた大龍神で
あるが、デッドリーコングよりも若干大きい程度の体格でありながらも底無しとも取れる
異常な弾薬積載量に皆唖然とする他は無かった。

85 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/31(木) 06:31:36 ID:???
「むう…だが我が獅子は特別でござるよ?」
そのござる口調の男の言うとおりバイオライガーは一味も二味も違う。
昨日一昨日に鹵獲したバイオビーバーのビー介と違い…
このバイオライガーは明らかにライガーとしてパーツを作られた専用のフレーム。
所々にロンとガラガは見慣れたゾイドの姿を思い出すのだ。
「(こいつは…あのフレーム構造と足首に有るパイルバンカーの形。
ムラサメライガーだ。どういう手順で一回りも巨大なバイオゾイドに仕立てたのか?)」
「(何処かのソラシティだろ?あいつの話じゃカリンとか言う娘。
あいつの村を焼き討ちしたのがデカルトドラゴンだったって話じゃないか。)」
「(まあそうだね。でもバイオゾイドってのは起源が確り有る。普通の技術だけじゃ…
良くて大型でも戦闘力はラプター程度。ここまでの性能を誇るものには成らないんだ。)」

「その通りでござる。ご明察な貴公等に拙者が説明しよう…。
フレームの大型化などは既に周知の事実かもしれん。だが一般ゾイドのバイオゾイド化。
それには複数の手順と時間が必要でござるよ。まあ空の御屋形様の受け売りだがな。」
何処かのソラシティには一般ゾイドをバイオゾイドとして加工する技術が有る。
その上元のゾイドの特性を奪う事は無いらしいと言う事。
それを示すが如く大柄のバイオライガーは自らの背中を自ら切り開き…
サイズ相応のムラサメブレードを機体の外へ持ち出したのだ。
「では始めよう。いざ!尋常に…勝負でござる!」
三機のゾイドはお互いに向かって飛びかかる。
其処らで燃えている炎が揺らめき、それの照らし出す3機のゾイドの影が一つになり、
また三つに分かれる。そしてまたその手順を幾度と無く繰り返すゾイド達。
一歩も引くことの敵わぬ勝負は闇夜に金属の衝突が上げる閃光の軌跡を描き…
揺らめく炎はそれを煽るように勢いを増していく事になる。

「くそっ!大猿型はどうにも相手にしにくい!」
俺は困っていた。そもそも一般にコングと言われる類人猿型のゾイドは希少価値が高く、
余りお目に掛かれない所為もあって俺はまだこいつ等の戦闘方法に対する知識は浅い。
そんな物を更に豪華絢爛な改造を施されているマンドリル型。
折角なら熊型に変えれば良かったのにと無駄なことが俺の脳裏を過る。

86 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/31(木) 06:34:09 ID:???
「それ!それ!それ!それぇ!」
「おいっ!お姉え言葉になっているぞっ!?はっ!もしかして…そっちが本性ってか!?」
俺のテンションは赤熊のお姉え言葉の気持ち悪さに最底辺にまで下降している。
やる気がでなければどうにも調子に乗らないのがゾイドの操縦。
固有名詞の山を越え幾つかの装備を駆使してレッドマンドリルの攻撃を防ぐも…
完全に後手に回ってしまっている。肩から飛び出すハイドヘッダーで拳を受けると、
ビリビリと振動がビー介全体を包む。
全く大したパワーだ…明らかにサイズ負けしているのにパワーではビー介以上。
バイオゾイドとは言えかなりのパワーを持っている筈だがそんな事を全く気にしていない。
内部機構までかなり手が入っているのだろう…はっきり言って勝てる気がしない。

