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自分でバトルストーリーを書いてみようVol.26

1 :気軽な参加をお待ちしております。:2007/08/30(木) 22:41:01 ID:eZJaHmKK
「銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。 
 長い戦いの歴史を持つこの星であったが、その戦乱も終わり、
 平和な時代が訪れた。しかし、その星に住む人と、巨大なメカ生体ゾイドの
 おりなすドラマはまだまだ続く。

 平和な時代を記した物語。過去の戦争の時代を記した物語。そして未来の物語。
 そこには数々のバトルストーリーが確かに存在した。
 歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
 されど語り部達はただ語るのみ。
 故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。」

気軽な参加をお待ちしております。
尚、スレッドの運営・感想・議論などはこちらで行ないます(※次スレに移行している場合があります)。

"自分でバトルストーリーを書いてみよう"運営スレその2 

http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1161403612/l50

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ttp://www37.atwiki.jp/my-battle-story/

2 :(^^)エヘヘ:2007/08/31(金) 07:51:08 ID:???
うっさいハゲ

3 :ソラテーマパーク攻防戦 1 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/10(月) 22:45:03 ID:???
現在確認されている限りでは恐らく世界唯一の人の心を持っている女性型ロボット
“SBHI−04 ミスリル”が経営している何でも屋“ドールチーム”はまだ南方の
“マードカル諸島”にいたりするワケである。そこで既に死んで霊になってもなおドール
に憑依してこの世に留まり、現在ドールチームの一員としてミスリルに面倒見て貰って
いる幽霊少女“ティア=ロレンス”と、通常の生態系とは異なる生命体…すなわち神・
悪魔・妖怪などと言った未だ科学では解明出来ぬ存在を調査する為に遠い宇宙の彼方から
やって来たのだけど、闇雲に探し回るよりミスリルと行動を共にした方がそう言った存在
と遭遇しやすいと判断してドールチーム入りした異星人の少女“スノー=ナットウ”と
共にマードカル諸島の中でも観光産業の盛んな“ペンギーン島”の浜辺でバカンスを
楽しんでいた。ちなみに機械人形のミスリルと呪い人形のティアでドールチームと言う
のは分かるが、異星人とは言え生身のスノーがいるのは矛盾しないか? と思う者も
いるかもしれないが、彼女は人形の様に整った顔をしているので問題は無い。

「ナットウさんは泳がないんですか〜?」
「せっかくの海水浴日和なのよ〜。」
「別に良い…。」
ペンギーン島は地球で言う所のハワイ島の位置付けで一年中暖かい上に海も綺麗な為、
海水浴には持ってこいの地域であり、いつも観光客が耐えなかった。無論ミスリル達も
バカンスに来たのであるからその海で泳ごうと言うのだが、顔以外は見て分かるくらい
ロボットなミスリルと、ドールたるティアの水着姿と言うのはまっとうな人間にとって
異様な物に見えたに違いない。まあ特殊な性癖を持っている奴は別であろうが…。
そしてスノーも一応水着は着ているが、全く泳ごうとせず、用意したパラソルの
作る日陰の中で読書に勤しんでいた。
「あんなに夢中になって読むなんて…私の貸した本がよっぽど気に入ったんですね。」
「…。」

4 :ソラテーマパーク攻防戦 2 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/10(月) 22:45:59 ID:???
ミスリルが心の底から尊敬している数少ない人間の一人に“シーゲル=ミズーキ”と言う
男がいる。彼は妖怪研究の世界的権威であり、同時に超大物の漫画家でもある。そして
彼が出した“世界妖怪大図鑑(鋼獣書房刊)”をはじめとして様々な書籍や漫画をミスリル
は持っていたのだが、元々そういうのを調査する事が目的でここに来たスノーにとって
とても興味深い物であるに違いない。普段から感情の起伏が殆ど無い無口無表情で何を
考えているのかミスリルとしてもさっぱりな彼女だが、今は相変わらずの無口無表情の
奥に隠された喜びと言う物が何となく分かってしまうような…そんな雰囲気をしていた。

三人はバカンスを満喫しつつ海の家で何故か無駄に高い焼きトウモロコシを食べていた。
「あのさあのさ、明日はソラテーマパークで遊ぼうと思うのです。」
「あー! 私もそれ行きたかったのよ! 生きてた頃は病弱で病院から一歩も外に
出られなかったから…TVや本でしか見た事が無かったのよ。」
「…。」
スノーは無口無表情で焼きトウモロコシを口に運んでいたが、とりあえず頷いてはいた。

かつてこの惑星に栄えていたとされる先史文明を滅ぼした“神々の怒り”と呼ばれる
大災害の際、生き残った一部の人々は“ソラシティー”と呼ばれる空中都市に移り住んだ。
今は亡きディガルド武国と言う軍事国家が猛威を振るっていた大陸の上空に聳えていた物
がまさにそれであるが、ソラシティーは何もその大陸にある物一つでは無い。世界全体で
見ればソラシティーは実に沢山あったのである。その中にはなおもソラシティーとして
存続している物もあれば、逆に戦災で破壊されてしまった物もある。また地上の自然環境
が再生された事を確認するなり早い段階で地上に降りて解体された物、民間に払い下げ
られて空中ホテルとして再利用された物、軍に接収されて空中要塞化された物など様々な
物があったが、ミスリルの言う“ソラテーマパーク”とは、その名の通りテーマパーク
として改造されたソラシティーであり、空中遊園地として毎日多くの人々で賑わっていた。
そしてミスリルの提案で、明日はそのソラテーマパークでパーッと遊ぼうと言う事に
なっていたのである。しかし…

5 :ソラテーマパーク攻防戦 3 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/10(月) 22:48:35 ID:???
翌日、宿の食堂でソラテーマパークのどんな遊戯施設で遊ぶかなどの計画を練りつつ
3人は食事をしていたのだが、そんな時だった。
「大変だー! ソラテーマパークがいきなりテロリストに占拠されてしまったぞ!」
「な…なんだってぇぇ!?」
他にもソラテーマパークに行こうと考えていたグループは沢山いたらしく、突然の
異常事態に食堂中が大騒ぎとなった。無論それにはミスリルだって慌てる。
「ちょっとソラテーマパークがテロリストに占拠されるってどう言う事ですか!?」
「そんなもん俺が言った通りだよ! とにかくテレビ見ろ! 今中継やってる!」
そしてドールチーム含め、他のソラテーマパークで遊ぶ予定だったグループが
食事も忘れて一斉にTVの前に集結するのだが、確かにニュースで丁度ソラテーマパーク
テロ事件の中継をやっていた。
『本日未明、突如として“蝙蝠の爪”と名乗るテロリストグループによってソラテーマ
パークが占拠されてしまいました。開園前で一般客の被害はゼロですが、パーク内で
働いている従業員数千名の安否が気遣われております。』
「うわぁぁぁ! マジでやってんのかよぉぉ!」
『あ! 見てください! マードカル諸島連合空軍です! 蝙蝠の爪と名乗るテロリスト
グループからソラテーマパークを奪還する為に動き出しました!』
マードカル諸島は、各小島国の連合によって成り立っている。無論それは軍も同様であり、
連合空軍が主力として正式採用してるバスターイーグルからバスターキャノンを外し、
その他様々な部品をオミット、簡易化する事で機体を大幅に軽量化させ、ノーマル機と
同出力のままでも格段に飛行能力を高める事に成功した“イージーイーグル”が
ソラテーマパーク奪還の為に多数出撃していたのだが、ソラテーマパークも民間に
払い下げられて遊園地に改造されてしまったとは言え、その防衛システムは機能している
らしく多数の無人ザバットが迎撃し、ソラテーマパークそのものも強力なバリアシステム
によって防御されて連合空軍は苦戦を強いられていた。

6 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/11(火) 09:59:41 ID:???
「そ…そろそろやめないか?痛くて敵わないのだが…?」
すりすりと鼻を寄せる竜に女は頼む。数十分もの間この状態が続いた所為だろうか?
女の体には小さな痣が幾つかできてしまっている。
それを竜は見付けると…ずざざざざ!と言う効果音が付きそうな勢いで女から離れ、
すまなさそうにキュウキュウ泣く。
「まあまあ…落ち着け!落ち着け!この程度では人間は死にはしないから。
とにかく…飛べるか?」
その声に竜は首を縦に振り答える。
「女の名はシープ(仮名)本名はフィオリア・リーほがぁ!?」
「ええい!何をカメラ目線で状況を危なげな方向に解説しているっ!
だれも見ちゃいないだろうが!」
「嘘だ…蹴りの射程距離からは離れていたはず…しまったあ!その手があったか!
きてはぁ!?」
必殺ロケットブーツ(仮称)の炸裂した瞬間である。
その後シープは兄と一言も話すことなくブーツを回収し竜の頭部へ飛び乗る。
竜の名はフェ・デ・リュミエール。典型的な語呂重視な名前を持つギルタイプゾイド。
明らかに隠蔽性を考慮していない白の装甲のエッジにパールピンクの意匠の縁取り…
そのコントラストがレースをあしらった戦装束を着た様に見える。
そしてその名を語るに相応しい四枚の光の翼を広げるとゆっくりと大地から離れ…
巨大な光の輪を生み出しかと思うとあっと言う間に音もなく高空へ舞い上がっていった。

「さて…こっちも動かないとね…。出番だよ。」
デスティンの声に答え隠蔽施設の中からエレベーターに乗ってまた竜が姿を現す。
ヴィンケル・ダス・ブリッツ。此方はドイツ語の稲妻の角の意味である。
はっきり言って形容し難い形状の巨大な角を持ったギルタイプゾイド。
件のフェ・デ・リュミエールの親から生まれたギルタイプであり件の兄に当たる存在。
これも珍しく男性のペルソナしか存在しない純粋に戦闘用の存在とも言える。
妹との違いは角の形状と現在のサイズや光の翼の展開時の形状。
何より額に長大なサンダーホーンを持っていたり胸部に超電磁ビーム砲が在ったり、
漢気溢れた装備が自慢?である。
双方本来のギルタイプと比べると装備がランクダウン甚だしいが、
実は全く同じ装備にすると世界を七日で滅ぼしかねないと言う配慮からだそうだ…。

7 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/11(火) 10:03:20 ID:???
一方その頃俺達はと言うと…果てしなき逃走を余儀なくされていた。
「ぎゃあああああああ!?まだおってくるうううううぅぅぅぅ!!!」
「いいかげんにしてよねええええええええええええ!!!」
非常に情けない悲鳴を上げながら俺と赤熊は森を直走る。

何でそんな事をしているかって?当然の話だ。
この状態の数分前までに居た場所はここ等周辺の水質汚染を洗浄している場所。
そんな所でこの車付き爆弾の群れを爆破させればこの大陸の南側は大変な事になる。
ついでに言えばそんな狭い場所でこいつ等が爆発したら当然…
…俺たちも木っ端みじんこのミトコンドリアだ。
どうも極限状態の所為か?脳内のギャグが薄ら寒いにも程があるが勘弁して欲しい。
それだけの危機に見舞われているということだ。正直助かるかどうか不安だ。

「川を飛び越えたら追ってこないかしら?」
赤熊がそんな事を言う。あまり当てにはできないがやらないよりはまし。
「よし!飛んでみるか!ビー介!ジャンプだ!」
赤熊のレッドマンドリルとビー介は勢いよく川をジャンプで飛び越え対岸に着地。
また逃げ出す。結果なんてものは立ち止まって見る必要は無い。
成功なら何も追ってこないし失敗ならついてくるから結果はその内解るってものだ。
しばらくすると…後を追ってこない訳だが。
とりあえずは撒いたのだろうか?撒いたらしい…。
だがこの行動は別のゾイド乗り達に余計な迷惑をかける原因となってしまう。
しかしそんな事はその時の俺達には知るよしも無いのは当然と言えば当然。
後で確りお叱りは受けるが不可抗力だ。決して俺達は悪くないと思う…。

ー 別所 デッドリーコング&バンブリアンVS巨大バイオライガー ー

「何事でござるかっ!?」
「ちょっ!?自走型ホーミングボム!?」
「なんだこりゃあああああああああ!」
ロンとガラガと謎の侍。ホーミングボムの矛先は彼等に向かってしまっていた。
辛うじてバンブーミサイルで機先を制する事ができたらしく盛大な火柱が上がる。

8 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/12(水) 07:55:44 ID:???
また別所で火柱が上がる…その状況を見て俺と赤熊は思う。
”やってしまった”と。周囲に存在する凡ゆる動くものが敵として認識されるのであろう。
無差別攻撃用の装備。古今東西この星では敵と味方。
二つしかないと言う考え方が根付いている。それを極端に示すのがあの車爆弾。
普通に考えれば動態識別やら熱感知、エネルギーレベル等で目標を判別できる。
それをして無差別攻撃を指示できるのであるから相当ホワイトオアブラックな思考。
この世の存在を二分したくてたまらない奴が奴等を動かしているんだろう。
吐き気のする思考だ。この時程他人の思考を強烈に否定したくなった事は無い。
普通の自分勝手は自分の目に入る範囲程度でしかえり好みをしない。
だが今のザバットを遣した奴は自分の得に繋がらないものを全て否定しているのだ。
「どうせ…飛んでいったあいつ等を全部叩き落とせたとしても?
また何かやってくるんだろうなぁ。ふぅ…。」
「そうね。ねちっこそうよ。ネチネチネチョネチョの不定形物質みたいな感じね。」
赤熊の同意は結構だがあんたもかなり粘っこい。俺はそう思った。

「離陸しようとした矢先にホーミングボム。全くもう!ギルタイプじゃなきゃ…
木っ端みじんこのミトコンドリアだったね。」
デスティンはロウフェンと同じレベルのギャグをさらりと口に出して言う。
「そうそう…こいつの名前。実はちょっと本来の意味では無いことは秘密。
角とツノを掛けているんだよね…っとネタはこれぐらいにしようか。」
ブリッツのサンダーホーンが白熱しプラズマが迸る。
「プラズマブレス。」
コントロールバーも握らずデスティンはつまらなそうに呟く。
その声を聞きブリッツは一度大きく息を吸うと、
サンダーホーンに蓄積させたプラズマを前方に解放し一気に吐き出す息で吹き飛ばす。
それで終わりだ。ホーミングボム周辺で一度プラズマが弾ければ、
それに釣られてホーミングボムは爆発。それは更に連鎖反応を起こし…
後続のホーミングボムを巻き込み順次爆発していく。
夜を一層明るく染め上げて登場した巨体は王者の風格と威厳を示すもの。
装甲形状こそ通常のギルタイプと変わらないがその全てがリーオ製のスタンブレード。
こんな事はまず気付かないだろう。接近する事さえ困難なのだから。

9 :ソラテーマパーク攻防戦 4 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/14(金) 00:10:57 ID:???
「うわぁ! 連合空軍弱いです!」
「もっと頑張ってくれよ! 今日俺達もソラテーマパーク行きたかったのに!」
ミスリルやその他ソラテーマパークに行く予定だったグループは口々にそう野次を
飛ばしていたが、TVの向こう側に届くはずもなく、仮に届いた所で何にもなるまい。
結局戦況はテロリスト側有利で進んでいた。