既にザ・烏合の山賊達は俺に壮絶な駄目出しを捲し立てられたために…
あっと言う間に足を洗った根性無し…アレフのウルファンダーの餌食と化していたようだ。
正直言って惨たらしい惨状が周囲に広がっている。
せめてもの存在の証と言った所であろうか?リーオの武器が姿を残すのみだ。
しかしこのロケーションは非常に不味い!
相手は類人猿型。其処らの武器を握って振り回す事など造作も無い。
当然其処らに転がった槍を手にとり素早く突きを放つレッドマンドリル。
いや!だから速い!速いって!こちらも必死で応戦するように長刀を咥えて善戦する。
しかし実力差は明白。昨日今日乗り込んだビー介で熟練の技を受けるのは難しい。
だがビー介の方も頭の回転が早くなり始めたのか?的確な装備の指示を出し始める。
「しめた!これで何とか五分にまで持っていける!」
「お〜ほっほっほほほほ〜〜〜!そんなに簡単に差を埋められるかよっ!」
言葉が混じっている。どうやら…素でこう言う微妙なハイブリット言語らしい。
どうしてこう成ったかは知らないが非常に残念な言葉使いだ。
「おまっ!お前のせいでしょうが〜!」
また槍の一撃が思考を呼んだらしい赤熊のレッドマンドリルから放たれる。
じきに俺は拡声器で呟きながら戦闘していた事を知るのだが…
はっきり言って誰にも突っ込んで欲しくなかったのはまた別の物語である。
と言うか…これで…また新しい一生の不覚が生まれてしまった瞬間だった。

87 :強襲!甘えん坊極限生命体 ◆5QD88rLPDw :2007/05/31(木) 06:38:11 ID:???
「それでも…きつい!何か飛び道具でも有れば…?
こっこれは!?バイオ粒子砲!これなら少しは牽制に使えるかも?」
当然駄々漏れなのだがこれを聞いた赤熊は一気に動きに制限が掛かる。
じっと構えて逃げ道を見失わないように周囲を見渡している…そんな動き。
程なくしてバイオ粒子が砲撃に足るエネルギーを得て体中に循環。
極小の発射口から吹き出すように発射される。
序でにハイドヘッダーの口中からも発射されるので俺は思い切り寒気を覚えた。
「この…世…には…知らなくて良い事も有るって…ほんと…だね…。」
「ああ…まったくよ…ブラザー…。」
寸分の狂いも無いタイミングで敵の赤熊に相づちを打たれる俺。
そろそろ気付け!俺!きっと何処かでそう言う懸念が有ったのだが今は気付いていない。
なんて…鈍感なんだ!俺!東西馬鹿合戦はまだまだ決着には遠い。

「これで…全部かな?」
「ふっ…拍子抜けだな。折角のサイコ流を見せる暇すらなかったらしい。
そもそもサイコ流は(以下大量略)」
「どうやらロウフェンさんの方も塞から抜け出すことはできたみたいですが…?」
「きっと赤熊と戦っている最中です。」
「戻って方が良いんじゃないの?」
「気にするな。奴も無敵団の漢。絶対大丈夫だ。」
無敵団+アレフは山賊団を軽く蹴散らし移動中だ。口々に軽口を叩いているが…
本質的な危機が去っていない事は流石に分かる。
今度は赤の次は青。装甲の色が青で統一されたゾイド達が遠巻きで6人を囲んでいる。
「…ふうん。コマンドウルフ、モルガ、ん…?珍しいね〜純粋な恐竜型。」
アレフは極自然にその言葉を呟くが…この大陸では意図的に間引かれた種。
無敵団には見覚えのない姿が現れたことに成る。
「アレフ?知っているのか?」
ア・カンの何か説明を求めるような言葉に特に気にする事無くアレフは答える。
「バイオゾイドはアレを元にして作られたものだよ。彼奴はレブラプター。
バイオラプターの元になっていると言われるゾイド。それにしても…数だけなら多い。
どうします?良ければ僕だけでたたんでしまいますが?」
その問いに受信画像のア・カンは親指を下に向けた。