「あ〜あ〜結局ソラテーマパークで遊ぶのは無しなのね〜…。」
会計を済ませて宿を出た三人であったが、なおもソラテーマパークはテロリストに
占拠されたままらしく、ミスリルとティアの顔は暗かった。ちなみにスノーは
相変わらず無表情なので良く分からない。そして3人は失意のまま浜辺からソラテーマ
パークがある方角の海を眺めていた。
「それにしても…何でよりにもよってソラテーマパークがテロリストに狙われるのよ。
しかも開園前で一般客がいない時になんて…ワケが分からないのよ…。」
「そうか! 分かりましたよ! きっとテロリストはソラテーマパークを独占して
沢山遊びたいんですよ!」
「いや、それは無いと思うのよ。」
「いえ! そうに決まってます!」
楽しみにしていたソラテーマパークで遊ぶ予定が台無しにされた怒りか、ミスリルは
冷静さを失ってそんなとんでもない事を言っていた。
「ようし! ならば今直ぐソラテーマパークに突撃して私達も遊びましょう!」
「えええ!?」
確かにソラテーマパークで遊べなくなった悲しみはティアも同様であったが、ミスリルに
比べればまだ冷静な方だ。その為にミスリルの提案に唖然としてしまった。
「さあティアちゃん! ナットウさん! 出撃ですよ! テロリストどもをソラテーマ
パークから叩き出して遊ぶのです! 矢でも鉄砲でも持ってきなさい!」
「ちょっとミスリル落ち着くのよ! スノーからも何とか言ってよ!」
「今日のミスリルは…ちょっとユニーク…。」
「うわぁぁぁん! 二人ともおかしくなっちゃったのよぉぉ!」

10 :ソラテーマパーク攻防戦 5 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/14(金) 00:13:45 ID:???
ティアはついに泣き出してしまったが、だからと言ってこうなったミスリルは誰にも
止められない。そしてティアとスノーを引っ張ってそれぞれのゾイドを停めている場所
まで超高速で駆け出したのであった。
「さぁ行きますよぉ! 今に見ていなさいテロリストども全滅ですよぉぉ!」
「もう勝手にしてなのよ…。」
「やっぱり彼女は面白い…。」
駐機獣場までやって来たミスリルはティアとスノーをそれぞれのゾイドまで放り投げた後、
彼女の剣となり盾となり脚となる特機型ギルドラゴン“大龍神”に乗り込み、ティアも
仕方なくジェットファルコン“ファントマー”へ、そしてスノーもハンマーヘッド
“エアット”に搭乗して発進する事となった。
「弱い空軍には頼ってられません! 私達の手でソラテーマパークを取り戻すのです!」
「はぁ…分かったのよ…。」
ミスリルは興味無い物には無頓着だが、逆に興味を持った物に関しては例えタダ働きに
なるような事であろうとも自分から首を突っ込みたがる。丁度今の状態がそれだった
のだが、とにかくドールチームはソラテーマパークまで猛スピードで飛んだ。

マードカル諸島の南の空に浮かぶソラテーマパーク。そこでテロリストに掌握された
ソラテーマパークの防衛システムとマードカル諸島連合空軍の戦闘が繰り広げられていた。
しかし戦況はミスリル達が宿で見た時とそう変わらず、連合空軍側が劣勢であった。
決してマードカル諸島連合空軍は弱くない。元々航空技術の発達したマードカル諸島の
空軍であるし、彼等の主力であるイージーイーグルは軽量なボディーと大型かつ強力な
マグネッサーウィングの組み合わせによりノーマルのバスターイーグルに比べて格段の
空戦能力を手にし、最高速度はマッハ2.5にまで上がっている。パイロットだって
良く訓練されているのだが、ソラテーマパークの防衛システムも強い。

11 :ソラテーマパーク攻防戦 6 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/14(金) 00:15:54 ID:???
主戦力として配備されている無人ザバットはホーミングボムを外す代わりにコンパクトに
して強力なホーミングマイクロミサイルを多数装備する事で機動性を落とさずに対空
戦闘力を強化してあるし、無人機であるが故に死を恐れない突撃が可能な為、本来の
性能以上の戦闘力を発揮出来る。それがまた何百機とソラテーマパーク内に配備されて
いるし、挙句の果てにはソラテーマパーク全周囲を覆う強力なバリアシステムは
ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない。まさに連合空軍の苦戦は目に見える程の
巨大空中要塞なのである。

「友軍の消耗率90%突破!」
「み…味方は一体どれだけ残っている!?」
「クロス=サーヴァー少佐の機体のみです! 他は全部撃墜されました!」
「な…なんと…。」
ソラテーマパークから離れた空域に待機していたホエールキング級マードカル連合空軍
航空母艦“ビグマッコウ”ブリッジ内で艦長とオペレーターが劣勢に唖然としていた。
前線ではマードカル連合空軍のエース“クロス=サーヴァー少佐”が搭乗するイージー
イーグルが獅子奮迅にして孤軍奮闘の活躍を見せていたが、敵の数は圧倒的で苦戦を
強いられていた。そしてついに無人ザバットが10機程ビグマッコウにまで接近して
来たのである。
「敵機接近!」
「回避行動を取りつつ迎撃!」
ビグマッコウは方向転換しつつ対空機銃を撃ちまくるが、パイロットの負担を考慮する
必要が無い為に有人機では不可能な機動が可能であり、またそれを制御するAIも
高性能であった無人ザバットは次々にかわしていく。続けて無人ザバットのビーム砲や
ミサイルが次々にビグマッコウに直撃していくワケである。飛行ゾイドの護衛を受けない
艦程、敵飛行ゾイドにとって脆い物は無い。まさに絶体絶命のピンチ。しかし…
「艦長! マードカル諸島側からアンノウンが3機、音速の3倍以上の速度でこちらに
接近中です!」
「何!? 音速の3倍以上だと!? 我が軍の機では無いのか!?」

12 :ソラテーマパーク攻防戦 7 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/14(金) 00:17:54 ID:???
突然の事態にビグマッコウ艦長とオペーレーターは焦った。ただでさえテロリストに
掌握されたソラテーマーパーク防衛システムの相手だけでも苦しいと言うのに
さらにアンノウンの出現。これで焦らない奴はいないだろう。
「きっ機体は白いギルタイプ! ジェットファルコン! ハンマーヘッドです!」
「最初の2機はともかく音速の3倍出せるハンマーヘッドって何だよ!?」
勿論そのアンノウン3機の正体はドールチームの大龍神・ファントマー・エアット
なのだが、やはりカタログスペック上では精々マッハ1が限度のハンマーヘッドの中で
あって、エアットの異常な性能を驚かれても無理は無いだろう。そしてこれら3機は
海面スレスレの超低空をマッハ3以上の速度で飛び、衝撃波で海面を抉りながら
ソラテーマパーク目掛けて接近していた。
「うぉ! あの海面スレスレを音速の3倍って…正気か!? ってそんな事言ってる
場合じゃない! そこの3機! お前達は何者だ!? 所属と階級を述べよ!
事と場合によっては君等も敵と判断して攻撃するが…。」
ビグマッコウの艦長はそう通信を送り、それから間を置いてミスリルの返答が帰って来る。
「私達は何でも屋ドールチームです!」
「はぁ!? 何でも屋が何の用だ!? 民間人は引っ込んでろ!」
「あんなテロリストも鎮圧できないザコのくせに何を偉そうな事言っていますか!
貴方達が不甲斐ないから私達がソラテーマパークで遊べないじゃありませんか!」
「な!」
ミスリルにそう怒鳴られたビグマッコウ艦長は絶句するしか無かった。突然介入して来た
第三者に怒鳴られる事もそうだが、敵を鎮圧出来ない事実を突っ込まれたのも痛かった。
「あいつ等は私達が倒します! そしてソラテーマパークで遊ぶのです!」
「あっ! こら!」
ビグマッコウ艦長が呼び止めようとしてもミスリル達は止まらない。と言うか彼等の実力
で単機で戦局を覆し得る力を持つドールチームをどうこう出来るはずが無かろう。

13 :ソラテーマパーク攻防戦 8 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/18(火) 23:54:51 ID:???
「それぇ! 行きますよぉ!」
「もうどうにでもなれなのよ〜!」
「肝心な時に国家権力が役に立たないのはどこの星でも一緒か…。」
ミスリルの掛け声によって大龍神・ファントマー・エアットの3機が海面を抉りながら
音速の3倍を維持したまま急上昇。一気にソラテーマパークへ突っ込むが、そこを護衛
する無人ザバット軍団のAIが気付かないはずがない。すぐさまに3機はロックオンされ
多数のマイクロミサイルの雨がお見舞いされた。
「うわぁ! ミサイル来たぁぁ! 怖い!」
長い尾を引きながら接近する何十と言うマイクロミサイルにミスリルも悲鳴を上げるが、
それがまるで嘘の様に3機は鮮やかなバレルロールでミサイルの雨をかわしまくった。
「ま…まるで板○サーカスの様な機動でミサイル全弾回避してます!」
「な…何て連中だ…。と言う以前にあんな無茶な機動に耐えられるのか…。」
事を見守っていたビグマッコウ艦長とオペレーターも唖然とするしか無かった。
ロックオンされたミサイルは標的に向けて追尾してくるのだから、その回避は至難の技。
そう簡単に可能な事では無い。その為のECMやチャフディスペンサーなのだが
3機は単純に機動性だけで何十と言うミサイルを回避しているのである。
「ちょ…ちょっと待て! 何だお前等!」
これには最前線で唯一健在だったマードカル連合空軍エース、クロス=サーヴァー少佐も
慌てた。突然第三者が介入して来るのもそうだが、特に有人機では普通有り得ない程の
機動をやってのけていると言う点に突っ込まないはずは無い。この機動、並のパイロット
ならばGで失神、下手をすれば死亡さえしかねない程の物であったが、ドールチームの
3人は普通では無いのだから一般常識は当てはまら無いのである。
「うわぁぁぁ! 怖い怖い怖い怖いぃぃぃぃ!」
「助けてなのよー!」
「あんだけ全弾鮮やかに回避しときながら…何か冷めるよな〜…。」

14 :ソラテーマパーク攻防戦 9 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/18(火) 23:56:24 ID:???
おひねりが飛んで来ても可笑しくない程の超アクロバットでミサイルを次々に回避して
行く中、それとは正反対に響き渡るミスリルとティアの悲鳴に皆唖然とするしか無い
のだが、ドールチームはテロリストを倒す為に来たのである。何時までも逃げ続ける
ワケにはいかない。
「今度は私達の番ですよぉ! ドラゴンミサイル! シュート!」
大龍神の全身の装甲が開き、そこから現れたドラゴンミサイルが長い尾を引いて無人
ザバット軍団へと吸い込まれて行った。この攻撃で数十機もの無人ザバットが撃墜される
ワケであるが、これでも本命のソラテーマパーク本体に被害を与えない様に手加減して
いる方である。と、そこでスノーの方からミスリルに口を開いて来た。
「後は私が何とかする。貴女達はあの中に突入して中の敵を一掃して。」
「え!? ナットウさん一人で大丈夫…ですよねやっぱり…。」
スノー=ナットウ。彼女はミスリルとしても得体の知れない所があるし、彼女のエアット
もまたミスリルでも理解し難い技術が多数使用されているらしく、下手をすれば大龍神
さえ上回りかねない力を秘めている。そしてスノーはやると言ったらやる人でもある。
「分かりました! ここはナットウさんに任せます! では行きますよティアちゃん!」
「頑張ってなのよー!」
無人ザバット軍団の相手はスノー&エアットに任せ、大龍神とファントマーは全速力で
無人ザバット軍団の包囲網を突破。ソラテーマパークへと突っ込んだ。
「こら! 不用意に突っ込むな! ソラテーマパークには強力なバリアシステムが…。」
「そんなの分かってますよ! まあ見ていなさい!」
ファントマーは大龍神の背後に付き、そして大龍神の両翼と背のビームスマッシャー用の
丸ノコギリが青い光を発しながら高速回転。そこから生み出されるエネルギーが大龍神の
全身を覆い、大龍神は青き光の龍と化した。
「行きますよ! 必殺ブルーライトドラゴン!」
全身に高エネルギーを纏い、青き輝く龍と化して突っ込む。これが大龍神の攻防一体の
必殺技“ブルーライトドラゴン”であり、ソラテーマパークの強靭なバリアシステムさえ
簡単に突破し、さらに無人ザバット発進口から内部への侵入を成功させていた。

15 :ソラテーマパーク攻防戦 10 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/18(火) 23:58:52 ID:???
「白いギルタイプがソラテーマパークのバリアシステムを突破! ジェットファルコン
共々に内部へ侵入しました!」
「くそっ! 何てバケモノどもだ! しかしもうこうなってしまっては奴等にテロリスト
の相手を任せる他無いではないか! マードカル諸島連合空軍のメンツは丸潰れだ!」
ビグマッコウ艦長は怒りと悔しさの余り座っていた椅子を殴り付けた。自分達が苦戦する
テロリスト達を突然現れた第三者にコケにされるのだから、マードカル連合空軍の誇りも
クソも無くなるのだろう。

大龍神がバリアシステムを易々突破し、ソラテーマパーク内部に侵入した事実は連合空軍
のみならず、ソラテーマパークのコントロールルームから防衛システムを制御していた
テロリストグループ“蝙蝠の爪”のメンバー達も浮き足立たせていた。
「何だと!? 内部に侵入された!? そんな馬鹿な! ソラテーマパークのバリア
システムの防御力は鉄壁のはずだ!」
「それを強引に突破する奴が現れたんですよ!」
「何!? マードカル連合空軍にそんな強力な力を持ったゾイドは配備されていない
はずだが…。何かの間違いでは無いのか?」
「それは私達にも分かりません。しかし突破されたのは事実なんです!」
と、コントロールルームではテロリスト達が大騒ぎとなっていたが、その中にあって
一人笑みを浮かべる者がいた。
「マードカル連合空軍ごときなら我等が掌握した無尽ザバットで十分であったが…
これは嬉しい誤算だ。よし! バルバー=ラザラク! これより出撃するぞ!」
“バルバ=ラザラク”と名乗る、長髪に目が隠れてしまって前が見えにくそうな感じの
美形の男がなにやら嬉しそうに格納庫の方へ走り出した。
「ふっふっふっ! これだ! やはりこうでなくてはな!」
このバルバーと言う男、テロリストの中にあってもゾイド乗りらしく、強い敵の出現に
胸を沸かせていた。

16 :インストラクション・コード[放狼記]:2007/09/19(水) 21:48:16 ID:???
「ゾイドを、ゾイドバトルで破壊して欲しい?」
 予想外の話の内容に、俺は飲みかけの冷茶を吹きそうになった。

 ここは北エウロペ大陸北部、ミネヴェアの町。中央大陸との海上貿易の要衝として韻宸
を極めている。
 ちなみに、へリック共和国のロブ基地からは十キロほどしか離れていない。
 ロブ港は軍用施設だから、民間船舶はミネヴェアを含めた周辺の一般港を利用する。ニ
クスとデルポイを結ぶ航海ルートはトライアングルダラスの影響で大きく迂回しながら
エウロペ北岸を横切るルートを取る。自然、エウロペ北岸の港を利用することになる。
また、ロブ基地にいる軍人やその家族は、ミネヴェアの街で買い物や飲食やさまざまな
娯楽を得るためにやって来て、金を落としていく。
 俺達がいる店もその一つで、もとは古い倉庫だったのを改造して、ニクス風焼肉の本場
の味を提供する店として賑わっている。
 俺達の周囲は木の板で仕切られているだけで防音設備など皆無だが、周囲のブースから
肉を焼くジュウジュウという音と、焼ける音に負けじと大声で会話する声が重なり合って、
やかましい事この上ない。皆が自分達の会話と食事に夢中で、俺達の会話も、隣の連中に
は何を話しているか聞き取ることはできまい。

17 :インストラクション・コード 2:2007/09/19(水) 21:53:07 ID:???
 椅子は4つ。俺の隣にはマッチメーカーのハキム。向かいにはこの街のゾイドバトル組合
の組合長と、その秘書である二十代の男性が座っている。
「そうです。我々も困っておりましてな」
 向かいに座るゾイドバトル組合長は、でっぷり肥えたその顔や体から汗を流しつつ、
だらだらと説明を始めた。それを要約すると、こうだ。

 最近、この町のゾイドバトルで急に頭角をあらわしたファイターがいる。ヘタノヨコズキ
の典型みたいな奴で、新人選手の踏み台に使われるほどの弱小選手だったのに、ある時
から連勝街道を突っ走るようになった。最初は周囲も、彼もようやく積んだ経験を活かす
術を身につけたか、と考えていたが、事実はそんな甘いもんじゃなかった。
 実はその頃、ゾイドバトル組合は治安局と合同で、ある闇業者の摘発にあたっていた。
というのは、その闇業者が「装着するだけで強くなる魔法の箱」を売り込んで、だまされ
て買った馬鹿が治安局に通報したのが事の発端である。実験中のAIという触れ込みで、
治安局が幾つかのゾイドで実験してみた結果では、特に性能の向上は認められなかった。
 別件で闇業者を逮捕して残りの在庫も押収して再調査したが、結果は同じだった。
ただし、唯一、性能向上が認められたのが、あの連戦連勝の元弱小ファイターも乗って
いるゾイドだ。ディバイソンである。そして、闇業者がセールストークで「あのゾイド
にも使われている」と言っていたことから、既に口コミで「AIをつけるだけで強くな
れる」という噂が広まってしまっていた。本人も思いもよらないうちに、生きた広告塔
になってしまってたわけだ。

18 :インストラクション・コード 3:2007/09/19(水) 21:56:12 ID:???
 ゾイドバトルはファイター同士が技を競い合うから面白い。ファイターの技量とは関係
なく勝敗が決まるようになれば、ゾイドバトルの魅力は薄くなり、必然的に衰退の道を
辿ることになる。
 だが、ゾイドのプログラムを縛る法令がない。ゾイドは人間が操縦するものだという考え
が一般的だ。操縦者に対する法はある。ゾイドに関するスペックや武装といったハードに
関する法令もあるが、ソフトに関する規制はないのだ。使うな、と言うわけにはいかなか
った。
 件のゾイドはバトルのたびにレベルアップしており、既にチャンピオンですら勝てるか
どうか分からなくなっている、という。
「そこで貴方に、件のゾイドをAIごと破壊していただきたいのです」
 ただ勝つだけでは駄目だ。公衆の面前で完膚なきまでに叩きのめし、「何だ大したこと
なかったな」と周囲に思わせれば、今後は真似する馬鹿も出なくなるだろう・・・


19 :最貧師団列伝1−1 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/19(水) 23:31:36 ID:???
題して「最貧師団列伝」

第307警備師団は警備の名がつくことから分かるように二線級の師団である。
だが、その中核要員はヘリック共和国陸軍において最精鋭として知られる第7機甲師団の人員からなっていた。

第7機甲師団の戦歴は長く、その名は中央大陸戦争の頃から共和国陸軍の基幹打撃戦力の一つに数えられていたほどである。
今次大戦においても早くから西方大陸に出動し、開戦からの泥沼の撤退、奇跡のような反撃
そして暗黒大陸への侵攻作戦にも従事していた。

平時における最大戦力単位である師団は出動する際にその全ての人員を移動させることは無い。
通常は損耗を回復させる為の訓練部隊や事務処理部門の一部を駐屯地に残留させることになる。
第307警備師団はそれらの留守部隊を基幹として新編成された師団であった。
その任務は第7機甲師団が駐留していたクック湾周辺の警備である。

これは同時期に編制された3百桁のナンバーをもつ警備師団も同じであった。
警備師団は母体である常設各師団が出動した後の戦力の空白を埋める為に共和国のあちこちに編制されていった。
もっともこれは平時において師団編制の中にある訓練部隊を中央で一括して運用することにより効率を向上させる為でもあった。
そのため第307警備師団に限らず、多くの師団所属訓練部隊は最上級生のみを師団に配置させた後に
中央軍管区直属の訓練部隊に配置換えされている。

このような事情から留守部隊から編成された警備師団は、師団の名にもかかわらずその戦力は低く、
旅団どころか正規一個連隊にも満たない戦力の警備師団も多かった。
第307警備師団に所属する戦闘部隊はゾイド化機甲大隊一個、歩兵大隊二個に過ぎず、
支援部隊を砲兵を完全に欠いていた。
通常ゾイド化された師団はゾイド一千機、師団兵員二万人を保有するが、警備師団の戦力はその十分の一
いや大規模戦闘に欠かせない砲兵が存在しないことからそれ以下の戦力であると認定されていた。

20 :最貧師団列伝1−1 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/19(水) 23:33:22 ID:???
当然これだけの戦力で常設師団が守備していた範囲をカバーできるはずも無く、穴だらけの警戒網を形成するので精一杯であった。
だが共和国軍参謀本部は当初から警備師団に治安の維持程度しか期待してはいなかった。
暗黒大陸から中央大陸にいたる最短侵攻ルートであるダラス海が
強電磁波地帯トライアングルダラスとして突破不能な海域となっていたからだ。
これにより中央大陸への侵攻ルートは西方大陸を経由したものに限られる。
よって西方大陸に軍を全開出動させたとしても、西方大陸、そして北方大陸でガイロス帝国軍を押さえ込んでおけば中央大陸は安全である

はずであった。

だが安全であったはずのトライアングルダラスを越えたルートを渡ってきたネオガイロス帝国によってこのような常識は打ち砕かれた。
参謀本部や警備師団の思惑とは異なり、第二線級の戦力でしかなかった警備師団は戦闘の矢面に立たされたのである。
時にZAC2101年11月、各地に分散配置された警備師団の多くは圧倒的不利な状況下で戦力をすり減らしていった。

第307警備師団はその中でももっとも不運な例であった。

21 :ソラテーマパーク攻防戦 11 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/20(木) 23:26:06 ID:???
大龍神とファントマーがバリアシステムを突破して内部へ侵入したとは言え、外部では
多数の無人ザバット軍団が健在である。それを外部に残ったスノー&エアットが相手を
しなくてはならないと言う状況であったのだが、これが中々強いのなんのって。
四方八方から飛んでくるマイクロミサイルを素早いバレルロールでかわしつつ、主翼の
二連ビーム砲で迎撃して行く。マイクロミサイルの性能だって決して悪くは無いが、
スノー&エアットはそれ以上に強いのである。全くあれだけバレルロールしまくって
目を回さないのが不思議な程である。
「ちょっと待て待てぇ! いきなり出て来てお前は一体何なんだぁ!」
最前線において唯一健在だったイージーイーグルがエアットに接近して来た。
そのコックピットに乗るナイスミドルなヒゲ男こそマードカル連合空軍のエース、
“クロス=サーヴァー少佐”なのである。
「何なんだお前は! 関係無い奴はすっこんでろ!」
「関係無くは無い。私達は今日ソラテーマパークで遊ぶ予定だった。」
「だからここに飛んで来たってか!? 冗談じゃない! そういうのは軍人に任せろ!」
「でも貴方達は弱すぎて何時まで経っても奪還出来る雰囲気では無かった。」
「う…。」
クロス少佐は痛い所を突かれて反論が出来なかった。現にクロス少佐機を除くイージー
イーグルは全機撃墜。どう考えても連合空軍側が劣勢なのである。
「だから私達が代わりに彼等を叩き潰す。反論は?」
「くそっ! やりたければやれば良いだろ! ただし我々の邪魔はするなよ!」
「そう…。」
とりあえず成り行きとは言え共同戦線が決まった。そしてエアットはバレルロールで
マイクロミサイルの雨をかわしつつ、お返しのビーム砲やマニューバミサイルで
無人ザバットを次々に撃墜して行く。ノーマルのハンマーヘッドとは比べ物にならない
程にまで強化されたエアットであるが、それを手足の様に操るスノーも強い。それでも
敵機の数は多いのだから直撃を食らう時もあったが、ミスリル&大龍神のTMO鋼さえ
上回るとされる外宇宙金属“スペースアダマンタイト”の装甲には傷一つ付かない。

22 :ソラテーマパーク攻防戦 12 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/20(木) 23:29:00 ID:???
そしてマイクロミサイルを引き付けた状態で無人ザバットの群れへと突っ込み、己を追尾
するはずのマイクロミサイルで無人ザバットを撃墜すると言う荒技をも見せ付けた。
「くそっ! 何だアイツは! 可愛い顔して…バケモンじゃねーか!」
クロス少佐はもう呆れるしかなかった。とは言え彼も無人ザバットのマイクロミサイルを
何とか回避出来ている。スノーがただ常識外れに異常なだけで、クロス少佐も常識範囲内
と言う意味では相当な実力者と言う事である。まあそんな感じでソラテーマパーク周囲で
大空中戦が繰り広げられていたわけだが、そこでテロリスト側の増援が来るのである。
「面白い! 実に面白い! 私が戦うに相応しい実力者が現れてくれて嬉しいよ!」
テロリスト側ゾイド乗り“バルバー=ラザラク”出撃。彼はレイノスに搭乗していたの
だがこのレイノス、外見は普通のレイノスとそう変わらないが何か違う感じがした。
「ロックオン…。」
新たな敵の出現にもスノーは顔色一つ変えず、マニューバミサイルを発射した。
それに対しバルバーのレイノスは翼を閉じて空気の抵抗を減らした状態で急降下した後、
海面スレスレから翼を大きく広げて急上昇する事で自身を追尾していたマニューバ
ミサイルを海面に撃ち付けてやり過ごしていた。この行動だけでバルバーの操縦技術と
Gに対する耐久性の高さを窺い知る事が出来たが、この柔軟な動き。レイノスにも通常
とは違う処置が施されていると思われた。
「ハンマーヘッドにガチで超音速戦闘をさせられる性能を持たせるなんて凄い技術だと
思うが…この俺のリバースバイオレイノスだって普通じゃ無いんだぜ…。」
「敵機レイノスの関節構造確認…これは…人工筋肉…。」

23 :ソラテーマパーク攻防戦 13 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/20(木) 23:30:34 ID:???
バルバーの言う“リバースバイオレイノス”は外見上は確かに普通のレイノスとそう
変わりは無い。しかしその関節構造は通常機とは全く異なり、人工筋肉によって稼動
させると言う方法が取られていた。こうする事で通常の機獣化されたゾイドに比べ、
より柔軟かつ素早い動きが可能になるのである。これは装甲は生体的だが、フレームや
関節等の構造は通常のゾイドと変わらないバイオゾイドの逆の思想。装甲やボディーこそ
通常ゾイドとそう変わらないが、各部関節を人工筋肉によって稼動させる事で柔軟性を
高める。“リバースバイオゾイド”とは良く言った物である。
「くそ! これがテロリスト共の本命か!」
やっと登場した純正テロリスト戦力にクロス少佐は苦笑いをしていたが、スノーは
相変わらずに無表情を絶やさなかった。
「敵機は撃墜する…。」
「来いよ! 俺が遊んでやるぜ!」
そしてバルバーは笑った。自身を楽しませてくれる強者との戦いを楽しむかのように…

ソラテーマパーク外周空域でエアット・イージーイーグルクロス少佐機・無人ザバット・
リバースバイオレイノスの大空中戦が繰り広げられていた頃、大龍神とファントマーは
ソラテーマパークの通路を突き進んでその内部へ侵入していた。それにしてもソラテーマ
パークは広い。大龍神の様な大型の機体でも悠々と飛びまわれる程なのだから。その広大
なソラテーマパークの一面に様々な遊戯施設が並んでいるのだから凄い空中遊園地である。
「さぁて! ソラテーマパークを独占して遊んでるテロリストどもを叩き出して今度こそ
本当に遊んでやりますよー!」
「いやぁ…だからそれは無いと思うのよ〜。」
相変わらずテロリストがソラテーマパークを占拠したのは独占して遊ぶ為だと思っている
ミスリルにティアも呆れていたが…
「わ〜い! やっぱ噂に名高いソラテーマパーク! どれも楽しい乗り物ばかりだー!」
「ええええ!!?」

24 :ソラテーマパーク攻防戦 14 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/20(木) 23:32:48 ID:???
何とまあテロリスト達は本当にソラテーマパークで楽しそうに遊んでいるでは無いか。
ジェットコースターに乗るテロリスト。メリーゴーランドに乗るテロリストなどなど…
まさか本当に遊ぶ為に占拠したとは夢にも思わなかったティアにとてつも無い衝撃が走り、
ファントマーは派手に墜落をかましていた。
「あああ! もう! 何で本当に遊んでるのよ〜!」
「だから言ったじゃありませんか! 遊ぶ事が目的だったんですよ!」
とりあえずファントマーが墜落した近辺にミスリルは大龍神を着陸させていたが、
テロリスト達がソラテーマパーク開園前に占拠したと言う理由も独占して遊ぶ事に
あったのかもしれない。単純にソラテーマパークを占拠して国を強請る事が目的である
ならば、観客の沢山いる営業中を狙えば良い。それをあえてやらず、開園前に占拠した
と言うのは、やはり独占して遊びたかったと言う他に無いのかもしれない。
「くそ! 何者だ! であえであえ!」
流石に大龍神とファントマーの侵入に気付いたテロリスト達は慌ててライフルを片手に
駆け付け、それに対しミスリル&ティアもまたそれぞれの機体から降りた。
「たった二人で我等に立ち向かうとは愚かだな。」
「うるさいです! 朝っぱらからここを占拠するなんて…私にも遊ばせなさい!」
「と言うか遊ぶ為だけに占拠するなんてセコイのよ〜。」
「だまれ! 我々は“蝙蝠の爪”はテロリストだぞ! テロリストがソラテーマパークを
占拠して何が悪い!」
「…。」
もう何が何だか…。それはそうと、ミスリルだってテロリスト達を叩き出して遊ぶ事を
目的にここまで来たのだし、テロリスト達もまたそうはさせぬと歩兵戦力を投入して
来たのであった。
「行け! リバースバイオ兵どもよ! あの二人を殺してしまえ!」
「リバースバイオ兵?」
“リバースバイオ兵”。外見は今は亡きディガルド武国が使用していた戦闘用の機械兵に
似ている様に思えるがその関節構造は違い、人工筋肉によって稼動させる事で柔軟で
滑らかな動きを可能にすると言うまさにリバースバイオな機械兵達であった。
しかし、それを制御するのは既存のAIに過ぎない。残念ながらミスリルの様にAIに
人格を持たせるには至っていない様である。