88 :神の怨霊 39 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/02(土) 22:39:04 ID:???
戦いが行われていたのはミロード村近辺のみにあらず、バイオゴーストの尖兵たる
バイオゾンビ軍団は大陸各地に分散し、各地を破壊して行った。
「敵の侵攻は止まりません!」
「ズーリやトラフ駐留軍は既に壊滅した模様!」
「これでは援軍も期待出来ないか・・・。」
とある都市での戦闘。慌しく飛び交う戦況報告に指揮官は諦めにも似た言葉を放った。
敵の数も性能も統率力も圧倒的。都市周辺に立つ防壁も何時まで持つか分からない。
休む事を知らぬバイオゾンビの大軍に成す術無く蹂躪されるのを待つだけだった。が・・・
突如都市から遠く離れた地点から放たれた強烈な光がバイオゾンビの一群を包み込み、
薙ぎ払い、消滅させた。覆面Xのジェノブレイカーから放たれた荷電粒子砲である。
しかも覆面X特製なだけあって荷電粒子砲の威力もノーマルとは比較にならない威力だ。
「あれは何だ!? 見た事の無いゾイドだぞ!」
「ディガルド戦争で使われたと言うバイオヴォルケーノに似ているが違う!」
「だが・・・とりあえず味方の様だぞ・・・。」
突然の彼等にとって正体不明の援軍に都市防衛部隊は浮き足立った。無理も無い話だ。
この大陸の人々はジェノブレイカーはおろかバイオゾイドではない恐竜型を知らないの
だから。だが、覆面Xは構わずジェノブレイカーを持ってバイオゾンビを掃討して回った。
「うぬぬ・・・だが何と言う数だ。これと同規模の連中がこの大陸中に分散してると言うの
だから恐ろしい話だ。これならミスリル君以外にももっと色々雇っとくんだったな〜。」
覆面Xは己の采配ミスに少し後悔していたが、今はそれを悔やんでいる場合ではない。
とにかくひたすらに荷電粒子砲でバイオゾンビを消していかなければならないのである。

89 :神の怨霊 40 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/02(土) 22:41:26 ID:???
また別の都市での戦闘。こちらは既に都市内部にバイオゾンビ軍団が侵入し、壮絶な
市街戦に突入していた。その上未だ市民の避難が完了しない内にそうなってしまったの
だから、もう阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
「キャァァァ!!」
「ウワァァァ!!」
彼方此方で市民の絶叫が響き渡る。バイオゾンビは怨霊によって操られる、良心の存在
しない悪意の塊。だからこそ彼等は戦う術を持たぬ一般市民に対しても情け容赦なく
踏み潰し、消し飛ばした。その行為がますます市民の恐怖感をかきたて、市民同士の
衝突や押し合いへし合いによって圧死する市民や、転んだ為に群集に踏み潰される市民、
崩れた建物に潰される人々など、とても見ていられる物では無かった。
「一人でも! 一人でも多くの市民を非難させるんだ!」
この状況にあって防衛部隊は勇敢に任務を遂行した。しかし実力が伴わぬ彼等もまた
バイオゾンビに蹂躙されていく事しか出来なかった。が・・・その時突如バイオゾンビの
一群が空中から放たれた光の帯によって消滅し、消し飛ばされた。
「何だあれは!?」
何かに気付いた市民の一人が天高く指差す。その天高くには大蠍神の姿が合った。
背中からトンボの羽を思わせる透明の羽を生やし、超高速で羽ばたきながら華麗に宙を
舞いつつ、大蠍神は尾から放つ荷電粒子砲でバイオゾンビを次々に消して行った。
そしてバイオゾンビ軍団の気を引くがごとく、都市の外に降り立つ。
「もしかして・・・俺達を助けてくれるのか?」
バイオゾンビ軍団が大蠍神を標的と定め、追撃を開始した時、市民の一人がそう呟いた。

「ドラゴンミサイルディバイダァァ!! ドラゴンレェェザァァシャワァァ!!」
ミロード村近辺では、なおもミスリルの叫び声が周囲に響き渡り、多数のミサイルや
レーザーの超精密射撃がバイオゾンビ軍団を次々に蹴散らし、さらに護符や呪詛の力に
よって本体の怨霊を浄化させていた。

90 :神の怨霊 41 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/02(土) 22:43:25 ID:???
『まずい! ここは我直々に囮になる! 貴様等はムラサメライガーを潰せ!』
これ以上配下を潰させはせぬとバイオゴーストが前に出た。するとどうだろうか。何と
背中からモーフィング変形のごとくバイオプテラのそれをさらに禍々しくさせた様な
翼が生え、大龍神の所まで飛んで来たでは無いか。
「あらら、意外に部下にお優しい一面もあるのですね? 貴方らしくない・・・。」
『黙れ・・・これも目的達成の為なのだよ・・・。』
バイオゴーストは大龍神へ突撃し組み付いた。しかし何と言う事か、護符や呪詛による
効果ここにも現れ、大龍神に触れただけで焼ける様な激痛に見舞われた。如何なる
兵器の直撃にも全く平気だったと言うのに・・・
『うぉ・・・こ・・・これは・・・。』
「貴方に対抗出来る様に悪霊退散の護符やら呪詛やらを大龍神にね・・・。ちょっと不格好
ですけど・・・効果は大みたいですね。」
『なるほど・・・やっかいな事だな・・・。』
バイオゴースト本体の怨霊の表情は分からなかったが、表層に見えるバイオティラノを
さらに禍々しくさせたその顔からは苦笑いした表情が見受けられた。だが、それでも
バイオゴーストは激痛に耐え、配下のバイオゾンビ達に指令を送っていた。
『今だ! 我がこうして奴を押さえ込んでいる間にムラサメライガーを破壊せよ!』
「ちょっ・・・! そんな事はさせませんよ! 私にだってまだまだ手はあります!」
大龍神がバイオゴーストを蹴り上げて後方に下がった後ミスリルはキャノピーを少し開く、
そして彼女の右手の人差し指と中指には一つの小さなカプセルが摘まれていた。
「カプセル機獣ナンバー2! 大砲神! 敵の足止めお願いね!」
その掛け声の下放り投げられたカプセルから一体のセイスモサウルスが現れた。
「うわぁ! 何だあれは!? 首が凄く長いぞ!」
「キリンか!?」
「嫌・・・違う! アレは何だ!?」

91 : ◆.X9.4WzziA :2007/06/03(日) 08:11:36 ID:/kad7f/2
定期ageです。

92 :神の怨霊 42 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/04(月) 22:50:40 ID:???
この大陸ではセイスモサウルスはおろか恐竜型と言う概念さえ存在しないので人々が
戸惑うのも無理は無かったが、このセイスモもまた大蠍神と同じ様にハガネ専用機として
作られたセイスモゼノンタイプの同型機で、結局生身の人間の操縦を前提としない
超ピーキーなセッティングに扱えるパイロットが存在せず、結局ミスリルの下に流れ着き
“大砲神”の名を与えられると共にカプセル機獣化したと言う経緯がある。
ただ、砲撃の射程距離と言う意味では大龍神にさえ勝るが、それは事前に各地に分散
させた電子戦ゾイドのサポートがある事が前提である為、人出の問題でその様な真似が
出来ぬドールチームでは結構宝の持ち腐れ的な面が強かった。機動力も低いが故に
大蠍神の様に単独行動も出来ず、結局は大龍神の支援砲撃的なサポートに徹する事が
多かったのだが、それでも申し訳程度にミスリルの手によってマグネイズスピアを改造
して作られた感電では無く敵の分子結合の破壊を目的とした超高電圧ビーム砲
“簡易ドラゴンサンダー”を胴体側面に装備する事で中・近距離戦能力をカバーし、
その他頭部にスティルアーマーのスティルシールドを装備する事で弱点となりやすい
頭部を保護するなど、低予算ながらもそれなりの強化は施されてあった。
「あーっとこれはセイスモサウルスです! セイスモサウルスが現れました!
ミスリルの第二のカプセル機獣です! これは凄い! ここまで来ると反則です!」
戦場を広く見渡せる山の上で撮影に勤しんでいたはずのハーリッヒはあまりの熱狂ぶりに
実況まで始めてしまった。ぶっちゃけアナウンサーでも食えるのでは? と思える程・・・
『大砲神・・・またも唯一絶対神たる我を冒涜するか・・・。』
「そんな大げさな、ただ名前に神って付くだけなのに・・・。神様なんて八百万の神って
言う位沢山いるでしょうに。」
『その様な事は認めんな。まあ良い。ここで我が実力を示して本当の神は誰なのか
分からせれば良い事だ!』
バイオゴーストは再び大龍神へ突撃し、爪と爪のぶつかり合う空中格闘戦が始まった。
「これは凄い! チョップチョップ! チョップの連打だー!」
なおも実況を続けるハーリッヒであったが、大砲神はバイオゾンビの行く手を阻むかの
様に仁王立ちし、その大きく開かれた口を辺り一面のバイオゾンビへ向けた。