25 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/09/21(金) 17:32:31 ID:???
「……どうして進まないの?」
「いや、俺様、いちどやってみたかったことがあってな」
 デイビッド・O=タックとイヴは屈折した通路を下っていった先に、広大な空間の入り口
を見出していた。にもかかわらず、デイビッドが進もうとしない。
「敵は熱源探知に映ってる。向こうからも、こちらが見えるはずよ」
「知ってるナリ。俺様が試したかったことというのはだな……」
 二重顎を揺らして発せられる声はしかし、途中でため息に変わった。
「はぁ、あまり時間を無駄にもしていられんか。いやなに、地下に潜っていって広い空洞
があったなら、そこで中ボスが待ち構えているのはセオリーを通り越して当然のことだ。
ゲームだったらこっちがマップに入るまで動かないが、リアルでこういう状況になったら
果たしてボスはどれくらいの間我慢してくれるのかを試そうと思っていたのだよ」
「ホントに時間を無駄にしたわね! もう、行きます」
 怒気も露わにイヴがその空間に踏み入ると、観念した様子でデイビッドも続いた。

 こうした、騎士が待ち構える空洞は、太古の地底湖の名残である。
 枯れた地下水脈を通路に、枯れた地底湖を戦場に。全員が集まっては逆に力を発揮でき
ない騎士たちが、個別に敵を食い止める防衛システムとしてこの構造を利用している。
 そして、ここにもまた一人。
「ずいぶん長いこと、入り口で止まっていましたね。できれば、あのまま引き返してくれ
ればいいと思っていたのですが」
 やや幼い印象の、少年めいた声。その声が発せられる機体は、淡青色の竜<デスザウラー>。
「僕は戦いを望みません。今からでも、引き返してくれませんか?」
「をいをい、こりゃあ何分待っても出てこないわけだぜ」
 デイビッドの声には露骨な嘲りの響きがある。
「いいか、試験管生まれのゆとり坊や。お前が俺たちを見逃してくれるとして、その後に
待ってるのは凍死だ。だいたい引き返した所で地上に続く道はなくなってる。生き残る道
が戦いしかない以上、俺たちが逃げるワケねえだろ」
「ちょっと、もしかして対話の余地があるかもしれないのに……」
 イヴが割り込もうとするが、デイビッドは更にそこへ割り込み返した。

26 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/09/21(金) 17:47:11 ID:???
「無いね。百パー無し。よく考えてみそ、戦うのが本当に嫌ならなんでコイツは逃げない?
それはだな、コイツの後ろで糸を引いてる神(『くゎみ』と発音するのが通の言い方)
が、ある程度コイツの行動を掣肘できるからに決まってる。つまり俺たちが逃げるのは
自由だが、コイツが逃げることは絶対にない。戦わずしてここを通してくれることもない」
 にべもない上に断定的な口調であった。だが、彼の態度にも騎士は折れない。
「たしかに、神は僕たちを支配することができます。けど、僕と戦ったらあなたたちはき
っと……死んでしまう。だからお願いです、僕を戦わせないで」

 連綿と続く“オタク”文化の継承者たるデイビッドの中で、致命的な何かが切れた。

「あー、鬱陶しいッ! どこのスーパーコーディネーターだお前は。何が『戦わせないで』
だ、この中二病患者。あのですねぇ、お前ら騎士は全世界の人権ある能力者や、戦いに
巻き込まれた民間人を殺戮して回った時点で第一級テロ集団なんですぅ。だからあらゆる
市民には、騎士との戦いに参加する正当な権利があるワケ。殺す権利もね!」
 
「あなたは能力者じゃないでしょう!? 彼らの危険性を知れば、必要なことだと……!」
「笑止、勇敢なるファッキン・コメディアン。能力者が巨大すぎるエネルギーを平行世界
から呼び込むのが危険と言うのだろうが、お前たちの力は何だ? 能力者とは違うメカニ
ズムでお前たちの“剣”ほどのエネルギーを引き出せるとでも?」
 イヴは瞠目した。これほど語調そのものに毒々しい攻撃性を含ませられる人間を、長い
生涯の中で彼女はほかに見たことがない。
 性格の悪い人間はいた。人を騙すことを至上の喜びとするような者も見てきた。
しかし、デイビッドの言葉は過去の記憶にあるどの文言とも違う。
 悪意のベクトルが、根本的に異なっていた。
「この剣は神が能力者の脳を解析して得られた、彼らと同じ力を引き出すためのデバイス
です。そう、まさに危険な力ですが、毒をもって毒を制すという言葉があるように」
 この期に及んで平和的解決を――相手の都合を考えていないとはいえ――求める騎士。
しかしその言葉は、厚い肉の壁に阻まれて届かない。デイビッドにとって、自身に敵する
者の言葉など、あまねく雑音でしかないのだ。

27 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/09/21(金) 17:51:46 ID:???
「しゃらーーーっぷ! シャッツァファックアップ! 弁解そこまで! 貴様の論理は今
致命的な欠陥を晒したのに気づいてないのかマヌケめッ! 詭弁のガイドライン見ろ!
 『存在すら許されない力』を消し去るために同じ力を用いるってのはどういう了見だ、
このタコ助ッ! その戦い方自体、じつは宇宙の危機なんて大して迫ってないと言ってる
ようなモンじゃねーか。宇宙のパワーなめてんのか。トイレまでの距離がどんどん伸びる
んだぞ。大方、この程度のエネルギー変位は自分で何とかする機能がまだ働いてんだろ」
 騎士の言葉は暴言と断定的推論の洪水に押し流された。濁流は止まらない。

「しかもだー、兵器として作られておきながらそんな古典的偽善キャラに育つお前が個人
的に気に食わねー。ボクちんの半分は優しさでできています、って言いたいのか? 安心
しろ、そんなことアピールしなくても残りの半分は人殺しの道具だ」
 すでに言いがかりの域に達した言葉の締めくくりとして、唐突に彼は訊いた。
「で、お前、名前は?」

 若き騎士がこの時どのような表情であったか、知る者は居ない。とかく、彼は名乗った。
「……アービス。GX-09、アービスです」
「ほほう、惜しいな。一文字違えば犬っぽいオービタルフレームだったのに……」
 だれ一人、彼の言葉がわからない。彼も理解を求めていない。
 一人で呟いて、一人で悦に入る。なにか根源的な恐怖を呼び起こされるような、薄気味
の悪さを感じる暴走だった。

 デイビッドの機体が―原形をまるでとどめない、恐るべきゴルヘックスが―翼を広げる。
「さて、戦えばきっと俺様を死なせてしまうと豪語したその力、見せてもらおう!」
 イヴは正直に言って、あの針山のような機体の性能をそれほど信じてはいなかった。
威圧感はあるが、それはゾイドが哀れになるほどの度を越えた改造が発する邪気のような
もので、実践で役に立つとは思っていなかったのだ。

 だが、デイビッドの初撃は、有機ナノマシンの集合体たるイヴの目ですら目視すること
ができない程のものだった。
「え? 速――」

28 :Innocent World2 円卓の騎士:2007/09/21(金) 17:57:48 ID:???
 白い光が弾けた。
 その中心で、光刃と騎士の剣がぶつかり合っている。波動が広がり続ける。
「……く。くくく」
「!?」
 淡青のデスザウラーが剣を振りぬき、デイビッドは自ら後ろへ飛んで衝撃を殺す。

 アービスの声色が一変していた。含み笑いだけで、イヴもデイビッドもその変化を感じ
取ることができたほどだ。
「ふふ……ありがとよ、俺はそっちから仕掛けられないと出られねぇんだ。改めて自己紹
介させてもらうぜ――俺はアービスの戦闘人格! ベースになった奴が素質だけのヘタレ
だったもんで、神が戦いのために作った、全てを破壊する……」
「邪気眼キタ――――(゚∀゚)――――!!」
「な……ちょ、おま」
 戦闘人格のアービスは知らなかったのだ。この男、デイビッドが、まともに喋らせて
くれるはずなど無いということを……。

「人格交代ネタっすか? 古すぎっすよ? 『グヘヘ』とか言いつつ、ご飯を手づかみで
食ったらお母さんにボコられて消えちゃうような裏人格っすか?
 後々思い返して悶絶しないように、慈悲の心を込めてやっぱり今殺してあげちゃうね☆
人生最後の数分間、その胸に刻んでおけ。我こそは――」
 アービスは悟った。自分はなにか、とてつもないモノを敵に回しているのだと。

「――我こそは天下無双、絶対無敵、たまにRPGで味方パーティに居るバランスブレイカー!
俺様がこの道に閉じ込められたときから貴様の運命は決していたのだ。そう、この俺様の
――デイビッド・O=タック様の噛ませ犬になるという役割がなッ!」

 ――そして、このテュルクにおける戦いの中でもっとも凄惨な一幕が始まる。

<続く>

29 :最貧師団列伝1-2 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/22(土) 06:37:09 ID:???
 戦線はすでに崩壊していた。いや例え単線の貧弱なものだったとしても戦線を維持できていたのは戦闘開始直後の数時間でしかなかったはずだ。
 ファリントン軍曹は、キャノピーを押し上げたスナイプマスターの後部シートから周囲を見やった。
 そこには損傷した小型ゾイドやアタックゾイド、それに心や体に生涯消えないであろう傷を負った多くの男たちがいた。
 彼らは例外なく東へとゆっくりと歩いていた。
 その中には第307警備師団に配備された数少ない大型、中型ゾイドの姿は見えなかった。
 目ぼしい機体は全て上陸してきた敵部隊に撃破されてしまったからだ。
 軍曹たちが傷つきながらもクック湾から脱出ことが出来たのは、敵部隊が敗残部隊の追撃よりも橋頭堡の確保を重視したからに過ぎないだろう。
―何故こんなことになってしまったのだろうか、ファリントン軍曹は周囲の陰鬱な光景から逃れるためにずっとそんなことを考えていた。

30 :最貧師団列伝1-2 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/22(土) 06:39:39 ID:???
 大規模な敵軍が中央大陸に上陸する高い可能性がある。そう暗黒大陸に展開する共和国軍主力部隊から伝えられた時、参謀本部のなかでその情報を完全に信じるものはいなかった。
 ガイロス帝国軍は共和国軍暗黒大陸派遣軍と正面から対峙しているはずだからだった。
 いまのところ実戦に参加せず後方で待機している部隊も含めれば、確認されているガイロス帝国軍部隊は予想されていた敵戦力に対してやや少ない程度に過ぎない。
 予備兵力として温存されている未知の敵部隊があったとしてもそれほど大規模な部隊ではないはずだ。
 それに暗黒大陸や、西方大陸、その周辺海域に展開する共和国軍に察知されずに中央大陸に上陸することは大部隊では不可能だった。
 しかし後方の撹乱を目的とした少数の特殊部隊の上陸ならば十分に考えられた。
 そのような少数の部隊であっても現状の警備体制では共和国に大打撃を与えることも可能だろう。
 暗黒大陸派遣軍からの通信がトライアングルダラスからの強電磁波活性化の影響で一時敵に遮断されたこともあって参謀本部はそれ以上の可能性を考えられなかった。
 それでも航空部隊による一段の哨戒体勢の強化を参謀本部は指示していた。
 その結果はすぐに現れた。それも参謀本部とって予期しない形であった。
 新型大型ゾイドを中核とした揚陸艦隊、その戦力は共和国軍の編制に当てはめれば最低でも一個軍団相当
 当初は誰もが航空偵察部隊からの情報を信じることが出来ないでいた。

31 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/22(土) 10:00:27 ID:???
「ザバットが少し戻ってくるね。全くこっちなんかを気にしなければ…
少しは目的を達成できたものを。」
巨大で形状難解な角が放電を始めると直ぐに周囲は青白い電光に包まれる。
「アディオス!バーティカルサンダー。」
角から強力な放電が空中にまき散らされる。先のホーミングボムの爆発と、
プラズマブレスの影響で周囲の電位状況はかなり良好でクリアな状態。
電撃はそこを更に抵抗のない場所を縫うようにジグザクに軌道を執り上空に達する。
それと同じタイミングで降下体制に入った無人ザバットは見事に感電。
連鎖的に電撃は伝播し無人ザバットはグライダー飛行で森の木々の間に順に消える。
爆発等が起きなかったのはバーティカルサンダー自体が自衛用副武装だった事。
ザバットの数が膨大すぎたことが上げられる。
「数が多かった事が此方の助けになるなんて素敵な奇跡だね。」
きっと妹がいたならば…?
”恥ずかしい状況説明禁止!”
と空に光で描かれていたという…。兄に対してはツッコミの鬼だったらしい。
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜…。」
どうやら兄の思考は妹に筒抜けである事が解る。きっとリュミエールとブリッツの二機。
両者の間には特別な意志疎通の能力があるらしい…それで感知したのだろう。
恐るべき野生の力?である。

「…セブンスのハイランダー(特殊ギルタイプ)。二騎も先んじて投入されていようとは。
これはまた増援が必要なようだな。解っているな?」
「承知しております。不詳この執事オットーできればアレを所望する限りでございます。」
「解った。オットーお前にアレを預ける。…最悪わかっておろうな?」
「はい…ゾイドを失ってもどさくさに紛れて奴等の懐深く入り込んでみせます。
協力者として…ですね。」
オットーの去った部屋の中で主は椅子の背もたれに寄りかかり一息つく。
全く以てセブンスの青騎士の注文は面倒過ぎて困る。
並み居るソラシティ指導者の前で名演技をし続ける必要が有るとは思いもしなかった。
まだお嬢様呼ばわりされる彼女にとっては迷惑極まりない。
「困った奴だ。この過小評価の報告書を作るのにどれだけ苦労したことか…。」
実はこの時本来の投入兵力の目算は…今の30倍の予定だったりしたりする。

32 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/22(土) 10:08:41 ID:???
「よいしょっと。」
長い象の鼻が車爆弾をひっくり返す。
そうしてひょいっとバックステップを華麗に決めるウルファンダー。
「あれで大丈夫なのか?」
「リーダー。御任せを…後は残りのアレが来るのを待つばかり。」
「道は一つ。そしてその道を塞ぐは爆弾か…確かサイコ(以下略)。」
「黙っていても当たりますね。」
「そうそう!アレフちゃん器用〜。」
「先に倒した木を上において間違って上から来ても重みで作動。
博識の美少女フリ・テンの作戦には抜かりはありません!」
作業をしたのはアレフのみだが概ね間違っていない。この狭い谷状に抉れた場所。
巨大に成長し放題の木々が作るアーチは鉄壁で間違って上で爆発が起こっても、
軽い生き埋め程度被害で済む。一見すると追い込まれた形になるが…
以外と広い空間の上に唯一の出入り口は木々で極限まで狭くした。
無敵団の居る場所に侵入できるのは人程の大きさの物のみ。
その入り口がトラップな為どうやっても致命的な一撃は来ない。
ソラの戦力には土弄りを嗜む装備など存在しないという確証からだ。