93 :神の怨霊 43 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/04(月) 22:51:49 ID:???
そして口腔部から放たれる超集束荷電粒子砲“ゼネバス砲”の一撃。地平線の彼方から
迫り来るバイオゾンビ軍団の左端から右端までを横薙ぎに放ち、直後に大爆発。まるで
爆風で一つの巨大なドームが形作られる程の物である。かつて悪魔の光と呼ばれたそれは
今度は怨霊から人々を守る希望の光となったのか・・・
「凄い! 敵の一群がまとめて吹き飛んだぁぁ!!」
ハーリッヒは大熱狂で実況を続け、大砲神はゼネバス砲に加え、全身に装備された各種
レーザー兵器を雨の様に撃ち出しバイオゾンビ軍団を蹴散らし続けていたが、その光景に
キダ藩兵士やミロード村から非難して高台から見守っていた村人達は微妙な心境だった。
「何と言う恐ろしい事だ・・・どっちが化物かわかりはしない・・・。」
「所詮毒を持って毒を制すと言う事なのだろうが・・・果たしてあんな化物に頼って
生き延びても良いのだろうか・・・。」
「ああ・・・ルージ様が・・・ルージ=ファミロン様がご健在なればあの様な化物に頼らず
とも良かったと言うのに・・・。」
だがそのような事を悔やんだ所で仕方が無い。彼の様な存在が今の時代にいない以上
生き延びる為には例え屈辱を味わったとしても、また別の化物と言える存在に
頼らなくてはならない。それが現実なのである。
「超斬鋼光輪ドラゴンスマッシャァァ!!」
大龍神の両翼の丸ノコギリから放たれる荷電粒子エネルギーの塊がバイオゴーストへ
放たれた。ギルタイプの代名詞とさえ言われるビームスマッシャーの超強化版である
それは悪霊退散の護符や呪詛の力で怨霊さえ斬り裂く事を可能にしていた。が・・・
『なんの!』
なんとバイオゴーストは自らで身体を切り離し、分断する事でドラゴンスマッシャーを
回避していた。実体として存在するのは外部の装甲部分のみで、その内部には何も無い
がらんどうであるからこそ可能な技である。今のドラゴンスマッシャーは怨霊を切断する
所か触れるだけで浄化させてしまえる力を持っているのだが、逆に言えば完全に回避され
触れられ無ければ意味は無かった。
『その様な付け焼刃で神を斬る事など出来るわけがあるまい。』
今度はバイオゴーストが己の力で分断した体の部位の一つ一つが大龍神に襲い掛かった。

94 :神の怨霊 44 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/04(月) 22:54:10 ID:???
バイオゴーストは幾千幾万の怨霊の集合体であるが故に、その各部が独立して稼動する事
も可能であった。それ故に各部のそれぞれがバイオメタル製の質量砲弾として大龍神に
襲い掛かるのである。
「キャッ! 痛い痛い!」
悪霊退散の護符や呪詛の恩恵で大龍神も防御力が上がっているとは言え、あらゆる角度
から何度も打ち付けてくるバイオメタル塊の攻撃は痛かった。しかもバイオメタル塊の中
にはクリスタルパインも含まれているのだから、TMO鋼で全身を覆う大龍神で無ければ
今頃細切れにされていたであろう。
『やはり最大の取り得は頑丈さか・・・だがな・・・。』
バイオメタル塊による連撃で怯んだ大龍神に対し、再度一つの体として再結合したバイオ
ゴーストはその巨体で大龍神の上にのしかかった。その間も護符や呪詛によってあちこち
が焼け付いていたのだが、それでもバイオゴーストは大龍神を強く抱きかかえ、己の
巨大な翼を広げて急降下を始めたのである。彼等の標的であるミロード村へ向けて・・・
『貴様のその頑丈な体そのものをムラサメライガーへぶつけてやろう・・・。』
「きゃぁぁぁ! それは勘弁して下さいよ!!」
大龍神を抱えたバイオゴーストはミロード村へ突撃して行く。しかしミスリルはそう
させない為に雇われた。大龍神の翼の出力を上げ、逆噴射をかける。
「でぇぇぇい!!」
惑星Ziの重力圏さえ振り切る事が可能な大龍神の翼の力によってバイオゴーストの
スピードは緩み、辛うじてミロード村の一歩手前に落下する事で突撃を防いでいた。
「これならどうです!? ドラゴンプレッシャァァ!!」
素早く体勢を立て直した後、大龍神は己の前脚の爪をバイオゴーストの頭部側面に押し
当てて挟み込み、そのまま潰そうとする。そこからさらに後脚を使ってムエタイの膝蹴り
を髣髴とさせる強烈な蹴りでバイオゴーストの下顎を蹴り上げた。
『ぐおぉ!?』
蹴りによって強く噛み込まれ、己の牙で上顎と下顎がぐちゃぐちゃとなると共に大きく
怯んだバイオゴーストをさらに後脚だけで立ち上がった大龍神の両前脚による強烈な
張り手が何度も叩き付けられた。

95 :神の怨霊 45 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/10(日) 22:34:30 ID:???
「今度は張り手! 張り手! 張り手の連打だー! これは横綱も狙えますよー!」
何かいつの間にかにスクープマスターがミロード村まで駆け付けて来ており、ハーリッヒ
の熱狂的な実況が行われた。しかし、ついにミロード村のすぐそこまで戦線が移行して
しまったが為に非難していた村人は大騒ぎだった。
「うわぁ! オラ達の村がぁ!」
「もっとしっかりやってくれぇ!」
ミロード村の遠くでは大砲神が孤軍奮闘してバイオゾンビの大軍を押さえてくれていたが、
大龍神とバイオゴーストと言う超規格外同士の激闘が行われればムラサメライガーの眠る
ジェネレーターどころかミロード村そのものが地図から無くなってしまう事も必至だった。
「もし本当にそんな事になったら報酬所か私の方が賠償金を払わないといけなくなるかも
しれません! その様な事は絶対にさせませんよ!」
大龍神はバイオゴーストの顔面に張り手を何発も打ち込みながら少しでもミロード村から
バイオゴーストを引き離そうとした。
『偽神の癖に唯一絶対神を嘗めるなぁ!』
「それは私と大龍神を実際に討ち破ってから言って下さいよ!」
護符と呪詛の恩恵によって怨霊にもダメージが入る張り手でバイオゴーストは大きな
ダメージを受け、後退を余儀無くされていたがその目は死んでおらず、むしろ勝利を
確信している様な・・・そんな目をしていた。
『集まれ・・・我の下僕達よ・・・我の手となり足となって偽神を討ち破ろうぞ。』
そもそもバイオゾンビそのものは、あくまでも亡者の怨霊によってゾンビとして蘇った
バイオゾイドである為、それ相応の攻撃力があれば倒す事は可能である。だがその本体の
怨霊に対して物理的な攻撃は無意味に等しい故、完全なる解決には程遠い。そして、
バイオゾンビの体は破壊されようとも、本体は健在であった怨霊達が大陸各地からバイオ
ゴーストの召集の下に集結。そのままでも強力な怨霊の塊であったバイオゴーストは
さらなる怨霊の結合による霊力を得てより強大に進化していた。