程なくしてロウフェンと赤熊の視界にまた大判振るまいな火柱が上がる。
更には始めの爆発で難を微妙に逃れたホーミングボムが空中で炸裂する醜い花火。
「た〜まや〜!」
「か〜ぎや〜!」
既に両者は汚い花火を見上げる客の位置にいた。
「虚しいわね。」
「言わんといてください。状況にツッコマまないでつか〜さい。」
俺と赤熊の目からは一筋の涙が流れたという。戦争とは常に切ない物なのだ!
そう俺は勝手に理解して川の反対側で発生する火柱がでなくなるまで…
ここで休憩することに決めたのだった。
「拡声器の電源が入ったままよ?」
「があああああああああああああああああああああん!!!」
何処までも何処までも落ち度が激しいのは寝不足の所為だろうか?
拡声器のスイッチを押すと俺はコクピットの中で丸くなって…泣いた。

33 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/22(土) 10:15:30 ID:???
ー 高空 ー

「なんだあいつ等?ゾイドを並べて花火見物でもしているのか?
何?突然空中からゾイドが出現!?」
シープの疑問はもっともであるがソラシティ隠蔽用の光学迷彩。
それを使えば至近距離まで音もなく忍び寄ることなど造作も無い。
降り立つゾイドは…?その姿を見て思わずシートからシープは転げそうになる。
巨大な赤い角…長大な尾…巨大というのもちゃちな形容詞の四肢。
胸に3つの回転砲台。腹に輝く白銀の紋章…
リュミエールが弾き出す該当ゾイドの名前には破滅の二文字が良く似合う。
「…偽物だとしてもキングゴジュラス。危ないにも程が有るっ!」
出現位置は丁度ロウフェンや赤熊の真後ろ。完全に撃破確定の間合い。
間に合うのか?そう思いつつシープは最大戦速で地上へダイブを敢行する。

突然格闘レンジへのゾイドの侵入警報。
俺は慌ててシートに座り直し素早く逃げ出した…筈だった。
「ほ〜ら。お二方?捕まえましたぞ!」
レッドマンドリルとビー介は首根っこを猫がそうされるように摘み上げられていた。
背後に見える影は殆どのバイオゾイドと同じく”キョウリュウ”の姿。
しかしその見た目はバイオゾイドのそれではなく一般的なゾイドと変わらない板張り。
巨大な背鰭が火柱の赤に生える墨のような黒。はっきり言って怖い。
どうしてその姿が怖いのかは知らない…だが焼き付けられた記憶のように怖い。
恐怖心の海に標高数千mから突き落とされたような感覚だけがそれをやばいものと語る。
更には普通なら抵抗するだろうゾイド達が完全にびびっている。
人間よりもそう言った感覚に鋭いゾイドが敗北宣言をしている…
俺達に何ができるのであろうか?
きっと逃げる事も頭に浮かばずガクガクブルブル震えているだけだろう。
現に俺と赤熊は突然背後から現れた”キョウリュウ”に捕まってしまっている。
「おやおや?いけませんな?素材こそ略本物ですがコアは唯のゴジュラスのもの。
精巧にできた偽物ですぞ。火器の口径も半分でございます。」
落ち着いた口調で悪戯っぽい声が聞こえてくる。”偽物”でこれかよっ!?
本物だと…心臓発作であの世行きでその時に毛穴が開き金柑頭に成ってしまいそうだ。

34 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/22(土) 10:22:31 ID:???
「先ずは一機。手筈通りオットーはフェンリルに接触したか。さてと…
今度はウルトラザウルスの真上に。」
ロウフェン達にオットーを嗾けた要領で甲板に突然ゾイドが姿を現す。
「しまった!対空警戒網だけでは甘かったか!」
虚を突かれた形となる迂闊少将だが今回ばかりは彼には何の罪も無い。
光学迷彩とステルス機能。それによって甲板上に陸戦ゾイドを並べ立てる。
この時代ではあり得ない兵力配置方法である。
だが浮き足立つ者はあまりいない。
この時ばかりはジ・烏合の衆であることが幸いしたようだ。
お互いに連絡を取り合うと言う基本的であり重要な行動が執れなかった。
それが偶々混乱の波及を防ぐ事に役立ったからだ。

現れたゾイド達。その姿は小山のようにそびえる類人猿。
体中に火器が針鼠のごとく配置された真っ赤な悪魔。
この星で最も地に足を付けた強さで定評のある大型ゾイド…
アイアンコングPKと昔の人は呼んでいたそうだ。
更にそれを取り巻くのは黒い悪魔。正に言葉の通りのそのもの。
微妙に後ろが抜ける蝙蝠傘。無為に伸びた巨大な二本の爪。
更には左右非対称のバラッツを思い出させる手の大顎。
本来それを持っているだろう体ではないスマートな姿。
ロードゲイル。極点戦力では大型ゾイドですら相手にするのは危険と呼ばれた化け物。
数こそ少ないが混乱に乗じて一気にバイオラプターグイが全滅してしまう。
「始めから空襲支援か!くそっ!ボラー先生は間に合うか?」
ヴォルケーノが起動し周囲の敵を一気に薙払う。
コングは辛うじて攻撃を回避するが練度が低いのだろう。
死神数体がバラバラに砕け散り…また元の形にくっつく。
「再生能力だと…?バラッツの技術はここまで巨大なゾイドを構成できるものなのか?」
持ちうる知識を総動員してザイリンは敵の特長を掴みにかかる。
成るべく早く敵の戦力を理解しなければならない…現状は最悪だ。
今はエレファンダーを失う訳にはいかずバイオゾイド部隊だけで排除する必要が有る。
予め増援要請はして置いたが今真に間に合うかどうかの踏ん張り所となっている。

35 :墜ちてきたソラの獣 ◆5QD88rLPDw :2007/09/22(土) 10:28:21 ID:???
「全く。こんなときに敵襲ですかい…全く進退窮まっていやすねぇ。」
マサジロウは針山と真っ正面から対峙している。
相手が動く気が無いと言うのが非常に気に掛かるが…後方の混乱も厳しい。
「じゃあいきやすかい!」
バイオスナイパーの尾の先が展開する。
「超収束小口径バイオ粒子砲発射でさあ!」
超長距離射撃に対応した最終貫通兵器。尾の内部構造を徹底的に改造、
尾としての機能を極限まで残して狙撃用の砲身を確保。
ついでにスコープまで内蔵している優れものである。
威力こそ大した事は無いがこと貫通力と射程距離においては並ぶ者は居ない。
寸分の狂いもなく放たれたバイオ粒子砲はコングのビームキャノンを破壊する。
あまりの突然の出来事にコングのパイロットは周囲をキョロキョロ見回すが、
その行為は自分の終わりをいち早く知るだけでしかない。
目前に迫る銀光の騎乗槍。レ・ミィのランスタッグが攻撃回避不能な位置にまで肉迫し、
その後方には完全に退路を絶つ位置にヴォルケーノが居座っている。
程なくして強烈な衝撃と共にコングはハイマニューバスラスターごと右胸を貫かれ倒れる。
「やっと一機…なんなのよ!あのデカ猿はっ!」
丸焼き姫は大層御立腹だった。

「やっぱり動きやせんねぇ?さっきの脅しが効いたようには思えやせんが…?」
情報の伝達が進みマサジロウにもそのゾイドの詳細が届けられる。
「ガンブラスター…何とも恐ろしい。しかし残りの二機は何を背負っているのやら?」
箱を背負った迷彩ガンブラスターは本家同様微動だにしない…と思ったら、
突然くるりと旋回を始める。バイオスナイパーに背を向ける形で静止。
またその後微動だにしなくなった。
「…あっしの気合いが空回りしたのですかねぇ?」
大当たりらしく今度は空から落ちてきたガンブラスターも背を向ける。
「ならあっしはあんた等のお守りをしないといけないのかも知れやせんねぇ?
すいません!もう少し開けます。」
「了解した!高空監視網がザバットを確認した。お前の居る方角から来るぞ!」
「了解しやした!任せてくだせぇ!」

36 :最貧師団列伝1-3 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/22(土) 20:22:15 ID:???
 深々と降る雪が周囲の光景を嫌でも暗く見せていた。
 クック湾周辺は中央大陸の中でも北方に位置するが、周囲の海流の影響で年間降雪量はそれほどでもないはずだった。
 しかし今年は異常気象なのか11月初頭だというのに降雪が始まっていた。
 だが、周囲は寒々としているのにファリントン軍曹が乗り込むスナイプマスターの複座はひどく暑苦しく感じた。
 スナイパーズシートと呼ばれる複座はファリントン軍曹には理解できない設計思想だった。
 スナイプマスターは強襲戦闘隊に所属する量産機としては高機動であるのに、スナイパーズシートに乗り込む乗員は寝転んだ不自然な体

勢で長時間の待機を強いられることになるからだ。
 しかも長距離精密射撃用の巨大な光学センサやレーザセンサがスナイパーズシートの頭上や側面に取り付けられている為自然とシートの

設計は狭苦しいものとなった。
 スコープ状の光学センサや耳のようにも見えるレーザ対物センサからの情報を統括して表示できるモニター群は確かに高性能ではあった


 しかしモニターや各種装置から発せられる熱によって上半身は暖められ、逆にいい加減な施工によって隙間だらけになってしまったハッ

チからは冷気が吹き込んでくる。
 その結果ファリントン軍曹は頭は暖められているのに、足は冷やされるというひどく消耗する事態におちいっていた。
 本来であれば実際に戦闘が開始されるまで狙撃要員だけでもハッチを開けて楽な姿勢を取らせるべきなのだ。
 スナイプマスターは幸いなことに狙撃仕様であるからセンサ類は充実している。それに航空偵察によって大体の敵位置も判明している。
 だからセンサからの情報にさえ気を配っていれば無理な姿勢で長時間の待機をする必要は無いはずだった。
―しかし待機命令を出してしまった以上はあの小隊長に命令を撤回させることは出来ないだろう。
 ファリントン軍曹は思わずため息をついていた。こんな後方もいいところの警備師団に配属されるくらいなのだから優秀な士官など回っ

てくるはずもなかった。

37 :最貧師団列伝1-3 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/22(土) 20:23:23 ID:???
 小隊に与えられたスナイプマスターも新型ならば、配属されたばかりの小隊長も新品だった。
 一応は士官学校を卒業したことになっているが、こんな中途半端な時期に卒業するということは士官学校もかなりの速成教育になってい

るということだった。
 だから小隊長も20代に入ったか入らないか位の歳でしかない。最も年齢に関してはファリントン軍曹だって人のことは言えなかった。
 最近では下士官も速成教育に入っている。急速に軍を拡張させる為には中、下級の指揮官が大量に必要となるからだ。
 本来であればファリントン軍曹の経験と兵役年数では小隊副官兼分隊隊長などではなく、せいぜいが一個分隊の指揮をとる伍長くらいで

しかなかったはずだ。
 そしてそれはスナイプマスターにもあてはまるはずだとファリントン軍曹は考えていた。
 いま自分が乗り込む機体も、もっと技術的な蓄積を終えてから配備されるべきなのだと。

38 :ソラテーマパーク攻防戦 15 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/23(日) 23:16:39 ID:???
「行け! 攻撃開始!」
「うわぁ! 来ました! 怖いです!」
一斉に駆け寄って来たリバースバイオ兵にミスリルは泣きながら逃げ出してしまった。
まあロボットでありながらもワリと可愛らしく作られてるミスリルと違ってリバース
バイオ兵は結構不気味な外観していたし、ミスリルも何だかんだ言って臆病な所も
あったりするので仕方の無い事かもしれないが、ミスリルにも考えがあった様子であり、
またそこまでAIの性能が良くないリバースバイオ兵は馬鹿正直に追撃をかけてきた。
そしてミスリルを追うリバースバイオ兵の一群が一列に並んだ所を確認するなり彼女は
急速反転。拳を強く握り締めた右腕をリバースバイオ兵へ向けた。
「貫かれて下さい! ミスリルパーンチ!」
その叫びと共にミスリルの右腕の肘から先が発射され、リバースバイオ兵の分厚い装甲を
次々に貫く。いわゆるロケットパンチなのだが、テロリスト達にとっては衝撃だった。
「腕が飛んだぞ! 奴は機械の身体を持っているのか!?」
「うろたえるな! 単なる機械よりも人工筋肉で稼動するリバースバイオ兵の方が
運動性は上だ! 接近戦に持ち込め!」
残存したリバースバイオ兵が次々にミスリルへ飛びかかって行くが、この程度の相手は
ミスリルにとっては玩具の様な物。TMO鋼の拳で次々に殴り壊し、さらに両腕を
ガトリング砲に変形させて蜂の巣にして行く。
「そんな馬鹿な! 奴はバケモノか! 我等が苦心して作ったリバースバイオ兵が…。」
「しかし何と言う柔軟な動きだ…。本当に機械なのか?」
テロリスト達が絶対の自信を持っていたリバースバイオ兵を容易く圧倒するミスリルに
彼等は唖然とした。しかし、あえてフォローさせて頂くならミスリルが異常過ぎるだけで、
通常の歩兵戦力が相手ならばリバースバイオ兵の強さは圧倒的であると補足しておこう。
だが異常なのはミスリルだけでは無い。ティアも同様であった。
「切り裂いて! ナノマシンフェザァァ!!」

39 :ソラテーマパーク攻防戦 16 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/23(日) 23:18:27 ID:???
ティアの背から伸びた純白の翼がリバースバイオ兵の人工筋肉を巻き込み、刃となって
切り裂く。確かにティアが身体として使っている器は元々はただのドールであったが、
ミスリルが何時までもそのままにしておくはずが無い。直接戦闘にも耐えうる様に自身に
使用された技術を一部応用し、強化していたのである。その内の一つがナノマシンを
使用する事で形状を自在に変化させられる翼“ナノマシンフェザー”であり、また
両掌部には光子砲も装備している。そして人間で言う所の心臓部にはティアの霊力を
増幅する為に開発された“アストラルドライバー”があり、基本パワーも上昇していた。
「もう! 遊ぶ為だけに遊園地でテロしちゃだめなのよ〜!」
「くそぉ! このガキも強いぞー!」

ミスリル&ティアがリバースバイオ兵相手に大暴れしていた時、ソラテーマパークの
周囲ではスノーのエアットとバルバーのリバースバイオレイノスの大空中戦が繰り広げ
られていた。
「楽しい! 楽しいぜ! 可愛い顔して俺を楽しませるなんて凄いじゃないか!」
「そう…私は楽しくない…。」
スノーは相変わらずのポーカーフェイスっぷりでエアット共々にリバースバイオレイノス
のレーザークチバシによる突撃をかわし、瞬時に周囲の無人ザバット軍団をロックオン。
「楽しくないから早めに決着を付けたい…。」
エアットコクピット内のモニター一面にロックオンマークが表示され、一斉発射。
中型のハンマーヘッド級にどうやったらこれだけの武装を満載させられるのだ?
やっぱ異星技術の力か? とか突っ込みたくなる位に全身から夥しい数のミサイルが
発射されると共にミサイルポット及び主翼・尾に装備されたビーム砲が慌しく上下左右に
稼動し、ロックオンした無人ザバット達を次々に撃破して言った。
「無人ザバットがまたまた大量に撃墜されました…もう滅茶苦茶ですね。」
「くそ! なんてバケモンだ! もう好きにやってくれ!」
後方で戦況を見守るしか無いビグマッコウのクルー達ももはや呆れるしか無かった。