96 :神の怨霊 46 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/10(日) 22:35:26 ID:???
「えぇぇぇ!? そんなの反則ですよぉ!」
『何とでも言うがよい・・・。これだけの数の配下を束ねるこの私の強力なカリスマ。
これもまた唯一絶対神の成せる業だとは思わないか?』
「でも従ってるのはみんな悪霊じゃないですか。神どころか大魔王ですよ。
それに・・・大切なのは数では無いと私は思うのです。」
『言ったな・・・。ならば神の戦士の結束力を見るが良い・・・。』
直後バイオゴーストの右腕部の爪が3割程度巨大化し、一気に大龍神に叩き付けた。
大龍神もとっさにドラゴンクローで受け止めてはいたが、さらなる怨霊の集結によって
強化されたバイオゴーストのパワーは以前の比較にあらず、派手に吹っ飛ばされた挙句
ミロード村の民家を10棟程潰してしまっていた。
「あー! オラの家がー!」
「こらぁ! もっとしっかりやれぇ!」
非難していた高台からはその様な村人の悲痛の叫びが飛び交うが、残念ながらミスリルの
耳には届かず、結局戦闘による音とハーリッヒの実況しか聞こえる事は無かった。
「なんと言う事でしょうか! 怨霊の王はさらなるパワーアップを遂げたぁ! これでは
流石のミスリルと大龍神も大ピンチかー!?」
『さあ立て。貴様の様な神を冒涜する愚か者に唯一絶対神の戦いと言う物を見せてやる。』
バイオゴーストはゆっくりと大龍神へ歩を進めていくが、その時だった。
「それ以上はさせないのよぉぉ!!」
突如として何者かが超高空から急降下し、バイオゴーストの後頭部に叩き付けていた。
『うぉぉ!』
バイオゴーストは大きく怯み、項垂れた。いい加減くどい様だが、怨霊が本体である
彼等に物理的な攻撃は通用しない。それ故に今の大龍神の様に怨霊にも効果がある処理を
施すか、同じ霊そのものでなければダメージを与えられ無いのであるが・・・、そう、
バイオゴーストに奇襲をかけたのは幾千幾万の善霊を味方に付けて復活したティアの
ゴーストンだったのである。

97 :神の怨霊 47 ◆h/gi4ACT2A :2007/06/10(日) 22:37:21 ID:???
「ミスリル大丈夫なの!? ってキャハハハ! 何その全身にベタベタ貼られたお札!」
「余計なお世話です! って…ティアちゃん無事だったの・・・うわぁぁぁん! 無事で
良かったぁぁ!」
余程嬉しかったのだろう。場の空気を読まずに大龍神がゴーストンに掴みかかり、
物凄い速度で頬擦りしていたのだが、その隙をバイオゴーストが突かぬはずはない。
『き・・・貴様・・・まだ生きておったのかぁ・・・!?』
「いや・・・既に死んで霊になってるんだからそういうのはどうかと・・・。」
だが、幾千幾万の善霊の力を得てパワーアップしたティアとゴーストンの力は圧倒的
だった。たった一発のパンチで巨体を吹き飛ばし、本体の霊にもダメージを与える。
しかしそれだけで終わらない。パンチの勢いで空中回転したゴーストンの脚がローリング
ソバットの様な形となって追い討ちをかけ、さらに霊力によって遥かにパワーアップした
ビームランチャーの一撃がバイオゴーストの巨体を飲み込んでいた。
『おのれ・・・たかが小娘一人の霊ごときに何故神である我が・・・。』
「一人では無いのよ! おじちゃんが沢山の怨霊の塊なら・・・私も沢山の人の協力で
ここにいるのよ!」
「え? それって・・・。」
バイオゴーストが怨霊の集合体ならば今のティアとゴーストンは、人々を守る為、
平和を守る為の礎、捨石となって行った者達・・・善霊の集合体。そしてティアとゴーストン
を護るように背後にオーラとして存在する幾多の善霊達の姿がミスリルの目にも
一瞬見えたような気がした。
「あ・・・あれは・・・一体どういう事なのでしょうか・・・?」
疑問を抱えながらも実況を続けようとするハーリッヒであるが、突然覆面Xからの
通信が彼女のスクープマスターに届いた。
「ハーリッヒ君・・・君はZゴースト事件をご存知かね?」
「Zゴースト事件って言うとあの幾多の凄腕ゾイド乗り達を廃人寸前にまで追い込んだ
って言う謎の幽霊ゾイドが起こした事件の事でしょ? あれがどうしたの?」
「フッフフ・・・実はミスリル君と一緒に入るティア君こそがZゴーストの正体なのだよ。」
「あーっと! そ・・・それはひょっとしてギャグで言っているのかー!」
何か実況的な突込みを入れているハーリッヒだが、覆面Xは両手を振る。