40 :ソラテーマパーク攻防戦 17 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/23(日) 23:20:10 ID:???
「あの…俺これでも連合空軍のエースなんだけど…忘れないでね…。」
早くも完全蚊帳の外になってしまったクロス少佐も唖然とするしか無かった。とりあえず
彼の名誉の為に言わせて貰えば、彼は弱く無い。スノーが異常なだけなのであしからず。
そして今度は何を考えたかスノーはエアットをソラテーマパークの周囲を回る様に飛ばし
始めた。当然バルバーのリバースバイオレイノスと無人ザバット軍団は後を追って行くが
エアットは止まらない。一周、二周、三週、ソラテーマパークの周囲を何周も回っていく。
「何か考えがある様だな。とりあえず誘いに乗ってあげたけど…何が起こるのかな?」
「それは見てのお楽しみ…。」
その後もエアットは後方から襲い掛かるリバースバイオレイノス&無人ザバット軍団の
砲撃をかわし、弾きながらもなおソラテーマパークの周囲を超音速で何周も回って行くが、
それから何十周も回った時だった。突如無人ザバット軍団が失速し、次々に墜落したので
ある。だがエネルギー切れでは無い。ソラテーマパークの周囲を超音速で何周も回る事で
無人ザバット軍団は目を回してしまったのである。じゃあ何故スノーとバルバーが平気
なのかと言うと…まあ普通じゃないからと言う事で。
「なるほど…そう考えたか…。」
「後は貴方だけ…。」
無人ザバット軍団が沈黙した以上その空域に残るのはエアット・リバースバイオレイノス・
イージーイーグルクロス少佐機の3機のみ。決着の時は近かった。

さてこちらはソラテーマパーク内。戦う場所が子供向けのキャラクターショーをやる事を
前提とした広場だった故にテーマパーク内に大した被害を出さずにミスリル&ティアは
リバースバイオ兵を次々と蹴散らし、ついには全滅させる事に成功した。後は生身の
大して強くない人達ばかりである。
「さあて、貴方達の兵隊は全部やっつけましたし…このままソラテーマパークから帰るの
なら私だってこれ以上何もしませんが…どうですか?」
「まだまだ! こう言う事もあろうかと我々にはまだ温存した戦力と言う物がある!」
「え!?」

41 :ソラテーマパーク攻防戦 18 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/23(日) 23:24:04 ID:???
するとソラテーマパークの奥にある巨大なテントの中から一機の巨大ゾイドが姿を現した。
それはデスバード。元祖ギルベイダーの開発理由となったデスウィングの以前に飛行を
可能にしていた改造デスザウラー。言わばギルタイプの大先輩とも言える機体であり、
またこれも人工筋肉で稼動させる事で柔軟性を高める改造がされている様でもあった。
「我々の最終兵器! リバースバイオデスバードで貴様を逆に叩き出してやる!」
「ええ!? ちょっと待って下さいよ! ここで戦うんですかー!?」
とりあえず大龍神に乗り込んだものの、ミスリルは戸惑った。こんな場所で巨大ゾイド、
しかも決戦機級同士の戦闘をやればソラテーマパーク内の遊戯施設の被害は計り知れない。
元々ソラテーマパークで遊ぶ事が目的のミスリルにとってそれは何としても避けたかった。
「ね…ねぇ…とりあえず…外でやりません? ね? ね?」
「ここまで好き勝手に暴れておいて何を言うか!」
「キャア! 怖い!」
リバースバイオデスバードの口腔部から大口径荷電粒子砲が放たれた。通常のデスバード
と違って荷電粒子砲をも発射出来る様であったが、その直撃をもろに受けた大龍神は
そのままソラテーマパークの壁を突き破り、外にまで押し飛ばされていた。
「キャァ!」
「我々としてももっとソラテーマパークで遊びたい。壁に穴が空く程度に抑えたのを
感謝するのだな。」
ソラテーマパークに開いた穴から大龍神は海面目掛けて落下して行く。そしてリバース
バイオデスバードもまたその後を追って外に出る。もう一度荷電粒子砲を当ててトドメを
指すつもりであった。
「ああ! ミスリル!」
慌ててティアもファントマーに乗り込み、後を追おうとしたが、そこで突然後方から
サラマンダーの襲撃を受けた。

42 :インストラクション・コード 4:2007/09/25(火) 22:34:10 ID:???
 俺のような流れ者のファイターは、いちいち目的の町に行ってから試合を組んでいたら
効率が悪い。だから事前に手紙などの通信手段でバトルのメイキングを依頼する(大陸間
や国境を越えてのオンライン網の整備は政治上の都合で進んでいない)。今回もこの町の
マッチメーカーのハキムには数日前に連絡を入れて、試合を組んでおくよう頼んであった。
ところが今日到着してハキムのオフィスを訪ねてみれば試合は未定だという。車に乗せら
れ、連れてこられた先でこんな胡散臭い依頼をされるとは思いもよらなかった。
「なにしろチャンピオンも含めて、勝てるかどうか分からないような有様でして」
 なるほど、この街の上位ランカーが直に対戦して負けたとなれば、バトル協会の威信に
傷がつく。しかしフリーで流れ者の俺なら、万が一負けたとしても、傷はつかない。都合
のいい捨て駒ってわけだ。


43 :インストラクション・コード 5:2007/09/25(火) 22:38:16 ID:???
 俺の目の前には冷茶の入ったグラスが置かれているが、他の三人のグラスにはビールが
入っている。店に入った直後に「ミスターサージェスはお強いそうで」などと言いながら
組合長がビールを注文したのを制して、俺だけはお茶を頼んだのだ。口には出さなかった
が「ビジネスの話が済んでないのに酒を飲む気はない」と暗黙の意思表示したわけで、さす
がに三人とも意図を察してビールには口をつけようとしない。グラスの外側は汗をかき、
三対七の黄金比率に入れられた泡はすっかりなくなり、気の抜けたような気泡がぽつぽつ
と浮きあがっている。飲み頃はとっくに過ぎている。他の二人は平然としているが、組合
長だけは未練たらしく手元のビールにちらり、ちらりと目をやる。さすがに俺が飲まない
のに口をつけるわけにもいかず、時折のどをゴクリと鳴らしたりして催促している。せめ
て煙草でも吸えれば「まあ皆さんだけでも」と言う気にもなれるのだが、あいにくとこの
店は全面禁煙だとさ!よくもまあこんな不健康な店を選んでくれたものだ。そもそも五分
で終わる話を延々と二十分以上も引き伸ばしてるこの男が一番悪い。そんなわけで俺は
あえて気づかないふりをしてお茶をすすっている。

44 :インストラクション・コード 6:2007/09/25(火) 22:41:57 ID:???
 面倒な内容だ。ゾイドを破壊するだけなら造作もない。倉庫なり駐機場なり、夜中にで
も忍び込んで破壊すれば済むのだから。だが、コロシアムでやるとなれば話は別だ。人間
が乗っているのが大前提となる。いかにパイロットに怪我をさせないでゾイドだけを破壊
するか。最近はゾイドバトルのスポーツ化が顕著化しており、ファイターが入院しようも
のなら新聞沙汰だ。怪我ならともかく殺してしまうと俺も刑務所行きは免れない。しかも、
ただ勝つだけでも困難な相手だときては。
 だが、考えるまでもないのだ。いくら困難な内容でもゾイドバトル組合の組合長直々の
依頼となれば断わるわけにはいかない。断われば二度とこの街でバトルは出来なくなるだ
ろう。
 だがその前に、俺は確認しておくことがあった

45 :最貧師団列伝1−4 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/25(火) 22:50:14 ID:???
 ファリントン軍曹はスナイプマスターがこれで完成形であるとはとても思えなかっ
た。部隊配備の時の説明ではゴドスから急速に機種転換が進んでいるガンスナイパー
の格闘戦能力を引き上げた後継機という話だったが、隊の中でその話を信じているも
のは殆どいなかった。
 機体構成を見る限りでは、スナイプマスターはガンスナイパーを簡易化した機体な
のではないかと思われた。ガンスナイパーは簡易とはいえオーガノイドシステムを搭
載し、また種別の違いすぎる火器を複数搭載したことで火器管制系が小型ゾイドとし
ては複雑化しすぎてしまっていたからだ。
 確かにガンスナイパーは非常に強力な砲兵装を有する量産小型ゾイドであるといえ
る。また機動性においても、初陣においてブレードライガーの随伴機を務めたことか
ら分かるように多少の無理をすれば高速部隊に配置することも出来ほどの性能を持ち
合わせていた。
 同時期に登場したガイロス帝国軍の小型量産ゾイドであるレブラプターが基本的に
格闘兵器しか有さないこと、また実際の戦場で多数存在するのが量産小型ゾイドであ
る事を考えれば、オーガノイドシステムを本格的に取り入れていたブレードライガー
などよりもよほど軍にとって重要な存在であるといえた。
 しかし機体骨格や装甲はともかく複雑化した火器管制系は生産性と整備性を多少悪
化させていた。だから複雑化したガンスナイパーを簡略化した機体が望まれたという
ことなのだろう。


46 :最貧師団列伝1−4 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/25(火) 22:53:00 ID:???
 だがファリントン軍曹はスナイプマスターはあまりにも簡略化を推し進めすぎたと
考えていた。ガンスナイパーの特徴でもあった多彩な火器は無くなり、たった一つの
火器である尾部の狙撃砲は砲としてみれば非常に優秀な性能を誇っていたが、機動戦
闘で用いることは出来ないから大半の戦闘行為ではデットウェイトになってしまうだ
ろう。
 装甲が薄くなっているのは機動力が増したことで敵弾を回避することが出来るため
だというが、そんな神業的な機動はベテランの操縦手で無い限り不可能だろう。これ
では第二線級の部隊に配備されるのも無理は無いと思えた。
 ファリントン軍曹達はしばらくそう考えていたのだが、しばらくして整備段列の兵
が後方の技術本部に整備研修を受けたときにある噂を聞いていた。スナイプマスター
は実は簡易チェンジングアーマーシステム、CAS搭載機であるというのだ。
 ライガーゼロにおいて本格的に取り入れられたCASは、機体の外装部分を交換す
ることで容易に多様な任務に対応することが可能となるシステムだった。しかし専用
の外装パーツを開発生産するコストは膨大なものであり、今のところライガーゼロ以
外に本格的に取り入れられた機体は無い。

47 :最貧師団列伝1−4 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/25(火) 22:55:09 ID:???
 ただしCASの概念そのものはそれほど画期的というわけではない。任務によって
武装を変更して対応するということはそう珍しいことでは無い。そしてどうやらスナ
イプマスターはその武装の変更を当初から考えられてるらしく、ハードポイントを多
数装備することであらゆる武装の搭載を可能としているらしい。
 だが肝心の簡易CASとなる武装の開発は本体よりも遅れて始まったらしい。とい
うよりも本来は格闘戦形ガンスナイパーというべき実験機の開発にCASの開発班が
便乗したのだという。だからスナイプマスター本来の専用武装が存在しないのはその
ためであるというのだ。
 おそらく武装の開発が終了する前に部隊配備が始まったのは、せっかく生産した機
体を遊ばせておくのを惜しんだか、それとも本格的な生産が始まる前に二線級の部隊
で問題点を洗い出すつもりでもあったのではないか。
 そう考えた時ファリントン軍曹は二線級の部隊で危険が無いというのも考え物だと
考えていた。まさかそんな機体で実戦参加することになるとは考えていなかったのだ。

 ふとファリントン軍曹が顔を上げるとモニターに敵部隊らしい反応が現れていた。
どうやら航空偵察部隊が発見した部隊に間違いは無いだろう。
 だが敵が目前に迫っているというのにファリントン軍曹は、一体旧式のゴドスやガ
イサックで敵を迎え撃つのと未完成の新型で戦うとどちらが生き残る確率が高いのだ
ろうかと考えていた。

48 :ソラテーマパーク攻防戦 19 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/26(水) 22:57:03 ID:???
「お嬢ちゃんの相手はおじさんがやってあげるよ!」
「わー! また何か出たのよ〜!」
このサラマンダーもまた人工筋肉を使用したリバースバイオサラマンダーとなっており、
それから逃げる様にファントマーは大急ぎで大穴から外に飛び出した。しかしそこで
慌てていた為なのか、リバースバイオサラマンダーのミサイルの直撃を受けてしまい、
墜落してしまった。
「キャァァ! 落ちる落ちるぅぅ!」
まだソラテーマパークから落下中の大龍神はリバースバイオデスバードにとってはカモ
以外の何者でも無い。そのまま荷電粒子砲でトドメと思われたその時…
「キャアア! おじさん邪魔なのよ〜!」
「うお!」
何と先程リバースバイオサラマンダーの攻撃で墜落したファントマーがリバースバイオ
デスバードの背中に激突。その衝撃で照準が狂い、荷電粒子砲の射線はそれて大龍神では
無く海に大穴を空けてしまうだけだった。
「畜生! こういう良い時に何で!」
「今です!」
そこで大龍神は急上昇。慌ててリバースバイオデスバードは全身のミサイルを発射するが
さながら板○サーカスのごときバレルロールで次々かわして行く。
「今度は私から行きますよぉ! ドラゴニックプラズマァ!!」
「うぉ!」
リバースバイオデスバードの真上を取った大龍神は首下に装備された4門の強化プラズマ
粒子砲“ドラゴニックプラズマ砲”を発射。忽ちリバースバイオデスバードの巨体を
飲み込み、消滅させたのである。
「うわぁ! リバースバイオデスバードが! そんな!」
リバースバイオデスバードが撃破されたショックでリバースバイオサラマンダーの
パイロットは浮き足立った。それがティア&ファントマーにチャンスを与える。
「油断しちゃだめなのよ〜! ストライクレェェザァァランスァァ!!」

49 :ソラテーマパーク攻防戦 20 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/26(水) 22:58:08 ID:???
派手にエコーを利かせたティアの叫び声と共にファントマーのバスタークローから発せ
られたレーザーの突撃槍はリバースバイオサラマンダーをも一突きにしていた。
もはやテロリスト側戦力で残るのはバルバーのリバースバイオレイノスのみである。
「何と…いつの間にか俺だけになってしまったな。」
「いい加減終わりにする…。」
エアットのビーム砲がリバースバイオレイノスへ向けて放たれる。これが今までなら
あっさり回避されていたのだろうが、先程ソラテーマパーク周囲を何周も回った影響が
今更になって出てきたのか、かすかに平衡感覚の鈍ったバルバー&リバースバイオ
レイノスは直撃を受けてしまった。
「何!? うおお!」
バランスを失い、墜落して行くリバースバイオレイノスに向けてエアットが追い討ちを
かける。そしてスペースアダマンタイトの装甲そのものを武器とした超音速の体当たりは
リバースバイオレイノスの身体を簡単に破壊していた。
「ハッハッハッ! 楽しかったぜ! またやろうな!」
「私は嫌…。」
こうして戦力を失ったテロリストグループ“蝙蝠の爪”は白旗を上げた。ドールチームは
たったの3人&3体だけで戦局をものの見事に覆して見せたのである。流石にソラテーマ
パークの外壁に穴が空いてしまったが、テロリスト達は単純に遊ぶ為に占拠していただけ
あって従業員の犠牲者はゼロだった。