98 :サクセサー 42:2007/06/11(月) 20:00:08 ID:???
「戦争になったほうがお前さんの会社は儲かるンじゃないのか?」
「世の中のことが分かっとらんようだな。これだからゾ・・学のない奴は困る。そうだな
・・・分かりやすく説明してやろう。例えばゾイドを作るためには大量の金属が必要に
なる。その鉱山はどこにある」
「西方大陸だな」
「そうだ。中央大陸では長年の戦争で主要な資源はあらかた採掘し尽くされ、北方大陸も
同様。世界中が西方大陸の鉱山に依存している。ところがそれらを使うゾイド工場の大半
は、東方大陸にある。原料を採った場所で製品を作るのが最も効率のいい方法だが、もと
もとゾイテックをはじめとするゾイドメーカーは東方大陸に生産拠点を持っていた上に西
方大陸が政情不安定なために設備投資するのを嫌っている。このため、わざわざ海を渡っ
て東方大陸に原料を送ってゾイドを作り、製造後に中央大陸ほか世界中に出荷しているの
が現状だ」
「なるほど、経済のグローバル化、だな」
「山賊風情にしては察しがいいな。かつての中央大陸戦争までは、自前の鉱山で掘った原
料を使って自前の工場でゾイドを作り、自分の領地を守るために戦うのが一般的だった。
まさに自給自足の世界だな。だがそういう前時代的な、生産効率の低いスタイルは今や
ナンセンス。しかしこれだけグローバル化すると、物流コストというのも馬鹿にならん。
もし戦争なんぞになってみろ。運賃は上がる、保険料も上がる、こちとら商売あがったりだ。
それが小規模かつ地域限定の紛争ならそれでもいいだろう。ヘリックとゼネバスの全面
戦争となれば話は別だ。ガイロスも状況によっては介入してくる。中央大陸だけでは話は
終わらない。各国の属領を持った西方大陸も巻き込んだ世界戦争になる」

99 :サクセサー 43:2007/06/11(月) 20:03:38 ID:???
「先刻までやってたような一地方の小競り合いで済むならこちらも利益になるから大いに
結構だが、世界規模となればどうシュミレートしても儲けにはならん」

「言いたいことはそれだけか」
「む?どうした」
 自分でもぞっとするほど冷たい声が口から流れ出る。相手も俺の態度の変化に気がつい
たようだ。
「お前は越えてはならない一線を越えた」
 俺のように世の中の底辺を生きている者には、いや最低の行き方だからこそ、必要最低限
のモラルは持っている。それを失えばもう人間以下になるという境界線。男の尊厳と言って
もいい。俺の脳裏には篭城していた連中の顔が一人一人、焼きついている。あの気のいい
連中は勝てないと分かっていながら、胸を張って戦い、死んでいった。それをこいつは損得
勘定でビジネスとして量ろうとしている。俺にはそれが我慢できなかった。
 もういい!資料なんぞくそくらえだ。このまま中の人間ごとコクピットを押し潰して、
製鉄所の溶鉱炉の中に叩きこんでやろう!それだけでは生ぬるい。二度と日の目を見ない
ようにオリンポス山の火口に放り込んでやる!
 俺はコマンドウルフの首をマーダのコクピットに向ける。バイトファングは既にエネル
ギー注入され、発光している。そのまま首を伸ばして一息に噛み砕こうとする。

100 :サクセサー 44:2007/06/11(月) 20:27:41 ID:???
「死ねいっ!」
だがその瞬間、軽い違和感をおぼえた。まるで自由落下をしているような・・・
「重力低下、0.7Gを切ってさらに増加中」
 自然条件で重力が低下するわけがない。とすれば「マグネッサーか!」
 マグネッサーの指向性をこちらに向けて、こちらの重量を減少させているのだ。
「パイルアンカー、作動」
 俺の意識を感じて、ウルフの足首に装備された緊急停止用の杭が射出される。軽い衝撃
がコクピットにも伝わる。前肢のはマーダの装甲に食い込み、後脚のは地面に固定される。
 だがこれで一安心というわけにはいかなかった。マグネッサーの影響でこちらの重量は
半分以下に抑えられているはずだ。マーダは寝転んだ姿勢で、上になっている右足を軽く
揺すり、次いでぶんと大きく振った。その右足にはコマンドウルフが刺さったままだ。
重量が低下しても質量そのものが減少しているわけではない。振られた勢いで俺のウルフ
は跳ね飛ばされたが、杭の刺さったままのマーダの右足も、根元からちぎれて飛んでいく。
 ところが、マーダはその勢いを利用して上半身を起こすと、あろうことか片足で立ち上
がり、何事もないかのように静止する。

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