50 :ソラテーマパーク攻防戦 21 ◆h/gi4ACT2A :2007/09/26(水) 22:59:17 ID:???
「さて…彼女等の処分はどうします…?」
「いや…どうしますって言われてもな…。」
テロリストと連合空軍の戦いに突然乱入したドールチームに対するマードカル諸島側の
お咎めは意外にも特には無かった。テロリストを倒したという栄誉もそうだが、
ここで下手に怒らせたらもっと酷い事になってしまうと悟った為、とりあえず
好きに遊んでもらった後で丁重にお帰り願うと言う道を選んだのである。
勿論テロリスト掃討に貢献したお礼と言う名目で…

「あ〜今日は楽しかった〜!」
「でもテロリストも遊園地で遊びたかったのね〜。」
「テロリストも人の子と言う事…。」
無理矢理営業再開させたソラテーマパークで沢山遊んだドールチームの三人は
悠々と去って行った。こうやって命の洗濯をした後で再び仕事に入って行くのである。
                おわり

51 :最貧師団列伝1−5 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/28(金) 21:21:47 ID:???
 敵部隊が近づくにつれて徐々にその詳細が判明し始めた。ファリントン軍曹は舌打
ちをしながら情報を映し出しているモニターをにらんでいた。
 最初に視界に入ったのは見たことも無い数機のザリガニ形のゾイドだった。どうや
ら水陸両用型らしいが、かなりこの時期には時化っているはずの海域を悠然と航行し
ていることから考えて、かなりの外洋航行能力を有しているようだ。
 その後には大型の非ゾイド型通常動力貨物船らしき船影が航行していた。そこまで
確認していたファリントン軍曹はふと違和感にとらわれた。しばらく考え込んでから
貨物船の編成が奇妙であることに気がついた。おそらく中央大陸への揚陸を目的とし
ているのだろうが、その割には揚陸用艦艇が少ない気がする。少なくともビーチング
可能な線形をもつ本格的な揚陸艦は含まれていないようだ。
 ガイロス帝国軍もヘリック共和国軍も、ゾイド戦力の拡充に予算がとられた結果、
敵前上陸も可能である本格的な揚陸艦の整備は後回しにされているから揚陸艦が編成
に含まれていないことは異常ではないのかもしれない。だがこれだけの規模の揚陸船
団に一隻も存在していないというのは奇妙だった。
 それに揚陸艦が無ければホエールキング級を用いればいいだけの話だ。ホエールキ
ングかホエールカイザーであれば空中移動が可能だから中途半端な揚陸艦よりも一気
に大戦力を投入することが出来るはずだ。

52 :最貧師団列伝1−5 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/28(金) 21:31:52 ID:???
 ファリントン軍曹はそう考えたが、違和感の正体はそれだけではなかった。ふと気
になってモニターをにらみつけると疑問はすぐに氷解した。後方の船団との距離、そ
れに貨物船の全長さえ分かれば話は単純だった。船団の前方を航行するザリガニ型ゾ
イドはかなりの巨体を持っているようだった。ホエールキング級ほどではないのだろ
うが、共和国軍のホバーカーゴぐらいの大きさはあるだろう。どうもあのザリガニ型
の新型ゾイドは揚陸艦ゾイドでもあるらしい。
―つまりあのザリガニ型がゾイド部隊を上陸させて港湾を制圧してから貨物船を入港
させるつもりなのだろうか
 ファリントン軍曹はふと首をかしげた。確かにこの周辺に展開する共和国軍の戦力
は少ないが、それでも集中すればあのザリガニ型ゾイドに搭載できる程度の戦力に対
抗することは出来るはずだ。
 それにこの周辺の港湾は荷役能力が限られているから効率はかなり悪いはずだ。も
しかすると敵部隊が中央大陸の地勢情報を把握していないだけなのかもしれないが。

53 :最貧師団列伝1−5 ◆TLTiVWbvF. :2007/09/28(金) 21:40:35 ID:???
 そんなことをファリントン軍曹が考えているとはるか彼方に見えていた貨物船のう
ち数隻の甲板が急に火事を起こしたかのように燃え上がった、ように見えた。
 勿論そんなわけは無かった。瞬く間に警告を促すサインがモニターにいくつも現れ
た。ファリントン軍曹はちらりと映し出されたミサイル警報を見た。どうやらあの貨
物船はミサイルを大量に搭載した火力支援艦に改装されているようだった。戦闘艦で
はなく荷物を運ぶ為だけに特化した大型貨物船だからミサイルの誘導などは不可能だ
ろう。だから命中率はそれほど高いものではないはずだ。しかし発射された数が数だ
から水際に築かれた陣地群はかなりの損害を受けるだろう。しかし射程の長いスナイ
プマスターの狙撃砲をいかす為にファリントン軍曹達の隊は高台に陣取って隠蔽され
ているから不用意な機動をとらない限り目標とされることは無いだろう。
 だがファリントン軍曹がのんびりと構えていられたのはここまでだった。さらに一
隻の貨物船が甲板を再び白煙でつつませていた。ミサイルの第二波なのだろうか、そ
う考えるよりも早く弾丸のような勢いで何かが飛び出してきていた。
 


54 :インストラクション・コード 7:2007/09/30(日) 01:38:24 ID:???
 だがその前に、俺は確認しておくことがあった。
「この街にも“センセイ”がいるだろう。なぜ俺に依頼するより、センセイを使わない」
 学校とか塾の先生ではない。この業界の隠語だ。地球製の『時代劇』を見たことがある
だろうか。ちょんまげ生やして腰に刀を吊るした連中が出てくる昔の映画だ。あれで、
賭場なんかでもめ事があると「先生、出番です」とか言われて「どおれ」とか言いながら
奥からのっそり出てくるコワモテのおっさんがいるだろう。ゾイドバトル業界もスポーツ
化してきてはいるが本質はギャンブルだ。なにかと揉め事が多く、それを解決するために
どこのゾイドバトル団体でも荒事の専門家を一人や二人は雇っている。大抵は軍隊上がり
で粗暴だったり性格に問題があったりするが例外なく腕は一流だ。この街にも凄腕が一人
いたはずだった。
「ああ、リー・チャンですな。彼なら先週対戦して負けたばかりですよ」
「何だって!リーが負けた?」
 リー・チャンなら俺も以前対戦させられたことがある。年間五二七勝して年間最多記録
を樹立した時だったが、この街に来た俺はチャンピオンとの対戦を要求した。勢いに乗っ
て調子こいていた俺の前に立ちはだかったのがその“先生”だった。鉄製のチェーンと
磁石を巧みに使った戦法に大いに苦しめられ、辛うじて時間切れ引き分けた。生半可な
腕で勝てる相手ではない。
 俺は事態の重さに緊張せざるをえない。


55 :インストラクション・コード 8:2007/09/30(日) 01:45:01 ID:???
「聞くところによれば貴方のコマンドウルフもAIを積んでいるそうですな。いや、分か
っておりますよ、ここだけの話、でしょう」
 事情通であることをひけらかしたいのだろうが余計なことを言う奴だ。俺は内心で舌打
ちをした。俺の幼馴染のユーリは幼年学校の時に誘拐され、狂気の科学者にオーガノイド
システムの実験体としてゾイドの中に閉じ込められた。今俺が乗っているコマンドウルフ
がそれだ。だがこのことは一般には公表していない。まさか生身の女の子が生体ユニット
としてゾイドの中に埋め込まれてるなんて言えるわけがない。もし世間にばれれば好奇の
目にさらされるか、実験動物扱いされるか、魔女裁判にかけらけるのがオチだからだ。彼
女の存在はごく一部の人しか知らない。ユーリとの会話を聞かれた場合には「実験中のA
Iを積んでいる」と説明した上で口止めしている。ゾイドファイターが軍やメーカーから
内密に試験を依頼されるのは珍しくないことで、格好の言い訳だった。
 この男にも、一本釘を刺しておく必要がありそうだ。
「いやいや“マルズシティのグラスゴー”の二の舞は踏みたくないものですな」
 と言うと、太っちょの顔が一瞬、強張る。
「いえいえ、分かっておりますとも」
 ますます汗をかきながら引きつった笑いを浮かべる。額やら頬やら、既にハンカチでは
追いつかない状態になっている。
 マルズシティの元チャンピオン・グラスゴーの名は、おおっぴらには言えない、ゾイド
バトル業界の闇を暗示する言葉として忌み嫌われている。


56 :インストラクション・コード 9:2007/09/30(日) 01:50:07 ID:???
 この辺が潮時か。丁度通りかかったウェイターを呼び止める。
「ちょっと兄さん、ここにあるグラスを全部下げてくれ。それとビールの冷えたの四つ、
大至急たのむ」
「え?それじゃあ」
「どうやら私でないとつとまらない仕事のようですな。しかしこれはちと難しい。報酬は
弾んでいただきますぞ」
 こんな時にはなんとなく時代がかった喋り方になる。用心棒稼業の時はその方が依頼主
に信頼されやすいので自然についた癖だ。俺は報酬額を相手に提示した。相場の倍を吹っ
かけてみたが、相手が即座に了解したのは、よほど交渉する手間を惜しんだか、それとも
上限予想を俺の提示した額より上で見積もっていたのか。まあいい。お偉いさん相手に欲
を出しすぎると後でしっぺ返しをくらうこともある。それと、バトルまでに必要な品々を
いくつかあげたが、それらもすぐに用意する旨、返事があった。秘書が皮製のシステム手
帳に逐一メモしていく。おおまかな条件は新しい冷えたビールが運ばれてくるまでにまと
まり、無事に乾杯する。
 マッチメーカーと組合長の秘書には申し訳ないが、細かい契約内容の打ち合わせをして
貰い、俺と組合長はさっそく肉を注文し、焼肉モードに突入した。どうせ飲食代は向こう
持ちだ。せいぜい食事を満喫させていただこうか。
 ムスカ(ニクス特有の山羊に似た動物)の肉を、テーブル中央に置かれた焼けた石の上
に置く。香ばしい芳香と共に餅のようにぷっくりと膨らむので、ムスカの内蔵を発酵させ
て作った醤油をつけて食べる。薬味にハビンシ(香辛料の一種)の根を摺って入れると
ピリッとして、また美味である。
 テーブルの向こうでは、安堵したのか焼肉の石が熱いのか、会長が顔中びっしょりの汗
を一生懸命に拭いている。



57 : ◆.X9.4WzziA :2007/09/30(日) 10:27:06 ID:???
定期ageです。

58 :恐るべき漢達の祭典 1 ◆h/gi4ACT2A :2007/10/02(火) 00:11:27 ID:???
現在確認されている限りでは恐らく唯一人の心を持つロボットであると言える存在、
“SBHI−04 ミスリル”は何でも屋“ドールチーム”を経営していた。
そして既に一度死んでいるのだが、ドールに憑依してまだこの世に留まり続けている
幽霊の少女ティア=ロレンス(10歳以下で死亡したので、あれからかなり経過した
現在もそのまま)と、通常の生態系とは異なる生命体、すなわち神や悪魔や妖怪と
呼ばれる存在を遥か外宇宙から調査しに来たけど、闇雲に探し回るよりも何故かそういう
連中との遭遇率の高いミスリルと行動を共にした方が遭遇しやすいと悟ってドールチーム
入りした、まるでドールの様に整った顔をした異星人の少女“スノー=ナットウ”
(異星人である事以外が謎)の3人でゴミ拾いから怪ゾイド退治まで様々な仕事を承って
いたのだが、今回はちょっと変わったお仕事だった。

漫画やアニメと言ったコンテンツ系の産業で成り立っている“アッキバ王国”と言う
小さな島国がある。海に囲まれた小国で軍隊も弱小と言う他は無く、また近隣にかなりの
規模を持つ軍事大国があったりして、良く存続していられるな? と思える国であったが、
この国が世界各国に輸出している漫画やアニメは世界中に支持者がおり、その為にどの国
も迂闊に手を出す事は出来ないと言うさり気なく凄い国でもあった。そしてこのアッキバ
王国の首都湾岸にて、世界中からこの手の愛好家達が集まっての大イベントをやると言う
事になったのだが、ここで謎のテロ組織“美国”からのテロ予告が送られて来ると言う
事態が発生。しかし、既に世界各国から愛好家達が集まっている現状でイベントを中止
する事も出来ない。その為に対テロ対策としてドールチームが雇われたと言うワケである。

「…と言う事だけど…あんまりものものしい警備とかやってると、一般客が不気味
がったりするらしいので、私達は一般客に扮して警備とかする事になりました。」
「分かったけど…周りにいる男の人達が汗臭くて我慢出来ないのよ…。」
「…。」

59 :恐るべき漢達の祭典 2 ◆h/gi4ACT2A :2007/10/02(火) 00:14:10 ID:???
イベント開催を前にして会場前に並んでいる愛好家達に紛れてミスリル・ティア・スノー
の三人の姿があった。別に彼女等だけが警備をやってるワケではなく他にも色々いるの
であるが、ドールチームの三人は実力こそあれど外見的には女の子なワケで、恐らく既に
潜入しているであろうテロリスト達を油断させる目的もかねて一般客に扮しての警備と
なった。それ故にイベント開催を今や今やと待ち構えている愛好家達の中に紛れて並んで
いたのであるが…前も後も右も左もむさくるしい男達ばっかりの状況がとても耐えられる
物では無かった。
「隣の男の人の鼻息が荒くて臭いの! 我慢できないのよ!」
「ティアちゃん我慢して…。けど確かに…気持ちは分からないでもありません…。
今までにも色々な修羅場を潜ってきましたが…今回はそれとはまた異質な何かを感じて
しまいます…。この時点で既に恐ろしい“気”が彼方此方から飛び交っていますし…。」
ミスリルは彼方此方から発せられる恐ろしい“気”に気圧されていた。それがまた周囲に
並んでいるただのデブとかにしか見えない愛好家達から発せられていると言う事態が
さらにミスリルを気圧させる要因となっており、この状況においても無口無表情の
ポーカーフェイスを維持出来るスノーは凄いと思える程だった。
「ナットウさんは本当に凄いですね…この状況でも相変わらずですから…。」
「ねぇ…神や悪魔・妖怪関係の本とかあったら買って良い?」
「良いですけど…お金は自分で出して下さいね…。」
この場のよどんだ空気も相まってスノーの一言はミスリルにとって妙な破壊力があった。

60 :恐るべき漢達の祭典 3 ◆h/gi4ACT2A :2007/10/02(火) 00:15:57 ID:???
にしてもここの空気はなんとも不思議な物だった。例えば会場の外に並んでいるゾイドに
しても同じ事が言える。何しろどのゾイドも全身にアニメや漫画に登場する女の子の
キャラクターのイラストがデカデカと描かれており、見てるこっちが痛くなって来る様な、
俗に言う“痛ゾイド”が多数並んでいた。以前ミスリルが旅先で知り合ったある漫画家が
ミスリル自身を参考にして作ったキャラクターを使った新作がヒットしたので、そのお礼
にと、ミスリルの剣であり盾であり脚である特機型ギルドラゴン“大龍神”にその
キャラクターの絵を描かれて痛ゾイド化されたと言う事があったのだが、この会場に
並んでいる痛ゾイドの姿を見ていると、大龍神に描かれた絵を消して良かったとつくづく
ミスリルは実感していた。

そうこうしている間についに開催時間が来た。それと同時に並んでいた愛好家達が
我先に会場入りせんと言わんばかりに猛烈なスピードで走り出したではないか!
「わ! わ! わぁぁぁぁ!!」
「ティアちゃんもナットウさんも走って! じゃないと押し潰されてしまいますよ!」
周囲の愛好家達はとても運動をやっている様に思えない男達ばかりだったと言うのに
この時ばかりは誰もが陸上競技者顔負けの物凄い速度で走っていた。それが数百人単位で
襲い来るのであるから、さながら大波の様である。この状況で生き残るのは大波に
逆らわずにとにかく走るしか無かった。この状況で波に飲まれよう物ならば、いくら
チタン・ミスリル・オリハルコン特殊超鋼材、略して“TMO鋼”で身を固めるミスリル
の装甲だって容易く破壊されてしまうかもしれない。それだけ愛好家達の猛進は恐るべき
物だった。
「わぁぁぁ!! わぁぁぁ!! 怖い怖い!」
「とにかく走ってぇ! 走らないと死にますよぉ!」
「私は既に死んでるんだけど…とにかく走るのよ!」
ミスリルとティアは物凄く焦りながら愛好家達の波に逆らわずに走る他は無く、この状況
にあっても表情一つ崩さずに走っているスノーの逞しさに感心してしまう程だった。

61 :最貧師団列伝1−6 ◆TLTiVWbvF. :2007/10/02(火) 22:22:07 ID:???
 嫌な予感がしてファリントン軍曹は、貨物船から飛び出したものをスナイプ
マスターのセンサでサーチさせた。あれはミサイルの第二波などでは無い気が
する。第一波に発射されたミサイルは高角度を持って発射されていたから、一
度上空に打ち上げられて地上に弾頭部を向けてからシーカーを作動させるタイ
プだと思われた。しかし今打ち出されている物体は貨物船の甲板から水平に発
射されたように見えた。
 着弾時間を合わせるために発射のタイミングを遅らせたシースキミングタイ
プのミサイルかとも思ったが、そんな高級なミサイルがあるならもっと長距離
で発射してもよさそうなものだった。だがファリントン軍曹の思考はそこで中
断された。高速度カメラが正体を掴んだからだ。それは脚部と背部のスラスタ
ーから激しく噴出しながら海上を機動する純白の大型ゾイドだった。
―ホバリングする・・・ジェノザウラー?
 そう思ったのは一瞬だった。確かに全体的な構成はガイロス帝国軍ゾイドの
認識表にあったジェノザウラーの改造型であるジェノブレイカーと同一だった。
ただし各部品に目を向けてみると随分と異なった印象を受けるゾイドだった。
ジェノブレイカーでは背部に大型シールドを装備していたが、このゾイドは肩
からやや小ぶりで赤く塗装された鋭角的なシールドを装備している。鋭角的な
のはシールドだけではなく機体全体のデザインに及んでおり、それがジェノザ
ウラーとはまるで違ったゾイドに見せていた。

62 :最貧師団列伝1−6 ◆TLTiVWbvF. :2007/10/02(火) 22:23:08 ID:???
 その純白のゾイドは、あっという間に貨物船から先行していたザリガニ型ゾ
イドを追い抜いた。同時にザリガニ型のゾイドからは両腕の揚陸艇が一斉に切
り離されていたのだが、誰もがそれには注目していなかった。
 まるで呆けていたかのように共和国軍将兵達が高機動するゾイドに注目して
いたのは、それほど長い時間では無かったはずだ。だがミサイルを迎撃するタ
イミングを逃すには十分な時間だった。対空砲を増設したカノントータスが一
斉に火線を上空から急速に接近するミサイルに向けて放ち始めた。
 警備師団に配備されているゴドスやガイサックもそれにつられたかのように
対空砲だけではなく、さして対空目標に有効では無い通常火器までも気が狂っ
たかのような勢いで打ち出していた。
 その光景を見ても海岸に向けて接近する純白のゾイドは何の反応も示さなか
った。どうやらジェノブレイカーと違ってこの距離で有効な火器は無いようだ。
おそらく帝国のティラノ型ゾイドにとって標準となっている口内の荷電粒子砲
は装備しているだろうが、海上でホバリング中に撃てるほど扱いの容易な火器
ではないはずだ。
 純白のゾイドから反応が無いのに安心したのかさらに火線の密度が上昇した。
そしてミサイルが沿岸陣地に立てこもるゾイド部隊に着弾した。

63 :インストラクション・コード 10:2007/10/04(木) 23:35:04 ID:???
 翌朝、
 俺はホテルのベットの上で目を覚ました。ベッドの他には簡素なテーブルと椅子、あと
はテレビが一台。典型的なビジネスルームだ。
 ユーリ(コマンドウルフ。俺のパートナー)と荷物一切合切はグスタフに積んで、市街地
外縁のゾイド駐機場に待機させてある。ゾイドバトル用とはいえ、武装したゾイドを町中
で歩かせるわけにはいかない。たちまち治安局が飛んでくる。グスタフ級の大型ゾイドを
駐機できるスペースはないから、必然的に市街地の外に停めざるを得ない。
 移動中の野宿なら兎も角、町にいる時くらいはグスタフのソファじゃなくて柔らかい
ベッドで眠りたい。という訳で、俺一人は町中のホテルにチェックインしたのだ。
 いつもの習慣で、目が覚めたのは夜明け直後。カーテンの向こうは薄暗いが新聞配達の
自転車の音がカラカラと聞こえてくる。

64 :インストラクション・コード 11:2007/10/04(木) 23:37:43 ID:???
 昨夜はそんなに遅くなったわけではない。組合長は一軒目が終わると「医者に制限され
てまして」と早々に帰ってしまい、俺達は秘書の案内で二軒目の店に行った。着飾った女
の子が横に座る店で、綺麗どころがずらりと揃っていた。ゾイドファイター風情の稼ぎで
は気楽に出入りできるような店ではない。一応は俺が主賓のはずが、女の子たちはもっぱ
ら秘書のほうに関心を寄せていた。俺もそんなにモテないほうではないが、くやしいがこ
の秘書には劣ると認めざるをえない。くやしさ半分も手伝って俺はウィスキーのボトルを
三本あけ、二人にも存分に飲ませて帰ってきた。「剣の道を志すものは、酒ごときに飲ま
れてはならぬ」と師匠に鍛えられた俺にとっては、この程度の量はあたりまえ。
 寝起きのストレッチで身体をほぐすと、日課の体操をする。主に呼吸を整え心気を練る
ためで、主に腕を動かしながら深呼吸を繰り返していると、臍の辺りに熱い塊が出来る。
次に太極拳のように身体全体をゆっくりと大きく動かす。熱い塊は動きに従って、ある時
は指先、又ある時は太股と、全身を移動する。
 二十分ほどの体操で、汗びっしょりになった。

65 :インストラクション・コード 12:2007/10/04(木) 23:40:52 ID:???
 ホテルの朝食の用意ができるまで、まだまだ時間がある。
 とりあえずホテルの周囲を散策がてら、一時間ほどジョギングする事にした。朝の空気
が清々しい。
 朝食はけっこう美味かった。なんのことはないバイキングだが、海が近いせいか魚介類
を扱ったメニューが多い。特に目を引いたのが、スープである。魚のぶつ切りと野菜を煮
ただけの漁師風鍋だが、海草(地球産の昆布)でダシを取り、魚醤で味付けされたスープは、
骨ごと煮ることで魚の旨味が濃厚でいながら、野菜の甘みが魚の旨味を優しく包んでいる。
これなら朝の胃にも抵抗なく入っていく。まさに海と陸のシンフォニーや!
などと、気が付いたら三杯もおかわりしていた。


66 :恐るべき漢達の祭典 4 ◆h/gi4ACT2A :2007/10/06(土) 11:28:37 ID:???
皆が会場内に物凄い勢いで雪崩れ込んだ後、各愛好家達はそれぞれ目的のサークルへ
向けて散った為に流れが緩やかになり、ようやくミスリル達も一休みする事が出来た。
「はぁ…死ぬかと思ったのよ…。いや、私もう死んでるんだけど…。」
「まったくです…。今まで色々な戦場を戦って来ましたが…ここはもしかしたらそれ以上
の地獄なのかもしれません…。」
スーパーが付く程強靭なロボットであるミスリルが早くも息を切らしていた時点でこの
イベントの惨状がどれだけ酷い物なのか想像に難く無い。これはもうただのアニメ・漫画
愛好家達の集いのイベントでは無い。戦場だ。世界中から集まった選りすぐりの愛好家達
が己の尊厳とアニメ・漫画に対する情熱と愛情を賭けて戦う…この世の地獄だ!
各サークルで販売されている同人誌を我先に購入せんと血眼になっている愛好家達の
発する殺気の前には…かつてミスリルを大いに苦しめた地獄の火山島戦役やピコマシン
ゴディアス、バイオゴーストさえも霞んでしまう…。過去の強敵達に敬意を払う上でも
これはとても悔しい事だったが、否定する事も出来なかった。
「あ〜…でもウダウダ考えてても仕方ないから…とにかく適当に回りましょう…。」
早くもテンションが落ちるミスリルであったが、今回の仕事である一般客に成りすまして
の警備はやらなければならないので、三人でイベント会場内を回る事にした。

イベント会場内では前述の通り、様々なサークルが多種多様な同人誌を販売しているのが
目に付いた。遥か遠い海外からここでの同人誌を買う為に訪れる者も沢山いるだけに、
プロ顔負けのクオリティーな本を出しているサークルも少なくなかったが、それよりも
目に付くのはやはりここではとても口に出せないアレなジャンルの本だろう。
「人間の男の人って本当にこういうの好きですね〜…。」
とても口に出せないアレなジャンルの本を立ち読みしながらミスリルは呆れていた。

67 :恐るべき漢達の祭典 5 ◆h/gi4ACT2A :2007/10/06(土) 11:32:29 ID:???
確かに有性生殖生物が子孫を残す為にこの様な感情は必要不可欠である事は、自身の手で
自身の後継機となる新型を開発する以外に子孫を残す手段を持たないロボットである
ミスリルにだって理解は出来る。だからこそこういう男女がアレする様なジャンルの
本の存在を気持ち悪いなとは思っても、そこまで否定するつもりはない。しかし同性で
アレするようなジャンルの本は流石に理解し難い物があった。
「男同士で○×する本なんて誰が喜ぶんでしょう…って私は思いますけど…一応需要は
あるんですね〜…。」
ミスリルが同性で○×するジャンルの本を読みながら呆れる隣で、女性の一般客が次々
その本を購入して行く。こういうのは男性が女性に興味を持つのと同じで、女性も男性に
興味を持つが故と言う事なのだろうが、まあ人にも色んな趣味があると言う事で、
ミスリルもそれ以上詮索はしたくなかったと言う以前に、あえて気にしない様にしないと
自分がそっち方面に染められてしまう危険性があった。
「まあこういうのはまだ同じ人間同士でやってる奴ですから一兆歩譲る事が出来ます…。
しかし…これはダメでしょぉ…。何ですかゴジュラス×アイアンコングだのライガーゼロ
×バーサークフューラーだのゾイド同士のカップリング同人は!」
愛好家達の妄想力はミスリルの想像を遥かに超越していた。何しろゾイド同士でアレやる様なジャンルの本まであるのである。人間同士でアレするとかそういう次元を遥かに超越
している。無論、擬人化などは一切行われていない。普通の機獣の状態でアレやる内容の
本である。真面目に考えた場合、無性生殖生物であるゾイドがアレやる事はあり得ないの
であるが、それを真面目に本にする愛好家達の妄想力は異常としか言い様が無かった。
「これで興奮出来る人ってこれはこれで凄いと思いますよ…。あ〜…何だか頭痛くなって
来ました…。とにかく別の場所行きましょう…。」
これ以上ここにいるとさらに酷い物を目の当たりにする羽目になるかもしれない。危険を
悟ったミスリルはすぐさまにミスリル同様に同人誌にカルチャーショックを受けて読み
耽っていたティアとスノーを引っ張って別の場所へ移動を開始した。

68 :恐るべき漢達の祭典 6 ◆h/gi4ACT2A :2007/10/06(土) 11:36:20 ID:???
「うわ! 何か凄い所に出てしまいましたよ!」
人込みを掻き分けながら同人誌販売コーナーから出て間の無く、ミスリル達の前に何やら
怪しげな格好をした者達が姿を現した。その誰もがアニメや漫画のキャラクターを模した
格好をしている。どうやら今度はコスプレコーナーに迷い込んでしまった様子であった。
「あわわわわ…オラは見てはいけねぇ物を見ちまったぜよ…。」
「怖いのよ〜…。」
「ユニーク…。」
目の前のコスプレ集団の威容にミスリルも思わず普段のですます口調を忘れてしまった。
それだけ恐ろしい連中だったのである彼等は…。男が男のキャラクターのコスプレをする
とか女性が女性のキャラクターの格好をするとかはまだ良い。女性が男のキャラクターの
コスプレをすると言うのも、男装の麗人と言う感じがしてこれもまあ百歩譲れる。しかし、
問題なのは男で女性のキャラクターのコスプレをしている連中も多いと言う事にある。
勿論女装しても問題無い様な美少年とかそういうのは一人もいない。どいつもこいつも
もう良い歳したおっさんで、それが女性のキャラクターのコスプレをしているのである。
これじゃあハッキリ言ってオカマと見分けが付かない。
「こ…ここも早い所立ち去った方が良さそうです…。」
寒気を感じたミスリルがすぐさま立ち去ろうとした瞬間、それより先にコスプレ男達に
呼び止められてしまった。
「あの〜済みません…。」
「は…ハイィィ!!」
ただでさえ逃げ出そうとしていた時に呼び止められた物だから、ミスリルは思わず
驚き焦ってしまった。そしてコスプレ男達がミスリルの前に集まって来た。
「(ヒィィ! 神様助けて…私はこのままこの気持ちの悪い男達に捕まってあの同人誌の
様なとても口では言い表せないあんな事やこんな事をされてしまうかもしれません…。)」
ミスリルは目を強く瞑り、両手を合わせて神に祈った。自称神に対してはいくらでも
敵対し撃破して来たミスリルであるが、本物の神がいるなら祈りたい。そんな気分だった。

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